平成24年度第5回 全国商業教育指導者研修会 福島県立白河実業高等学校 教諭 車田 浩一 研修会日程 ・8月6日(月) 「理事長講話」 全商協会理事長 本多吉則 先生 文部科学省講話 文部科学省教科調査官 西村修一 先生 各県情報交換 宮城・千葉・岡山・香川県参加者の発表 ・8月7日(火) 「環境講話」 アサヒビール㈱社会環境部 高橋 透 先生 「企業講話」 法政大学大学院教授 坂本光司 先生 「ワークショップ」(本県および本校商業教育の課題と改善策) ・8月8日(水) 「経済関係講話」 帝京大学経済学部教授 石毛 宏 先生 「金融関係講話」 野村証券㈱ 池上浩一 先生 東京証券取引所・日本銀行本店・貨幣博物館 見学 ・8月9日(木) 「大阪市における高大接続教育」 関西大学 木口誠一 先生 「簿記会計研修」 一橋大学大学院教授 佐々木隆志 先生 「教育関係法規」 文部科学省 山口真和 先生 ・8月10日(金) 「情報関係研修」 経済産業省 三又裕生 先生 「ワークショップ」(商業教育の推進取り組み案完成) 理事長講話 ○日本の高校教育の現状について ・ 商業教育はキャリア教育を前提として行っている ・ 普通高校でキャリア教育をしてこなかったのが問題 ・ 高校進学率の上昇により生徒が多様化している 普通科で学ぶ生徒の割合は30年来不変であるが、商業 科で学ぶ生徒の割合は大幅に減少し、H22では6.6%となっ ている ・ 日本と韓国では、専門高校で学ぶ生徒をワンランク下に見 る普通科偏重の考え方がある ・ 18歳人口120万人のうち約半数(60万人)が大学進学し、そ の半数(30万人)は勉強しなくても大学に進学できる状況にな なっている ○商業高校の現在 ・ 役に立たない教育は無意味であり、卒業後の進路を見据え た実学を教える必要がある ・ 文部科学省ではスペシャリストの養成と言っているが、すべ ての生徒には無理がある ・ 簿記の資格には限界があるという事を生徒に教えるべきであ る → 実社会ですぐに役立つわけではない ・ 基礎学力の低下が心配される。商業科目の学力が下がった とは思わないが、高校生として当然持っていなければならな い力(英・数・国)を身に付けさせなければ、就職試験で普通 科の生徒に負けてしまう ○日本経済の現状と今後への展望 ・ 日本国民は将来に対する明るい展望を持っていない。この事 に対し大変危惧している ・ 日本企業は大きな成長の可能性を秘めている ○今、求められている人材 ・ 国内経済の発展に寄与 ・ アジア諸国の経済発展に寄与 ↓ ビジネスには3つの言語が必要 会計言語(Accounting) コンピュータ言語(Computer) 英語(English) ※大分県では 「ACEを目指せ」と中学生にアピール 世界3大言語の履修を通じて、資格取得だけでなく、創 造力・指導力を身に付けられる人材(リーダー)を育成 ○教科「商業」に求められていること ・ 商業高校出身者が地元に残り(地元で就職)、地元の経済発 展に寄与することが重要である ・ 商業は実社会の学問であり、その基礎・基本を大切にする 実社会で行われいることを生徒に教えていく必要がある ・ 商業高校を卒業して大学に進学した生徒は専門知識を持っ ており、他学科出身者よりも優れているということを世間に知 らせる必要がある ・ 現在企業内研修は少なくなっており、キャリアアップは非常に 難しくなってきている ↓ 日本ではキャリアアップのシステムが脆弱であるので。何と かしなければならない 文部科学省講話 ○学習指導要領の基本的な考え方 生徒の言語活動を充実すること ↓ コミュニケーション能力を育成する上での実習を通した指導 を展開、また、具体的な事例を題材とすることで、ビジネスの 諸活動に目を向けさせることが可能となる ○教科「商業科」の目標 単に知識や技術を習得させることにとどまらない指導 ・ビジネスの場面を想定した指導 ・具体的な事例を取り上げ、考察や検討を行い、経済社会や 実務に目を向けさせる指導 ・実習を通した指導(ビジネスマナー・コミュニケーション能力 の向上) ・創造的な活動を行わせる指導 ・グループなどでの活動を通した実践的な力や協調性を育む 指導 ↓ 実学の視点に立って様々な指導を取り入れる事が必要不可欠 ○高等学校卒業生に対する産業界からのニーズ 業種、職種、企業により様々であるが、一言で言うと 「 働く力」である 社会に出ると給料をもらって仕事をする。つまり「プロ」になる。 商業を学んだ生徒を採用しようと思われる力を身に付けさせ ることが重要 ・知識や技術は、ビジネスで使えるもの。つまり、実務の経済 社会とむすびついたものでないとならない ○新学習指導要領の円滑な実施 ・ 育成する人材、育成する力の明確化 → 学校全体で取り組むのは当然であり、商業高校での共 通教科のあり方を語る必要がある。 ・ 具体的な指導内容の検討および指導方法の工夫改善 → 1時間1時間の授業で勝負 ○地域をフィールドとした実践的活動 ・ 「質の向上」「本物志向」を追求しさらなる発展 ・ 教室の中での模擬取引にとどまらず、地域をフィールドとした 実践的な活動へと発展してもらいたい 模擬会社経営・空き店舗経営・販売実習・商品開発等 ・指導のポイント △創造的な活動を行わせる △グループなどでの活動を通した実践的な力や協調性を育む △マナーやコミュニケーション能力を向上させる実習を通した指 導 ○インターシップについて ▼どのような人材、どのような力を育成するのか ▼一発の打ち上げ花火的な活動になっていないか ▼単なる仕事体験になっていないか ▼高校生だからという産業界の配慮と妥協に甘えていないか 仕事の厳しさを体験させることができているか ▼他の教育活動と連携しているか 実践的な活動に収束するように計画する ▼先生方が敷いたレールの上を走っているのではないか ▼生徒の活動になっているか(先生の活動になっていないか) ▼あえて失敗を体験させ、たくましさを育てる ▼創造的な能力、実践的な態度、マネージメント能力、プロ デュース能力、行動力を育てる ▼商業の生徒は「頑張っている」の言葉に満足することなく、「す ごい」と言われるようにする ○座学 ・ 具体的な事例を取り上げた考察・討論を行わせる指導 ・ 経済社会や実務に目を向けさせる指導 ・ ビジネスの場面を想定した指導 ・ グループ等での活動を通した実践的な力や協調性を育む 指導 △指導のポイント ・ 教科書だけでの指導の限界 ・ ケース教材の開発 ・ ディスカッション、ディベート等の指導方法の工夫改善 ↓ 授業を大切にして、1時間1時間の授業で勝負する ○検定試験について ・ 検定試験に合格していても、簿記や会計の基本がわかって いないせいとがいる(大学の指摘) ・ 検定試験は生徒の目標に成り得るが、あくまでも手段である ・ 簿記の授業では、検定試験に合格できる人材を育てている わけではない ・ 地域産業をはじめ経済社会の健全で持続的な発展を担う職 業人を育成する ・ 検定試験に出題されない内容が「おまけ化」していないか ・ 検定試験がなくなったら授業ができなくなる先生がいるので はないか ・ 商業教育の魅力は、資格取得だけにあるのではない ・ 検定試験向けの指導に偏ることなく、実学という商業教育の 本質的なところで差別化を図る ・ 商業は資格取得が前面にですぎてはいないか(農業・工業に はない) 企業講話 ○坂本教授について ・ 中小企業についての研究が専門で、年間250社を訪問(今 まで延べ6,600社の企業訪問を行ってきた) ・ 企業経営とは業績を高めたり、利益をあげる活動でなく、人 を幸せにする、人の幸せを祈ることである ・ 企業にとって一番大事なのは社員とその家族を幸せにするこ と、そのことがお客さんを幸せにすることになる ○はじめに ・ 今の経済の問題は景気や会社の中にあるのでは、というの はいい訳ではないか? →明日以降の仕事をしている社員が50%以上いる会社に は未来が想像できるが、そのような社員が10%以下の企業 には未来がない ・ 経費には今日の為の経費、未来経費(試験研究費)があるが、 未来経費をかけない企業はダメである ・ 赤字を出す会社は社会悪である。赤字を出し続ければ2・3 年後にリストラを行う。リストラする会社は誰かにぎ犠牲を強 いることになるので、そのような会社を認めてはいけない。 ・ 日本の未来はハイテク産業(IT産業)ではなく、ローテク産業 (生活に密着した産業)にかかっている ○2:6:2から2:2:6 ・ 最初の2:好況でも不況でも市場で評価を受けている会社 「景気創造型企業、景気超越型企業」 ・ 真ん中の6:好況の時には評価を受けるが、不景気になると 評価を受けない会社「景気連動型企業、景気期待型企業」 ・ 最後の2:好況でも不況でも市場の評価を受けない会社 「構造的不況企業」 ○元気のない企業の言い訳は誤解・錯覚・甘え △景気・政策 ・ 景気は政策によるものではなく、自らの力で作るもの、与えら れるものではない ・ 企業経営とは業績を高める活動でなく、人を幸せにすること・ 人の幸せを祈ることである △業種 ・ 経営悪化の原因を業種のせいにする人に対して、業種を選 択したのはあなたの意思である。いやなら業種を変えればよ い ・ どんな業種でも立派な会社はある ・ 価格競争力を武器にした会社はつぶれる △規模 ・ 規模が小さいからと理由にしない。