LHCにおけるヒッグス粒子 KEK 浅川 恵理 目次 1.電弱理論と電弱対称性の破れ 2.ヒッグス機構 3.ヒッグス粒子の質量に対する制限 実験から 理論から 4.Beyond SM 超対称標準模型 NMSSM、2HDM 階層性問題 電弱理論(ワインバーグ‐サラム模型) 電弱ゲージ対称性 SU (2)w U (1)Y 相互作用の記述は、実験・観測と矛盾無し しかし、 素粒子の質量は、 ゲージ対称性と相容れない ヒッグス機構の導入によって 電弱対称性の自発的破れを起こす ことにより解決 ヒッグス機構 SU (2)W , U (1)Y 2,1/ 2 の複素スカラー場 を導入 0 1 v 2 ゲージボソンの質量 ヒッグス粒子とゲージボソンの相互作用 D i g T W T W ig Z T 3 sin 2 wQ Z ieQA 2 1 gv 2 1 2 2 mZ g +g v 2 V 2 † 2 † 2 mH 2 v mW mH ヒッグス粒子の質量に対する実験からの制限 直接探索で見付かっていない 間接探索 (他の過程への輻射補正) 標準模型を仮定。 つまり新粒子の存在は無いとしている。 より一般的には、 ヒッグス粒子による輻射補正の効果+ 何らかの新粒子による輻射補正の効果 が間接探索の観測量に現れているはず。 その場合、上記の間接探索からの制限は あまり意味を成さない。 mH 114.4 GeV 69 45 mH 114 GeV 間接探索からの帰結 一般的に、2つのシナリオが可能 1.比較的軽いヒッグス粒子だけが mH 260 GeV程度 TeV領域以下に存在 2.それほど軽くないヒッグス粒子 + W,Zボソンに結合するNew Physics ヒッグス粒子が重くなるほど より強い相互作用をする New Physicsが必要 ヒッグス粒子の質量に対する理論からの制限 質量の上限について考察 λがどこまで大きくなれるか? d 1 2 12 2 d 16 Q 1 3 4 v mH 2 v Q2 where ln 2 v Q2 1 2 v ln 2 4 v v ln 2 3 2 Q 0 で Q v2 ヒッグス質量の上限値 mH 2 2v 2 v Q 8 2 v2 3 ln 2 / v 2 mH 2 8 2 v2 3 ln 2 / v 2 excluded allowed 理論的制限からの帰結 excluded allowed Riesselmann 1. 比較的重いヒッグス粒子なら、 標準模型のcutoff scale 2. 軽いヒッグス粒子なら、 M Pl M Pl もOK。 ヒッグス粒子が1TeVまでに 見付からなかったら TeV領域にNew Physicsがあるはず LHC ( pp衝突、 s 14 TeV ) mH 1 TeV u, d, g, ‥‥間の衝突エネルギー s O(TeV) の探索が可能 ヒッグス粒子にも TeV領域のNew Physicsにも 対応している。 ここまでのまとめ 標準模型では、実験からの制限を考慮して、 質量が115GeV以上260GeV以下のヒッグス粒子を予言している。 しかし、実験からの質量上限は新物理の存在を考えることでextendできる。 一方、理論からの質量制限は、標準模型のカットオフスケールΛに依存する。 Λ 小 ⇒ 質量制限はゆるくなる Λ=1TeV ⇒ 質量上限も ~1TeV ヒッグス粒子が1TeVまでに見付からなかったら TeV領域にNew Physicsがあるはず LHCは重いヒッグス粒子にもTeV領域のNew Physicsにも 対応している。 New Physicsが何であるかによって、許されるヒッグス粒子の質量も変化する。 Beyond the Standard Model 超対称標準模型(MSSM) 階層性問題を解決 ゲージ結合定数の大統一が成功(電荷の量子化を説明) VMSSM m12 1 m22 2 m32 1† 2 †21 2 2 1 2 2 2 2 2 g g 1 2 8 1 2 † 2 g 1 2 2 ヒッグス2重項は2つ H1 1 1 v i 1 1 1 2 H 2 2 1 v2 2 i 2 2 mA2 m12 m2 2 mh , H 2 1 mA 2 mZ 2 2 m 2 A mZ 2 2 4mA 2 mZ 2 sin 2 2 mH 2 mA 2 mW 2 2つのパラメータ mA , tan v1/v2 だけで、5つのヒッグス粒子の質量が決まる。 ⇒ 互いの質量が大変よく関係付けられている。 最小超対称標準模型(MSSM)における ヒッグス粒子の検出 NMSSM MSSM+SU(2) singlet N VNMSSM m12 1 m22 2 mN2 N 2 2 2 kA A N 1 2 k N 3 h.c. 3 2 1 2 kN 2 2 1 2 1 2 g g 2 8 1 2 2 Physical Higgs bosons h, H1, H2 , A1, A2 , H 2 2 N 2 2 2 を大きくとればとるほど、hの質量を重くできるが、 GUTスケールでの が大きくなり過ぎない為の制限により、 hの質量に上限がおかれる。 の自由度によって、質量スペクトルは多様性を持つ。 THDM Two Higgs Doublet Model SMにもう一つHiggs doubletを加えた模型 MSSMもTHDMの一つ VTHDM m12 1 m22 2 m32 1† 2 †21 2 1 2 1 4 2 2 2 2 4 2 † 1 2 3 1 2 4 2 MSSMでは、超対称性により 2 2 5 2 † 1 1 2 THDMでは 2 2 † 2 1 1 2 2 1 g +g , 3 g 2 g2 4 4 1 2 4 g 2 , 5 0 はある程度自由に取れる。従って、 の自由度によって、質量スペクトルは多様性を持つ。 ρparameter constraint Constraint from perturbative unitarity 2-3 orders enhancement is possible as compared to MSSM case E.A., Brein, Kanemura Cho and Hagiwara 階層性問題 mH mtree O 2 2 2 例えば M Pl の場合、 とてつもないfine tuningが必要。 階層性問題が起こらない為には 1. O() O(mW ) Technicolor, Extra dimension, ‥‥‥ 2 2 2 2 m m O O 2. H tree SUSY, little Higgs (u)、(d)、(δ) Z’ボソンを含む模型 (KK) Extra dimension 模型 ゲージボソン in 5次元時空 ヒッグス粒子 in 4次元時空 フェルミオン 薄い楕円 68%C.L.の制限 mH 300 GeV for mKK 3 5 TeV Peskin and Wells Fat Higgs model Harnik, Kribs, Larson, Murayama Peskin and Takeuchi 結論 • 標準模型の成功はゲージ理論の成功(相互作用の universality) • 現代素粒子論の最重要な問題は、ゲージ対称性の自発的 破れ物理である。 • 800 GeV程度以下の質量を持つヒッグス粒子が存在する か、或いはTeV領域でW, Zボソンが強い相互作用をする。 • LHCはこの全ての可能性に対し、我々にゲージ対称性の破 れの物理を解明、或いはヒントを与える。 従って、 • LHC実験が素粒子模型の構築に大変大きな寄与 をすることは確かである。 • しかもその構築の過程で、ヒッグス粒子の質量がわ かることが非常に重要である。 • LHC実験が素粒子物理学の新しい展開に、最低限、 一定の道筋を付けることも確かである。 • しかし、LHC実験だけで十分に新しい展開を確定す ることはできないであろう。 ⇒リニアコライダー 2007年 LHC が稼動を開始 (宇宙の始まり) (1013 秒後) 現在 高 超対称性 新素粒子標準模型 1000 GeV 低 リトルヒッグス
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