生活単元学習

「遊びの指導ABC」
~子どもの感嘆詞を増やそう~
A 遊びの指導とは
B 授業づくりの実際
C 授業づくりQ&A
A 遊びの指導とは
遊びを学習活動の中心に据え、身体活動を活発にし、
仲間とのかかわりを促し、意欲的な活動を育て心身
の発達を促していくものである
~特別支援学校学習指導要領解説総則等編~
・遊びを中心にしていく
・遊びそのものが充実・発展することを目標とする
・結果として、それぞれが総合的に育まれていく
遊びそのものが目的であり、
子どもの主体的活動を支える指導
A 遊びの指導とは
~子どもを遊びに駆り立てるもの~
1 喜 び 「おもしろいなぁー!」と感じる
2 ファンタジー 非現実的な世界に飛び込める
3 自発性 自分から遊びを選んで楽しむ
4 探索性 「確かめたい」欲求を引き出していく
5 達成感 楽しさの体験の中で「できた」が実感できる
6 関わり 人との結び付きを実感できる
文句なしに楽しく、自分からやりだすもの
A
遊びの指導とは
~夢中で遊んで結果として得られるもの~
1 運動性を高める
・いっぱい体を動かすことやいろいろな動きを体験することで姿勢が
安定し、より巧みな身のこなしができる
2 操作性を高める
・手指を使って道具を扱うことで、より細やかな手や指の動きができる
3 思考力や判断力を育てる
・物事を予測したり、好きな遊びを見付けたり、意味を考えたりする場
面が多いので、思考力や判断力が深まる
(遊びがおもしろくなり、主体的な動きの活性化)
4 創造性を養う
・遊びは何かをするためにするのではなく、遊びそのものが楽しいか
らするので、子ども一人一人が創り出していく
A
遊びの指導とは
5 ことばを育てる
・遊びの中で自然にことばを掛けることで、意味のある言葉と結び付け
やすくなる(自発的な声を促す・思いを伝えたくなる)
6 周囲への関心が広がる(物→教師→友達)
・人と関わる場面やルールを守る体験を通して社会性が芽生える
・楽しみと体験を共有することで人との関わり➟つながり➟結び付きへ
7 遊びの関心が広がる
・感覚遊び→物に触れる・ちぎる・倒す→並べる・積む・変える→見立て
遊び
8 情緒の安定を図る(満足感)
・うまくいった喜び、やり遂げた喜びが、情緒の安定につながる
子ども自身は運動機能を高めたり、
社会性を身に付けたりするために遊ぶのではない
A
遊びの指導とは
~子どもが見立て遊びで得られるもの~
1
2
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10
相手の視点でものを考えられるようになる
自分を客観視できるようになる
協調性をもち、他者と協力することができる
自分の思いを伝えることができる
言葉のやり取りのよって、言語力や表現力がつく
相手の考えや思いを受け止め、相手に合わせることが
できる
生活上の役割意識をもつことができる
状況に応じて対応を変えるなど、知的発達が促される
社会のルールを学ぶことができる
設定を考えることや見立て・つもりの行動から豊かな
想像力が育まれる
B
授業づくりの実際
~年間指導計画作成上の配慮点~
1 児童の興味・関心に基づいたものを設定する
2 児童の自発的・自主的活動を大切にする
3 手指を使った操作や感覚遊びから、体全体を
使うダイナミックな動きや身体感覚を味わえ
る遊びまで幅広く設定する
4 児童の障害の程度や発達段階、学校の実態等
に即した内容を設定する
5 季節に応じたものや学校行事と関連あるもの
を設定する
6 各教科や他の指導の形態との関連を考慮する
