IT技術者の心の健康 - 情報システム学会ISSJ

~ アレキシサイミア(失感情言語化症)との
関連でIT技術者、管理者や経営者の方々
に心掛けてほしいこと
放送大学大学院文化科学研究科臨床心理プログラム 修士全科生
三村 和子
Photo by (c)Tomo.Yun,
URL(http://www.yunphoto.net )
2

「アレキシサイミア傾向を有するIT技術者の抽
象化能力の検討とアレキシサイミア発生機序の
類型化~情報化社会に向けて」
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3

研究のスキーム:「アレキシサイミア傾向」「ストレス」「抽
象化能力」の相関の捉え方
Risk Factor
アレキシサイミア傾向
=感情コントロールの欠陥
Fukunishi et al.
心理臨床や治療場面
において問題
Bagby
ストレス
コーピング
精神疾患
心身症、抑うつ、自己
愛パーソナリティ障害
など
抽象化
能力
ソーシャル
サポートの
低さ
共通要因?
アレキシサイミア傾向の形成に関与する側面
・遺伝学的 ・神経生理学的 ・発達的
・精神力動的 ・社会学的 ・知的
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業務遂行の不効率
・設計開発業務
・対人関係
・問題解決 など
4
1 アレキシサイミアとは
6
2 心の病とアレキシサイミア
13
3 IT技術者とストレス
23
4 起こりうるケース
31
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5
6

アレキシサイミアとは、心身症の多くの患者が示
す特徴的な認知・感情様式である。 Taylerら
(1997)により、アレキシサイミアの構成概念は以
下と定義されている。(p.32)
1)感情を認識し、感情と情動喚起に伴う身体感
覚を区別することの困難
 2)他者の感情について語ることの困難
 3)空想の乏しさに明らかな、限られた想像過程
 4)刺激に規定された、外面性志向の認知様式

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7

Alexithymia(アレキシサイミア)とは


ギリシャ語のa=欠如、lexis=言葉、thymos=情動
より、ハーバード大学付属病院のシフネオス教授
が命名したもの
心身症

特定の疾患群の名称ではなく、既存の身体疾患
の発生経過や背景に関する概念。例えば、胃・十
二指腸潰瘍は、器質的な疾患であるが、特に心
理的ストレスが大きな要因であると推定される場
合に、心身症であると考える。
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8




古典的心身症で悩む患者の臨床において観察
された。
1963年 仏の精神分析家Martyとde M’Uzan
は、身体病の患者について精神分析的治療の
反応が不良な患者群について、特徴的な思考
様式と空想の顕著な欠如を「機械的思考」”La
pensée opératoire”と呼んだ。
1970くらい~ Sifneosらによる体系的な研究
1976年 「第11回心身症研究をめぐるヨーロッパ
会議」のメインテーマとなる。以降構成概念を妥
当化しようとする動き(→測定法の開発)
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9

1977年 第4回国際心身医学会(京都)にて、心身医学の創
始者池見酉次郎が紹介。

池見博士(1993)による問題の指摘


「アレキシサイミアの先導的な役割のもう1つの面として、、Weiner(国際
心身医学会前理事長)が述べているように、“今日ではパーソナルな心因
よりも、社会的なインパクトの役割の方が重大化しつつある”といえよう。幼
児からの性格形成の障害に基づくアレキシサイミアよりも、ハイテク社会の
進展に基づく現代人のロボット化(失感情、失体感の傾向)の急速な広が
りが問題といえよう。」
心身症と神経症の相違

「社会適応という面からみると、神経症の患者はちょっとしたことで感情的に
なったり対人関係において不適応をきたすことが多いが、心身症の患者の場
合は頼まれるといやとはいえず、他人によく気をつかい、過剰適応の傾向が
みられる」(福島, 1990, p.192)
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10
福西(1992)による大別
①遺伝学的 genetic
②神経生理学的 neurophysiological あるい
は神経解剖学的 neuroanatomical
③発達的 developmental
④精神力動的 psychodynamic
⑤社会学的 social
⑥知的 intellectual
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11
左右の大脳半球間の連絡に障害があるとす
る仮説と、右大脳半球(空想や夢は優位に活
性化)の機能不全の結果とする仮説がある。
 守口(2011)による脳内の情報処理機構に関
する脳画像研究では、「心像性(imaginary)・
想像性(fantasy)」に関し、想像活動に重要な
後部帯状回の脳活動が低下していることが確
認されている。

