トランジスタ増幅回路の問題点 2つの問題 波形のひずみ 動作点の不安定さ 2 (1)波形のひずみ VBE I C 特性が曲がっているため、コレクタ電流の波形が動作点を中 心に上下対称にならず、ひずむ。 IC 3.2 2.0 1.2 VBE V 0 0 0.68 0.7 0.72 t 上図の場合、正の半波の振幅は、1.2mA 負の半波の振幅は、0.8mA コレクタ電流波形がひずんでいる。→出力電圧波形もひずむ。 3 6章から VBB の決め方(3) ①VBから I Cを求める (VBE I C特性から ) ②I Cから VOを求める (負荷線) IC mA ③出力電力波形を求める 0 t IC mA IC mA VBE V 0 VB V t 0 t VO V 4 (2)動作点の不安定さ VBE I C 特性は急に立ち上がっている。 したがって、バイアス電圧 VBB がわずかでも設定値からずれると 動作点が大きく変わってしまう。 IC 例えば、図の特性では、 VBB が0.7Vから0.01Vずれるだけで I C の動作点は0.5mAもずれる。 3.5 2.5 2.0 VBE I C 特性は温度によって変化する。 VBE V 0 0.7 1℃上昇すると、2mA左に寄る。 例えば、左図の例では、 2.0mAが3.5mAと大きく増加してしまう。 0.71 5 対策 エミッタに抵抗 RE を入れる RE を入れた場合の VB I C 特性を求める。 VBE I C 特性と式 VRE I E RE I C RE VB VBE VRE から を求める C B VB RE VRE 6 例題 5kΩ C B 12V 以下の表に値を記入せよ。 VB RE 1kΩ IC VBE VRE VRE IC VB mA 0.5 VBE 1.0 (0.7) 1.6 2.0 1.6 2.0 1.2 1.0 (0.69) (0.68) (0.67) (0.65) 0.5 1 2 3 7 VB I C 特性は、 (VBE I C 特性)+( REにおける電圧降下 ) IC IC IC mA mA mA (0.7) 2.0 = + 1.0 (0.67) (0.65) 0.5 0.5V VBE 0.5 1.0 2.0 VRE V9B エミッタ抵抗 RE の効果(1) VB I C 特性の傾きがゆるやか 湾曲が減少し、傾きが直線的。 VBB が少し変化しても、 IC VBE 動作点の変動が少ない。 VB 2.0 1.5 1.0 0.5 1 2 3 10 エミッタ抵抗 RE の効果(2) VB I C 特性の傾きがゆるやか 湾曲が減少し、傾きが直線的。 変動 IC 温度によって、 VBE I C 特性が変化しても、 動作点の変動が少ない。2.0 1.5 1.0 0.5 1 2 3 11 エミッタ抵抗 RE の効果(3) VB I C 特性の傾きがゆるやか 湾曲が減少し、傾きが直線的。 信号の歪も改善 IC 12 VB I C 特性を直線で近似 エミッタ抵抗の電圧降下が加わると、 直線で近似しても、特性に大きな誤差は生じない。 利点その2 動作点が計算で求められる hFE がばらついても、動作点が安定する IC IC mA mA 2.0 2.0 1.2 1.0 1.2 1.0 0.5 0.5 1 2 3 1 2 13 3 電流、電圧の計算 VBE を0.7Vで一定として扱う。 VBB 0.7 IE RE hFE IC IE IE 1 hFE C B VCC VB RE VRE 1 IB IE 1 hFE VO VCC I C RL 14 6章から 増幅回路の基本 I Cが流れ始めてから飽和 状態に達するまでの範 囲を使用 0 IC VCC 0.2 RL RL 1k VCC 0.2 RL C B IC IC VCC 0.2V 0.6 VB 15 6章の例 入力電圧 が 0.7Vの時 I E 2 mA 出力電圧は h I C FE I E I E 2m A 1 hFE 0.7Vの時、 VO 4V VO VCC I C RLより 0.72Vの時、 VO 2.8V 0.72Vの時 IE I E 3.2m A mA I C I E 3.2m A 3. 2 RL 1k IC VCC 6V VO 2. 0 VB 0.72V 0.7V VBE 16 電流、電圧の計算 VBE を0.7Vで一定として扱う。 