青年期における成人性意識の検討 —現代における 現実認識・他者基準・希望の視点より— 高澤 健司 (中央大学大学院文学研究科) 問題と目的 ・現代における青年期から成人期への移行 =連続的な過程のなかでの移行(高澤, 2003) ・「おとな」の具体的なイメージが難しい ↓ 現代における「おとな」イメージの検討 ・何を重視するのか。 ・重視するものが変化するとしたら, 何が要因となっているのか。 方 法 対象者:都内公立中学生289名 (男132名, 女157名, 平均年齢13.35, SD=0.94) 都内専門学校生175名 (男60名, 女114名, 不明1名, 平均年齢21.67, SD=5.42) 調査方法:質問紙調査,2003年9,10月に実施 質問紙作成: 先行研究より「おとな」へのイメージに関する24項目を抽出。 →この24項目を「現実認識」「他者基準」「希望」 の3領域で判断するよう回答を求めた。(4件法) 「おとな」イメージの3領域 ・現実認識…現在の自分をおとなかどうか 判断する理由。 ・他者基準…他者をおとなかどうかを判断 する基準。 ・希望…自分がなりたいおとなイメージへ の重要性。 「現実認識」領域の因子構造 社会的関係 経験・信頼 他人への配慮ができるから .801 -.073 善悪の判断ができるから .778 -.258 人との約束を守るから .764 -.060 相手の立場を考えて行動するから .753 .057 自分のことは自分で決断できるから .720 -.063 客観的に物事を判断するから .717 .066 礼儀正しいから .716 -.167 協調性があるから .680 -.019 自分の行動に責任をとれるから .638 .225 感情のコントロールができるから .622 -.030 自分の考え方を持ち,人前で言えるから .577 .003 社会について考えているから .540 .100 周りからひとりの人間として認められているから .536 .262 外見 .032 .010 -.049 -.089 -.019 .059 .071 .078 -.196 .048 .149 .037 .001 成長 .087 .176 .052 .023 -.010 -.014 .037 .051 .055 -.097 -.089 -.055 -.036 はっきりした生きる目的を持っているから 仕事をうまくこなせるから 結婚しているから .534 .103 -.313 .180 .730 .624 -.013 .042 .216 -.081 -.013 .251 経済的に自立しているから 信頼されているから -.157 .357 .624 .554 -.064 .003 -.001 -.051 経験を積んでいるから 化粧をしているから おとなっぽい服装をしているから 年齢がおとなに達しているから 身体的に成長しているから .268 .008 .110 -.024 .164 .515 -.004 .029 .080 -.046 -.066 .780 .701 -.094 .117 -.053 .030 -.072 .904 .507 因子間相関 社会的関係 経験・信頼 外見 成長 α係数 第1因子: .92 第2因子: .76 1.000 .361 .290 .257 1.000 .316 .084 第3因子: .75 1.000 .334 最尤法,プロマックス回転 1.000 第4因子: .68 「他者基準」領域の因子構造 社会的関係 経験・信頼 .919 -.094 .853 -.049 .781 .012 .773 .053 .772 -.102 .760 .003 .759 .086 .702 .008 .688 .134 .654 .239 .617 .104 .514 .107 -.010 .879 他人への配慮ができる 善悪の判断ができる 客観的に物事を判断する 人との約束を守る 礼儀正しい 感情のコントロールができる 自分の行動に責任をとれる 協調性がある 客観的に物事を判断する 相手の立場を考えて行動する 自分の考え方をもち,人前で言える 社会について考えている 信頼されている 仕事をうまくこなせる 周りから一人の人間として認められている はっきりした生きる目的を持っている 経験を積んでいる おとなっぽい服装をしている 化粧をしている 結婚している 年齢がおとなに達している 因子間相関 社会的関係 経験・信頼 外見・成長 外見・成長 .013 -.018 -.027 -.072 .164 .045 -.180 .113 .021 -.078 .023 .160 -.029 -.005 .129 .292 .725 .714 .522 .067 -.004 -.060 .195 .025 .511 -.029 -.008 .855 -.026 -.095 .096 .022 .359 -.069 .741 .407 .404 1.000 .718 .275 α係数 第1因子: .94 第2因子: .87 1.000 .275 最尤法,プロマックス回転 1.000 第3因子: .70 