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12
13
正常レベル
古典的な境界例論
DSM-III における人格と障害
正常
正常
中間的なレベル
神経症的性格
神経症
カーンバーグの防衛機制論
神経症的人格構造
(正常者と神経症者)
心身症
正常
(クレッチマーと安永)
中心気質
偽神経性分裂病
気分変調症
気分循環症
自己愛
境界例
精神分裂病
気分障害
人格傾向
人格障害
気質と疾患
病態レベル
精神分裂病
分裂病質・分裂病型
境界人格構造
(境界例)
精神病的人格構造
(精神病)
(過剰適応) (失感情症)
心身症
チクロチミー
循環気質
循環病質
粘着気質
類てんかん病質(爆発・気分易変)
てんかん
分裂気質
分裂病質(類破瓜型)
分裂病
表 病態水準のいくつかの系列
躁うつ病
(福島, 1990, p.25)
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14

ひとことでいうと?
うつ病:感情障害という病気(笠原, 2009)
 アレキシサイミア:感情コントロールの欠陥
(Taylor, 1997)


アレキシサイミア、見た目の症状

「一見するとアレキシサイミアと判断された人は(注略)慢
性的に陰鬱な気分を感じていてめそめそ泣いたり、怒った
り怒り狂ったりする。しかしながら、集中的に質問してみる
と、彼らが自分自身の感情についてほとんどわかっておら
ず、たいていの場合、感情を記憶、空想、より高次の感情
あるいは特定の状況に結びつけることができないことがわ
かる。」(Taylor, 1997, p.32)
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15

事例A)24歳男性会社員 ★「アレキシサイミアと呼びうる
状態にある」 既往歴、心理的状態



面接場面での状態


仕事をやる気がしないということで、会社の健康管理室に紹介された。
精神身体疾患を呈しない。
感情がまったくといってよいほど語られず、生活史を聞いても情緒的
な交流ができていない
事例B)39歳男性会社員 ★アレキシサイミア

既往歴、心理的状態


自分の意に添わない転勤命令をきっかけに嘔吐、腹痛が頻発。身体
科を点々とする。同時にアルコール多飲
面接場面での状態

精神科的な面接をしても身体の症状に終始し、転勤をめぐる自分の
気持ちについては全く語ろうとしない。言葉を通して情緒的な交流が
できないでいる。
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16

事例C)31歳男性 ★アレキシサイミア

既往歴、心理的状態



感情制御についての状況



高いレベルの感情的苦痛を感じることが多く、また快感情を感じたことが
ない。
偏頭痛に悩まされる、過去に一二指腸潰瘍(古典的心身症)。大うつ病
初回面接において、具体的な感情を区別したり言い表したりすることが困
難。不安、悲しみ、抑うつの3つの区別ができない。
空想というものが完全に欠けており、生まれてこのかた、夢というものを見
た覚えが一度もないと述べる。幼児期の思い出はほとんどなく、何とか思
いだせた内容は、両親との結びつきが感情面で貧困であったことを想像
させる。
・NEO(神経症傾向、外向性、開放性)との関連:N高、E低、O低
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17

事例D)41歳男性 ☆アレキシサイミアではない

既往歴はなく、自らの人生に対しての問題意識から精神療法を求め
る。




感情制御についての状況


慢性的な悲哀感、人生に対して総じて否定的である。
自分自身を、皮肉屋で辛辣で内気な人間であると説明し、「暗黒の気分」
になったり怒りを爆発させたりすることがよくあると述べる。
思いやりの気持ちやその他の肯定的感情を感じたことは稀、妻は夫に明
るさや喜びがないことを嫌がっている。
平均的な想像力と自分自身の感情に気づく能力も持っていると自分では
評価している。
・NEO(神経症傾向、外向性、開放性)との関連:N高、E低、O不明


