レプトンの異常磁気能率 ーその物理が目指すものー 奈良女子大学女性先端科学者セミナー 2007年1月11日 理化学研究所 仁尾 真紀子 W/ 青山龍美@理研、早川雅司@名古屋大、 木下東一郎@Conell U The Physics Story of the Year 2006 American Institute of Physics APSなど物理関連10団体 電子の異常磁気能率の精密測定と QEDの計算による微細構造定数の決定 B. Odom, D. Hanneke, B. D’Urso, and G. Gabrielse, Phys. Rev. Lett. 97, 030801 (2006) G. Gabrielse, D. Hanneke, T. Kinoshita, M. Nio, B. Odom, Phys. Rev. Lett. 97, 030802 (2006) 1、異常磁気能率って何? 参考文献 物理学会誌 2006年7月号 パリティ 2、電子の異常磁気能率 2007年2月号 物理の基礎理論の検証 実験 U. Washington ’87, Harvard U. ’06. 理論(量子電気力学 QED) 微細構造定数 α-電磁気力の強さを決める 3、ミューオンの異常磁気能率 実験 理論 ハドロン+Weak+QED 4、QED理論計算の現状 新物理現象の探索 1、異常磁気能率って何? 電子のもつ磁気能率μと外部磁場Bとの相互作用 電子のスピン 磁気能率の大きさを示す量 磁気回転比 g因子 ボーア磁子 ディラックの相対論的量子力学によると電子では 整数の2! 実際には は2からわずかにずれる 0.1%程度 異常磁気能率、 g-2 クッシュら1948年 (1955年ノーベル賞) 次元のない量、単位を持たない量 量子電気力学による量子補正効果 量子電気力学 Quantum ElectroDynamics = QED て 朝永振一郎先生 ファインマン シュウィンガーとともに 1965年ノーベル賞 受賞 超多時間理論とくりこみ理論を用い 量子電気力学を完成 朝永グループがQEDで計算した物理量 水素原子のエネルギー準位差 ラムシフト 陽子 みごとに観測値を再現 電子 量子補正効果 2P1/2 2S1/2 なぜQEDの量子補正効果が生じるのか? 電子が光子を放出し、再吸収する 電子の持つエネルギーが変化を受ける 光子 電子 e e e 電子の電荷 電子自己エネルギーのファインマン図 !!真空をも揺らぐ!! 2、電子の異常磁気能率 実験 ワシントン大学デーメルトのグループ 単一電子を電磁場内で捕獲する Penning Trap 1989年ノーベル賞 B. Odom, Harvard U Ph.D thesis 2005より再掲 Z軸 Z軸に沿った振動 スピン歳差運動 電子 サイクロトロン振動 静電ポテンシャル 電磁捕獲内の電子の振動モード スピン歳差振動数 ωs サイクロトロン振動数 ωc アノーマリー振動数 ωa= ωs –ωc エネルギー準位間の遷移を測定 B. Odom, Harvard U. Ph.D thesisより再掲 ハーバード大学ガブリエルス Penning Trapの形状を筒型に変更し、 最大の実験誤差を縮小した。 実現までに20年 2006年7月発表 • 髪の毛の太さ 地球の円周 • 87年のワシントン大学の値を約6倍改良 • 3年以内には、外部磁場の改良等により さらに3倍の改良を見込む 理論 電子が軽いため、ほとんど光子のみによる補正 QEDによる摂動計算 αのベキ展開 展開係数を計算によって求める。 ファインマン図形の基づく計算。 e e どのようなファインマン図? e α e e e α 2 e e e e e α 3 e ee 実験値との比較: 理論インプットとしてαの値が必要 冷却原子を用いた実験 h/MAの測定 ・スタンフォード大学チューらのCs原子波干渉実験 2003年 (1997年ノーベル賞) マックスプランク研究所ヘンシュら 1999年 (2006年ノーベル賞) ノートルダム大学ゲルギノフらによるCs原子準位測定 2006年 振動数櫛 ・パリ高等師範学校クラデらによる光学格子でのRb反跳測定 2006年 異常磁気能率の理論値 理論α4 理論α5 α自身 微細構造定数αの決定 電子異常磁気能率 QEDが正しいと仮定して 実験値 = 理論式(α) 最も精度の良いαが決められる ほかの方法で決めたαよりも一桁以上精度が良い 論文: 実験+α Phys. Rev. Lett. 2006年7月 記事: Physics Today, SIENCE, Nature, Sience News…e.t.c. 2006年夏から秋 共同通信 2006年8月, パリティ2007年2月 微細構造定数αの値の比較 G. Gabrielse et al. Phys. Rev. Lett. (2006) より再掲 自然界にはたった4種類の力しかない EM, Weak, Strong, Gravity α電磁気力を表す結合定数 物理、化学の広い分野にあらわれる唯一の結合定数 世界はこのαの上に構築されている αの値を知ること そのこと自体が人類の知的財産 それぞれの現象で決めたαは、唯一の定数になるはず αの精度を極めてゆくとどうなるだろうか? 現在の物理理論の破綻の兆候が見えるだろうか? 2、ミューオンの異常磁気能率 素粒子標準理論 レプトン粒子 電子、ミュー粒子、タウ粒子 0.51 MeV , 105.7MeV, 1777MeV ミュー粒子>>電子の200倍重い より短い距離、より重い粒子の存在に敏感 十分に高い精度に到達できれば、 新しい物理現象を発見できるのでは? 1ppm=1/1,000,000 を超える精度を目指す Brookhaven National Laboratory 2004年 muon g-2 collaboration home pageより再掲 ならば運動量とスピンは常に同一方向 ヘリシティ保存 なのでスピンの歳差運動の方が早く動く e Momentum Spin Figures from Herzog’s talk @Tau06 workshop ミュー粒子の崩壊によってでる電子の数を見る weakでの崩壊 パリティの破れ 左右非対称 TIME Figure from Hertzog’s talk @Tau06 射出ミュー粒子のスピンの向きによって、 出てくる電子の数が異なる。 この変化の振動数が(g-2)に比例している。 