規模を大きくすればよい ・ どんな小さな会社でも立派な会社はたくさんある ・ 正しい経営を貫く ・ 嘘をつかない経営(リストラしない) ・ NO1ではなくオンリーワン △ロケーション ・ どんな場所にでも立派な会社はある ・ 場所は決められていない、自由に場所は選べる 私たちができない、やれない正しいことをしている人がいれ ばその人たちを支援する。その人に降りかかってくる火の粉 を振り払ってあげる。私たちは決して傍観者であってはなら ない。 ○5人の人を大切にする経営学 △ダイアログ・イン・ザ・ダークジャパン(渋谷) ・ 視覚障害者が働いている会社 ・ 障害者で生まれたいと思った人はいない、産みたい母親もい ない ・ 障がい者の希望は働きたい→障がい者の働く喜びを創造す る ・ 生まれて良かった(今まではお礼しか言ったことがない。生き ていて喜びを感じれなかった。働くことによってお礼を言われ ることがどんなに嬉しい事か) ○真に強い会社を増やす方策 ・ 日本で一番大切にしたい会社大賞 (国の再生のために会社を誉める必要がある) ・ 障がい者雇用のない企業に公共事業を行わせない ・ 真の強者は弱者に優しい。企業経営の本質は人を幸せにす る会社にすること 大阪市における高大接続教育 大阪ビジネスフロンティア高等学校(OBF) ◎7年一貫教育が目指すもの ○目的 ・ビジネス専門職(プロ)の育成 ・これからの商業高校は、知識基盤社会の進展に対応して、 より高度な専門性を備えた職業人を育成することを視野にい れなければならない ○目指す人物像 ・総務部門、財務部門など各部門のリーダーや全社的プロ ジェクトのリーダーとなる「企業組織におけるリーダー」、「企 業家」、公認会計士など「資格を伴う専門職」、高校・大学教 員等の「教育職」 ↓ 専門性という核を持ちつつ、大学教育を受けるための基礎学 力を有する生徒を育成する必要 ◎7年一貫教育の基本構造 ○ステップ1~2(高校1~2年) ・言語力の育成(国語・英語) ・バランスの良い資格取得 「英語」・「情報」・「会計」 世界標準の3つの言語(ビジネスマンに必要な知識・技術) → よほどの専門知識がない限り上記の知識をバランスよ く持っていることが重要 → 中学生とその保護者に対する説明会では、この3つの 能力を身に付けさせることを強調 (電卓・ワープロ検定はこの時期には受験させない。3年生 になった時に進路に応じて受験を認める) ○ステップ3(高校3年生) ・夢を実現するために、一人ひとりの進路希望に応じた「選択 科目」ビジネスのテーマ別学習 ○ステップ4~7(大学1年~4年生) ・ビジネスのプロを目指す専門性を高める連携大学ごとの高 大接続教育 ・関西大学 ALSP(会計連携特別プログラム) BLSP(ビジネスリーダー特別プログラム) ○特別入学制度 現在 「大阪市立大学」・「関西大学」・「関西外国語大学」 の3つの大学と連携(その他近畿大学・桃山学院大学 大阪産業大学) ○目標資格(推薦基準・各大学によって異なる) ・簿記(日商2級・全商1級) ・英語(STEP2級・全商1級・TOEIC) ・情報(全商1級ビジネス情報・ITパスポート) → 上記の資格取得+評定平均4.3以上) ○経営リテラシーはビジネス教育の中心 ・ 「経営リテラシー」という概念を導入 ビジネスを取りまく環境の理解や法的なものの見方、マネ ジメントと会計情報の必要性等について大局的に学ぶ必要 ↓ 「経営リテラシー」を学ぶ 1年 「ビジネス基礎」3単位 副教材「ビジネス・アイ」(関西大学廣瀬教授執筆) (ワークブック) 2年 「ビジネス・マネジメントⅠ」3単位 3年 「ビジネス・マネジメントⅡ」3単位 テキストは連携大学の教授が共同執筆 ○グローバル経済社会への対応 ・ 英語を3年間で16~22単位学習 ・ 標準的な商業科に比べて1.5倍の単位数 ○その他 ・ 週3日の7時間授業(言語力の強化と数学の3年間の必修 化)→ 大学で学ぶための普通基礎学力の教科 ・ 最終的には連携大学への進学者枠を100名確保したい ・ センター入試は今のところ考えていない(将来的にはでてくる かもしれないが)。あくまでも7年間の連携で考えている ・ 商業高校ですべきことは学力担保である。さらに、スキル、経 営リテラシー、考える力を身に付けさせる。 ・ 今年度入学の1期生は7~9(10段階評価)の生徒が入学し ている。能力的に高い生徒が多く、将来期待が持てる。 ・ 高校は学ぶためのエンジンを作る。知的好奇心を育てるため の教育を行う。 ・ 学ぶことが面白い、という気持ちにさせる。学ぶことが面白く なれば、家庭学習にも力が入り、更なる効果が期待できる・ 以上で発表を終了いたします。 詳しくは別紙資料をご覧ください。 さらに、詳しい事をお知りになりたい方は お問い合わせください。 ご清聴ありがとうございました
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