子どもが存分に遊べる授業づくりを目指す
B
授業づくりの実際
~題材の指導計画作成上の配慮点~
1
2
3
4
5
発達段階(運動・言語・認知・社会性・情緒等)
が異なる子どもにも対応できる環境を設定する
自発的・自主的に遊べる環境、人との関わりを
伴うもの、満足感や成就感を味わえるものを工
夫する
身体活動が活発に展開できる遊びを取り入れる
健康・衛生面に配慮しつつ、安全に遊べる場や
遊具を設定する(できる限り制限を減らす)
遊びを促し、遊びに誘い、いろいろな遊びを体
験させ、遊びの楽しさを味わわせる
子どもの思いや願いの実現を目指
す
B 授業づくりの実際
遊びの指導における内容
〈3つの段階〉抜粋
生活「遊び」
1段階
教師や友達と同じ場所で遊ぶ
・教師や友達と同じ場所で、好きなことをして遊ぶ
・教師のまねをして、手足を動かして遊ぶ
・教師と一緒に、遊具などの後片付けをする
2段階 教師や友達と簡単なきまりのある遊びをする
・教師や友達と一緒に、簡単なごっこ遊びをする
・簡単なルールのある遊びをする
・促されて、遊具などの後片付けする
3段階
友達とかかわりをもち、きまりを守って仲良く遊ぶ
・友達と一緒に、いろいろな遊びをする
・遊びにじゃんけんを使う
・自分たちで簡単な遊具を作って遊ぶ
・進んで、遊具などの後片付けをする
B
授業づくりの実際
~目標の設定~
1
年間・題材の目標(目標の高次化
内容のバリエーション)
「自分から繰り返し遊ぶ」「自分なりに工夫して遊ぶ」
「やりとりする楽しさを感じながら遊ぶ」「雰囲気を楽しむ」
「自分から相手に働き掛けて遊ぶ」「想像して工夫して遊ぶ」
遊びの先にあることが目標
2
キャリア教育の視点
本時の目標(個々の目標は個別の指導計画を具体的に)
「自分から好きな遊びを見付けて繰り返し遊ぶ」
「楽しい気持ちを周りに伝えたり、友達を誘ったりして遊ぶ」
「教師や友達とやりとりしたり、一緒に遊んだりする」
しっかり遊ぶことが目標(今を充実させる)
期待する子どもの姿を行動目標として設定する
B
授業づくりの実際
~遊びの指導で扱うキャリア教育~
1 人間関係形成能力
(周りに人を意識する・関わる)
・遊びに中に友達を誘う ・教師や友達のまねをする
・順番を守る、並ぶ
・挨拶をする
・友達や教師とやり取りしたり、関わったりしながら遊ぶ
2 情報活用能力
(身の回りに関心をもつ)
・遊具を工夫して遊ぶ
・遊具を介してやり取りをする
(きまりを守って生活する)
・道具を片付ける場所が分かる
・遊びのきまりを知って守る
B
授業づくりの実際
~遊びの指導で扱うキャリア教育~
3
将来設計能力
(活動して満足感を得る・役割を果たしてうれしい気持ちになる)
・十分に遊んで満足を得る
・教師と道具の片付けをする
・ままごとで○○屋さんをする
・お父さん、お母さん役を演じる
4 意思決定能力
(目標を決めたり、振り返ったりする)
・好きな遊びを選択する
・楽しかったことを発表する
・選択に満足し、またやりたいと思う
B
授業づくりの実際
~教師の姿勢~
子どもの思いに共感しながら一緒に楽しむ
1
・一緒に遊ぼうと働き掛ける教師が「おもしろい」と思わ
ないと子どもたちを楽しませることはできない
2
あせりは禁物
・指示を多く出したり、答えを求めるよりは、のんびりと
子どもの活動を眺める余裕が大切 「ゆとり(遊び心)」
3
ことばは、楽しさを盛り上げるツール
・教師が「楽しい」と感じたときに出てくるしぐさや声が
子どもを遊びに駆り立てる(モデルを示して意欲を引き出す)
4
遊びは「あそび」、やわらか頭で楽しもう
