6)電子資料 - 図書館学授業科目(吉田暁史)

2.図書館資料の種類と特質(続き)
(3)ファイル資料
 パンフレット、リーフレット、1枚もの(ポスターやちらしな
ど)、切り抜き資料など
 地域資料など最新情報を案内する
ために、自館で作成する資料である
(4)マイクロ資料
1)マイクロ資料とは何か
・図書や雑誌などの資料を、写真撮影によって肉眼
では判別できないくらいに、縮小撮影した資料。
・大きく分けて、ロールフィルムとマイクロフィッシュ
の2種類がある。
1)マイクロ資料とは何か(続き)
 ロールフィルム
フィルム幅は、16mmと
35mmが代表的。
1)マイクロ資料とは何か(続き)
 マイクロフィッシュ
シート状フィルムに碁盤の目状にマイクロ画像が
記録。フィッシュは、105x148.75mmが標準。
1)マイクロ資料とは何か(続き)
 閲覧のためには拡大機が必要である。
下は、拡大投影のほか印刷もできる機種
2)マイクロ資料の特徴
①写真撮影によるため、原資料を損なうこと
なくマイクロ化できる
②縮小性→保管スペースの節約
③定型性→専用保管庫で効率よく保存
④耐久性→100年以上の耐久性
⑤複製機能→複製が容易で安価
3)マイクロ化される資料
①入手困難な資料の収集のため
②長期保存用として
③原資料の損傷防止のため
④保管スペース節約のため→新聞など
(5)視聴覚資料
1)視聴覚資料の種類
a.簡易視聴覚資料
・写真、絵はがき類
・複製絵画
・ポスター
・紙芝居
1)視聴覚資料の種類(続き)
1)視聴覚資料の種類(続き)
b.映像資料
DVD
LD
1)視聴覚資料の種類(続き)
c.音声・音響資料
CD
(6)電子資料
1)電子資料一般の特徴
 電子資料は、デジタル(数値)で記録されている
→デジタル資料ともいう。
 収録される内容は、文字(テキスト)、音声、静止
画像、動画、あるいはそれらの組み合わせ、とい
うように、あらゆる種類の情報を含みうる。
 文字、音声、画像、動画、といった情報は、特定
の規約にもとづいて、符号化(コード化、デジタル
化)される。
1)電子資料一般の特徴(続き)
 デジタル化されているがゆえに劣化しない。また
ネットワーク(通信回線)を通して、広範囲に高速
に伝達することが容易。
 最初から順番に再生するだけでなく、読み手の
選択によって順不同な再生が可能。筋書きも変
更することができる(インタラクティブ再生)。
 リンク手法によって、ある項目と他の項目を関係
づけたりすることができる。
1)電子資料一般の特徴(続き)
 内部データを高速で検索することが可能。
 収録データは、符号化(コード化、デジタル化)さ
れているがゆえに、もとのアナログデータのまま
ではない。例えば音声や画像は、不連続な状態
になっている。例:音のサンプリングと量子化
 同じものを複製するのが非常に容易。ただし著
作権の関係から自由に複製できるとはかぎらな
い。
 再生するには、パソコンなどの装置が必要。
2)パッケージ系電子資料
 CD-ROM、DVD等の固定したメディアに収められた電子
資料。
 特徴
①図書や雑誌と同じように、出版社から「出版物」として出
版され流通する。→最低限の品質保証。
②個人や機関が作成し頒布する場合もある。
③書誌や辞典類、六法全書などの参考図書・2次資料から
始まったが、今ではあらゆる種類の電子資料に拡大。
④内容は固定されており、変化したりすることはない。
⑤図書館で扱う場合、従来の図書、雑誌、AV資料と特に変
わるところはない。→通常の所蔵資料である
3)ネットワーク情報資源
 固定したメディアに記録されて流通するのではな
く、ネットワークを通してのみ提供。
→事実上インターネット上に存在する情報資源。
 特徴
①数量が膨大
②所在が変化する
③内容が変化する
きわめて不安定な情報源ということができる。
3)ネットワーク情報資源(続き)
 特徴(続き)
④品質の差が激しい
⑤図書館にとって
資源自体を所蔵していない。
→所在や内容の安定性に関して、関与することが
できない。
→しかし重要な資源も多いだけに、よりすぐった
上で、所蔵資料と同じように提供する必要性があ
る。不安定であるので、たえずメンテが必要。
4)電子ジャーナル、電子ブック
a.電子ジャーナル
• 学術雑誌は、現在大半が電子化され、ネットワーク
をとおして配布されている。電子版しか存在しない
ことは少なく、多くの場合印刷版と併用して提供さ
れる。
• いかに多数の電子ジャーナルを利用できるように
するかが、大学図書館にとって重要な課題となって
いる。
• 日本の電子ジャーナル提供サイトの例
J-STAGE(科学技術振興機構、JSTが提供)
