GPLv3で何が変わるのか 八田真行 東京大学大学院 GPLv3 Discussion Committee D [email protected] 1 自己紹介 本業は大学院生(経営学) Debian公式開発者(2000-) TeX関係、Ghostscript、AbiWordなどのメンテナ GNUコントリビュータ(1998-) プログラマではありません 法律家でもありません GNU a2psメンテナ GNU ウェブマスタ GPL等翻訳 Discussion Committee D(後述)メンバ 2 おことわり 現在進行中の事象である まだ「変わった」わけではない 今日お話する内容と正式版は必ずしも一致しな い 3 そもそもGPLとは何か GNU 一般公衆利用許諾書 (General Public License) Richard M. Stallman氏(FSF代表)が作成 基本的にはGNUプロジェクトのソフトウェア用 ただし汎用性あり 現在のバージョンはバージョン2(1991年発表) 以来基本的に変更されていない 4 GPLの特異性 「コピーレフト」条項 著作権(コピーライト)の独創的な利用 禁止の禁止、制限の制限 本当の意味で「国際的」なソフトウェア・ライ センス 世界中で英語正文がライセンスとして利用されてい る 準拠法? 管轄? 5 GPLが守るもの フリーソフトウェアの4つの自由(http://www.gnu.org/philosophy/freesw.ja.html) 目的を問わず、プログラムを実行する自由(第0の自由) プログラムがどのように動作しているか研究し、そのプログラムに あ なたの必要に応じて修正を加え、採り入れる自由 (第 1 の自由)。 ソ ースコードが入手可能であることはこの前提条件となります。 身近な人を助けられるよう、コピーを再頒布する自由 (第 2 の自由) プログラムを改良し、コミュニティ全体がその恩恵を受けられるよう あなたの改良点を公衆に発表する自由 (第 3 の自由)。 ソースコード が入手可能であることはここでも前提条件となります。 この原則はGPLv3でも当然維持される ライセンシー間の平等を追求 6 なぜGPLが重要なのか(1) FLOSS(Free & Libre Software / Open Source Software)の根幹はGNUソフトウェア 少なくとも5176個(http://directory.fsf.org/) GNU以外も広くGPLを採用 約66%、LGPLも足せば75%以上 (http://freshmeat.net/) 有力FLOSSの多数がGPL'd Linuxカーネル、Samba、MySQLなどなど Sun Microsystemsは間もなくJava処理系をGPLの下 で公開する予定 7 なぜGPLが重要なのか(2) FLOSSエコシステムの維持 フリーライダーの防止 プログラマの権利保護 ビジネスに道を拓く FLOSSライセンスにおける事実上のデファクト ・スタンダード 普及している、という事実とともに、さまざまな判 断の軸となる 8 GPLv3とは何か 15年で初の大規模な改訂 GPLを人々にとってより便利なものに 読みやすく GPLの国際化 ライセンスの両立性(compatibility)を高める GPLを現在の状況により適応したものに 法的な挑戦への対応(メジャーな問題) 技術的な進歩への対応(マイナーな問題) 9 GPLv3改訂プロセス(1) 2006年1月15日開始(ボストン、第1回カンファ レンスでDD1発表) ディスカッション・ドラフト(Discussion Drafts) 実際の作業は数年前から 叩き台 現在はDD2、間もなくDD3が出る予定 来年3月に正式版を発表する予定 10 GPLv3改訂プロセス(2) FSFの委託を受けたSFLC(Software Freedom Law Center)がディスカッション・ドラフトを準備 代表はエベン・モグレン コロンビア大学教授 最終決定はRMSが行う コミュニティからの意見集約 コメントシステム(http://gplv3.fsf.org/comment) ディスカッション・コミッティA-E 企業との直接交渉 日本企業含む 11 GPLv3で何が変わるのか(1) たいして何も変わらない GPL2とGPLv3は根本的には同じ内容 そもそも意味内容を大きく変えることはできない (GPL2 第9項) ディスカッション・ドラフト間は大きく違うこ とに注意 活発な議論を反映 12 GPLv3で何が変わるのか(2) 細かい言い替えは多数 技術的な進展はあまり関係ない 米著作権法への依存を減らす 用語の「国際化」 批判もある(判例が参照できないなど) あえて言えばP2Pによる頒布への対応程度 FLOSSの開発者を法的に脅かす動きへの対処が 重要 13 GPLv3で何が変わるのか(3) いわゆる「反DRM条項」(DD2 第3項) 実は「反」DRMではない 米DMCAなど特定の国の法への対策 プログラマの保護が主眼 特許報復(第11項) これも、大して強いものではない すでに多くのFLOSSライセンスに入っている Apacheライセンス2.0、CPLなど ライセンスの両立性向上(第7項) 14 今後の見通し 2007年3月? 正式版公開 GNUソフトウェアは速やかに移行 若干遅れるかも FSFが著作権を持っているので いくつかの有力プロジェクトもおそらく移行 Linuxカーネルは? 15 LinuxカーネルとGPLv3(1) リーダーLinus TorvardsはGPLv3に批判的 有力開発者数名も批判的 Anti-DRMに反対 http://opentechpress.jp/article.pl?sid=06/09/2 6/0227202 基本的にライセンスを選ぶのは著作権者 FSFがとやかく言うことではない 16 LinuxカーネルとGPLv3(2) よくよく考えてみると… DD1の段階では極端な反DRM 現在ではそれほどLinusの希望と離れているわけではない 日を置けば折り合う可能性は高い そもそも、良いと思えば使ってくれればよいし、思わなければ使わ なくてもよい 「or later」の誤解 GPL2とGPLv3は共存できるか GPL2 onlyとGPLv3 (or later)をリンクすることは現状無理 できるだけ出来るようにはしたい 17 ビジネスへの影響 現実問題としてまだよく分からない 最終ドラフトの発表が遅れている 今言えるのは、「おそらく大した影響はない」 唯一懸念される 遅れた原因の一つ? NovellとMSの提携 ソフトウェア特許の扱い 18 お願い ディスカッション・ドラフトを読んで意見を述 べてほしい DD3が最終ドラフト(ラストコール)になる予定だが 、正式版発表までは意見はまだ受け付けている 19 ご静聴ありがとうございました 何かあれば[email protected]まで あるいはhttp://opentechpress.jp/ 20
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