集積回路 1.VLSIとは? 松澤 昭 2004年 9月 2004 9月 新大 集積回路 1 集積回路 1. VLSIとは? 2.VLSIの設計から製造まで 3. MOSトランジスタとCMOS論理回路 4.メモリー回路 5. アナログCMOS回路 6. 回路・レイアウト設計 7. 論理設計とテスト 8. アナログ・デジタル混載集積回路 9. スケーリング則と低消費電力化設計 10.システムLSIとVLSIの今後 2004 9月 新大 集積回路 2 まずはコンピュータを分解してみよう! 出力装置: CRT コンピュータ本体 出力装置: スピーカー 入力装置: キーボード 2004 9月 入力装置: マウス 新大 集積回路 3 ノートPC 出力装置: LCD 入力装置: タッチパッド 入力装置: キーボード 2004 9月 コンピュータ本体 新大 集積回路 4 マザーボード 2004 9月 新大 集積回路 5 マザーボードの上には… • 多数のLSI (Large-Scale Integrated Circuit:大規模集積回路,チップ) – プロセッサ(MPU:MicroProcessing Unit,マイクロプロ セッサ) – メモリ:SRAM(Static RAM),DRAM(Dynamic RAM), ROM,… – 各種ASIC(Application-Specific IC):チップセット,… – アナログ・デジタル混載LSI • その他の電子部品 2004 9月 新大 集積回路 6 パッケージ:Intel MMX Pentium 2004 9月 新大 集積回路 7 パッケージの中身は?: Pentium II Xeon Processor Extended Server Memory Architecture 0.25u P6 Micro-architecture; Dynamic Execution 400 MHz L2 Cache Bus, Large Caches N-Way Multiprocessing System Management Features 2004 9月 100 MHz Multi-transaction System Bus 新大 集積回路 8 パッケージの中身は?: Pentium III Xeon Processor 2004 9月 新大 集積回路 9 パッケージを開けると…: Intel Pentium IIIチップ • 0.18 micron 6-layer metal CMOS process technology • 28.1M transistors • 106 mm die size • 3-way superscalar out-oforder execution microarchitecture • 256K Level 2 Cache • 133 MHz IO bus 2004 9月 新大 集積回路 10 VLSI とは? • 大規模集積回路 Very Large Scale Integration 2 – 1cm 程度のシリコンチップ上に数十万から数千万トラ ンジスタを集積 – 種々の回路を集積 • デジタル論理回路 – CPU、演算回路、デジタル信号処理回路、インタフェース回路 • メモリ回路 – RAM、ROM、フラッシュメモリ • アナログ回路 – オペアンプ、A・D変換、D・A変換、PLL、入出力回路 • センサー – CCD、フォトダイオード、ガスセンサ 2004 9月 新大 集積回路 11 集積回路の分類 2004 9月 新大 集積回路 12 身の回りのLSI利用製品 • • • • • • • • • • 2004 9月 パソコン/ワークステーション/大型計算機/スーパーコンピュータ ファミコン/ゲーム機/玩具 ワープロ/コピー機/プリンタ/電卓/携帯情報機器 携帯電話/留守番電話/ファックス カメラ/ビデオ/オーディオ/テレビ 家電製品(洗濯機,炊飯器,掃除機...) 自動販売機/自動改札機/自動預金支払機/ロボット 自動車/電車/飛行機/船/スペースシャトル 役所,会社,駅,航空会社などのシステム,インターネット 電子マネー/電子投票/通信・エネルギーシステム 新大 集積回路 13 半導体開発の歴史 年 分類 1947 1956 トランジスタの発明(ショックレイ他) シリコントランジスタの開発 1958 1959 1968 集積回路の開発(キルビー) プレーナ型 ICの開発(ノイス) CM OSICの開発(RCA社) IC 1970 1971 1978 1978 1980 1KDRANの開発(Intel 社) 4ビットマイコン(i4004) 64KDRAMの開発 16 ビットマイコンの開発(i8086) 256KDR AMの開発 LSI 1984 1986 1985 1987 1MDRAMの開発 4MDRAMの開発 32 ビットマイコンの開発(i386) 16MDR AMの開発 VLSI 1990 1993 64MDR AMの開発 256MDRAMの開発 ULSI 2000頃 2004 9月 開発の歴史 トランジスタ システム LSI 4GDRAMの開発 新大 集積回路 14 微細加工技術の進歩 .6µ .35µ .25µ .18µ .13µ .1µ Line Width Shrinks 2004 9月 新大 集積回路 15 LSI技術の黄金則:スケーリング則 スケーリング則はLSIの黄金則である L W tox Scaling Device/Circuit parameter Scaling Factor Device dimensions L, W, Tox 1/S Doping concentration S Voltage 1/S Field 1 Current 1/S Gate Delay 1/S Power dissipation/device 1/S2 2004 9月 S 2 動作電圧も1/Sにする 微細化・低電圧化により、 ・高密度化(低コスト) ・高速化 ・低消費電力 が同時に達成される 新大 集積回路 16 最初の集積回路 最初の集積回路はトランジスタ4個程度を集積した簡単なものであった。 