「希望」領域の因子構造 客観的に物事を判断する 協調性がある 他人への配慮ができる 感情をコントロールできる 自分の考え方をもち,人前で言える 相手の立場を考えて行動する 自分のことは自分で決断できる 善悪の判断ができる 自分の行動に責任をとれる 人との約束を守る 社会について考えている 礼儀正しい はっきりした生きる目的を持っている 社会的関係 経験・信頼 .939 -.193 .937 -.165 .890 -.066 .720 -.033 .695 .058 .674 .209 .673 .182 .639 .163 .599 .227 .597 .215 .575 -.001 .553 .182 .502 .317 外見・成長 .044 .006 -.062 .024 -.006 -.063 -.031 -.012 -.110 -.039 .188 .094 .017 信頼されている 仕事をうまくこなせる 周りから一人の人間として認められている .037 -.036 .151 .918 .727 .706 -.049 .090 .020 経験を積んでいる おとなっぽい服装をしている .238 -.001 .518 -.024 .055 .920 化粧をしている 身体的に成長している 年齢がおとなに達している -.063 .079 .021 .032 .052 .036 .699 .561 .441 因子間相関 社会的関係 経験・信頼 外見・成長 1.000 .758 .235 最尤法,プロマックス回転 α係数 第1因子: .94 第2因子: .87 1.000 .256 1.000 第3因子: .76 自分はおとなだと思うか(認識条件) 中学生 専門学校生 無回答 1% はい 8% はい 24% はい はい いいえ いいえ 無回答 いいえ 92% いいえ 75% 中学生 はい…24名(8.28%) いいえ…266名(91.72%) 専門学校生 はい…42名(24.00%) いいえ…132名(75.43%) 無回答…1名(0.57%) 各領域における認識条件の検討 一元配置分散分析 「現実認識」領域の認識別因子得点 はい(n=56) 0.90 いいえ(n=312) -0.16 経験・信頼 外見 -0.53 0.03 0.10 -0.01 24.07 0.09 *** n.s. 成長 0.50 -0.09 20.86 *** 社会的関係 F値 67.50 *** 「他者基準」領域の認識別因子得点 はい(n=60) いいえ(n=338) F値 社会的関係 0.06 -0.01 0.30 n.s. 経験・信頼 0.02 0.00 0.03 n.s. 外見・成長 0.05 -0.01 0.23 n.s *** p<.001 ** p<.01 * p<.05 †p<.10 「希望」領域の認識別因子得点 社会的関係 経験・信頼 外見・成長 はい(n=61) -0.07 -0.12 -0.03 いいえ(n=341) 0.01 0.02 0.01 F値 0.39 n.s. 1.09 n.s. 0.05 n.s *** p<.001 ** p<.01 * p<.05 †p<.10 認識条件 現実認識条件でのみ有意差 社会的関係,成長…自分をおとなと認識している↑ 経験・信頼…自分をおとなではないと認識している↑ 他者基準,希望条件では有意差見られず 各領域における属性条件の検討 「現実認識」領域の因子得点 社会的関係 中学生(n=210) -0.13 専門学校生(n=159) 0.17 -0.09 0.09 0.12 -0.12 4.94 5.04 0.24 -0.32 37.59 経験・信頼 外見 成長 F値 8.98 ** * * *** 「他者基準」領域の因子得点 中学生(n=238) 専門学校生(n=162) F値 社会的関係 -0.17 0.24 17.72 *** 経験・信頼 -0.14 0.21 13.83 *** 外見・成長 -0.01 0.01 0.03 n.s. *** p<.001 ** p<.01 * p<.05 †p<.10 「希望」領域の因子得点 中学生(n=236) 社会的関係 -0.19 経験・信頼 -0.15 外見・成長 0.10 専門学校生(n=165) 0.27 0.22 -0.14 F値 21.92 *** 14.64 *** 6.43 * *** p<.001 ** p<.01 * p<.05 †p<.10 属性条件 現実認識:社会的関係,経験・信頼…専門学校生↑ 外見,成長…中学生↑ 他者基準:社会的関係,経験・信頼…専門学校生↑ 希望:社会的関係,経験・信頼…専門学校生↑ 外見・成長…中学生↑ 考 察 専門学校生は社会的な項目で,中学生は外見で おとなを判断する傾向が高い。また,自分がおと なかどうかという認識よりも属性条件の方だけで 他者基準と希望で差が見られた。 ↓ 自分がおとなであるかという認識よりも年齢 及び所属の変化によっておとなに対するイ メージの質的変化があることが明らかになっ た。
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