戸田市の現状と課題

滋賀県市町村職員研修センター係長級研修
第2部 調査研究の取り組み事例 2
急速な高齢化が戸田市に及ぼす影響に関する
研究
本研究のポイント
①
現時点で高齢化がほとんど進んでいない首都近郊の自治体におい
ても、今後、急速な高齢化が確実に進展していく。特に戸田市の高
齢化は、極めてスピードが速いとの推計結果。
(2005年国勢調査の高齢化率、1位 浦安市(千葉)9.1%、2位 和光
市(埼玉)11.9%、3位 戸田市(埼玉)12.0% )
② そして急速な高齢化は、自治体の行財政を圧迫する等、自治体運
営にあらゆる影響を与える。戸田市でも、経常収支比率が上昇し、
財政の硬直化が進むと見込まれる。
③ 2035年の超高齢社会に備えるため、高齢者の経済を下支えするた
めの就労支援体制の整備、要介護を未然に防ぎ健康老人を増やすた
めの効果的な予防事業の展開、財政影響に配慮し施設数・施設配置
の綿密な検討等が必要である。
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戸田市政策研究所
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目
次
1 我が国の高齢化の特徴
2 高齢化の要因
3 国・県・戸田市の高齢化率
4 市制施行からの人口推移と特性
5-(1~2) 高齢化は戸田市にとって無縁か
6 急速な高齢化が戸田市に及ぼす影響に関する研究
7 研究プロジェクトチーム
8-(1~8) 2009年度の研究成果の概要
9 2010年度の研究活動
10 課題
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1
我が国の高齢化の特徴
図1 主要先進国の人口構造(2005年)
政策研究大学院大学 松谷明彦 教授
・今後の労働力人口の急激な減少は、日本特有の人口構造の必然的な結果→山が2つ
・日本に特有の「人口の谷」は、1950年代における産児制限によって形成→深い谷
・日本以外の先進国は2030年代半ばで高齢化が収まる
→日本は止まらない+異常に速いスピード
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高齢化の要因
【高齢化はなぜ起こるのか・・・】
①
平均寿命の延伸による老年人口(65歳以上)の増加
・男性79.29歳・女性86.05歳(厚生労働省2008年簡易生命表)
・男性は世界第4位、女性は24年連続世界第1位
・男性は癌、女性は脳血管疾患、男女とも不慮の事故による死因の低下
・65歳生存率は、男性86.6%、女性は93.4%
・75歳生存率は、男性71.2%、女性は86.0%
・90歳生存率は、男性21.1%、女性は44.8%
参考URL:http://journal.mycom.co.jp/news/2009/07/17/024/index.html
②
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少子化の進行による年少人口(14歳以下)の減少
・合計特殊出生率は、1.37(厚生労働省2009年)
(埼玉県1.28(2008年)・戸田市1.41(2008年) )
・長期的に人口を維持できる水準は、2.07
・第1子出生時の母の平均年齢は、29.5歳
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5
3
国・県・戸田市の高齢化率
【国・県・戸田市の高齢化率】
・国(2009年12月1日・総務省統計局人口推計月報)
総人口
老年人口
127,515,000人
29,098,000人(高齢化率22.8%)
・埼玉県(2010年1月1日・埼玉県町(丁)字別人口調査)
総人口
7,242,418人
老年人口
1,416,857人(高齢化率19.6%)
※昇順ベスト3県 ①沖縄県(17.5%)②愛知県(19.8%)③埼玉県・神奈川県(20.0%)
降順ベスト3県 ①島根県(29.1%)②秋田県(28.9%)③高知県(28.4%)
(2009年10月1日総務省統計局推計より)
・戸田市(2010年1月1日・埼玉県町(丁)字別人口調査)
総人口
122,251人
老年人口
16,711人(高齢化率13.7%)
※昇順ベスト3市 ①戸田市(13.7%)②和光市(13.8%)③朝霞市(15.8%)
降順ベスト3市 ①秩父市(26.6%)②蓮田市(22.4%)③飯能市(22.0%)
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市制施行からの人口推移と特性
1966年10月
(55,376人)
・県内24番目の市として誕生
1985年9月
(75,952人)
JR埼京線開通
・新宿駅まで約20分の利便性
・大規模な集合住宅等の建設
が進行中
2009年10月
2010年6月
(122,004人)
(123,951人)
《参考》2012年9月
923戸の大規模集合住宅
【特徴】
図2
戸田市の人口推移(1966年10月~2009年10月)
140,000
120,000
100,000
80,000
60,000
1985年
埼京線開通
40,000
20,000
0
1966
1968
1970
1972
1974
1976
1978
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
1996
1998
2000
2002
2004
2006
2008
4
資料:戸田市総務部情報統計課
・JR埼京線開通以来24年間で、人口は約1.6倍に増加
