与信管理のポイント

目 次
1.倒産に関する最近の動き
(1)2009年4月倒産件数
(2)倒産件数の推移
(3)中小企業金融対策の拡充
2.倒産に関する基礎知識
(1)倒産とは
(2)倒産の種類
(3)倒産のパターン
3.危険信号とは
(1)回収に関する危険信号
(2)ウワサに関する危険信号
(3)取引先に行って気付く危険信号
4.与信管理
(1)取引開始時
(2)日常の管理
5.危険信号をキャッチしたら
(1)危険信号をキャッチしたら
(2)支払遅延が起きたら
(3)手形のジャンプ(書換え)を申し
込まれたら
(4)倒産必至と判断できたら
6.中小企業倒産防止共済
具体的な個別事例でのご相談は
弁護士等にお願い致します。
1
1.倒産に関する最近の動き
(1)2009年4月 倒産状況 (東京商工リサーチ)
■倒産件数(負債額1,000万円以上) 1,329件、負債総額 5,219億円
・前年同月比9.3%増、11カ月連続前年同月比増加
・件数増加率が5カ月ぶりに1ケタ台に低下し、「緊急保証制度」等の
金融支援効果が窺われる動きもみられる
■産業別では、製造業倒産が同36.0%増と増勢ぶりが目立つ。
金融・保険業
83.3%増( 6→ 11件)
農・林・漁・鉱業 50.0%増( 6→ 9件)
情報通信業
37.5%増( 32→ 44件)
製造業
36.0%増(175→238件)
卸売業
19.2%増(171→204件)
運輸業
14.0%増( 50→ 57件)
不動産業
5.5%増( 54→ 57件)
サービス業他
0.8%増(249→251件)
小売業
5.5%減(144→136件)
建設業
1.8%減(328→322件)
(件)
25,000
2008(H20)年
2006(H18)年
2004(H16)年
2002(H14)年
バ
ブ
ル
破
綻
2000(H12)年
1998(H10)年
1996(H 8)年
1994(H 6)年
件数
1992(H 4)年
バブル景気
1990(H 2)年
1988(S63)年
1986(S61)年
オ
イ
ル
シ
ョ
ッ
ク
1984(S59)年
(2)倒産件数の推移
1982(S57)年
1980(S55)年
1978(S53)年
20,000
1976(S51)年
いざなぎ景気
1974(S49)年
1972(S47)年
1970(S45)年
1968(S43)年
1966(S41)年
1964(S39)年
1962(S37)年
1960(S35)年
1958(S33)年
1956(S31)年
1954(S29)年
1952(S27)年
2
東京商工リサーチ調べ
負債総額
(兆円)
30
いざなみ景気
25
20
15,000
15
10,000
10
5,000
5
0
0
3
(3)中小企業金融対策の拡充(2008/10~)
①信用保証協会の緊急保証
中小企業
返済が困
難な場合
①保証申込
③融資
⑥弁済
④返済
⑤代位弁済
信用保証協会
民間金融機関
②保証承諾
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■通常の保証制度
・信用保証協会の保証で金融機関の融資が受けやすい
・一般保証2億8,000万円(無担保8,000万円)
・代表者の個人保証は必要、保証料必要
・融資先が倒産時は信用保証協会8割、銀行2割負担
■緊急保証制度(H20/10/31~H22/3/31)
・別枠2億8,000万円(無担保8,000万円)
・信用保証協会10割保証
・指定業種
市区町村が認定
・売上又は利益の減少
・金融機関、保証協会の審査あり
・都道府県、市区町村で利子補給・保証料補助の制度
5
6
②政府系金融機関のセーフティーネット貸付
日本政策金融公庫 (2008/10~2009/3)
96,922件、1兆3828億円
③「貸出条件緩和債権」の見直し
【原則】貸出条件の緩和=要管理債権(不良債権)
・金利引下げ、元本支払猶予、返済期間の延長など
【例外】実現可能性の高い抜本的な経営再建計画
⇒条件緩和債権に該当せず
(旧)計画期間3年‥‥3年での健全化は難しい
(新)中小企業は5年(進捗状況が良好な場合10年)
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金融検査マニュアルによる債務者区分
区分
条件
債権
区分
無担保債
権の100%
破たん先 法的・形式的な経営破たんに陥っている債務者
法的・形式的な経営破たんには陥っていないが、深刻な経
実質
営難の状態にあり、再建の見通しがないなど、実質的に経
破たん先
営破綻に陥っている債務者
破たん
懸念先
経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、再建計
不良
画の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性
債権
が大きい債務者
貸出条件に問題がある債
務者、債務の履行状況に問