事例A)B):大野(1993)による
事例C)D):Tayler(1997), pp. 95-99による
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18
特定の疾患を示すのではなく、「傾向」、
「パーソナリティ特性」と捉えることが多い。
 ストレス対処能力との関連性、「自己防衛機
制」との関連性が指摘されている。

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19

抽象化能力の低下を引き起こす可能性



アレキシサイミアの思考様式について,Pilowsky(1997)
は“ストレスにより思考はより具体的となり,抽象的でなくな
る傾向がある”(p.141)
Krystal(1988)は認知機能に関して “アレキシサイミアを
有する患者は、情動や感情を言語化し記述することがで
きず、観念は内容に乏しく単調で、想像のプロセスは貧困
化している。操作的思考が、象徴的かつ想像的プロセス
を犠牲にして優勢となっている。アレキシサイミアを有する
者の連想は、欲動により決定されるというよりも外的刺激に
より活性化される。”(p.276)
しかし、成人のアレキシサイミアと抽象化能力の相関を
検討した先行研究はない。
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20

自己報告式のアレキシサイミア測定用尺度であるトロント・ア
レキシサイミア・スケール(TAS)が信頼性・妥当性が高いとさ
れる




最新版TAS-20
Factor-1 感情の同定困難、-2 感情の伝達困難 -3 外面思考
日本語版(国際医療福祉大学 小牧元による)あり。使用・発表に
関しては開発者の許可が必要
その他の測定法

BIQ(Beth Israel Hospital Psychosomatic Questionnaire)


MMPI Alexithymia Scale


Sifneosにより作成されたもので観察者の評定による質問紙(1973)
KleigerとKinsmanが作成した自己報告式尺度(1980)
SSPS(Shalling-Sifneos Personality Scale)

自己報告式尺度(1979)
など
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21

海外の非臨床群における報告
10.1%(Bogutyn, T.et al., 1999)
 16.3%(Todarello, O. et al., 1995)
 18.8%(Parker, 1989)


日本の非臨床群の報告
23.4%(一木, 2006)
 若い世代、日本人に高い傾向があるとされている


臨床群では、うつ病、摂食障害での比率が高
い(50%~)
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22
23

男子IT技術者を主な対象とした先行研究で報告されてい
ること(福井, 2003)

精神健康度に悪影響すること





抑うつ度と関連すること




量的負担感
職場の対人関係上のストレス
職務不適応感
納期に間に合わないこと
達成感のなさ、対人関係の困難、裁量度の低さ
能力不足、仕事の不適性、経済的不安、量的過重感
3割に精神医学的障害があるとの研究報告がある。(庄司,
1990)
IT技術者のストレスは高いと言われているが、他職種との
比較上一貫した知見は得られていない。
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24








IT業務の本質として、人材面で高いレベルの柔軟性と適応性を必要とする。
一人で行うものと、チーム(同じ作業場所あるいは、バーチャルに)で行う場合とがある。
分割された仕事は相互に関連を持つため、頻繁に担当者間の調整が必要である。
期限は厳密に定められる。
技術的革新や顧客からの要求などさまざまな要因により頻繁に変更が発生しても、欠
陥のない(稼働の際、バグがない状態)ことが求められる。
IT業務の3つの要素:①年中無休、②膨大な仕事量に加え、予定していない要求にも
応える必要がある、③細かく定められた厳しいスケジュール
技術的進歩への対応


米国記事(Human Resources Management 2007 Fall)より
IT業務の複雑性
管理者は常に最新技術の習得のほか、担当者(管理者よりも高い技術力をもつこともあ
る)の技術向上にも努力する必要がある。たとえば、管理者はメンターとして、担当者そ
れぞれの目標設定・目標達成のためにどんなトレーニングが必要かの意識づけをする。
IT部門の組織上の役割

