物流需要(1) 国際交通(物流システム) 平成22年11月16日 担当 村上 英樹 ⅽ 村上英樹 神戸大学経営学部 物流システム 1 Ⅰ トピックス 派生的需要(Derived demand) ピーク・オフピーク需要 需要の運賃弾力性と運賃負担力 GDPと物流需要 神戸大学経営学部 物流システム 2 派生的需要 基本的には、本源的需要(工業の発展、貿易量の増 加、流通業の発展)などが無い限り、物流需要は増 えない。 したがって、物流業自体の運賃変動は、競争的な環 境で無い限り、さほど物流需要に大きく影響しない。 しかし、代替的な物流モードあるいはルートがあれ ば、運賃変動は需要に大きく影響する。 例:本州~淡路島~四国へのルート。未だにやや安 価なたこフェリーの需要は存在。また、在来の国道 28号線があるため、淡路島を縦断する有料道路の 需要は伸び悩む。 神戸大学経営学部 物流システム 3 続き 一般的に、物流・交通の本源的需要は、発 地と仕向地との間の距離が長くなれば、 徐々に減少する。これに物理学の重力の 概念を当てはめ、重力モデル(Gravity model)として需要の特性を表すことがある。 Popi Popj Qij ( Distij ) 2 Popは人口、Distは距離。iとjはそれぞれ発地と仕向地を表す。 神戸大学経営学部 物流システム 4 ピーク・オフピーク需要 旅客を含め、交通需要は確率的である。予め用意し ておいたキャパシティが埋まることは、定期輸送の場 合まず無い。 ピーク・オフピーク需要は更なる問題をもたらす。 旅客なら通勤時間ラッシュ、曜日別ラッシュ、長期休 暇などに影響される季節需要量変動(正月休み、GW など)、物流なら衣料に影響する季節性など。全てを 輸送するだけのピーク対応をすればハードウエアを持 つと稼働率はオフの時に減少。 物流企業は、うまく機材などのハードウエアを回し、ま た子会社とのチャーター関係を利用することで対応。 神戸大学経営学部 物流システム 5 続き しかし、ターミナルはどう対応するのか?容量変更に かんして融通が利かない。 基本的には、ピーク時の利用者にオフピーク時に生じ る無駄を負担してもらう発想がある。 また、ピーク時には混雑が生じ、その結果社会的限界 費用が高くなる。それを根拠に料金を値上げし、需要 を閑散時間に振り分ける方法がある(ピークロードプラ イシング) 問い:高速道路が混雑しているとき、道路公団は料金 を払い戻すべきか? 神戸大学経営学部 物流システム 6 需要の運賃弾力性と 運賃負担力 物流需要は、既に述べたように、自己運賃、代替 的な投入要素の価格、および本源的需要の価格 の影響を受ける。 それらの価格の1%変化に対し、需要が何%変 化するかを表したものが需要の運賃弾力性であ る。 一般的に、この値(絶対値)が1より小さければ、 価格決定力を持つ企業は値上げのインセンティ ブを、また1より大きければ値下げのインセンティ ブを持つ。 神戸大学経営学部 物流システム 7 続き(1) 需要の自己価格弾力性をedで表すと、以 下のように定義される。 (q1 q0 ) / q0 需要量の%変化率 ed 価格の%変化率 ( p1 p0 ) / p0 q p0 log q p q0 log p 神戸大学経営学部 物流システム 8 続き(2) たとえば、需要曲線がQ=10-Pであるとする。P は自己運賃である。P=10-Qと置き換えると、 以下のように需要曲線を描くことができる。 P いま、便宜上費用をゼロとする。A点 とB点の需要の価格弾力性は、 A(Q,P)=(2,8) C Q P0 8 e 1 4 P Q0 2 2 1 B B(Q,P)=(8,2) ed 1 8 4 Q A d 神戸大学経営学部 物流システム 9 続き(3) A点で輸送を行う企業の利潤は2×8=16、 またB点で輸送を行う企業の利潤は8×2 =16。 この企業の利潤が最大となるのはC(5,5) で生産を行うときで、そのときの利潤は5 ×5=25である。またC点における需要の 運賃弾力性は、 5 C ed 1 1 5 神戸大学経営学部 物流システム 10 続き(4) つまり、AあるいはB点で輸送を行う企業が利潤を最 大化するには、C点を目指す必要がある。 