b.電子ブック
• 電子書籍、eブック、などとも呼ばれる。
• 著作権の切れた古典的書籍の電子化から始
まったが、現在では多くの新刊書が電子化され、
印刷版とともに提供されつつある。
• 青空文庫や近代デジタルライブラリーは、著作権
の切れた古典作品の電子版を無料で利用できる
サイトである。
• 日本の場合、携帯アニメ、携帯小説が主として提
供されているが、ごく近い将来一般電子書籍が
普及していくと思われる。
b.電子ブック(続)
• 最近、googleなどが大規模な書籍電子化を推し
進め、ネットをとおして閲覧可能な提供形態が普
及し始めた。 Google book search
• 1ページのみ閲覧可能、数ページ閲覧可能、全
ページ閲覧可能、などさまざまな提供形態がある。
• 電子書籍は、ダウンロードして自分のPCで読む
のが一般的であるが、読みやすい専用リーダー
も市販され始めた。
• Amazon.comによるキンドルが有名である。アップ
ルによるiPadも電子ブック閲覧に使われる。
5)電子資料の長期保存性
電子資料は数値(情報)として保存される。
→本来劣化しない
アナログ資料は、「物」として保存される
→劣化したり、散逸したりする。
電子資料は一見永久保存に適しているよ
うに見える。
→しかし次の理由で長期保存は困難。
5)電子資料の長期保存性(続き)
a.電子資料を収める媒体の寿命。
b.再生装置の破壊や寿命、提供態勢。
c.電子的な記録を符号化して収めるときの仕様
(コード化規約)が変化する。
d.再生するためのアプリケーションソフトが変化。
e.土台となるOSが変化。
f.一定期間ごとに見直して変換する必要あり。
しかしあらゆる電子資料の変換は、事実上困難。
プロテクトのかかっているコンテンツもあり。
(7)視覚障害者用資料
1)点字図書
・点字図書の多くは、墨字図書を点訳したもの。
・点字図書はかさばるという欠点がある。出版点数
も非常に少ない。
・点字図書の多くはボランティアによって作成されて
いる。
・最近では、パソコンと点字プリンタの組み合わせ
により、以前よりは作成が容易になってきている。
・視覚障害者のための「点字図書館」がある。
(7)視覚障害者用資料(続き)
2)さわる絵本
3)録音図書
録音図書書架
対面朗読室
(7)視覚障害者用資料(続き)
3)録音図書(続き)
・視覚障害を持つ利用者への情報提供を目的とし
て製作した録音物。
・点字図書館等の視覚障害者福祉施設にておいて
は、自由に製作できる(2009年に法改正あり)。
・DAISY (Digital Accessible Information System)
デジタル録音図書を実用化するための国際標準。
(7)視覚障害者用資料(続き)
4)点字資料・録音図書総合目録
・国立国会図書館が中心になって維持。
・全国の公共図書館、点字図書館等で視覚障害者
の利用に供するために製作された点字図書、録
音図書の製作情報に関する総合目録。
・NDL-OPACによりWebからの検索が行える。
(7)視覚障害者用資料(続き)
5)拡大図書
・弱視者の利用に供するため、通常の図書より文
字が大きく印刷された図書。
・大阪市立中央
図書館における
大活字本書架
(8)政府刊行物
1)政府刊行物とは
政府あるいは国際機関が、一般に公表する目的
で作成した刊行物。主として中央政府の刊行物
をいう。その種類は多様であるが、官報、白書、
統計書が代表例である。
(8)政府刊行物(続き)
• 政府機関としての諸機関
①国会、国立国会図書館
②最高裁、下級裁判所
③内閣、行政機関
④公庫、公団、事業団など、政府関係機関
(8)政府刊行物(続き)
2)政府刊行物の種類
①議会関係資料
国会会議録、法令など
②司法関係資料
裁判記録など
③行政関係資料
行政報告(白書、事業報告など)、統計報告、調
査研究報告、公示記録など
(8)政府刊行物(続き)
3)刊行・流通の問題と収集
・情報公開という観点から、図書館が積極的・網羅
的に収集しなければならない資料であるが、入
手はなかなか困難。
・ホームページをとおしての公開も増えつつある。
・かんぽう(政府刊行物サービスステーション)をと
おして市販される資料もある。
(9)地域資料
1)地域資料とは
• 郷土資料とも呼ばれる。図書館の所在する地域
や自治体に関係する記録資料。
• 公共図書館は、その地域についての資料を責任
を持って収集することが重要な任務。
• それらのレファレンス質問に答えることも重要。
(9)地域資料(続き)
2)地域資料の種類
①地方行政資料
②地域に関して書かれたもの
③地域内で刊行されたもの
④地域にかかわりの深い人物の著作物