TPPの問題点を 特に食の安全の観点から論ず 2014年6月24日 日本ビジネスインテリジェンス協会理事長 名古屋市立大学22世紀研究所特任教授 中川 十郎 TPPの現状① 難航する交渉 ○11月の米中間選挙前の大筋合意は困難 早期成立を難しくする米政治状況 ○労働組合を支持基盤とする与党・民主党にある慎重論 ○不透明となる貿易促進権限(TPA)付与法案の早期成立の見通し 参加12カ国が7月カナダで首席交渉官会議開 催へ ○依然として意見の隔たりが大きい関税や知的財産権などの分野 「TPPを推進する多国籍企業の会」参加の105の企業、業界団体、ロビー団体の主 要なものはインテル、マイクロソフト、IBM、GAP,コカコーラ、ファイザー、シテイグ ループ、ダウケミカル、GE, ヒューレットパッカード、ジョンソン・アンド・ジョンソン、 リーバイス、オラクル、P&G、タイムワーナー、VISA、ウオールマート、ゼロックスなど 米国有力多国籍企業が名を連ねており、これらが米国のTPP推進圧力団体である。 TPPの現状② TPPの本来の目的とは ○アメリカの国益と多国籍企業の企業益の拡大を目指す。(TPPを推進する多国籍 企業の会=米国多国籍企業および業界有力団体105以上がメンバー)=要注意 TPPがカバーする領域 ○1)市場物品アクセス 2)原産地規則 3)貿易円滑化 4)SPS(衛生植物検疫) 5)TBT(貿易の技術的障害)6)貿易救済 7)政府調達 8)知的財産 9)競争政策 10)サービス・越境サービス貿易 11)サービス・商用関係者の移動 12)サービス・ 金融サービス 13)サービス・電気通信サービス 14)電子商取引 15)投資 16)環 境 17)労働 日本にとって国家の命運を左右する重要問題 ○農産品問題、知的所有権、外国企業の国家補償(ISDS)条項、さらに医療健康問 題など。 TPPの問題点① 米国産作物が支配する「甘味」 米国産トウモロコシが日本人の健康に与える影響 健康と深い関係を持つ甜菜(砂糖の原料) 食品添加物の問題 高まる輸入食品の農薬汚染 「モンスター」米モンサント社が牛耳る遺伝子組み換え作物→多国 籍企業による種子・食料支配(2009年、単位100万ドル) 企業 国籍 単位100万ドル シェア % モンサント 米 7297 27 デュポン 米 4641 17 シンジェンタ スイス 2564 9 グループ・リマグレン 仏 1251 5 ランド・オ・レイクス 米 1100 4 天笠啓祐著『 TPPの何が問題か』緑風出版より TPPの問題点② 食品表示の撤廃→遺伝子組み換えによる米国産稲と小麦を 世界に売り込む戦略 TPP加盟の代償→さらなる食料自給率の低下、食の安全や 消費者の知る権利に対する挑戦 多国籍企業が進める「水」の支配 • (世界の水事業を支配しつつある多国籍企業3社=スエズ社、 ビベンジ社、(仏)、ドイツRWE社が保有する英国を本拠とす るテームズ・ウオーター社が世界中で水事業を展開している。 • ミネラルウォーターもネスレ社(スイス)、ペリエ社、ダノン社 (仏)、コカコーラ社、ペプシ社(米国)などが世界中の水源の 確保に動いている。TPPはこの多国籍企業の活動に拍車を かけることになる。種子での食料支配に続き、命の維持に欠 かせない水や水源が脅かされつつあり、注意が肝要だ。 結論 • 日本がTPP交渉と並行あるいは先行して取り組むべきはア ジアでの地域経済協力圏構築 • 日中韓の自由貿易圏の構築が先 • 次がASEAN自由貿易圏(AFTA)-2015年完成‐との協力 • さらにASEAN+3(日中韓)の経済協力の強化 • そしてRCEP(地域包括的経済連携)=ASEAN+日中韓+ インド、豪州、ニュージーランドでのアジア太平洋経済協力圏 の構築 • 次にFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏=APEC21か国、地 域)の構築 • そのうえで必要ならTPPへの参加を検討→国家百年の大 計を考え、長期的戦略で臨むべし
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