木材と鉄筋コンクリート等の 複合建築物に関する構造技術の開発 独立行政法人建築研究所 構造研究グループ 河合直人 講演内容 Ⅰ 「木質複合建築構造技術の開発」 プロジェクトの概要 Ⅱ 同プロジェクトの検討内容・成果 Ⅲ 今後の技術開発課題 Ⅰ 「木質複合建築構造技術の開発」 プロジェクトの概要 • 平成11年に5カ年の建設省総プロとして スタート。 • 最終年度(H15) 国交省総プロ「木材活用型低環境負荷 建築構造技術の開発」 独法建研課題「木質複合建築構造技術 の開発」 技術開発の対象 木質ハイブリッド部材 鉄板 鋼板等 集成材 集成材 集成材 集成材 ボルト等 ボルト ボルト ボルト等 集成材 集成材 木材 補強部材 (F R P、 金 属 等 ) 鋼板、FRP等 木質ハイブリッド構造 背 景 O2 酸素 O2 CO2 CO2 二酸化炭素 樹齢の成長 樹齢の成長 (二酸化炭素の固定) ( CO2の吸収) 建物の使用期間 建物内に固定された (固定した二酸化炭素の保存) 炭素の保存 樹本の再成長 森林におけるCO (二酸化炭素の再固定) 2 の再固定 • 地球環境問題(CO2削減) • 建築基準法の性能規定化 • 民間における木質複合部材の開発状況 技術開発の目的 • 木質ハイブリッド部材、接合部及び木質ハイ ブリッド構造の構造性能と防火性能に関して、 性能評価法と設計法を開発する。 • 技術的課題としては; - 高性能の部材、接合部等の開発, - 木質ハイブリッド部材の耐力・剛性評価, - 木質ハイブリッド構造の地震時挙動, - 火災安全性の実現方策, 等。 検討体制 国土交通省 国総研 独法建研 公益法人 共同研究 建築センター, 建築業協会, 構造技術者協会, 住木センター, ツーバイフォー協会, 等 研究調整委員会 構造分科会 全体構造WG 複合システムWG 各部構造WG 木質システムWG 研究協力 防災科研 防火分科会 共同住宅 試設計WG 大学 部材・構造耐火性能WG 区画火災制御WG 森林総研 Ⅱ プロジェクトの検討内容と成果 (1)防火性能に関する検討 (2)構造性能に関する検討 (3)試設計 (4)研究成果のまとめ 現行建築基準法における 耐火建築物に対する要求 • 階数4以上の建築物は、主要構造部を耐火 構造とすることが要求される • 耐火建築物は火災の後も建ち続けなければ ならない。 • 1時間耐火構造の部材の試験では、1時間 の加熱後、炉内に3時間放置して鉛直荷重 支持能力が保たれることを確認する。 現行基準法における耐火時間の要求 要求耐火時間 非損傷性 建築物の部分 間 耐力壁 仕 切 非耐力壁 壁 耐力壁 壁 非耐力壁 外 (延焼部分) 壁 非耐力壁 (上記以外) 柱 床 はり 屋根 階段 最上階・最 上階から2 ~4の階 1時間 最上階 から5~ 14の階 2時間 最上階か ら15以上 の階 2時間 遮熱性 遮炎性 ― ― 1時間 1時間 2時間 2時間 1時間 ― ― 1時間 1時間 1時間 2時間 2時間 2時間 30分間 30分間 3時間 2時間 3時間 30分間 30分間 ― 1時間 ― ― ― ― ― ― 30分間 ― 木材活用型の耐火構造の部材の提案 「燃え止まり部材」 「被覆系部材」 耐火試験の実施 燃え止まるメカニズム 耐火試験の概要 • 試験体 – 個数: 原則として加熱面ごとに2体 – 形状と大きさ: 原則として実際と同一 壁 3 × 3 m 以上 床 4 × 3 m 以上 柱 3 m 以上 はり 4 m 以上 試験条件 • 炉内温度 (ISO834) T 345log10 8t 1 20 判定条件 非損傷性 – 壁、柱 最大軸方向収縮量 h/100 (mm) 〃 収縮速度 3h/1000 (mm/分) – 床、はり、屋根 最大たわみ量 最大たわみ速度 L2/400d (mm) L2/9000d (mm/分) h:初期高さ、L:支点間距離、d:圧縮縁から引張 り縁までの距離 (mm) 判定条件 遮熱性: 壁、床 裏面の温度上昇 平均 140K以下 最大 180K以下 遮炎性: 壁、床、屋根 非加熱側へ火炎が噴出しないこと 非加熱面への発炎がないこと 損傷を生じないこと • 準不燃材料以外を含む場合 – 加熱終了後も(加熱時間の3倍時間)、 再燃焼などによる温度上昇、それに伴う崩壊 などの危険がないことを確かめる 耐火試験の例 柱 1時間耐火 燃え止まり型(試験 体) H形鋼300×300×10/15 集成材(ベイマツ)60mm被覆 柱 1時間耐火 燃え止まり型(加熱終了後) 炉外に取り出した時点で燃焼なし、鋼材の最高温度は約110℃ 各部詳細 • 各部詳細の検討 外壁と床の取り合い、最下階の床、軒裏、 防火区画の貫通部、防火戸などの防火設備、 バルコニー、その他 • 防火被覆の留意点 室内から見てすきまなく連続 部材の接合部分も連続 耐火構造以外の部材との取り合い 防火被覆の留意点 サッ シ 屋内側の耐火被覆 外壁の屋外側耐火被覆 取合い 部は隙間な く 耐火被覆材で 覆う 床( 上面) の耐火被覆 床( 下面) の耐火被覆 取合い 部は隙間な く 耐火被覆材で 覆う 屋内側の耐火被覆 防火被覆は室内から見てすきまなく連続させる コンセントボックス廻りの耐火試験 RW-1 RW-2 RW-3 他の耐火建築物の可能性 • 構造レベルの複合 による耐火建築物 • スプリンクラーの利用 可燃物の燃焼の制御 木材の着火の防止 炭化の抑制 (2)構造性能に関する検討 • • • • 各部構造に関する検討 全体構造に関する検討 複合システムに関する検討 木質システムに関する検討 各部構造に関する検討 • • • • 部材・接合部等の耐力・剛性評価 耐力・剛性に及ぼす影響因子 部材・接合部設計の考え方 接着耐久性の評価法 実験例:炭素繊維シート補強部材の曲げ試験 80 荷重 (kN) 補強あり 集成材 (補強なし) 40 炭素繊維 シート 補強なし 0 100 変位 (mm) 200 接着耐久性の評価法 • 木質ハイブリッド構造には、耐力剛性 の高い接着接合が有効。 • 接着耐久性の確保方策、評価法の確 立が課題 • 木材と他材料の接着について基礎的 な実験を実施。 • 接着耐久性の評価の考え方を整理し、 標準試験法・評価法を提案した。 構造システムに関する検討 • • • • • • 地震時挙動及び設計用地震力 床の面外の力学的挙動 静的地震力に対する応力算出方法 構造物全体の長期的挙動 限界耐力計算適用上の課題 構造性能評価の原則 地震時挙動及び設計用地震力 • 立面的な複合システム について、Ai分布の妥 当性、剛性率による地 震力割増しの必要性を 検討 せん断力係数の分布形 層 せん断力係数の分布形 複合システムに関する構造的検討 • 複合システム(木+RC等の平面的複合構 造システム)の構造設計指針の内容検討 • 複合システムの振動台 実験を実施 • 設計の自由度を拡大 するための割裂強度 算定式の提案 複合システムの振動実験 複合システムの試設計例 (中田・山辺・杉本) 木質システムに関する構造的検討 • H形鋼を用いた接合部の開発 • 木質システムに有効な高性能耐力壁及び 連層壁システムの開発及び性能評価 • ホテルの試設計(ツーバイフォー協会) • 狭小間口対応の試設計(木住協) 木質システム ・ 木質ハイブリッド部材で構成さ れる構造システム ・ 木質構造の異種構造どうしの 複合構造 (3)共同住宅の試設計 • 耐火構造となる5階建て共同住宅の 試設計を以下の2ケースにつき実施 • 1階S造、2~5階は燃え止まり部材 (内部H形鋼・外部集成材)による ラーメン構造 • 1階S造、2~5階を燃え止まり部材 の柱梁+壁式構造 共同住宅の試設計 断面図 柱梁接合部詳細 (4)研究成果のまとめ • 構造部材に木材を活用した4階以上の建築 物が現行基準法で建設可能であることを示し、 実用化の段階に入った。 • 成果物として、以下の文書をとりまとめた。 「木質複合建築物の性能評価の原則」 「木質複合建築物の設計・施工指針」 Ⅲ 今後の技術開発課題 • 平面的複合システムの耐震設計法: 地震時挙動と設計用静的地震力 簡易な耐震設計法の開発 • 燃え止まり部材の製造方法の改善: 隙間を充填するタイプの接着剤の使用 耐火性能の確認 国産材を用いた燃え止まり部材の開発 • 燃え止まり部材による合理的な設計法
© Copyright 2024 ExpyDoc