・平均年齢は、県内で一番低い39.0歳(2010年1月1日現在)
“若い人が多い活気あふれるまち”
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5ー1
高齢化は戸田市にとって無縁か
「日本の市区町村別将来推計人口」
(国立社会保障・人口問題研究所、2008年12月発表)
【65歳以上人口】
2005年 14,042人(12.0%)
2010年 18,141人(14.8%)
2035年 35,050人(27.0%)
図3
戸田市の将来推計人口(65歳以上)(2010年~2035年)
40000
35000
30000
25000
65歳以上人口は30年間で約2.5倍
増加し、2005年の高齢化率が全国市
で3番目に低かった戸田市も2025年
頃には「超高齢社会」を迎える。
また2005年比増加率は全国第10位
にランキングされる。
20000
15000
10000
5000
0
2010年
2015年
2020年
2025年
2030年
2035年
資料:国立社会保障・人口問題研究所
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5ー2
高齢化は戸田市にとって無縁か
日本経済新聞(2009年2月16日朝刊)
・この新聞記事が本研究の発端である。
・今後、2035年までの戸田市の老年人口
の増加率(=スピードの速さ)を示唆
している。
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6 急速な高齢化が戸田市に及ぼす影響に関する研究
急速なスピードで高齢化が進展していくと・・・
・行財政等にどのような影響を与えるのか?
・どのような備えが必要か?
“超長期的視点を持って課題等を整理し、2035年までの
高齢者福祉施策の方向性を研究する必要がある”
【研究プロジェクトチームの設置】
・2009年7月22日設置
・分野毎にグルーピング
・専門性と機動力
・2009年度・・・課題整理
2010年度・・・方向性を研究
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図4
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研究プロジェクトチームの体系
10
7 研究プロジェクトチーム
【研究プロジェクトチームの定義】
分野横断的な行政課題に対し効果的な解決策等の研究を進めるため、当該課題に関
連する知識を有した職員で構成する政策研究グループ
図5
研究プロジェクトチームメンバー
研究グループ名
所
属
職
名
将来推計人口
研究グループ
経営企画課
情報統計課
市民課
副主幹
主 任
主 事
高齢者経済状況
研究グループ
経済振興課
税務課
介護保険課
(医)健康推進室
副主幹
主 任
副主幹
副主幹
福祉総務課
長寿福祉課
介護保険課
財政課
税務課
長寿福祉課
管財検査課
福祉総務課
主 事
主 事
主 幹
副主幹
主 任
主 任
主 事
主 事
高齢者健康
研究グループ
老人福祉施設
研究グループ
財政影響
研究グループ
任命期間 平成21年7月22日から平成23年3月31日まで
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8-1 2009年度の研究成果の概要
◆2035年の戸田市の姿を視察(群馬県桐生市)
図6 戸田市と群馬県桐生市の比較
※
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表中「総人口」「老年人口(65歳以上)」「高齢化率」の欄の上段は2009年4月1日現在、中段は2035年推計、下段は2035年
推計から2009年4月1日現在を減じたものである。
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8-2 2009年度の研究成果の概要
【視察結果から見える2035年の戸田市の姿】
① 一般世帯に占める65歳以上の高齢単身者世帯の割合は、約9%(
2005年比の約2倍)となっている。
② 既に高齢化が進んでいる群馬県桐生市と比較して、戸田市は今後
、急速な高齢化が進展するため、年金収入のみの住民税非課税対象
者が増加し、市税の減少に少なからず影響を及ぼしている。
③ (新潟県見附市を参考として)在宅で生活できる健康老人が増加
傾向にある。
④ 仮に数多くの老人福祉施設を増設していたとしても、待機者数の
減少に繋がっていない。
⑤ 高齢者を支えるための保険事業に係る負担額の増加や、施設整備
に係る財政負担の増加などにより、財政の硬直化が進んでいる。
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8-3 2009年度の研究成果の概要
【基礎条件】
2035年までの将来推計人口は、独自推計したものでなく、国立社会保障・
人口問題研究所が2008年12月に発表した「日本の市区町村別将来推計人口
」を基礎。
◆2035年の人口構成等
・65歳以上人口は、2.5倍に増加し4人に1人(2005年は8人に1人)
・65歳以上の高齢単身者世帯数は、2.5倍に増加し約5,700世帯( 2005年は
2,286世帯)
・2005年比増加率は、国が45.1%、埼玉県が82.8%、戸田市が149.6%で、
高齢化のスピードが非常に速い
◆現在の65歳以上の高齢者の経済状況(2007~2009年度課税台帳より)
・9割が公的年金を受給
・4割が公的年金以外の就労収入
・6割が所得が100万円以下(年金収入のみの場合は、平均所得438,000円)
