Cosmology with Type Ia Supernovae

天文学入門講座
「宇宙論入門」
1. 宇宙観の変遷
2. 膨張する宇宙
3. 超新星と観測的宇宙論
2005年5月7日
天文学入門講座@葛飾区郷土と天文の博物館
0. 最初に
【 天文学の発展とは何か 】
考える
見る
観測的事実をどう解釈するか?
この繰り返しで天文学は発展してきた!
1. 宇宙観の変遷
【 宇宙観の変遷 】
• 空に果てはあるのか?
• 昔の昔はどうなっているのか?
• 先の先はどうなっているのか?
“宇宙”はどうなっているのか?
コスモロジー(宇宙論)
1. 宇宙観の変遷
【 観測の発展 】
肉眼
・ 太陽、月
・ 惑星
・星
望遠鏡の応用 ・ 衛星
・ 天の川
・ 日周運動
・ 年周運動
・ 衛星の公転
・ 星の集団
写真の応用
・ 銀河
・ 銀河宇宙
・ 近くの宇宙
CCDの応用
・ 遠くの宇宙 ・ 大規模構造
1. 宇宙観の変遷
【 古代の宇宙観 】
・ 太陽/月の動き
・ 星の動き
・ 月の満ち欠け
・ 北極星の存在
・ 彗星/流星/新星
これだけの観測事実から、形成されたのが古代の宇宙観
1. 宇宙観の変遷
【 古代の宇宙観 】
中国
天と海の間を太陽が行き来する
インド
ヘビ、カメ、ゾウの上に須弥山が乗っかってる
エジプト
大気の神シューと女神ヌート、太陽神ラー
1. 宇宙観の変遷
【 古代日本の宇宙観 】
天上界
ツツ
地上界
“ほしはすばる。ひこぼし。ゆふづつ。よばひぼし、すこしをかし。”
「枕草子」254段より
1. 宇宙観の変遷
【 古代ギリシャの宇宙観 】
地球は宇宙の中心にあるに違いない
プトレマイオス(1世紀)
「アルマゲスト」にて天動説を集大成
↓
その後1000年以上、宇宙観の基礎となる
1. 宇宙観の変遷
【 宇宙観の大革命 】
地球が太陽の周りをまわってた方が
説明しやすいのでは?
コペルニクス(15世紀)
「天体の回転について」にて地動説を提唱
↓
地球中心の宇宙観から太陽中心へ
1. 宇宙観の変遷
【 観測の発展 】
肉眼
1608年 発明!
・ 太陽、月
・ 惑星
・星
望遠鏡の応用 ・ 衛星
・ 天の川
・ 日周運動
・ 年周運動
・ 衛星の公転
・ 星の集団
写真の応用
・ 銀河
・ 銀河宇宙
・ 近くの宇宙
CCDの応用
・ 遠くの宇宙 ・ 大規模構造
1. 宇宙観の変遷
【 望遠鏡の登場 】
・ 太陽黒点の観測
・ ガリレオ衛星の発見
・ 太陽が自転している
・ 衛星が公転している
1. 宇宙観の変遷
【 星界の理解 】
ガリレオ・ガリレイ(16世紀)
「星界の報告」にて天の川の正体に言及
↓
天の川を“星”の集団として認知
1. 宇宙観の変遷
【 銀河系の認識 】
ウィリアム・ハーシェル(18世紀)
天の川は銀河系の断面図である事を認知
1. 宇宙観の変遷
【 観測の発展 】
肉眼
・ 太陽、月
・ 惑星
・星
望遠鏡の応用 ・ 衛星
・ 天の川
・ 日周運動
・ 年周運動
・ 衛星の公転
・ 星の集団
1839年 発明!
写真の応用
・ 銀河
・ 銀河宇宙
・ 近くの宇宙
CCDの応用
・ 遠くの宇宙 ・ 大規模構造
1. 宇宙観の変遷
【 銀河宇宙へ 】
写真の特徴:露光出来る
↓
暗い天体が見えるように!
