糖尿病と腎臓合併症 田中内科クリニック 院長 田中洋一 糖尿病性腎症 1.どんな病気? 糖尿病腎症は糖尿病の3大合併症のひとつです。 糖尿病にかかって10年以上経過している人で、糖尿病のコントロールが悪く、 高血糖状態が長い間続いていると、腎臓の糸球体の毛細血管に障害が起きて きます。そのため腎機能が低下して、尿の中にたんぱくが出てきたり、高血圧 やむくみなど腎炎と似た症状が起こります。進行すると、腎不全から尿毒症とな り透析が必要になります。 2.どうしてなるの? 腎臓の中にある糸球体は、血液中の老廃物を 尿中に排泄するろ過器の働きをしています。糖 尿病で高血糖状態が続くと、糸球体を構成して いる細かい血管が動脈硬化を起こして固くなり、 糸球体の組織の目が粗くなって、ろ過機能が低 下します。するとたんぱく質が糸球体の網の目を 通り抜けてたんぱく尿が出たり、尿をつくる働き が低下して老廃物が排泄されなくなり体内にた まる糖尿病腎症になります。 3.生活習慣改善アドバイス ● たんぱく質の摂取を医師の指示に従って制限する ● 減塩する、カリウム制限、リン制限 ● 一度にたくさん食べない ● 夕食は脂肪分の多い料理を控える ● 夜食は避ける ● 原則禁酒とする ● 外食は素材のわかる料理を注文し、たんぱく摂取を心がける ● 肥満にならないよう注意する ● ストレスをためない ● 適度な運動を継続する ● 禁煙する ● 血圧のコントロール こんな人は特にご注意! ●健診で血糖値が高目だったことがある ●健診で尿糖が陽性だったことがある ●肥満(20歳代前半から健康時の体重より1割以上増加 している) ●食べ過ぎ、運動不足が顕著である ●ストレスが多い ●普段から塩分やたんぱく摂取が多い ●毎日お酒をたくさん飲む ●4kg以上の赤ちゃんを産んだお母さん、あるいは妊娠糖 尿病といわれたことがあるお母さん 早期発見が鍵です! 糖尿病性腎症は自覚症状がなく、検査でたんぱく 尿が出たときにはすでに発症しており、いったん 発症すると腎症を完治することはできません。し かし最近では尿中の微量なアルブミンを調べて、 ごく初期の腎症を発見する検査が行われるように なりました。早期発見して厳しく糖尿病をコント ロールすれば腎症の進行を抑えることができるの で、糖尿病の人は定期的に検査を受けることが 大切です。 わが国における慢性透析患者総数の推移(日本透析医学会) (人) 300,000 257,765 250,000 200,000 150,000 100,000 50,000 0 '75 '80 '85 '90 年 度 '95 '00 '05 日本透析医学会編: わが国の慢性透析療法の現況(2005年12月31日現在)(引用改変) 年度別透析導入数の推移(主要原因疾患、日本透析医学会) 16,000 糖尿病性腎症 14,000 12,000 患 10,000 者 人 8,000 数 6,000 慢性糸球体腎炎 4,000 2,000 0 腎硬化症 '83 '84 '85 '86 '87 '88 '89 '90 '91 '92 '93 '94 '95 '96 '97 '98 '99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 年 度 日本透析医学会編: わが国の慢性透析療法の現況(2005年12月31日現在)(引用改変) わが国の透析導入原因疾患別の患者数(日本透析医学会) 原疾患 糖尿病性腎症 慢性糸球体腎炎 不明 腎硬化症 その他 多発性囊胞腎 急速進行性糸球体腎炎 慢性腎盂腎炎 SLE腎炎 移植後再導入 悪性高血症 アミロイド腎 腎・尿路腫瘍 骨髄腫 閉塞性尿路障害 その他分類不能の腎炎 痛風腎 腎・尿路結石 腎形成不全 妊娠腎/妊娠中毒症 腎・尿路結核 先天性代謝異常による腎不全 総計 総計 14,387 9,368 3,242 3,071 1,003 795 379 345 282 223 219 158 137 123 111 110 91 85 47 45 14 13 34,568 % 41.62 27.10 9.38 8.88 2.90 2.30 1.10 1.00 0.82 0.65 0.63 0.46 0.40 0.36 0.32 0.32 0.26 0.25 0.14 0.13 0.04 0.04 100% 順位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 日本透析医学会編: わが国の慢性透析療法の現況(2005年12月31日現在)(引用改変)
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