Gordon E. Moore, ISSCC 2003. 2004 9月 新大 集積回路 17 集積度の推移 ・チップに集積されるトランジスタは数億個レベルになった ・30年間で6桁上昇した 年率60%アップ, 3年で4倍 Gordon E. Moore, ISSCC 2003. 2004 9月 新大 集積回路 18 トランジスタコストの推移 ・トランジスタコストは30年間で6桁減少した。 Gordon E. Moore, ISSCC 2003. 2004 9月 新大 集積回路 19 ゲート集積度ロードマップ 微細化によりゲート密度が確実に向上 1000 2入力NAND換算の ゲート集積密度 300 ƒ [ ƒ Q g W Ï “x @ [kG/ mm2] ‰ ¼ º @ ‚ – § “x ¼‰ º @ ‚ ‘¬ N Ts Ti To H F 100 30 10 3 1 0.1 0.3 1.0 vƒ ƒ ƒ Zƒ X ¢ ‘ã @[ƒ Ê ‚ ] 2004 9月 1-1-7 新大 集積回路 20 動作速度の向上 微細化によりプロセッサの動作速度が向上 Operating frequency 21264 IBM 1GHz Merced High-end 700MHz 21264 21164 500MHz 400MHz 300MHz US-3 PC P7 R14000 P6MMX2 PPC604e US-2 R12000 P6 P6 21164 PPC750 Embedded R4400 Pentium MMX R10000 R10000 SA110 P6 V830R R5000 SH4 US SA110 V832 R4300 21164 NEC(研究) 200MHz 21064 R4400 Pentium 100MHz V830 R4300 SH3 R4200 SH3 SuuperSparc R3900 R3000 V810 SH2 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 (CY) Year 2004 9月 新大 集積回路 21 ゲート消費電力ロードマップ ゲート当たりの消費電力は現在までは確実に減少 10 Á ”ï “d Í— @[ƒ Ê W/ MHz/ G] 3 2入力NAND換算の ゲート消費電力 1 0.3 0.1 W • € (VDD½¹ ° Øݸ Þ) ’á Ø° ¸ (‘O ¢ ‘ã VDD) ’á Ø° ¸ (VDD,V‚”ˆÛ Ž ) 0.03 0.01 0.1 2004 9月 0.3 vƒ ƒ ƒ Zƒ X ¢ ‘ã @Lg @[ƒ Ê ‚ ] 1-1-8 新大 集積回路 1.0 22 現在のSoC用トランジスタ 現在のSoCの量産プロセスである0.13umルールのトランジスタ 原子レベルの制御が求められる。 CoSi2 SiN ゲート 格 子 7 個 に 相 当 2nm ゲート酸化膜 NSG SiN Oxide 0.1μm 5000倍 拡大 1.0nm トランジスタの断面 2004 9月 Si 基板 新大 集積回路 ゲート絶縁膜 23 現在の配線 現在はAlからCuに配線材料が変化している。 民生用SoCでも配線層数は6層以上が多く、配線間は柱のようなスタックトビアで接続されている。 2004 9月 新大 集積回路 24 超微細MOSトランジスタ ゲート長 6nmのMOSトランジスタも試作されているが、、、、 2004 9月 新大 集積回路 25 消費電力の危機 プロセッサーの消費電力は100Wに達し、限界に直面している。 しかもリーク電流が急速な伸びを示している。 2004 9月 Gordon E. Moore, ISSCC 2003. 新大 集積回路 26 現在のVLSI, SoCの位置付け • 現在の殆どの電子機器は1個もしくは数個のVLSI, SoCで実現される。 • 従来のような単機能のデバイス集積から、アナログ やRFを含んだシステム集積が可能となった。 • 微細化により集積度、動作速度が向上し、単位回路 あたりの消費電力、コストが減少した。 • VLSIを理解することが現在の電子システム理解に とって最も重要である。 