ヒッグス粒子探索 gg→H→WW*→lνjjにおける キネマティックフィッターの開発 宇宙史拠点実習 2012/3/19 筑波大学 素粒子実験研究室 M1 永田 和樹 内容 • • • • • 導入 動機 解析方法 解析結果 Higgs mass :170GeV Higgs mass : 150GeV まとめ テバトロンにおけるヒッグス粒子探索 • gg→Hが最も断面積が大きい生成モード(数百fb)。 • mH>130 GeV/c2ではH→WW*が最も分岐比が高い。 → 重いヒッグスはH→WW*で探すべき。 • mH>130 GeV/c2はH→WW→lνlνの独壇場。 • H→ZZはコンビネーションにほとんど効いていない。 HWW*lnjj チャンネル quark • jet in calorimeter l W n hadronization lepton • e : calorimeter • m : muon chambers H W u, c proton anti-proton d, s 検出する粒子: 電子orミューオン 1個 ニュートリノ 1個 ジェット 2個 neutrino • energy invalance in calorimeter anti-quark • jet in calorimeter H→WW*→lνjjとH→WW*→lνlv チャンネル比較 H→WW→lνjj H→WW→lνlv WWの崩壊分岐比~30% WWの崩壊分岐比~5% QCDのW+jetsバックグラウンドが膨大 バックグラウンドが少ない νが1個だけ。mHが組める。 νが2個。mHが組めない。 探索ポテンシャルではlνlνにかなわないが、足し 合わせてCDF全体のヒッグス粒子に対する感度 を改善する。 クリーンなチャンネルなので、非 常に探索に向いている。 WW→lνcsでは、c-tagすることで事象をフルに再 構成できる高純度サンプルが選別できる。 発見後のLHCで、大データでの精密測定につな げたい。 筑波大グループ(須藤、佐藤、金)が新しく解析 を立ち上げたところ。 CDFでは、大グループにより既に 完成度の高い解析手法が確立 されている。 現状のH→WW*→lνjjの問題点 • mH<160 GeV/c2では…、 – H→WWの片方のWはmW =80.4 GeV/c2 (PDGの値)よりも 軽い質量をもつ →オフシェル、W*。 – バックグラウンド見積もりの都合で、 60<m(l,ν)<100 GeV/c2のカットをしていた。 • レプトン崩壊するWがオフシェルのヒッグス事象を、こ のカットでたくさん捨ててしまっている。 – Pxν とPyν はカロリーメータの消失エネルギーをもとに測定 できるが、Pzνは測定値からは直接決めることができない。 • 現状の解析では、m(l,ν)=mW =80.4 GeV/c2 を解いてPzν を決めている。 –オフシェルのWに対してこれはよい扱いで はない! 動機 H→WW*→lνjjチャンネルでのヒッグス粒子探索において、 ヒッグス粒子の低い質量領域に対しても感度を増やしたい。 オフシェルW→lνの扱いを改善するために、 キネマティック・フィッターを開発した。 ニュートリノのZ軸成分の運動量を含む事象の 再構成を改善する。 キネマティックフィッターの開発 TMinuitを使い、LogLikelihood法を用いて、以下の式が 最小となる極値でのパラメーターの値をもとめる。 ニュートリノと2つのJETのPt Higgs mass: 150GeV ΓH = 1.73×10-2 Higgs mass: 170GeV ΓH = 3.80×10-1 W mass : 80.399GeV ΓW = 3.80×10-1 フィッティングパラメーター • Jetの運動量、METを測定量の周りで分解能程度で、fluctuate • ニュートリノのz成分は自由にfluctuate Ptfit ν=C0×Ptobs ν Ptfit jet1=C1×Ptobs jet1 Ptfit jet2=C2×Ptobs jet2 Pzfit ν=C3×Pzobs ν • ブライトウィグナー内のフィット質量は上 記のC0~C3でスケールした運動量で計 算する。 