企業組織において、IT部門が他部門の業務をIT技術により支援することについての真
価は認められていない。それにもかかわらず、ITはすべての組織的な機能を統合する
役割を持つ。管理者はIT技術者に能力開発の機会とモチベーションを与えつつ、IT
化の対象部門の統合を図ることを視野に入れている。
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25

ラザルスとフォークマンによる“心理的ストレスモデル”では、ストレ
ス反応は、“ストレッサーそのものではなく、ストレッサーに対する認
知的評価と対処によって決定される”としている。



「仕事上の解決」「個人的感情の解決」の2つの観点から日々の問
題解決に取り組む必要がある。
ラザルス(2004)が示すストレスに対処する資源



ストレッサーとは心理学用語で、日常的に使われている「ストレス」と同
義
「自己効力」「構成的に考える能力」「頑強性」「希望」「身に着けた機
知」「楽観性」「首尾一貫性」
“打たれ強い”パーソナリティかどうかにより、ストレスの有害な影響に
対抗する効果が得られる。
Lambert(2006)が提唱する現代社会のライフスタイルにおける心
の健康とレジリアンス


「努力すれば報われる」
「社会的ふれあい」
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26

ライフサイクル:身体的/社会的/心理的レベルでの鳥瞰(1/2)
年齢
0
身体的自己のレ
ベル
社会的自己のレ
ベル
心理的自己のレベ アイデンティティの
ル
発達・変容
誕生
心理的分離-個体化
学校入学
社会化
誕生
core-identityの形成
急速な身体的成長
10
第2次性徴の発見・初
潮
青年期のアイデンティティ
形成
20
成人としての身体の成
熟
妊娠・出産
生き方の模索
学校卒業
職業の選択
(青年期に獲得した
就職
結婚の選択
アイデンティティに
結婚
親となることの選択
もとづく自己拡大)
親になる
重要な他者へのコミットメ
ント
個としての自分とケア役
割を担う自分の葛藤
30
40
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27

ライフサイクル:身体的/社会的/心理的レベルでの鳥瞰(2/2)
40
身体の老化の兆し
中年期の危機
子どもの自立(子ども
の就職・結婚)
50
・自己の生き方の見直し
中年期のアイデンティティ
・夫・子ともとの関係の見
危機
直し
重要な他者との関係性
の変化
更年期・閉経
孫の誕生
身体の老化
老親の介護
親との関係の変化
定年退職
退職にともなう生活構
造・自己意識の変化
60
現役引退期のアイデン
ティティ危機
親の死
70
配偶者の死
人生と死の受容
要介護
80+
死
表「ライフサイクルを通して見た身体的・社会的・心理的自己の変化」 [岡本、2002a]
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28
上里(2005)

職場不適応(島津 2003)

産業心理学における定義



個人と職場環境との間に調査のある満足すべき関係が保持
されていない状態
臨床上はあいまいな概念
職場不適応について4つの特徴を指摘(小杉 1991)




1 広義のストレス反応である
2 抑うつ反応の前駆状態である
3 消化器・循環器・呼吸器などに自覚症状が認めら
れる
4 それらの症状が職場に限定して自覚される
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29

平成生まれの人が経験した社会現象
平成 西暦
元年
登校拒否
(小中学校)
1989
2 1990
3
4
5
6
7
1991
1992
1993
1994
1995
8
9
10
11
1996
1997
1998
1999
12
13
14
15
16
2000
2001
2002
2003
2004
17
18
19
20
2005
2006
2007
2008
21 2009
22 2010
ひきこもり
パラサイト
就職
景気
コミュニケーションメディア 平成
元年
ひきこもりと
いう用語が
一般化
2
携帯電話普及率 約1.7%
前年比15.6%up
用語が日経新聞に
前年比21.1%up
氷河期
消費税5%に、銀行破たん
リストラ加速
携帯普及率 37.4%
i-mode、ショートメール
不登校ピーク
迷惑メール対策
携帯普及率 67.9%
親と同居の壮年未婚者191万人
親と同居の壮年未婚者240万人
リーマンショック
親と同居の壮年未婚者295万人
(S55~アパシー)
携帯電話普及率 87.7%
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
超氷河期?
[データ出典]・登校拒否:文部科学省「理由別長期欠席児童生徒数]
・親と同居の壮年未婚者:総務省統計局労働力調査「親と同居の未婚者の最近の状況」
・携帯電話普及率:総務省総合通信基盤局「携帯電話・PHSの加入契約数の推移」
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3
4
5
6
7
30
31
感情を感じ取れない、自分と他人の感情も
 抽象化能力が低下