2004 9月 新大 集積回路 27 VLSIの技術体系 VLSIは多くの分野の技術を必要とする 2004 9月 システム技術 情報処理技術 回路技術 テスト・評価技術 デバイス技術 EDA技術 プロセス技術 実装技術 新大 集積回路 28 Intel MPUの歴史 (http://www.intel.com/intel/museum/25anniv/hof/hof_main.htm) • 4004 (1971年) – – – – – 2004 9月 動作周波数:108KHz バス巾:4ビット プロセス技術:10um トランジスタ数:2300 メモリ:640バイト 新大 集積回路 29 Intel MPUの歴史 (http://www.intel.com/intel/museum/25anniv/hof/hof_main.htm) • Pentium II (1997年) – 動作周波数:233~300MHz – バス巾:64ビット – プロセス技術:0.35um – トランジスタ数:750万 – メモリ:64Tバイト • Pentium II (1998年) – 動作周波数:450MHz – プロセス技術:0.25um – トランジスタ数:750万 2004 9月 新大 集積回路 30 Intel MPUの歴史 (http://www.intel.com/intel/museum/25anniv/hof/hof_main.htm) • Pentium III (1999年) – 動作周波数:450~ 600MHz – プロセス技術:0.25um – トランジスタ数:950万 • Pentium III (2000年) – 動作周波数:500MHz ~1GHz – プロセス技術:0.18um – トランジスタ数:2800万 2004 9月 新大 集積回路 31 プロセス技術の今後の進歩 2004 9月 新大 集積回路 32 集積度の推移とシステムLSIの誕生 0.8μm 1B ト ラ ン 100M ジ ス タ 数 10M 0.5μm 0.35μm 0.25μm 0.13μm 0.18μm 汎用DRAM ムーアの法則 256MB 「半導体の性能と集積は 18ヶ月で2倍になる」 混載DRAM 256MB システムLSI 64MB 64MB 16MB 論理LSI(ASIC) MPU 4MB 1M 88 90 92 94 96 98 00 02 04 年 出典:電気四学会 2004 9月 新大 集積回路 33 超高速メディアプロセッサー型SoC メディアプロセッサー+マイクロプロセッサーによるSoCを用いてデジタルHDTV などの超高速画像処理ができる。 Front End HDD Flash SDRAM Tuner Tuner RDRAM D-VHS IEEE1394 DVC HDD AFE IC Card 2004 9月 新大 集積回路 0.13um CMOS, 6Cu 35M Trs. CLK: 400MHz 34 情報化革命 2000年代 社会や人類文明を変える道具 社会基盤 行政:行政サービスの基盤(情報流通,徴税,許認可,認証) 経済:電子商取引(紙幣の代替,信用の創造) 司法:訴訟体制(集団訴訟,国際訴訟),新しい法体系 通信:モバイル化 交通/エネルギ/都市基盤 新しい産業形態 ネットビジネス(.com) マスコミ,放送産業,情報産業 新しいライフスタイルと社会構造 価値観の転換,新しい社会階層 2004 9月 新大 集積回路 35 半導体売り上げの推移 ・世界の半導体売り上げは76年から94年まで順調に伸び、20兆円規模に成長した。 Gordon E. Moore, ISSCC 2003. 2004 9月 新大 集積回路 36 半導体の市場規模 10億ドル 400 3.6 350 41.74 29.14 31.77 8.09 36.82 18.92 9.62 13.92 18.89 14.1 3.96 -8.44 -8.61 300 前年比(%) 2000/5の予測 -13.5 273 239 250 204 200 42 144 150 102 100 77 50 51 55 60 15 10 14 7 10 15 8 11 18 11 25 21 19 20 0 14 24 20 34 19 29 28 47 132 137 126 28 29 29 43 46 41 30 28 30 40 34 32 29 26 149 32 201 177 64 50 33 米 州 77 69 アジア・ パシフィック 57 47 51 43 50 47 43 49 37 61 54 45 40 欧 州 60 70 日 本 57 65 年 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 ← 予 測 → 出典: WSTS(World Semiconductor Trade Statistics) 2001/5 2004 9月 新大 集積回路 1章 37 電子産業と半導体産業の位置付け ・日本の電子産業は全産業分野においてGDPトップの産業である。 ・半導体産業はいまだに高い成長率を有している。 2004 9月 新大 集積回路 38 半導体の市場シェア % 50 SRC IMEC 40 米 州 SEMATECH STARC,Selete,ASET 日 本 米 州 30 アジア・ パシフィック 欧 州 日 本 20 欧 州 10 アジア・パシフィック 競争力は 製造技術から 製品技術へ 0 '82 '83 '84 '85 '86 '87 '88 '89 '90 '91 '92 '93 '94 '95 '96 '97 '98 '99 '00 '01 '02 '03 '04 年 ← 予 測 → 出典: WSTS(World Semiconductor Trade Statistics) 2001/5 SRC:Semiconductor Research Corporation STARC:Semiconductor Technology Academic Research Center