題がある債務者、業況が低
要注意先 調ないし不安定な債務者、
財務内容に問題がある債
務者など、今後の管理に注
意が必要な債務者
正常先
貸倒引当
例
無担保債
権の75%
要注意先のうち、債
務の履行を3ヶ月以
要管理
上延滞または貸出条
先
件を緩和している債
務者
全債権の
15~40%
要管理 要注意先のうち、要
先以外 管理先以外の債務者
全債権の
3~5%
業績が良好で、財務内容にも問題がない債務者
健全
債権
全債権の
1%以下
2.倒産に関する基礎知識
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(1)倒産とは
・企業が経済的破綻をきたし、正常な
事業活動ができなくなった状態
= 債務の弁済ができなくなった状態
・法律用語ではない
・廃業(債務の弁済後
に手続き)との違い
<具体的には>
(1)銀行取引停止処分
・6ヶ月間に2度の不渡手形を発生させる
(2)裁判所へ法的処理の申立
(3)任意整理(私的整理・内整理)の開始
・債権者との資産・負債の整理の協議開始
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(2)倒産の種類
再建型
法的手続き
(裁判所が関与)
清算型
倒産
任意整理
(裁判所は
関与しない)
手続きなし
再建型
清算型
会社更生(会社更生法)
民事再生(民事再生法)
特別清算(商法)
破産(破産法)
弁護士がつく場合と、
つかない場合あり
夜逃げ
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(3)倒産のパターン
(1)売上低下、赤字 ⇒ 合理化の遅れ
(2)本業以外への投資 ⇒ 失敗
(3)受注増を見越して設備増強
⇒ 顧客が海外へ展開
(4)大口顧客の倒産 ⇒ 回収不足増大
(連鎖倒産)
(5)資産価値の減少
⇒ 金融機関の貸しはがし
(バブル崩壊後多くあった)
資金繰り
の悪化
倒産!
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3.危険信号とは
(1)回収に関する危険信号
○振込日が遅れる
○手形のサイトが長くなる
○手形のジャンプの要請
○現金払いから手形払いへの変更
○取扱銀行の変更
かなり危ない
売掛債権の回収
(2)ウワサに関する危険信号
○税金を滞納している
○従業員の賃金の支払遅延
○融通手形の発行
○関係会社の倒産
○顧客の倒産
○経営者がなくなった
火のないところに
ウワサは立たない
ウラを取れ
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(3)取引先に行って気付く危険信号
○経営者が不在がち、外出先が不明
○役員の変動、金融機関からの出向
○キーマンの退社、従業員の複数退社
○従業員の士気の低下、接客態度の悪化
○事務の乱れ、約束を破る
倒産の兆候
と疑う
○操業度の低下
○工場、トイレなどが乱雑になる
○製品在庫、部品在庫の増加
○仕入先の変更(一流→二流、三流)
○黒板に高利貸しの名前
・複数の情報
をもとに判断
ウラを取れ
4.与信管理
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(1)取引開始時
①信用調査
(a)取引先調査票の作成(判る範囲で取引先にヒアリング)
・資本金
・取引銀行
・従業員への給料日
・売上高
・不動産
・仕入先への支払条件
・利益
・社長の財産
・主要な仕入先
・従業員数 ・主要顧客
(b)信用調査会社(帝国データバンク、東京商工リサーチ)から
データ購入(nifty→東京商工リサーチ 1,260円)
(c)興信所に調査依頼(㈱R&I 52,500円~)
(d)銀行、同業他社、取引先の顧客にヒアリング
(e)不動産は登記簿を調査
(法務局1,000円、インターネット検索980円)
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②与信限度額(売掛金残高の限度額)の設定
・信用調査の結果により設定
・危険信号発生時に引下げ
・限度額を超える時にチェックが入る仕組み
③回収条件‥‥基本的には早い現金化
(a)現金取引、個別案件ごとの請求
(b)相殺
取引先
御社
(c)三角相殺
仕入先
御社
取引先
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④所有権の移転時期‥‥有利な契約に、契約内容の把握
<売主にとっては遅く・買主にとっては早く>
受注
納入
検収
入金
・大手メーカー基本契約書‥‥検査合格時(検収)
・他の会社‥‥引渡し時(納入)という場合あり
・民法‥‥不特定物の特定時(検収)、自由に定められる
・契約で入金時とすることも可能(所有権の留保)
・ただし、危険負担(盗難・災害時の責任)あり
・御社の標準基本契約書はありますか?