理論 g 2 a 2 QED Weak QED a had a weak a αの8次(4loop)までと10次(5loop)の一部 2 loopの寄与まで 以上2項については、まず、問題なし。 Hadron ~60ppmの寄与 この精度をあげることが非常に難しい ハドロンの理論 量子色力学 QCD 格子QCDでの大型計算機による計算 いまのところ必要な精度まで計算できない ~60ppm±0.1ppm とうてい無理 ハドロンの真空偏極 他の実験データから計算可能 e+ e- ハドロン τ粒子 ハドロン CMD-2, KLOE Belle, ALEPH M.Fujikawa’s talk @Tau06 実験値と理論値の比較 M. Davier’s talk @ Tau06 3.3 標準偏差 の差異! 超対称性? 余剰次元? New Physics? a μ[exp]-a μ[theory]=(27.5 ±8.4)X10-10 4、QED理論計算の現状 電子の異常磁気能率 理論の不確定性 実験の不確定性 28×10-14 76×10-14 近々20 ×10-14 早急に10次の寄与を求める必要! ミュー粒子の異常磁気能率 QED10次の寄与 実験の不確定性 0.04ppm 0.5 ppm 次世代の実験に備えて、 10次の寄与を全て知りたい。 電子の場合、10次では12672 のファインマン図! set I 208 diagrams set IV 2072 diagrams set II 600 diagrams set V 6354 diagrams set III 1140 diagrams set VI 2298 diagrams 電子異常磁気能率には、どの図形も平等に寄与する。. 全12672 図形を評価しないといけない。 The leading contribution to muon g-2 is reported by T. Kinoshita and MN hep-ph/0512330, PRD 73, 053007 (2006) Set V: フェルミオンループのない6354 図形 6セットのなかでも、圧倒的に計算が難しい。 ★ # of diagrams are many..! Amalgamate the Ward-Takahashi related diagrams: 6354 6354 / 9 = 706 Time reversal symmetry: 706 389 independent self-energy like diagrams 6354 diagrams form one gauge invariant set. need to calculate all 389 to get a physical number. ★ UV renormalization is so complicated! 389 self-energy like diagrams X-Project: 3 step calculation T.Aoyama, M. Hayakawa, T. Kinoshita and MN Step1: obtain the UV and IR finite amplitude. Most difficult. Fully automatic. Numerical calculation. Step2: obtain the residual renormalization expression. Automatic. Analytic calculation. Step3: obtain the values of the residual renormalization constants. Fully automatic. Numerical calculation. Answer= finite amplitude + residual renormalization constants. Perl FORM Perl Maple Perl FORM Shell Script Code generation is on a HP α machine: ~15min. for one code generation. A week and more for all 389 diagrams Fortran codes consist of more than 80,000 lines. 13dim. integration by VEGAS adaptive iterative Monte Carlo integration One diagram evaluation: 107 sampling points with 20 iteration 5-7 hours on the Xeon 32 CPU PC cluster Need 108 pts ×100 it to reach the desired precision. A few month to complete one diagram. We wish to evaluate 389 diagrams… The numerical calculation has been carried on Riken Super Combined Cluster System. Linux PC cluster system. 2048 cpu 12.4 TFlops. operation started April 2005. We use 500~700 CPU everyday. A new Peta-flops computer will be introduced in 2010 Diagrams with vertex corrections only. No IR divergence. 2,3年以内に、10次の寄与を2%の精度で求める! 実験とあわせて、さらにαの値が一桁良くなる F. Dyson から G. Gabrielseへの手紙: QED “Jerry-built” 10年も持たずにもっとしっかりとした理論に とって代わられるだろう。 あるいは、新しい実験結果によって、 理論の破綻が示唆されるだろう。 57年間も自然のダンスを記述し続けたことは驚き。 また、このような高い精度で自然のダンスを 捉えたことに祝福を! 10次の計算によって、はじめてQEDの破綻が見えるかも?? そうなれば、とてもおもしろい!!!
© Copyright 2024 ExpyDoc