1. 宇宙観の変遷
【 銀河宇宙へ 】
シャプレーとカーチスの大論争
(1920/4/26)
シャプレー
“星雲は天の川よりもずっと小さな天体”
カーチス
“星雲は天の川と同じ種類の天体”
ハッブルによるアンドロメダ星雲までの距離の測定で決着。
銀河とは・・・数百億~数千億の星の大集団
1. 宇宙観の変遷
【 おさらい 】
地球という星は、
宇宙の中心
・無数にある銀河の中の、
・2000億ある星の中の、
・太陽系の惑星のひとつ
にすぎない事がわかった。
宇宙の片田舎
1. 宇宙観の変遷
【 ここまでのまとめ 】
宇宙を構成するものの理解は進んだ
↓
宇宙それ自体の理解は?
宇宙 = 時間と空間
• 始まりも終わりもない時間
• 無限に広がる空間
定常宇宙論
2. 膨張する宇宙
2. 膨張する宇宙
【 定常宇宙論の落とし穴 】
無限に広がる宇宙??
→ 無限という考え方に既に矛盾が
オルバースのパラドックス
“なぜ夜空は無限に明るくないか?”
無限に広がる宇宙なら、無限に星があるはず
無限に星があるのなら、無限に夜空は明るいはず
実際には無限に明るくない・・・つまり、無限ではない
2. 膨張する宇宙
【 膨張する宇宙 】
エドウィン・ハッブル(20世紀)
ハッブルの法則を発見
(遠い銀河ほど早く遠ざかる)
v = H0 r
1. 膨張する宇宙
【 タケノコの成長 】
「遠い節ほど早く遠ざかる」
1. 膨張する宇宙
【 タケノコの成長 】
「遠い節ほど早く遠ざかる」
成
長
の
速
度
節までの距離
2. 膨張する宇宙
【 宇宙も成長する 】
後
退
速
度
銀河までの距離
エドウィン・ハッブル(20世紀)
ハッブルの法則を発見
「遠い銀河ほど早く遠ざかる」
v = H0 r
2. 膨張する宇宙
【 膨張する宇宙 】
タケノコの成長と比較すると・・・
・伸び始め
・急激な成長
・枯れる
・土へ戻る
宇宙の場合はどうなる?
2. 膨張する宇宙
【 宇宙の始まり 】
過去にさかのぼると・・・
宇宙に始まりがあった!
宇宙
ビッグバン宇宙論
2. 膨張する宇宙
【 宇宙はどうなるか? 】
宇宙の3通りの運命
• いつか収縮する宇宙
• いつか止まる宇宙
• 永遠に膨張する宇宙
過去を知る事が重要
ボールを投げ上げた時と比較できる
・ 重力にひかれて落ちてくる
・ たまたま釣り合ってそのまま浮かび続ける
・ 永遠に飛んでいく
2. 膨張する宇宙
【 過去の様子を知る 】
Aさん
Bさん
Cさん
← 過去
現在
3人とも時速10kmで走っていたとしても・・・
→ 距離がわかれば判定できる
2. 膨張する宇宙
【 過去の様子を知る 】
加速
一定
減速
← 過去
距離
遠ざかる速度
現在
測定が難しい
(比較的)簡単 ← 赤方偏移で測定する
2. 膨張する宇宙
【 距離を求める 】
明るさと距離には関係がある
加速膨張
一定膨張
減速膨張
標準光源があれば、距離は計算で求まる
明るさがわかれば、距離がわかり、宇宙の過去もわかる
2. 膨張する宇宙
【 標準光源を探せ 】
標準光源の条件は?