(2)日常の管理
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①取引先の状況の把握、定期的な信用調査
(a)定期的な訪問
・機械の稼働状況、製品在庫・部品在庫の状況
・トイレの汚れ具合 ・従業員の挨拶、元気の有無
(b)取引先の顧客の状況をウォッチする
・納入品は、どこ向けの何に使われているか把握
・世の中の動きが取引先にどう影響するか
(c)取引先との会話
・緊急保証、雇用調整助成金などを
・最近どうですか? 話題にして操業度、リストラ状況
ではダメ
などを把握
・○○向けの△△が□割減(具体的)
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②日頃からの情報源の確保
(a)取引先の社長、従業員と仲良くなる⇒教えてもらえる
(b)その他の関係者とのギブ&テイクの付き合い
国税庁
県税事務所
社会保険事務所
顧客
社長
取引先
従業員
銀行
他の納入
業者
御社
取引先のラ
イバル会社
5.危険信号をキャッチしたら
(1)危険信号をキャッチしたら
①すぐ取引先へ行き、状況を確認
②取引状況の把握
・未回収売掛金、納品済み未検収、手形
・契約条件(基本契約書、回収条件等)
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具体的な個別
事例でのご相
談は弁護士等
にお願い致し
ます
(2)支払遅延が起きたら
②責任者と面談
・面談場所を選ぶ
・実印を持参させる
・関係がよければ現金支払も可能
・支払約束を文書化(日付・署名・捺印)
(配達証明付内容証明郵便)
・「もう少し待って」よりも手形・小切手
①支払請求
・電話で催促
・請求書の再発行
・直接訪問して催促
・文書による催促
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(3)手形のジャンプ(書換え)を申し込まれたら
①代表者に手形の保証人となってもらう
・表の振出人の横に「保証人○○○○」署名捺印
②担保を取る
・取引先の機械等を譲渡担保としてもらう
(4)倒産必至と判断できたら(状況を判断、無理やりはダメ)
①支払請求
②商品の引上げ(当社に所有権ある場合)
・念書に取引先の責任者(役職者以上)の署名捺印
(専有権は取引先にあり無断に引上げると窃盗罪)
③商品買上げ、売掛債権と相殺(所有権ない場合)
・取引先の合意、念書
④代物弁済
・取引先の合意、念書(残債権の留保必要)
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⑤取引先から債権譲渡を受ける
・債権譲渡契約書
・債務者の承諾書、又は債務者宛の通知
(配達証明付内容証明郵便)
取引先の
納入先
取引先
譲渡
御社
否 認
会社更生、民事再生、破産の
法的手続きに入ると、不渡り
前後の支払・担保設定が否認
される可能性がある
< ダメもとでも実施 >
・法的手続きにならない
ケース多い
・法的手続きでも否認され
ないケースもある
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6.中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)


毎月一定の掛金
・5,000円から80,000円(5,000円単位)
・掛金のMAXは320万円
取引先が倒産した場合に、積立てた掛金総額の10
倍の範囲内(最高3,200万円まで)で回収困難な売
掛債権等の額以内の貸し付けを受けることができる
・貸付期間 5年(据置期間6か月を含む)
・貸付条件 無担保・無保証人・無利子
(但し、貸付けを受けた共済金額の1/10に相当
する額が、掛金総額から控除される)