VBB 0.7 IE RE hFE IC IE IE 1 hFE 1 IB IE 1 hFE VO VCC I C RL 17 hFE がばらついても動作点が安定 hFE が100→200に変動した場合 hFE 100の時 IE VBB 0.7 1m A RE hFE 200の時 IE VBB 0.7 1m A RE h hFE I E I E 1m A I C FE I E I E 1m A 1 hFE 1 hFE 1 1 IB I E 5A IB I E 10A 1 hFE 1 hFE IC VO VCC I C RL 4V VO VCC I C RL 4V hFEが 1より十分大きいなら I E , I C ,VO はほとんど変化しない 。 IC RL 8k IB VCC VBB 1.7V RE 1k IE 12V 18 VO RE の問題点 図の負荷線は、コレクタ電流 I C と出力電圧 VO との関係を示す。 I C が最大2.4mAまで流れるように見えるが、 実際は2mA以上流れない。 1.出力の動作範囲 2.増幅度 RL IC 5k VCC 2m A RL RE トランジスタが動作するためには、 VCE が0.2V以上必要。 IC VCC VB RE 1k 2.4 2.0 IC 12V VO 2.0 1.0 VO 12 1.0 1 2 3 VB 19 2章から トランジスタの動作原理(4) CE間にわずかの電圧をかける。 一部はベース層のホールと結合して I B となる。 CB間の空乏層に到達した電子は、CB 間の空乏層の内部電界にも助けられ、 コレクタ側に流れ込む。 一般のトランジスタの場合、エミッタか らの電子の約95%がコレクタ側へ流れ 込む。 CE間の電圧は、電子を集めることが 出来る程度の電圧。(0.2V) IC B C IB E 21 6章から 負荷線の求め方 点Aと点Bを求め、直線を引く。 IC VCC RL B Vo 点A: I C 0m A VO VCC 点B: VO 0V V I C CC RL VO VCC I C RLより A VO VCC 22 6章から VBB の決め方(3) ①VBから I Cを求める (VBE I C特性から ) ②I Cから VOを求める (負荷線) IC mA ③出力電力波形を求める 0 t IC mA IC mA VBE V 0 VB V t 0 t VO V 23 RE の問題点 図の負荷線は、コレクタ電流 I C と出力電圧 VO との関係を示す。 I C が最大2.4mAまで流れるように見えるが、 実際は2mA以上流れない。 1.出力の動作範囲 2.増幅度 RL IC 5k VCC 2m A RL RE トランジスタが動作するためには、 VCE が0.2V以上必要。 IC VCC VB RE 1k 2.4 2.0 IC 12V VO 2.0 1.0 VO 12 1.0 1 2 3 VB 24 1.出力の動作範囲(2) 2.増幅度 図の VO I C 特性に I C が流れることによって生じる RRE での電圧降下 VRE を示す特性を書き加える。 VRE I E RE RL 5k 1 hFE I C RE hFE I E I Cだから VRE I C RE VCC IC VRE I C VB RE 2.4 1k 12V VO 2.0 VO I C VO 12 25 1.出力の動作範囲(3) 2.増幅度 点Aは、 I C が1mA流れた時の出力電圧 VO の値。 点Bは、 I C が1mA流れた時の VRE の値。 矢印の長さは、 I C が1mA流れた時のコレクタ・エミッタ間電圧 VCE の値。 RL 5k VCE VO 1k VBB RE 1.7V IC VCE VRE IC VCC 12V VRE I C 2.4 2.0 VO I C 1.0 0.5 VO 1.0 1.5 2.0 B A 12 26 1.出力の動作範囲(4) 2.増幅度 トランジスタが動作するためには、コレクタ・エミッタ間電圧 VCE が 0.2V以上必要。 図の破線部分は、実際にはトランジスタは動作しない領域。 よって、トランジスタが動作できるのは、以下の通り。 I C : 0 ~ I C1 IC VRE I C 2.4 VRE : 0 ~ VE1 0.2V 2.0 VO : VO1 ~ VCC I C1 VCE VO VCC VO I C 1.0 VO VRE VE1 VO1 12 28 1.出力の動作範囲(5) 2.増幅度 RE の値が大きくなると、コレクタ電流 I C に対する電圧降下 が大きくなり、 VRE の傾きがゆるやかになる。 その結果、取り出せる出力電圧の振幅が小さくなってしまう。 IC 2.4 RE :大 2.0 I C1 1.0 VO ,VRE 29 1.出力の動作範囲 2.増幅度(1) IC RE を接続すると、同じ入力電圧でも、コレクタ電流の変化分が小さくなる。 コレクタ電流が小さくなると、出力電圧の変化も小さくなり、増幅度が減る。 エミッタ抵抗を大きくするほど、 VB I C 特性の傾きが緩やかになり、増幅度が 減る。 