有害化学物質の環境汚染実態の解明と 分析技術の開発

岡山県の河川における
農薬類の環境実態調査
背景



農薬類147成分(GC/MS)の一斉分析技術の確立
魚のへい死事象時における原因究明等に活用
平常時の農薬類の環境実態や季節変動は不明
調査目的
• 農薬類の環境濃度レベルの把握と季節変動を明らかに
する。
• 検出された農薬の水生生物への影響を検討する。
• 魚のへい死事象が発生した場合の評価資料とする。
調査地点(9地点)
調査時期 平成20年4月~平成21年3月
調査頻度 月1回~2回
旭川
高梁川
笹ヶ瀬川
×
乙井手堰
新橋
×
酒津堰
笹ヶ瀬橋 ×
×
倉敷川
用水×
×
里見川
×
鴨方川合流点
吉井川
砂川
×
倉敷川橋
児島湖湖心
×
鴨越堰
分析フロー
試料1L
NaCl50g
抽出
ジクロロメタン100mL,50mL
ジクロロメタン層
水層
塩酸酸性(pH3)
抽出
ジクロロメタン100mL
ジクロロメタン層
脱水
脱水
濃縮
濃縮
1mL+IS0.1ug/mL
GC/MS
1mL+IS0.1ug/mL
GC/MS
22
日
27
日
6月
9日
6月
24
日
7月
7日
7月
22
日
8月
4日
8月
18
日
9月
2日
9月
16
日
10
月
7
11 日
月
12
12 日
月
17
日
1月
16
日
2月
4日
3月
11
日
5月
13
日
5月
4月
μg/L
22
5月 日
13
5月 日
27
日
6月
9
6月 日
24
日
7月
7
7月 日
22
日
8月
4
8月 日
18
日
9月
2
9月 日
16
10 日
月
11 7日
月
1
12 2日
月
17
1月 日
16
日
2月
4
3月 日
11
日
4月
種類数
検出農薬数及び濃度積算値の季節変動
検出農薬数
40
35
30
25
20
除草剤
殺虫剤
殺菌剤
15
10
5
0
検出濃度積算値
50
40
10
酒津堰
乙井手堰
鴨越堰
笹ヶ瀬橋
倉敷川橋
30
児島湖湖心
20
新橋
合流点
内尾用水
0
検出頻度の高い農薬
農薬名
種類
主な用途
ベンタゾン
イソプロチオラン
ブロモブチド
ピロキロン
フルトラニル
シメトリン
ジクロベニル
チオベンカルブ
フェノブカルブ
オキサジアゾン
除草剤
殺菌剤
除草剤
殺菌剤
殺菌剤
除草剤
除草剤
除草剤
殺虫剤
除草剤
稲・畑地
稲・果樹
稲(初期・中期)
稲(いもち病)
稲(紋枯病)
稲
水田・果樹園
稲・畑地
稲・野菜
稲
検出回数 /
131
94
87
82
81
66
60
60
57
57
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
最大値
最大値
調査数 検出年月
地点名
(μg/L)
日
148
H20.6.24
22
内尾用水
148
H20.6.24
0.67
新橋
148
H20.6.24
8.6
新橋
148
H20.9.2
2.0
新橋
148
H20.9.16
7.4
内尾用水
148
H20.7.7
0.91
内尾用水
148
H20.6.24
0.10
内尾用水
148
H20.5.13
0.83
新橋
148
H20.9.16
0.40
内尾用水
148
H20.6.9
0.33
笹ヶ瀬橋
主な農薬の季節変動
ピロキロン(殺菌剤)
酒津堰
酒津堰
25
乙井手堰
2.5
20
鴨越堰
2.0
鴨越堰
1.5
笹ヶ瀬橋
乙井手堰
倉敷川橋
10
児島湖湖心
5
新橋
0
合流点
内尾用水
倉敷川橋
1.0
児島湖湖心
0.5
新橋
0.0
合流点
4/
22
5/
22
6/
22
7/
22
8/
22
9/
2
10 2
/2
2
11
/2
12 2
/2
2
1/
22
2/
22
15
μg/L
笹ヶ瀬橋
4/
22
5/
22
6/
22
7/
22
8/
22
9/
2
10 2
/2
2
11
/2
12 2
