Torsade de pointes arrhythmias QT延長を伴う多形性心室性頻拍 プレゼンの流れ 1.Case history の説明 2.心電図・不整脈の説明 3.薬物治療について 4.治療の批判 1.Case history 65歳の女性のcase 患者:65歳 女性 主訴:動悸 既往歴:急性下壁心筋梗塞 薬暦:アスピリン 325 mg/day ヒドロクロロチアジド 50 mg/day 心電図:頻度の高い心室性期外収縮 処方:ソタロール 80 mg × 3錠 /day 回旋枝 後下行枝 数日後再び来院 主訴:めまい 心電図:4連発の心室性頻拍 処方:ソタロール 160 mg × 2錠 /day 数日後 痙攣を伴う意識喪失のため、救急外来へ 昏迷以外の理学所見は認められない 心電図:洞調律 50/min 陳旧性下壁心筋梗塞 QT間隔 0.72 sec. 処置:経過観察と心電図モニタリング 1時間後 多形性心室性頻拍を伴う心肺停止 処置:直流電気徐細動 2.心電図・不整脈の説明 異所性自動能による心室性期外収縮 心室性期外収縮 Premature Ventricular Contraction 心室性期外収縮診断のポイント その心拍のみ先行RR間隔が短い 幅広い異常な形をしたQRS波 先行するP波がない 心室性期外収縮 PVC 4連発の心室性頻拍 QRS波が幅広く、R波が大きい 心筋梗塞による心電図変化-1 梗塞発作 正常 ST上昇 Qの出現 心筋障害を反映 心筋壊死を反映 心筋梗塞による心電図変化-2 Tの陰性化 冠性Tの出現 安定期 正常心電図 QT波の延長 QT間隔の延長の定義 QTC=QT/√RR>0.46sec. ( QTC とは心拍数により補正したQT間隔) この患者の場合、心電図上のQT間隔は0.72sec.で 脈拍数が50beat/min なので、 QTC=0.72/√60/50=0.65 よって、この患者はQT間隔が延長しているといえる。 Torsade de pointes にはさまれたQT波延長 を伴う患者の心電図 Polymorphic ventricular tachycardia (torsade de pointes) Prolonged QT interval 初めに、多形性心室性頻拍が見られ、その後自発的な休止がある。 そこには、QT波が延長したnormal single beat (NSB)が見られ,すぐに torsade型の心室性頻拍が続いている。 QT延長症候群 先天性QT延長症候群 遺伝子異常による心筋細胞イオンチャネルの異常 ①第3染色体のSCN5A遺伝子→Naチャネルをコード ②第7染色体のHERG遺伝子→遅延整流性Kチャネルを コード 続発性QT延長症候群 誘因:薬剤(抗不整脈、抗ヒスタミン薬、マクロライド系 抗生物質etc) 電解質異常(特に低カリウム) 徐脈 Torsade の危険因子 低カリウム血症 hypokalemia 徐脈 bradycardia 早期後脱分極 再分極相が異常に延長すると、その終末部に後脱 分極が発生し、これがtriggered activity(撃発活動)を 誘発し、トルサードが起こる。 Triggered activity EAD 電気的徐細動のための電極の位置 前方電極(1)は、第2,第3肋間に当たる胸骨の右上に置く。 側方電極(2)は、左側壁の中間線上の第5肋間に置く。 3.薬物治療について Aspirin:酸性抗炎症薬 主な作用 1、解熱 2、鎮痛 3、抗炎症作用 4、血小板凝集阻害作用 Hydrochlorothiazide:チアジド系利尿薬 Sotalol:抗不整脈薬Ⅲ群の薬物 作用機序 再分極を生じる遅延整流K+チャネルを遮断し、T波の 発生を阻害。それにより、心筋細胞の活動電位持続 時間(APD)や不応期が延長され、リエントリーをブロ ックし、抗不整脈作用を示す。 副作用 QT間隔の延長(低カリウム血症で起こりやすい) 4.治療の批判 本症例の留意点 Inferior myocardial infarction (下壁心筋梗塞)の既往があ る 1~2行目 Aspirin 325mg per day, hydrochlorothiazide 50mg per day を処方していたが・・・ →ACE阻害薬(カプトプリル、エナラプリル等)を用いて 血圧を下げ、remodeling を抑制すべきだった。 4~6行目 心電図が4連発の心室性頻拍を示したときに、医師は sotalolの処方量を増やしたが・・・ →sotalol 80mg three times per day まではよかった。 心電図が4連発の心室性頻拍を示した段階で、sotalolの 効果によりQT間隔延長が表れていたのではないだろうか。 →抗不整脈薬Ⅰb群 (Na+チャネル遮断薬)・・・mexiletine 抗不整脈薬Ⅱ 群(β遮断薬) ・・・propranolol を用いればよかった。 問題1 torsade de pointes を誘発する危険因子 として 当てはまらないものを選べ。 ①低カリウム血症 ②徐脈 ③mexiletine 過剰投与 ④sotalol 過剰投与 問題2 { }の中から、正しいものを選べ。 心筋梗塞回復期患者での心室頻拍が起こる最も考えられ る発生機構は、瘢痕化した心筋梗塞巣近傍でのA{①リエン トリー ②トリガー活動}である。これを防ぐ薬物選択の一つ として、B{③APD ④DAD ⑤EAD}を延長させる抗不整脈 薬が考えられる。しかし、Bの延長に基づくC{⑥PQ ⑦QT ⑧RT}の延長によってtorsade de pointesを導くことがあり注意 が必要である。この場合は、D{⑨Ⅰa ⑩Ⅰb ⑪Ⅰc}群抗不 整脈薬を用いてBを積極的に短縮させる。
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