Jet energyとMETの分解能 右図:JETのPtに対する不確定さ カロリーメータによるPtの測定が 誤差3%以内で校正されている。 → σJET =0.03×Et JETに関する補正は - detector response - absolute energy scale の2つ。 Out of cone については行っていない。 σMET =√MET とした。 イベントセレクション • 1 Lepton (e or μ) Pt > 20 GeV |η| < 1 • Neutrino : MET > 20 GeV • 2 Jets Et > 20 GeV |η| < 2 • M(l,ν) > 40 GeV • モンテカルロシュミレーションと比較する ① サンプル内のH→WW*→lνlνイベントは見ない ② parton とjetはΔR < 0.4でmatchする → ヒッグス崩壊終状態の両方のpartonがjetとmatchしたイベ ントのみ解析する。 解析結果①(Higgs mass = 170GeV) 右図:それぞれの scaling factorの分布 縦軸:イベント数 横軸:scaling factor の値 Scaling factor = 1 →fitting前 = fitting後 解析結果②(Higgs mass = 170GeV) 右図:HEPGとの差の分布 横軸: 𝑃(𝑓𝑖𝑡, 𝑜𝑏𝑠) − 𝑃(𝐻𝐸𝑃𝐺) 𝑃(𝐻𝐸𝑃𝐺) 赤色:fit 青色:observe 解析結果③(Higgs mass = 170GeV) 右図:粒子の質量 の分布 縦軸:イベント数 横軸:GeV 赤色:fit 青色:observe 黒色:HEPG 解析結果①(Higgs mass = 150GeV) 右図:それぞれの scaling factorの分布 縦軸:イベント数 横軸:scaling factor の値 Scaling factor = 1 →fitting前 = fitting後 解析結果②(Higgs mass = 150GeV) 右図:HEPGとの差の分布 横軸: 𝑃(𝑓𝑖𝑡, 𝑜𝑏𝑠) − 𝑃(𝐻𝐸𝑃𝐺) 𝑃(𝐻𝐸𝑃𝐺) 赤色:fit 青色:observe 解析結果③(Higgs mass = 150GeV) 右図:粒子の質量 の分布 縦軸:イベント数 横軸:GeV 赤色:fit 青色:observe 黒色:HEPG まとめ • キネマティックフィッターを開発した。 →佐藤先生と自分で独立に開発して、event by event で 結果がぴったり一致している。 • レプトンに崩壊するW massの再構成に関しては 80GeV以下の事象まで再構成できている。 • ハドロンに崩壊するW massの再構成に関しては キネマティックフィッターの補正はあまり効かない。 • ニュートリノのZ軸方向の運動量に関しては、キネマティックフィッ ターを使った場合、再構成が悪くなった。 • オフシェルのWからの寄与が大きい150GeVのヒッグスに対して、 良く再構成ができている。 • オフシェルのWからの寄与が少ない170GeVのヒッグスに対しても、 キネマティックフィッターは十分に機能する。 キネマティックフィッターの今後の課題 ① σMET、σJETが√Pt、Pt×constant でいれてある。 →本来はevent by event に計算してある量を使うべき。 ② Jet Energy Correction が十分でない。 →out of cone 補正がかかっていない。 ③ これらを取り入れて、再度性能評価をおこなう必要がある。 Out of cone 右図:Higgs mass = 170GeVに 対するJETのPtの誤差 𝑃𝑡 𝑗𝑒𝑡 − 𝑃𝑡(𝐻𝐸𝑃𝐺) 𝑃𝑡(𝐻𝐸𝑃𝐺) → 6% > 3% Out of cone の寄与を考慮しなけれ ばならない。 感想 • ほとんど使えなかったROOTとC++でのプ ログラミングができるようになりました。 • 2週間でキネマティックフィッターの詳しい評価 ができず、残念でしたが、キネマティックフィッ ターの開発が完了できてうれしいです。
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