/2
2
1/
22
2/
22
検出濃度( μg/L)
ベンタゾン(除草剤)
内尾用水
MEP(殺虫剤)
5.0
3.0
2.0
除草剤:6月~7月(水田散布)
乙井手堰
鴨越堰
笹ヶ瀬橋
倉敷川橋
児島湖湖心
1.0
新橋
0.0
合流点
4/
22
5/
22
6/
22
7/
22
8/
22
9/
2
10 2
/2
2
11
/2
12 2
/2
2
1/
22
2/
22
μg/L
4.0
酒津堰
内尾用水
殺虫剤:5月(稲の苗、果樹、野菜の防虫)
殺菌剤:8月下旬~9月上旬
(稲のいもち病等の防除)
主な農薬の季節変動
フェノブカルブ(殺虫剤)
ブロモブチド(除草剤)
0.5
10
検出濃度( μg/L)
6
4
2
0.1
4/
22
5/
22
6/
22
7/
22
8/
22
9/
22
10
/2
2
11
/2
2
12
/2
2
1/
22
2/
22
2/
22
1/
22
9/
22
10
/2
2
11
/2
2
12
/2
2
8/
22
7/
22
6/
22
0.0
5/
22
4/
22
0.3
0.2
0
シメトリン(除草剤)
フルトラニル(殺菌剤)
1.0
0.4
0.2
4/
22
5/
22
6/
22
7/
22
8/
22
9/
22
10
/2
2
11
/2
2
12
/2
2
1/
22
2/
22
0.0
酒津堰
乙井手堰
鴨越堰
笹ヶ瀬橋
倉敷川橋
児島湖湖心
新橋
合流点
内尾用水
7.0
6.0
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
4/
22
5/
22
6/
22
7/
22
8/
22
9/
22
10
/2
2
11
/2
2
12
/2
2
1/
22
2/
22
0.6
8.0
μg/L
0.8
μg/L
酒津堰
乙井手堰
鴨越堰
笹ヶ瀬橋
倉敷川橋
児島湖湖心
新橋
合流点
内尾用水
0.4
μg/L
酒津堰
乙井手堰
鴨越堰
笹ヶ瀬橋
倉敷川橋
児島湖湖心
新橋
合流点
内尾用水
8
酒津堰
乙井手堰
鴨越堰
笹ヶ瀬橋
倉敷川橋
児島湖湖心
新橋
合流点
内尾用水
水生生物への影響
評価対象の水生生物
藻類、ミジンコ、魚類
評価手法
Σ(
検出濃度
予測無影響濃度
予測無影響濃度
)
>
1
= 各生物に対する急性毒性値/1000
急性毒性値 藻類(50%成長阻害濃度、EC50)
ミジンコ(50%遊泳阻害濃度、EC50)
魚類(半数致死濃度、LC50)
水生生物への影響(高梁川)
1.0E+01
1.0E+00
1.0E-01
1.0E-02
6.0
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0E-03
1.0E-04
1.0E-05
1.0
0.0
積算濃度(μg/L)
1.0E+02
藻類
ミジンコ
魚類
積算濃度
4/
22
5/
13
5/
27
6/
9
6/
24
7/
7
7/
22
8/
4
8/
18
9/
2
9/
16
10
/
11 7
/1
12 2
/1
7
1/
16
2/
10
3/
11
Σ(検出濃度/予測無影響濃度)
1.0E+03
水生生物への影響(笹ヶ瀬川)
1.E+03
1.E+02
藻類
ミジンコ
魚類
積算濃度
1.E+01
1.E+00
1.E-01
1.E-02
1.E-03
1.E-04
1.E-05
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
積算濃度(μg/L)
1.E+04
4/
22
5/
13
5/
27
6/
9
6/
24
7/
7
7/
22
8/
4
8/
18
9/
2
9/
16
10
/
11 7
/1
12 2
/1
7
1/
16
2/
10
3/
11
Σ(検出濃度/予測無影響濃度)
倉敷川(倉敷川橋)におけるEC/PNEC
H2
0.