30 1.出力の動作範囲 2.増幅度(2) エミッタ抵抗にコンデンサを入れることで改善できる。 エミッタ抵抗に流れる信号成分は、エミッタ抵抗を通らず、コンデンサを通る。 信号電圧 vi は、 RE で電圧降下を起こすことなく、増幅度が改善される。 バイパスコンデンサという。 VCC vi VBB RE 31 エミッタ抵抗のまとめ 利点 バイアス電圧の変動に対して、安定に働く 温度の変動に対しても、安定に働く hFE がバラついても、安定に働く 回路動作が計算で求めることが出来る 欠点 動作範囲が狭くなる 増幅度が低下する(バイパスコンデンサで改善) 32 演習問題 図の回路において、7Vを中心に 4Vの振幅の出力を取り出す増幅回路を作れ。 V RC 2 k 4V vi VBB VCC VB VO 7 12V t 33 6章から VBB の決め方(3) ①VBから I Cを求める (VBE I C特性から ) ②I Cから VOを求める (負荷線) IC mA ③出力電力波形を求める 0 t IC mA IC mA VBE V 0 VB V t 0 t VO V 34 Step 1 負荷線を求め、出力電圧の波形を書き込み、負荷線上での動作範囲を求める。 IC I C やVOがAから Bまで変化 RC 2 k vi VO 3 7 VBB VCC VB VO 12V 11 t 35 Step 2 動作範囲を確保する VRE I C 特性を求める。 余裕を見て、 VCE の値を0.75Vとする。 この傾きから RE の値を求める。 IC 6 4.5 0.5 3 t 7 11 12 VO ,VRE 37 Step 3 が動作範囲で変化できるための入力電圧 VB を求 めるために、 VBE IC 特性を求める。 トランジスタの VBE I C 特性は、0.7Vで一定とする。 IC ヒント: VBE I C特性 VRE IC特性 VB I C特性 IC 6 4.5 2.5 VB 0.5 1.95 11 12 39 Step 4 I C の波形と VB I C 特性から VB の波形を求める。 IC 6 4.5 4.5 IC 2.5 0.5 VO 0.5 3 VB 7 11 12 t 41 練習問題1 学籍番号 名前 つぎの文章の の中に適することばを入れ・文章を完成しなさい。 V 図はトランジスタの基本増幅器ですが、この回路には、つぎのような問題 BE I C 点があります。 VBE IC (1) 特性が湾曲しているため、 が発生します。 (2) 特性の立ち上がりが急激であるため、 が不安 定になりがちです。 そこで、一般にはこれを解決するために,エミッタに抵抗を挿入しています。 (3)エミッタに抵抗を挿入することによって、いろいろな利点が生じますが、 同時に欠点も生じてきます。 エミッタに抵抗を挿入することによって生じる最大の欠点は, R が低下することです。 L vi VCC VBB 43 練習問題2 図の回路に VBB =2Vを加えたときの各部の電圧,電流を求め なさい。 (ただし、 hFE 100,VBE 0.7V とする。) (1)VRE IC RL ( 2) I E 5k IB (3) I C ( 4) I B (5)VO VCC 12V VO IE VBB VRE RE 1.3k 44 練習問題3 図の回路で,I C の動作点を1mAにしたい。 VBB をいくらにすればよいですか。 RL VCC 12V vi VO RE VBB 500 45 練習問題4 図の回路で,I C の動作点を1mAにしたい。 RE をいくらにすればよいですか。 RL 10k VCC vi VBB 12V VO RE 1.2V 46 練習問題5 つぎの問いに答えなさい。 (1) 図aの回路の VB I C 特性を図b中に、また VO I C 特性と VRE I C 特性を 図c中に完成しなさい。 (2)(1)で得た特性から,それぞれつぎの値を求めなさい。 ① 出力電圧 VO は VB によって,およそ何Vから何Vまで変化できますか。 ② 図aの回路で,出力電圧 VO の振幅を最大に取り出すためには VBB の値を何 〔Ⅴ〕にすればよいですか。 RL 10k VCC vi VBB 12V VB VO RE 2 k 47 1.2 IC (m A) 1.0 1.0 IC (m A) 0.8 0.8 0.6 0.6 0.4 0.4 0.2 0.2 0.7 1.0 2.0 3.0 VB (V ) 5 10 VO ,VRE (V ) 48
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