・ とても明るい
・ 一定の明るさ
・ 光度進化がない
超新星
・ 銀河と同じ程度の明るさ
・ ある種のものはどれもほぼ同じ明るさ
・ 過去も最近も同じ明るさ
2. 膨張する宇宙
【 ここまでのまとめ 】
• 宇宙は膨張している
• 膨張の様子はよくわからない
• 過去の様子を知る必要がある
• 超新星が良いらしい
3. 超新星と観測的宇宙論
3. 超新星と観測的宇宙論
【 超新星とはなんぞや 】
一生の最後で起こす大爆発
大別して2つタイプがある
[重力崩壊型超新星] Ib型、Ic型、II型
重い星の最後の大爆発
中心核に外層が落ち込んで爆発
・ すごい明るいものもある
・ 明るさが一定ではない
3. 超新星と観測的宇宙論
【 超新星とはなんぞや 】
一生の最後で起こす大爆発
大別して2つタイプがある
[炭素核爆発型超新星]Ia型
白色矮星の爆発
星全体が爆発
・ -19等程度(太陽の1千億
倍)
・ 明るさがどれもほぼ一定
3. 超新星と観測的宇宙論
【 Ia型超新星 】
白色矮星
・ 太陽程度の星のなれの果て
・ 電子の縮退圧で支えられている
チャンドラセカール質量が上限
(太陽質量の1.37倍)
→上限を超えると潰れて爆発する
3. 超新星と観測的宇宙論
【 Ia型超新星 】
白色矮星+巨星
巨星からガスが降り積もる
↓
限界を超えると爆発する
Ia型超新星
爆発する時の質量が一緒
→
明るさが同程度になる
3. 超新星と観測的宇宙論
【 Ia型超新星を使う 】
標準光源としてのIa型超新星
・ 非常に明るい
・ 明るさがほぼ一定
・ 近くも遠くも変化なし(と期待できる)
・ とてもレアな現象(銀河系では400年間出現無し)
・ 本当の明るさがきっちりとは決められない
この問題をクリアしないと使えない!
3. 超新星と観測的宇宙論
【 Ia型超新星を探す 】
超新星の出現率・・・1個/100年/1つの銀河
=100個の銀河を探せば、1年間に1個は見つかる
=36500個の銀河を探せば、1日に1個は見つかる
一気にたくさんの銀河を同時に撮像すれば見つかる
2. 膨張する宇宙
【 観測の発展 】
肉眼
・ 太陽、月
・ 惑星
・星
望遠鏡の応用 ・ 衛星
・ 天の川
写真の応用
1971年 発明!
CCDの応用
・ 日周運動
・ 年周運動
・ 衛星の公転
・ 星の集団
・ 銀河
・ 銀河宇宙
・ 近くの宇宙
・ 遠くの宇宙 ・ 大規模構造
3. 超新星と観測的宇宙論
【すばる望遠鏡】
すばる観測所大プロジェクト
( 春 ) SDF
( 秋 ) SXDS
圧倒的に広い視野を狙う
広視野撮像カメラSuprime-cam
8000万画素、30分角の視野
大望遠鏡+広視野撮像カメラ
→遠方の銀河を幅広く撮像可能
3. 超新星と観測的宇宙論
【SXDS】
くじら座の領域
約100万個の銀河
↓
一度の撮像で10個以上の
超新星を発見
3. 超新星と観測的宇宙論
【 超新星の見つけ方 】
何晩かに分けて同じところを撮影する
3. 超新星と観測的宇宙論
【 超新星探査チーム 】
遠方の超新星探査を行う2大国際研究グループ
・ HZT (High-Z Team)
・ SCP (Supernova Cosmology Project)
・ 遠方の超新星を探し
・ 明るさを測定して
・ 宇宙膨張の様子を精査
3. 超新星と観測的宇宙論
【 結果はいかに? 】
宇宙は加速膨張している!!
暗い
明るい
地球からの遠さ
3. 超新星と観測的宇宙論
【 加速する宇宙膨張 】
なぜ加速している? →
ダークエネルギーが原因
3. 超新星と観測的宇宙論
【 これからの観測的宇宙論 】
たくさんの超新星を精度良く観測する時代に
→ダークエネルギーの性質を探る
SNAP衛星
SDSS望遠鏡
3. 超新星と観測的宇宙論
【 まとめ 】
• 宇宙観はこれからも書き換えられる
おつかれさまでした