・困ったこと、禁止したいことを始めるが「認める」やわ
らかさも時には必要である(子どもの思いを後押しする)
B
授業づくりの実際
~評 価~
子どもがどのような姿で活動しているかを見取り、そ
れを、教師の対応、場の設定、遊具等の工夫に生かす
(授業デザイン・実践チェックリスト)
・目標の設定(単元・題材の設定 学習のねらい)
・子どもの実態・様子(子ども理解 説明・教示・評価)
・教師の働きかけ(教師の基本姿勢 説明・教示・評価)
・活動の内容・選択(単元・題材の設定 学習活動の設定)
・活動の流れ(学習活動の設定 指導計画・内容)
・活動の仲間(グループ編成、子どもと教師、子どもの同士の関わり)
・教材教具の工夫(教材・教具等)
・場の設定(環境設定)
発達段階の把握と正確な記録
B
授業づくりの実際
~評価のポイント~
・興味をもって意欲的に遊ぶ姿
・自発的、自主的に遊ぶ姿(自ら存分に遊べる姿)
・遊びに没頭し継続して遊ぶ姿
・遊具を活用して遊ぶ姿
・自分なりに楽しみ方を工夫している姿
・教師や友達と関わっている姿
・笑顔や喜びの声を上げるなど楽しんでいる姿
子どもの変化やつぶやきをキャッチする
授業づくりQ&A
〈子どもが繰り返し遊びたい、
まねしたいと思いたくなる状況づくり〉
・過去に遊んだことがある遊具と、新しく魅力ある遊具の両方
を用意する(馴染みのある遊具は安心して遊べる、新しい遊
具は遊びが広がり、他者をまねしたり、工夫したりできる)
・ダイナミックでスリルが味わえる遊具と、じっくり楽しめる
遊具を用意することで、子どもの実態に合わせた遊びが提供
できる)
・触る、滑る、回る、揺れる、跳ぶ、音が出る、何かが光るな
ど、五感に訴える遊びを用意する
・二人で一緒に滑り台を滑る・登る、滑り台を滑り終えたら段
ボール積木を倒せるなど、遊びに変化をもたせる
・教師の楽しげな姿が、子どもたちの「やってみたい」という
気持ちを引き出す(教師の楽しいと感じた時に自然に出てく
るしぐさや声が子どもを遊びに駆り立てる)
授業づくりQ&A
「順番を待つ練習をする?」
・子どもは順番を待つ力を付けるために遊んでいるわけでは
ない。待たずに次々と遊べるように遊具を設定したとして
も、結果として少し待ったり、我慢したり、譲ったりする
場面は出てくる。「楽しい遊具でもうすぐ遊べる」という
見通しと安心感があるからこそ、待てるようになる。行列
のできる人気の遊具作りや場の設定を心掛ける。
「同じ遊びから抜け出せない」
・今、夢中になっている遊びを奪い取ると考えるのではなく
特定の人との関係をどう作り上げているかに心を砕く。心
を許せる人との関係を軸に、小さな変化を積み重ねて遊び
に幅をもたせる。好きなことをてこにして、関わりのきっ
かけをつかむ。子どもの好きな活動の中に一緒に入り込む
ことから始める。
まとめにかえて
1 「あーできた、楽しい! そうなんだ!」 実感・共感
・知識と経験が結びついたとき
2 「えっなぜ? 確かめたい」 疑問・追求
・知識・経験と結びつかないとき・問いを発するとき
3 「おーそうだったのか! すごい!」 感動・発見
・知識や経験になかったことを発見したとき
4 「へぇ~そういう遊び方もあるんだ!」 比較
・知識と経験が他者と違うとき
感嘆詞が出たとき
遊びスイッチがオンになる
参考文献
・「特別支援学校 特別支援学級 担任ガイドブック」
・「実践
遊びの指導」
・「新しい教育課程と学習活動Q&A」
・「領域・教科を合わせた指導ABC」
・「遊ぶのだいすき!」
・「特別支援学校学習指導要領」
・「遊びの指導の手引き」