The Polysemy and network model of ‘run’ 0612004 一山奈央 2010年2月4日 ©2010.Nao Ichiyama 研究の概要 1.はじめに 2.runのプロトタイプの設定 3.runの意味拡張(自動詞) 4.runの意味拡張(他動詞) 5.runの多義ネットワーク構造 6.おわりに 1.はじめに 研究の動機 →中学生のころ、runの「走る」「経営する」という2つ の意味のギャップに驚く。 ⇒しかし、大学で認知言語学を学ぶことで、多義語 の意味はきちんと動機付けられてつながっている ということがわかる。 ◎runも意味のつながりが動機付けられているはず。 そして多義ネットワーク構造にまとめよう! 2.runのプロトタイプ 同じrunでも辞書間には意味の差異がみられる。 (of people and some animals) to move along, faster than walking, by taking quick steps in which each foot is lifted before the next foot touches the ground <cam.> ①人間と動物が動作主であること、②「歩く」行為との対比、 ③移動に関する記述、④両足を使った具体的な動きの説明、 ⑤両足の地面への接触の有無 ◎最低5つの視点でこの意味を見ることが出来る。 2. runのプロトタイプ Cambridge Cobuild Webster Oxford Longman の5つの英英辞書の第一定義を比較し、プロ トタイプに必要な要素を検討する。 2. runのプロトタイプ 以下の構成要素を中心に辞書の第一定義を比較していく。 ①動作主の有無。人か動物か、またはその両方かもあ わせて表記する(両方の場合は「◎」表記) ②速さに関する表現の有無(‘walk(歩く)’との比較が ある場合は「◎」) ③移動表現の有無 ④両脚と地面との接触関係の記述の有無 ⑤脚(または足)の動きに関する記述の有無 ◎・・・両方該当 ○・・・該当 △・・・該当するが判断しづらい ×・・・該当なし runの第一定義の比較 Cam. Web. Ox. Long. Cob. ① ◎ ○(人) △(人) ○(人) ○(人) ② ◎(faster) ○(fast) ◎(faster) ◎(quickly) ◎(quickly) ③ ○ ○ ○ ○ ○ ④ ○ ○ ○ × × ⑤ ○(foot) ○(feet) ○(feet) ○(legs) × 表1:各辞書のrunの構成要素の比較。辞書は左から5要素中の該当箇所 が多い順に並べた。) ( ◎・・・両方該当 ○・・・該当 △・・・定義からは判断しづらい ×・・・該当なし (1)両脚が地面 についている状態 (3)右脚が空中に浮いてい る。歩幅以上に進もうとして いるので左足が自然と離れる。 (2)右脚を前方遠くに出す。 このとき進む距離は歩くとき の歩幅以上 (4)両脚が空中に浮く (5)右脚が地面につく (6)右脚が軸となり、左 脚が右脚を追い越すように 前方に出る (7)体が前方に進もうと しているので、右脚が地面 をける (8)両脚が空中に浮く (9)左脚が地面につく (10)左脚が軸とな り、右脚が左脚を追い 越すように前方に出る (11)体が前方に進も うとしているので、左脚 が地面をける (12) (4)~(11)が止まるまで繰り返される runのプロトタイプの構成要素 ①動作主は人または動物 ②歩く行為より速い動き(‘fast’を使う) (「速い」には(ⅰ)移動が速い、(ⅱ)足の動きが速い、 の2側面があり、相互関係にある) ③脚(‘legs’)を交互に動かす動きで、両脚、 あるいはすべての脚が地面から浮いている 瞬間がある ④移動の意味が含まれる 3.runの意味拡張(自動詞) (1)He ran two miles. →「速さ」からの拡張 3.1.1 「(人が)急いで行く、駆けつける」 (2)He ran to her help. <目的>彼女を助けるため ⇒「急ぐ」必要があり、結果「走る」 wonder if you’d run to the store for me. (3)I <目的>急いで店へ行くこと ⇒必ず「走る」必要がない 3.1.2 「(人・動物が)逃げる」 (4)The boy hit her on the head and run. (5)Two dogs strive for a born and the third run away with it. 起点から急いで離れる 「急いで行くこと」の目的が「起点から離れる」 目的が「急いで行く」の意味とは違う 3.1.3 「(人・動物が)競走に出る」 (6)I ran a race with her in the schoolyard. (7)This horse ran in the Derby. 「急いで行く」から「急ぐ」が際立ち、 「速さ」へのメトニミーが起こる ⇒他の対象物と比較した程度のある「速さ」 ⇒「勝負」の概念がうまれる 3.1.4 「(乗り物が)走る」 (8)Trains run on rails. 