4
H2 .22
0.
5
H2 .13
0.
5.2
H2 7
0.
H2 6.9
0.
6.2
H2 4
0
H2 .7.7
0.
7.2
H2 2
0.
H2 8.4
0.
8.1
H2 8
0.
H2 9.2
0.
9
H2 .16
0.
1
H2 0.7
0
H2 .11.5
0.
12
.1
H2 7
1.
1
H2 .8
1.
H2 2.4
1.
3.1
1
Σ(検出濃度/予測無影響濃度)
1.E+04
1.E+03
1.E+02
藻類
ミジンコ
魚類
積算濃度
1.E+01
1.E+00
1.E-01
1.E-02
35
30
25
20
15
10
5
0
検出積算濃度(μg/L)
水生生物への影響(用水路)
内尾用水におけるEC/PNEC
45
40
ミジンコへの影響(最大濃度)
ミジンコ(最大検出濃度でのEC/PNEC)
1.E+04
1.E+02
1.E+01
1.E-03
一級河川
二級河川
内
尾
用
流
水
点
橋
合
湖
島
児
1.E-02
新
湖
川
敷
倉
ヶ
笹
心
橋
橋
瀬
堰
越
鴨
井
乙
1.E-01
手
津
堰
堰
1.E+00
酒
最大検出濃度/予測無影響濃度
1.E+03
MIPC(isoprocarb)
BPMC(fenobucarb)
Diazinon
IBP(iprobenfos)
NAC(carbaryl)
Bromobutide
MEP(fenitrothion
Thiobencarb
MPP(fenthion)
Fipronil
Methidathion
Flutolanil
Daimuron
cis-permethrin
trans-permethrin
Cafenstrole
CYAP(cyanophos)
tricyclazol
藻類への影響(最大濃度)
藻類(最大検出濃度でのEC/PNEC)
1.E+04
1.E+02
1.E+01
1.E-02
一級河川
二級河川
用
尾
内
合
流
水
点
橋
新
児
島
湖
湖
川
敷
倉
ヶ
笹
心
橋
橋
瀬
堰
越
鴨
井
乙
1.E-01
手
津
堰
堰
1.E+00
酒
最大検出濃度/予測無影響濃度
1.E+03
Simazine(CAT)
Simetryn
Bromobutide
Prometrin
MEP(fenitrothion
Thiobencarb
Pretilachlor
Daimuron
Mefenacet
Cafenstrole
Pentoxazone
農薬類の環境実態調査のまとめ
1)9調査地点から除草剤24種類、殺虫剤17種類、殺菌剤13種類、
分解生成物2種類が検出された。
2)検出された農薬類は、ほとんどが水田に施用されるものと推察
され、除草剤は6月、殺菌剤は9月、殺虫剤は6月と9月にピーク
が見られた。
3)殺虫剤のフェニトロチオン(殺虫剤)が笹ヶ瀬川の笹ヶ瀬橋から
要監視項目の指針値(0.003mg/L)を超過して検出された。
4)検出濃度と急性毒性値から水生生物への生態影響を検討した
ところ、藻類と甲殻類に対しては全地点で影響が懸念されるレベ
ルであり、魚類に対しては高梁川と旭川を除く7地点で影響が懸
念されるレベルであった。
5)急性毒性値を超過して検出された農薬は、甲殻類に対してフェ
ニトロチオン(殺虫剤)、藻類に対してカフェンストロール(除草
剤)とプレチラクロール(除草剤)であった。