IMEC:Interuniversity MicroElectronics Center Selete:Semiconductor Leading Edge Technologies SEMATECH:Semiconductor Manufacturing Technology ASET:Association of Super-Advanced Electronics Technologies 2004 9月 新大 集積回路 1章 39 情報技術と社会 社会システム *政治,経済,文化 *社会基盤,交通/通信システム *市民生活,商工業,農業 情報ネット ワーク技術 集積回路 技術 ソフトウェア 技術 基 盤 情 報 技 術 2004 9月 新大 集積回路 40 Wafer, Chip and Transistor • 8インチ・ウェーハー • MOSトランジスタ チップ 2004 9月 新大 集積回路 41 CMOSの製造プロセス p well n well n MOS p MOS シリコン基板 3.拡散層の形成 1.ウエルの生成 Poly silicon SiO2 2.ポリシリコンゲート生成 2004 9月 新大 集積回路 4.金属配線層の形成 42 LSIの製造手順 直径 5 or 8inch(200mm) マスク 輪切り 厚さ約0.5mm(500μm) シリコン 単結晶 フォトリソグラフィ 等のプロセス 鏡面ウエハ カット 完成ウエハ 完成LSI 2004 9月 新大 集積回路 2章 43 VLSI設計フロー 機能設計 論理合成 所望の動作を実現する為の HDLを論理合成ソフト LSIの機能を機能図又は により論理図に変換 HDLで記述し検証 論理設計 マスク設計 プロセス 論理が正しいことを 論理図をもとに標準セル シミュレーションで ROM/RAM等の部品を 確認 配置・配線 テスト 出来上がったチップの 動作の検証 タ イ ミン グ図 ck (1 k H z) k eyck (2 5 H z) r e s e t_ sw res 0 res 1 re s 機能図によるLSIの機能設計 module KeyScan(CLOCK,RESET,SIN,SCAN,VAL) input CLOCK,RESET input [3:0] SIN; output [3:0] SCAN,VAL; reg clk,rst; 論理図と論理シミュレーション 自動配置配 線 VDD always @(posedge clk or psedge rst) begin if(rst) r_scan <= 4'd0; else case(Init) 1'b1:r_scan <= 4'd8; // Cobstant: r_scan[3:0] 1'b0: case( Scanning ) 1'b1:r_scan <= { r_scan[3] , r_scan[2] , r_scan [1] } 1'b0:r_scan <= r_scan; default: r_scan <= 4'bx; endcase default: r_scan <= 4'bx; endcase end ハードウェア記述言語(HDL) によるLSIの機能設計 2004 9月 レチクル(ガラス原板) VSS MN3456 標準セル 1チップ自動レイアウト 新大 集積回路 44 システムLSIとは 1章 2004 9月 出典:特許庁 新大 集積回路 45 システムLSIを支える技術 •設計の自動化(EDA) 設計技術 •設計資産の活用(IP) •検証技術 システムLSI •微細加工技術 プロセス技術 •多層配線技術 •混載技術 •実装技術 1章 2004 9月 新大 集積回路 46 システムLSIの構成 ソフトウェア (プログラム/データ) システム LSI イメージ センサー アナログ回路 2004 9月 ROM プロセッサ 新大 集積回路 データ RAM 通信インタ フェース回路 47 DVD用システムLSI DVDのような複雑なシステムもワンチップSoCで全システムが集積される。 光ディスク 光ヘッド 第1世代 16M SDRAM 赤色 レ-ザ ヘッド アンプ ドライバ アナログ フロント エンド プリ アンプ サ-ボ DSP サ-ボDSP 2004 9月 第3世代 受光素子 赤色レ-ザ ユニット リ-ド チャネル 第2世代 4M DRAM ECC ワンチップ 復調 訂正 CD DEM シスコン MCU AV ワンチップ MPEG2 ビデオ コピ- ガ-ド 第4世代 ビデオ出力 AC-3出力 AC-3 オ-ディオ ステレオ出力 操作・表示 シスコンMCU 新大 集積回路 48 アナ・デジ混載SoC:DVDの完全ワンチップ化 高性能アナログを含むDVDの全機能を0.13um技術を用いてワンチップに集積した。 0.13um, Cu 6Layer, 24MTr Okamoto, et al., ISSCC 2003 2004 9月 新大 集積回路 49 半導体産業とシステムLSI システムLSIは半導体の主力製品となる. 500 売り上げ10億ドル 400 300 半導体 全体 200 システムLSI 100 0 '96 '98 '00 '02 '04 年 半導体市場に占めるシステムLSIの売り上げの予測 (出典,半導体産業研究所) 2004 9月 新大 集積回路 50
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