実務能力が低下、思わぬ仕事上のミス
 リーダーシップ、問題解決にも影響


心の声に気づかず、心の問題が放置される


例:本人がケロっとしているので、本人も周囲もう
つに気づかない
感情面で働きかけられても反応しない など
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32

身勝手な病にみえるが、本人は苦しい


山中(1990)の「内閉」の考え方が参考にならないか
従来型のメランコリー型うつとの比較から


思春期に経験すべきことができていないとしたら、思春期が
終わっていないと仮定したコミュニケーションが必要ではな
いか
若年層のパーソナリティ特徴



「自分では決められない」⇔「プライドは高い」
「孤独だと思われたくない」⇔「心の内面に入られるの
は怖い」
幼児期から、失敗した経験が少なくなっていることが
影響か
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33

臨床心理学としての介入法
リラクゼーション法
 グループ療法
 認知行動療法
 心理面接においてアレキシサイミアに配慮



→次ページの事例
感情認知に焦点をあてた臨床心理学的介入
自己イメージを持つことから
 Emotional intelligenceが注目されている

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34


20代男性
既往歴、心理的状態



職場不適応。両親の離婚話が持ち上がってから潰瘍性大
腸炎(全経腸重症型)、胃炎
心因反応(抑うつ状態)
ロールシャッハテスト結果
「対人緊張が強く、甘えることが苦手、不安・心細さ、無力感
に気づきにくいために身体症状でSOSを伝えてきている」な
どとセラピストはクライアントにフィードバックする。
 アレキシサイミアに配慮して、ストレスマネジメントを進めた結
果、良い方向へ

浅海(2005)より
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35

IT技術者Mr.Aの事例(当日資料配布、講演後
回収)


「以前より、長時間労働マシになった」という認識の見
直し。量的負荷の軽減に向けての努力
まずは「普段と違う」と気づくことから、そして問題を一
人で抱え込まない体制づくり

「風通しのよい会社」


身体的負荷の軽減に意識的に取り組む


Emotional intelligenceとの関連で、「社内にコミュニケーション
スペースを設けた結果、社内のぎすぎすした雰囲気がよくなり、
効果を上げた」という事例がある。
運動やリラクゼーション
働きがい、仕事の適性への配慮
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36

情報化社会におけるIT技術者の役割:抽象化の観点から

情報システム化の工程において膨大な量の情報を扱う。






新しい発想,解決法が求められる
情報の受け手の立場で考える
日本人の抽象化能力との関連から


近年の情報システムの規模は大規模化の傾向があり,膨大な量の情
報を収集・加工・表出/伝達するために抽象化能力が必要である。
抽象化能力の教育は不十分
米国式のITに対応できていない
情報を扱う産業であるIT産業界として必要なこととは
情報化社会


利便性⇔危険性
パラダイムの変化と人・社会への影響、「心身の健康」
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37

