社会科学部・社会科学総合研究 「子どもと育ちの社会科学」(1) Ⅰ 子どもの発達環境の複雑性と 学際的社会科学の必要性 1. 必然的な政策課題としての子どもの発達環境 2. 政策目標としての子どもの「健全な発達」? 3. 制度設定の複雑性―例:学校選択制 4. 制度設計における社会科学的手法の必要性 5. 規範的観点としての子どもの主体性 2007年10月2日 社会科学総合研究 「子どもと育ちの社会科学」(1) Ⅰ 子どもの発達環境の複雑性と学際的社会科学の必要性 1. 必然的な政策課題としての子どもの発達環境 子どもの発達環境としての ・学校制度 ・家族制度 ・少年司法 ・マスメディア ・ …… いずれも政策的課題の対象 特徴としての機能の相互依存性 (例:学校満足度の犯罪抑制機能) 社会科学総合研究 「子どもと育ちの社会科学」(1) Ⅰ 子どもの発達環境の複雑性と学際的社会科学の必要性 10-19歳10万人あたりの殺人検挙少年人数 (左目盛り) と 高校進学率 (右目盛り) 3.00 100 90 2.50 80 2.00 70 1.50 60 1.00 50 0.50 40 0.00 30 1946 51 56 61 66 71 76 10-19歳10万人あたりの殺人検挙少年人数 81 86 91 96 2001 高校進学率 (%) 社会科学総合研究 「子どもと育ちの社会科学」(1) Ⅰ 子どもの発達環境の複雑性と学際的社会科学の必要性 2. 政策目標としての子どもの「健全な発達」? ・目標としての不明確性 ・主観的評価に基づく非合理的な政治的影響 個人の選択をできる環境整備が政治課題であることを 忘れて論争参加者が自らの個人的趣味を政策目標と して家庭等に義務づける発想に後退する危険 ――具体例としての「教育再生会議」問題・後述 対抗的な視点としての「リスクとしての子ども」 ・不安感情の増幅によって作られた規範的視点 (「凶悪な青少年犯罪が増加している」認識の嘘・前述) 社会科学総合研究 「子どもと育ちの社会科学」(1) Ⅰ 子どもの発達環境の複雑性と学際的社会科学の必要性 3. 制度設定の複雑性―例:学校選択制 ・効率性の視点 +家庭教育との一貫性の視点? but: 一回限りの選択という制度的欺瞞 ・選択コスト(通学コスト、情報処理コスト) ・帰結としての階層性 特にエリート教育への傾斜配分が伴う時 ・「将来に希望の持てない子ども」を グループとして作り上げることの社会的不利益 ∴規範的目的の自覚化と、手段選択の合理化 -公教育制度の逆進性 -義務教育の目的と私教育への不信と信頼 社会科学総合研究 「子どもと育ちの社会科学」(1) Ⅰ 子どもの発達環境の複雑性と学際的社会科学の必要性 4. 制度設計における社会科学的手法の必要性 非社会科学的な政策提言の例としての 「早寝早起き朝ごはん」(文科省)と教育再生会議 ・運動による政策課題の達成 -新しい行政スタイルとしての側面 -戦時統制的な行政スタイルの面 ・対象の二極化 ――過剰反応&無反応 「3歳児の望ましい就寝時間午後8時」?? - 5時まで勤務の態勢では無理 「望ましい」育児指南による育児プレッシャー ・労働政策・住宅政策・保育政策の失敗を 親に向けて責任転嫁 社会科学総合研究 「子どもと育ちの社会科学」(1) Ⅰ 子どもの発達環境の複雑性と学際的社会科学の必要性 5. 規範的観点としての子どもの主体性 必要なものとしての社会科学的学際研究 -規範的目的の意識化 (実態に合わせて) -手段選択に関わる効果の検証システム -複雑性・相互依存性を前提とした政策立案 憲法上の規範としての「教育を受ける権利」 従来の分析における子どもの客体性 - リスク管理の客体として - 「教育」の客体として 子どもの主体性を構築するために
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