「無生物」が主語 (意志がない) 生物の脚の動き・・・回転しているよう ⇒電車の車輪が速く回転することに近接関係 電車という「全体」で、運転手という「部分」をさす。 3.2「移動」 3.2.1 「(人・動物が)自由に動き回る」 (9)The dogs ran loose in the garden. プロトタイプのrunは動作主の意志に基づく動き ⇒「自由意志」「制御抑制可能性」に焦点が置か れる 3.2.2 「(川などが)流れる」 (10)The river runs into the Pacific Ocean. 重力に逆らわない移動 話者の「視線の移動」⇒長さの認知 一方向の移動 (11)Your nose is running. 「鼻」が「鼻水」をさすメトニミー 3.2.3 「(道が)延びる」 主語が動的な側面を持たない (12)The highway ran from Los Angels to New York. 話者の「視線の移動」 (13)The mountain range goes from Canada to Mexico. ◎双方向の移動 3.3 「(物・事が)・・・になる」 (14)The milk went sour. (15)His dream came true. (16)The river has run dry. (17)He ran short of money. 「場所の移動」→「場所の変化」 ⇒「状態変化」 3.4 「(機械などが)・・・で動く」 (18)This desktop calculator runs on solar battery. 「乗り物が走る」から「動くこと」のみが際立つ ⇒「移動」の意味の消滅 4.runの意味拡張(他動詞) 他動詞では人が動作主となり、以下の項目 の自動詞に目的語が付くことで意味がつな がっていく。 a.「(人・動物が)走る」 →「(道・距離など)を走る」 (19)She ran the road through. 人や動物が走る場合の目的語は「道」「距離」な ど。 b.「(人・動物が)競走に出る」 →「(競争)をする」 目的語「競争」 ※動作主は人のみ (20)I ran a race with her in the schoolyard. b’ 「(人・動物が)競走に出る」 →「人・動物を競走に出す」 (21)She will run her horse in the derby. c.「(乗り物が)走る」 →「(乗り物)を走らせる」 (22)He ran his car into the parking lot. 人が主語となり、乗り物を目的語に取る 動作主の前景化 d.「(川などが)流れる」→「(液体)を 流す」 (23)Tom’s eyes ran tears. 液体が目的語になる e.「(機械などが)・・・で動く」 →「(機械など)を動かす」 (24)She runs her washing machine everyday. 人が操作し、機械が目的語となる 4.2 「(人が)(会社など)を経営する」 (25)He runs a karaoke bar. お店をまわす・・・人が忙しく店を切り盛りしている 様子 ⇒歯車を回して機械を動かす 人が「機械を動かす」ことと 人が「会社を動かすこと」に近接関係 runの多義ネットワーク(自・・・自動詞、他・・・他動詞) プロトタイプ「走る」 ①動作主:(人または動物) ②歩く行為より(移動と脚の動き)速い動き ③脚(‘legs’)を交互に動かす。両脚(すべて の脚)が地面から浮く瞬間有り。 移動 他「(人が道・距離な ど)を走る」 勝利の要素、相手 と比較する速さ ④が際立つ。 自由意志 話者の視点の 移動、移動は 一方向のみ 他「(競争)をす る」 自「(人が)急いでい く、駆けつける」 起点から離れる 自「(人・動物 が)競争に出る」 双方向の視線の移動 自「(道が)延び る」 自「(乗り物が)走 る」 自「(人・動 物が)逃げ る」 動作主(人)の前景化 他「(動物など) を(競争などに) 出場させる」 動作主の前景化 他「(乗り物)を走らせる」 自「(川などが)流れ る」 他「(液体)を流 す」 速さ→急ぐ移動 動作主の意志性の消滅 生物→無生物 自「(人・動物 が)自由に動き回 る」 状態の移動:状態変化 移動の意味の消滅 動きの際立ち 自「(物・事 が)・・・にな る」 自「(機械など が)・・・で動 く」 他「(機械など) を動かす」 ・・・意味 ・・・意味拡張の動機 「お店を回す」と機械を動かしたときの 歯車やモーターが回る様子に近接関係 他「(会社な ど)を経営す る」 図2:runの多義ネットワーク構造 6.おわりに メトニミー作用や動作主・主語の変化でプロト タイプから離れた意味も説明が出来た。 runの複数の意味はどの意味もきちんと動機 付けられて相互完成し、多義ネットワークを 構成している。
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