備考


IT技術者のストレス検討において、開発工程別の検
討や管理者・実務担当者の区別等を行った検討も重
要であるが、ここではIT技術者として一括している。
TAS-20を含む自記入式質問紙による測定法は、回
答者の主観的判断に依存し、評価に注意を要する。
そのため、アレキシサイミアかどうかという判断には専
門家による面接が必要である。(国際医療福祉大学小牧元
による、TAS-20[トロントアレキシサイミアスケール-20] 連載シリーズ
心療内科臨床で使われる心理テスト. 心療内科学会雑誌より)
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Reserved.
38
浅海 敬子(2005)
福井 里江(2003)
福西 勇夫(1992)
福島 章 (1990)
Hsing-Yi Tsai, Deborah Compeau(2007).
一木 仁美(2006)
池見 酉次郎(1993) 笠原嘉(2009)
小杉 正太郎、長田 久雄(1991)
Krystal, Henry(1988)
Lambert KG.(2006)
Lazarus Richard S. (1999)
守口 善也(2011)
大野 裕(1993)
Pilowsky I(1997)
庄司 正実(1990)
島津 明人(2003)
Taylor GJ, Bagby RM, Parker JDA(1997)
上里 一郎、 岡本 祐子(2005)
山中康裕(1990)
ストレス過程分析からストレスマネジメントをめざす多面的アプローチ.心理臨床学研究 23(2), 209-220, 2005-06
最先端情報技術産業に従事する技術開発者のストレス反応と関連要因 : 職業性ストレス簡易調査票を用いて福井 里江 , 原
谷 隆史 , 深澤 健二 , 中田 光紀 , 高橋 正也 , 藤岡 洋成 産業ストレス研究 10(4), 273-279, 2003-10-15
Alexithymiaの発症機序に関する研究(アレキシシミアをめぐって)心身医学 32(抄録), 12, 1992-05-01
精神障害・心身症の心理臨床 -臨床心理学大系. (1990) 金子書房
Hsing-Yi Tsai, Deborah Compeau(2007). Managing human resources in information technology: best practices of highperforming supervisors. Human Resource Management (Fall 2007) Wiley Periodicals, pp. 411-427
非臨床群におけるアレキシサイミア特性の空想の様相と感情体験 心理臨床学研究 24(1), 76-86, 2006-04
アレキシサイミアについて(特別発言)(アレキシサイミアをめぐって)(第33回日本心身医学会総会).心身医学,33(1), 86-88,
1993-01
うつ病臨床のエッセンス(2009) みすず書房
リハビリテーションと心理臨床―心理学的援助の実際とそのプロセス(1991/06)川島書店
Integration and self-healing: affect, trauma, alexithymia. Routledge(邦訳 佐野信也(2003) ヘンリー・クリスタル 感情調節
と自己愛:自己愛患者に見られる心的外傷,アレキシサイミア,心身症 自己愛の障害;診断的,臨床的,経験的意義 13章
(2003) 金剛出版
Rising rates of depression in today's society: consideration of the roles of effort-based rewards and enhanced resilience
in day-to-day functioning. Neurosci Biobehav Rev. 2006;30(4):497-510. Epub 2005 Oct 25.
Stress and emotion: A new synthesis. (1999)New York, US: Springer. 本明 寛 (監訳)野口 京子 (訳) (2004):ストレスと情動
の心理学―ナラティブ研究の視点から 実務教育出版
アレキシサイミアの脳画像研究(シンポジウム:neuroimagingの新展開 2010年 第51回日本心身医学会総会ならびに学術講演
会(仙台)(2011)
精神療法からみたアレキシサイミア概念の意義(アレキシサイミアをめぐって)(第33回日本心身医学会総会) 心身医学 33(1),
77-85, 1993-01-08
Abnormal illness behaviour. (1996) West Sussex, UK: Wiley
ソフトウエア技術者の精神健康 : I.心身愁訴,精神障害の頻度 庄司 正実 , 小田 晋 , 佐藤 親次 , 久保田 浩也 , 今井 保次
産業医学 32(2), 118-124, 1990-03-20
職場不適応と心理的ストレス (2003/09) 風間書房
Disorders of affect regulation : Alexithymia in medical and psychiatric illness.(1997) Cambridge: Cambridge University
Press. 福西 勇夫 (監訳)・秋本 倫子 (訳)(1998): アレキシサイミア――感情制御の障害と精神・身体疾患 星和書店
成人期の危機と心理臨床―壮年期に灯る危険信号とその援助 (シリーズこころとからだの処方箋) (2005/12) ゆまに書房
ニュータイプの神経症(1990) 山中康裕著作集 たましいの窓 児童・思春期の臨床〈1〉岩崎学術出版社
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