第3回講義

第6回講義
マクロ経済学初級II タイプIIクラス
白井義昌
11月11日
投資の決定要因
新古典派の投資関数
11月11日
第6回講義の内容
• 6.1 設備投資と在庫投資
• 6.2 投資支出の決定
• 6.3 IS曲線
11月11日
6.1 設備投資と在庫投資
11月11日
日本のGNPと投資
GNP
6割が消費
1割弱が政府最終消費支出
2、3パーセントが純輸出
3割が総固定資本形成
そのうち 2割強が公的総固定資本形成
7割強が民間総固定資本形成
さらに民間総固定資本形成のうち
6割が企業設備投資
1割5分が住宅投資
非常に少ないが在庫品増加がある
11月11日
• 設備投資は景気の変動とともに大きく変化
する。
• 在庫品増加は在庫投資と呼ばれる
そのうちわけは
– 製品在庫 (38%)
– 仕掛品在庫 (40%)
– 原材料在庫 (22%)
• 在庫投資は景気変動とともにきわめてお
おきく変動する。
11月11日
11月11日
11月11日
6.2 投資支出の決定
新古典派の投資理論
11月11日
生産関数の復習
• 生産者は資本ストックKと労働力Nの
2つの生産要素(投入物)を用いて生
産活動を行うとする。
• 要素投入(Inputs)と生産物
(Outputs)の関係(生産技術)は生産
関数(Production Function)で表さ
れるとしよう。
• Y=F(K,N)
11月11日
生産関数の性質
• 資本ストックを追加的に一単位投入したと
きに増大する生産物の量を資本の限界
生産力
(Marginal Product of
Capital) という。
• ∂F(K,N)/∂K、ΔF(K,N)/ΔK、 FK(K,N)
または、 MPK で表す。
この値は正値である。また資本ストックを
横軸に、生産量を縦軸にとったF(K,L)の
グラフの傾きを示す。
11月11日
生産関数
F(K,L)
FK(K1,L)
F(K1,L)
K1
11月11日
K
資本の限界生産力逓減の仮定
• 資本の限界生産力は逓減する
(decreasing)
• ∂2F(K,L)/∂K<0 FKK(K,L)<0
• 資本ストックの投入が増大するにつれて、
資本の限界生産力は小さくなる。
• 限界生産力を縦軸に、資本ストック投入量
を横軸にとると、次のようなグラフになる
11月11日
資本の限界生産力曲線
FK(K,L)
FK(K1,L)
F(K1,L)
K1
11月11日
K
資本の使用者費用
users cost of capital
• 資本を一単位利用するのにかかる費用
を資本の使用者費用という。
• 資本の使用者費用は資本を一単位調
達するのにかかる利子費用(利子率) r
と、資本を一単位生産活動に利用する
ことで資本が減耗する資本減耗率 d
からなる。
• したがって、資本ストックをK単位利用す
ることの(実質)費用は
(r+d)K
である。
11月11日
生産者の利潤最大化行動と望
ましい資本ストック水準
• 生産者にとって、利潤は以下のようになる。
F(K,L)-(r+d)K-労働費用
• 利潤が最大になるような資本ストックK*が望
ましい資本ストック水準と呼ばれる。
• 資本の限界生産力と資本の使用者費用が
等しいときに利潤は最大化される。
FK(K*,L) = r+d
11月11日 以下の図を参照。
生産者の利潤
FK(K,L)
F(K*,L)-(r+d)K*
r+d
(r+d)K*
K*
11月11日
K
生産者の利潤: KがK*より小さい場合
FK(K,L)
F(Ks,L)-(r+d)Ks
r+d
(r+d)Ks
Ks
11月11日
K*
K
生産者の利潤: KがK*より大きい場合
FK(K,L)
F(Kl,L)-(r+d)Kl
r+d
(r+d)Kl
K*
11月11日
Kl
K
利子率と
望ましい資本ストック水準の関係
• 利子率が上昇すれば、望ましい資
本ストック水準は減少する
r↑⇒ K*(r)↓
• 利子率が下落すれば、望ましい資
本ストック水準は増大する。
r↓⇒ K*(r)↑
11月11日
資本ストックと投資の関係
• 一年間の資本ストックの変化量は純投
資(Net Investment)と呼ばれる。それを
NIで表すことにする。
NIt ≡Kt+1- Kt
• 今年の資本ストック水準を来年の資本ス
トック水準にまで増やすには、実際には
資本減耗分を埋め合わせて投資してい
る。これを粗投資(Gross Investment)と
呼び、 It で表す。
It ≡ Kt+1- Kt+dKt
11月11日
投資水準の決定と利子率の関係
• 生産者は望ましい資本ストック水準を達成
(利潤最大化)するように投資水準を決定する。
It(r) = K*(r)-Kt+dKt
• 利子率の上昇はK*の下落、すなわち、投資
水準の下落をもたらす。 r↑⇒ I(r)↓
• 利子率の下落K*の上昇、すなわち、投資水
準の上昇をもたらす。 r↓⇒ I(r)↑
11月11日
6.3 IS曲線
11月11日
財市場の均衡条件
• 有効需要の原理にもとづく財市場の均衡条件は以
下のように表される。
Y=C(Y)+I(r )+G
• C(Y)=C+c・(Y-T) とすれば、
Y=[C-c・T+I(r)+G]/(1-c)
となる。すなわち、
利子率rが上昇すれば均衡総生産Yは減少する。
利子率rが下落すれば均衡総生産Yは増加する。
• 利子率rと均衡総生産Yの組み合わせはIS曲線と呼
ばれる。
11月11日
IS曲線
r
Y (均衡総生産)
11月11日
IS曲線の性質
(政府購入増大の効果)
• 利子率一定(投資が不変)のもとで、政府購
入GのΔG単位の増大は均衡生産量YをΔY
=ΔG/(1-c)増大する。したがって、IS曲線は
このとき右にΔG/(1-c)だけ並行移動する。
• 利子率一定(投資が不変)、かつ均衡予算の
もとで、政府購入GのΔG単位の増大は均衡
生産量YをΔY=ΔG増大する。したがって、IS
曲線はこのとき右にΔGだけ並行移動する。
11月11日
税収一定のもとで
政府購入を増大したばあい
r
均衡予算のもとで
政府購入を増大した場合
r
ΔG/(1-c)
ΔG
Y
IS曲線のシフト
11月11日
Y
IS曲線の性質(IS曲線の傾き)
• 利子率rがΔr単位増加すると、均衡生産量Yは
ΔY=I’(r)Δr/(1-c)
増大する。I’(r)は負の値であることに注意せよ。
Δr とΔYの比率をとると、
Δr/ΔY=(1-c)/I’(r)
となる。これはIS曲線の傾きをあらわす。
• 投資が利子率の変化に対してほとんど反応しなけ
ればI’(r)は0に近く、傾きは急になる。
• 投資が利子率の変化に対して敏感に反応すれば
I’(r)は絶対値で非常に大きくなり,傾きは緩やかに
なる。
11月11日
投資が利子率に対して
非常に反応する場合
投資が利子率に対して
あまり反応しない場合
r
r
Y
IS曲線の傾き
11月11日
Y