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8-4 2009年度の研究成果の概要
◆ 現在の65歳以上の高齢者の医療費等
・医療費は、年額753,941円
・介護給付費は、年額201,657円
◆ 2035年の要介護認定者等
・要介護認定者は、3倍に増加し約6,422人( 2008年は2,137人)
図7
要介護認定者の将来推計
※「65歳以上人口増加率」及び「要介護認定者増加率」は、2000年を基準としている。
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8-5 2009年度の研究成果の概要
◆市内事業所の実態調査から見えてきた課題
・対象施設15ヶ所へアンケート調査を実施し、11ヶ所(回収率73.3%)から
回答。また、このうち3ヶ所において現地ヒアリング調査を実施。
①
人材の採用と質の向上
・介護職員の研修強化、賃金の改善
②
処遇困難者への対応
・成年後見制度の活用
③
待機者の解消に向けた対策
・特別養護老人ホームの整備
④
施設整備の進め方
・市が土地を貸し、法人が建設・運営する
⑤
地域密着型サービスの検討
・メリット・デメリットを検証し、充実したサービス提供
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8-6 2009年度の研究成果の概要
◆高齢化による市財政への影響
【歳入】
・市税全体で約8億8千万円の減収(2010年比減少率3%)
・高齢化の影響は最小限にとどまるのではないか
図8
歳入における2035年までの市税の推移
(百万円)
30,000
25,000
20,000
個人市民税
法人市民税
15,000
固定資産税
軽自動車税
市たばこ税
10,000
都市計画税
合計
5,000
0
2010
2015
2020
2025
2030
2035
( 年度 )
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8-7 2009年度の研究成果の概要
【歳出】
・介護保険・後期高齢者医療保険・国民健康保険の事業費は、約26億7千万
円の増額(2010年比伸び率155%)
・一般会計から各特別会計への繰り出しが増大するのではないか
図9 歳出における2035年までの各保険事業費の推移
5,000
(千円)
4,500
4,000
3,500
3,000
介護保険
2,500
後期高齢者医療保険
2,000
国民健康保険
1,500
合計
1,000
500
0
2010
2015
2020
2025
2030
2035
( 年度 )
・現在と同様の行政サービスを進めていくと、約35億5千万円の財源不足が
生じるのではないか
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8-8 2009年度の研究成果の概要
【経常収支比率】
・経常収支比率は、72.8%(2008年度全国市中第7位)から91.2%へ
・財政の硬直化が進むのではないか
図10
2035年までの経常収支比率の推移
(%)
100.00
90.00
80.00
70.00
60.00
50.00
経常収支比率
40.00
30.00
20.00
10.00
0.00
2008 2010 2015 2020 2025 2030 2035
(年度)
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9 2010年度の研究活動
2010年度の研究活動は・・・
①
②
③
④
高齢者の負担軽減のための就労支援策
効果的な介護予防策
老人福祉施設の施設配置及び規模
ハード整備の必要性や、予算の枠組みの検討
2009年度の研究から得られたデータ等を活用し、
2035年まで、いつ、どのような対策が必要か、
具体的な方向性を、シナリオプランニングの手法等
を用いて研究していく。
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10 課題
【前提】
①
②
③
戸田市は少子化が進んでいない。
戸田市は現在のところ高齢化が進んでいない。
しかし、2005年から2035年までの老年人口の増加率は全国第10位
にランキングされる。
④ 2009年度の研究成果から、急速な高齢化が行財政に与える影響が
明らかとされている。
⑤ 戸田市も高齢化影響が徐々顕在化している。市内2ヶ所の特別養
護老人ホームの待機者は、約960人という状況である。
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参考図書等
より深く問題意識を高めていただくために・・・
①
牧瀬稔・戸田市政策研究所編著
「選ばれる自治体の条件-政策開発の手法と実践Ⅱ-」
東京法令出版
②
2009年度 戸田市政策研究所 調査研究報告書
「急速な高齢化が戸田市へもたらす影響に関する研究
-西暦2035年の高齢社会に備え戸田市は何を為すべきか-」
URL:
http://www.city.toda.saitama.jp/DAT/LIB/WEB/1/2009koureimotarasuke
nnkyu.pdf
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ご清聴ありがとうございました
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戸田市政策研究所
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