言語活動と学び合い 牛久市立第三中学校研修会

「出会い」と「発見」の学習
探究の学び、真正の学びをつくる
広島学びの会
30 Jun 2012
村瀬公胤 麻布教育研究所
学びの共同体の基礎理論として

モノとの対話、他者との対話、自己との対話

モノを発見し、他者を発見し、自己を発見する
=「出会い」や「発見」としての学習

cf. 低学力とは、「出会い」と「発見」が豊かでない日常
生活・学校生活の結果でもある

学校空間に「出会い」や「発見」を創造する挑戦を
表す理念=「真正の学び」「探究と表現の学び」
真正の学びとは

真正
 Authentic:

正統派、まっとう、本物
真正の学び
 ほんものの学び(まがいものでない学び)
 学問(自然科学・社会科学・人文科学・諸芸)に根ざした
学び
 日常の生活世界が変わって見えるようになる、また社会を
担い、変革するために必要なことが学べる学び
真正の学びではないもの

「教科書を終わらせる・終わらない」
 教科書が終わったら、何が待っているのか。
 「終わらせる」とは、教科書のそのページを開いた、
そのページに書いてあることをノートに写した以上
の何かを意味しているのか。

「授業を流す」
 授業は流すものなのか。
 流すとは、しゃべる側の論理でしかないのでは。

つまるところ、学習の成果、学習を修めたあとの
子どもたちのイメージが貧しい
評価(テスト)再考

大学生の質問
 「授業を聞いていても、テストに出るところが
イメージできないので、テストについてもう少し
説明してほしいです。」
テストの作り方

Aができるかどうかをテストしたいとする
 絶対評価(pass/fail)

と仮定して
良いテストの条件は、
 Aができる人は必ずpassすること
 Aができるのにfailしちゃうことはないこと
 Aができない人は必ずfailすること
 Aができないのにpassしちゃうことはないこと
テスト問題を考える:クロール編

「クロールについて次の空欄を埋めよ」
水面に(
)姿勢で、
(
)で交互に水をかき、
(
)を上下に動かし、最も
(
)く泳げるとされる泳法
テスト問題を考える:クロール編


「クロールについて次の空欄を埋めよ」
水面に( うつぶせの )姿勢で、
( 左右の腕 )で交互に水をかき、
( 足 )を上下に動かし、最も
( 速 )く泳げるとされる泳法
これが全部埋められたらクロールが泳げる人
なのだろうか→そんなわけはない
テスト問題を考える:江戸幕府編

「江戸時代の三大改革の名を挙げよ」
(
)の改革
(
)の改革
(
)の改革
テスト問題を考える:江戸幕府編


「江戸時代の三大改革の名を挙げよ」
( 享保 )の改革
( 寛政 )の改革
( 天保 )の改革
この問題に答えられたら、江戸幕府の
経済政策を理解した証拠と言えるだろうか。
テスト問題を考える:江戸幕府編
2

「江戸時代の享保の改革、寛政の改革、天保の
改革は、田沼意次の改革と区別されて三大改革
と呼ばれている。この3つの改革の共通点は何
か、述べよ」
テスト問題を考える:江戸幕府編
3


「江戸時代の享保の改革、寛政の改革、天保の
改革は、田沼意次の改革と区別されて三大改革
と呼ばれている。この3つの改革の共通点は何
か、述べよ」
「1801年、あなたが幕府の老中だったら、ど
のような改革をするか述べよ」
“真正の評価”

ほんとうの(authentic)評価
 社会生活で発揮される能力として、
 基準(criteria)に達しているかどうか、
 “到達度評価”
 実際的な活動の中で評価される。

“真正の学び”は、“真正の評価”を構想するとこ
ろから逆算しても構築できる
なぜ真正の学びなのか


学習の悦びのために
学習=出会いと発見のよろこび
 そうだったのかと、世の中が違って見えるようにな
る
 ああ、すごいな、美しいなと感動する
 学んだ自分が、成長したと思える
 もっと学びたいと思う

子どもたちの出会いと発見に寄り添う教師に
 そのつぶやきの価値がわかるために
 子どもたちとともに悦ぶために
具体例として・1

小学校理科「植物のからだ」
 根・茎・葉
 ほんとうにわかれているのか
 なぜわかれているのか
 どうしてわかれていると言えるのか
具体例として・2

中学校国語「漢和辞典」
 漢字の読み方を調べるためだけにあるのではない
 漢文という異言語への道標
 漢字ワールドにトリップさせてくれるガイドブック
 通樋桶踊埇蛹
 私たちの言語世界の豊かさを教えてくれる
実践編

あらゆる授業で「出会い」や「発見」を準備する
ことができるのだろうか。

基礎・基本との兼ね合い

根本の考え方:
 基礎・基本は応用・適用なしには学ばれない
 基礎・基本のない応用・適用は成り立たない
cf. 相補性の原則

教育業界には二項対立が多すぎる
 教師主導<>児童中心
 基礎・基本<>思考力・応用力
 生活・日常<>科学的・体系的


二項対立はバランスによって解決されるのではな
い
二項対立は相補的にとらえる必要がある
実践編

あらゆる授業で「出会い」や「発見」を準備する
ことができるのだろうか。

基礎・基本との兼ね合い

根本の考え方:
 基礎・基本は応用・適用なしには学ばれない
 基礎・基本のない応用・適用は成り立たない
授業デザイン

「指導案」
 教える内容はすでに決められていて、それを出す順
番と方法が記述されている

「授業デザイン」:以下を考え、記述すること
 出会いと発見を教室に実現するために、
 何と出会わせるのか、
 どのように出会わせるのか、
 なぜそれと出会わせなければいけないのか、
 それと出会うと、子どもたちはどのように幸せにな
るのか
それでも残る疑問について


反復、習得、記憶、スキルは必要ではないのか?
→必要である
実践的対応
 反復の前と後がだいじ
 覚える前に納得する、覚えたら使ってみる
 反復ではない可能性をとことん考える
 本当に必要かどうかを切り詰める
 反復そのものを探究に埋め込む
 「気づいたら反復していた」に持ち込む
 記憶ではなく、「自動化」「省エネ化」
日本の教師たちの共通課題
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リミッターがかかる
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子どもを「子どもあつかい」する

易しすぎる・優しすぎる

親心が学びを阻害する
学びとは挑戦である
 つまずいて、転んだところから起き上がるとき、学び
が生じる
 教師は、わからせるのが仕事ではなく、安全に転べる
場をつくるのが仕事=学ばせる授業への転換

参考文献

『現場で役立つ教育の最新事情』
武田・村瀬・嶋﨑編著 ,北樹出版 2012.