これを運賃弾力性に置き換えて考える。C点の弾力 性は1で、それよりも弾力性が大きなAからは値下げ をしてCを目指し、それよりも弾力性が小さなBからは 値上げをしてCを目指すことになる。 交通の場合、たいてい弾力性は1よりも小さい→企 業に値下げをするインセンティブは無い。しかし競争 的な市場は輸送モードの代替性が大きいので、1以 上になることもある。 参考までに、旅客輸送の場合、観光客の運賃弾力性 は1以上になり、ビジネス客は1以下である。 神戸大学経営学部 物流システム 11 続き(4) 需要の交叉運賃弾力性:他の要素価格の 1%変化に対して、物流需要が何%変化 するか? いま、要素1を物流、要素2を他 の要素としたとき、交叉運賃弾力性は以下 のように表される。符号は正である。 q1 q1 q1 p2 log q1 e12 p2 p2 p2 q1 log p2 神戸大学経営学部 物流システム 12 続き(5) 運賃負担力と弾力性 物流需要は派生的需要であるから、仕向け地で 販売される商品の需要の価格弾力性の影響を 受ける。 また、物流の自己運賃弾力性は、運ばれる貨物 の価値と、その貨物が負担できる物流費用(つま り運賃+在庫費用)に依存する。例えば、価値の 低い貨物は高い運賃に耐えられず、発送が取り やめになるだろうし、高い価値を持つ貨物は高額 の運賃、例えば航空運賃に耐えられるであろう。 神戸大学経営学部 物流システム 13 続き(6) ベナサン&ウオルターズ(1969)の公式 物流の自己運賃弾力性: eT 物流費用:C 貨物価値:V 貨物の仕向地での価格弾力性: C eT V ちなみにC/Vを運賃負担力という。 神戸大学経営学部 物流システム 14 続き(7)簡単なシミュレーション 仕向地市場でブランドを確立し、高い独占力を持 つ高価値貨物(いわゆるブランド品、90年代のイ ンテルプロセッサ)が航空輸送を選好した場合。 運賃弾力性=(低い仕向地弾力性)×(高い費 用)/(高い価値)=小さい 玩具・ユニクロなどの衣料製品など(海運選好) 運賃弾力性=(高い仕向地弾力性)×(低費用) /(低い価値)=大きい 神戸大学経営学部 物流システム 15 GDPと物流需要 一般的に、運賃負担力の高い貨物は景気 先行型需要で、航空輸送が選好される。 貨物輸送量(10万ト ンキロ) 実質G D P(10億円) 25000 150000 145000 20000 140000 15000 135000 10000 130000 5000 貨物輸送量 実質G D P(10億円) 0 125000 120000 2000ⅠⅡ Ⅲ Ⅳ 01Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 02Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 03Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 図3-9 日本発着の国際貨物需要とG D P 石田著、村上他編より 神戸大学経営学部 物流システム ★航空貨物輸送量は GDPにほぼ連動する か、やや景気先行型に なる。 ★一般的に、物流需要 は戦争、疫病、あるい は事故の影響を受け にくく、旅客需要よりも 安定的である。 16 続き 一方で、海運もGDPの動きに連動する。しかし、 景気先行型ではない。 Kg当たりの貨物価値は海運のバルクカーゴが 1.8円、コンテナ貨物が9円であるのに対し、航空 貨物は135円である。 一般的に成熟産業、中間財、あるいは流通業は 海運選好、ファッション性の高い衣類、高い価値 の生鮮食品、90年代のパソコン、CPUなどは航 空輸送選好であった(今でもある程度継続)。 神戸大学経営学部 物流システム 17 ご静聴ありがとうございました。 次回は11月30日 神戸大学経営学部 物流システム 18
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