新学術領域「コンピューティクスによる物質デザイン:複合相関と非平衡ダイナミクス」 計画研究 A03高田班「第一原理系励起状態の多体論と高転移温度超伝導物質デザイン」 2013年7月8日(月) 東京大学武田ホール(武田先端知ビル5F) 電子ガスに埋め込まれた単一陽子系 における近藤共鳴状態の出現 東大物性研(CMSI) 吉澤香奈子 北陸先端大情報科学 前園涼 東大物性研 高田康民 1 Outline • Introduction • 陽子埋め込み電子ガス系の物理 Local density approximation (LDA) と Diffusion Monte Carlo (DMC)で密度n(r)を計算 * electron density at the proton site n(0) ← DMCのn(0)を求める。 DMCとLDAの比較 * 位相シフト dl(k) ← 束縛状態の有無を調べる。 • Summary 2 Introduction n0 =3/ 4π aB3 rs3 密度パラメータ 陽子埋め込み電子ガス系の物理 → 電子の遍歴性と局在性が絡む一番簡単 な第一原理系 Z 電子ガスの1不純物問題、1970年代から研究されている Z, rs ≪1:線形応答理論で記述できる。 遍歴電子による誘電遮蔽が起こって原子核の周りに 電子は局在しない。スピン偏極もない。 LDAの計算 rs 〜 2で不安定 Z, rs ≫1:電子が原子核に束縛されて局在化 - ← 中間領域を詳しく調べたい ・ rs → 小 (高密度) 水素陽イオンH+の誘電遮蔽状態。 局在しない。 ・ rs → 大 (低密度) 陽子の周りにシングレットの電子対が局在した 水素負イオンH(Z < 4 ではスピン偏極しないので、Hではない) 0.2 d E [Hartree] Z=1 LDA H 0 (Z = 1) LDA H (Z = 1) LDA H + (Z = 1) H atom (Exact) H atom (LDA) H- ion (CI by Umrigar) 0.4 0 -0.2 -0.4 -0.6 2 4 6 C. O. Almbladh, U. von Barth, Z. D. Popovic, and M. J.Stott, Phys. Rev. B 14, 2250 (1976). ← LDA J. K. Nørskov, Phys. Rev. B 20, 446 (1976). ← LDA G. Sugiyama, L. Terray, and B. J. Alder, J. Stat. Phys. 52, 1211 (1988). ← VMC V. U. Nazarov, C. S. Kim, and Y. Takada, Phys. Rev. B 72, 233205 (2005). ← LDA 8 10 12 rs 3 14 Z=1 ・ rs → 小 (高密度) 線形応答で記述できる。 水素陽イオンH+の誘電遮蔽状態。 局在しない。スピン偏極しない。 ・ rs → 大 (低密度) 陽子の周りにシングレットの電子対が局在した 水素負イオンH-。スピン偏極しない。 H+ 問題点 rs H- わ か っ て い る こ と LDAの計算 rs 〜 2で不安定 • クロスオーバーか転移密度があるのか? • もし転移点があるなら、H+ と H- の間の転移か? その間に他の状態はないのか? • rs → 大で、電子相関は強くなる LDAの結果は正しいのか? (LDAでH-を記述できるのか?) DMCの結果と共に解析をする 4 陽子埋め込み電子ガス系の物理 ハミルトニアン Z 電子密度 n0 =3/ 4π aB3 rs3 密度パラメータ DMCの計算 LDAの計算 スレータ•ジャストロ型の試行 関数 Kohn-Sham方程式 Kohn-Shamポテンシャル ジャストロ関 数 2体項 電子間 外場 1体項 3体項 2電子と原子核 LDA 5 DMCの計算(有限系) n(r)Z=1 – n(r)Z=0 0.04 DMC LDA 0.003 rs = 1 rs = 1 0.02 3 0.01 0 -0.02 rs = 4 rs = 4 0.001 0 -0.002 1 1.5 0.00015 2 2.5 r [a B] DMC LDA 0.0001 3 N = 60 N = 60 -0.001 -0.01 n(r) [1/aB ] DMC LDA 0.002 n(r) [1/aB ] 3 n(r) [1/aB ] 0.03 N = 58 N = 58 N = 60 N = 60 3 3.5 4 r s = 12 r s = 12 2 3 4 5 6 r [a B] 7 8 9 10 有限系の場合、端の影響をどうするか? Z=0の陽子のないバックグラウンドだけの 密度を求めて、その部分を引くと、 フリーデル振動が見える 5e-05 0 -5e-05 -0.0001 -0.00015 5 10 15 20 25 r [a B] 30 35 40 45 6 electron density at the proton site n(0) rs = 4 0.02 0.55 DMC N = 60 LDA N = 60 infinite LDA 0.016 0.5 1 fit 0.4 0.012 0.008 0.8 0.45 0.2 n(0) log n(r) 3 n(r) [1/aB ] DMC LDA H- (umrigar) 1.2 0.6 0.4 0.1 0 0.2 0.4 0.4 1 1.5 2 2.5 3 0.35 0.004 1 1.5 2 2.5 pF r 3 3.5 4 0.3 2 4 6 8 10 12 rs カスプ定理 n(r) ~ n(0)exp(-2Zr/aB) は、 Zr < 0.7aB で成り立つ rs < 2 : nDMC (0) < nLDA (0) rs > 2 : nDMC (0) > nLDA (0) ○ rs~2を境にDMCのn(0)はLDAのそれより小から大に変化 rs < 2ではLDAは電子相関を過大評価、rs > 2では過小評価 LDAは常に電子相関を過小評価する(常にnDMC (0) > nLDA (0))と考えられていたが 7 密度(rs)の大きさによって変わることがわかった。 14 LDAの計算(無限系) 位相シフトdl (k) + H (Z=1) LDA infinity 0.03 0 0 0.02 -0.5 -1 1 rs = 1 rs = 2 rs = 14 -1.5 d0 (0) / p d0 (k) / p Levinsonの定理 -2 1 2 3 4 0 -0.01 2 0 0.01 5 -0.02 6 2 4 6 bound state : 1 12 14 bound state : 2 H+ 1.75 10 rs k [a.u.] bound state : 0 8 H- rs 13.8 これはどのような状態か? H ができてる?スピンは? 8 不純物アンダーソン模型 +Z rs +Z rs 電子ガス中の1不純物問題 → 不純物アンダーソン模型に対応するように見える。 ⦿局在dスピンがある場合、s-d模型に還元 近藤効果 しかし、TKより低温ではシングレット基底状態で非磁性状態 ⦿局在dスピンがなければ、はじめから非磁性状態 いずれにしても、基底状態では非磁性状態のはず。 第一原理から強相関系のハミルトニアンへ 9 近藤シングレット LDA bound state : 1 H+ Kon do sin glet 1.75 H- rs 13.8 束縛状態が1つ存在するが、スピン偏極しない →上向き(下向き)スピンの電子が束縛された場合、下向 き(上向き)スピンの伝導電子で近藤遮蔽されている → 近藤シングレット状態 ○ rs~2やrs~13では何が起こっているか? LDAが有効なrが大きい領域で位相シフトを分析 rs<1.75では単純な金属遮蔽状態、1.75<rs<13.8では近藤共鳴状態、 rs>13.8ではH-で表される2電子局在閉殻状態 であることが分かる。 10 DMCの計算(有限系) DMCは有限系での計算なので、位相シフトを直接求められない。 DMCの密度からどのように位相シフトが p 飛んでいると判断するか? 束縛状態が1つ出来て、DMCの密度が 揺らぐ(不安定になる) 束縛状態が2つ出来て、H-より密度 が下がる DMC N = 58 DMC N = 60 1 rs = 1.6 rs = 1.8 rs = 2.0 rs = 2.2 rs = 2.4 rs = 2.6 0.4 2 n(r) / n0 0.6 0.12 4 p r n(r) [1/aB] 0.8 0.2 0 0.1 0.08 0.06 0.04 0.02 -0.2 1.5 DMC rs = 10.0 rs = 11.0 rs = 12.0 rs = 13.0 rs = 14.0 H (Umrigar) 0.14 2 2.5 3 pF r 0 DMC 3.5 4 4.5 H+ 6.5 7 7.5 H- Kon do sin glet 2.4 8 r [a B] 11.5 8.5 9 rs 11 9.5 Summary 陽子埋め込み電子ガス系の物理 • 位相シフトの解析により、 低密度(rs → 大)になった時の、 H+からH-へ転移密度がわかり、 間にKondo singlet相を発見した。 • DMCのn(0)の値を見積もった。 • LDAの精度 DMCとLDAの比較により、 rs < 2:LDAは電子相関を過大評価 rs > 2:LDAは電子相関を過小評価 (密度(rs)に依存する) Kondo singlet が出来る中間のrs の領域では、LDAはDMCと比べて 悪くない。 DMC H+ H- Kon do sin glet 2.4 rs 11.5 LDA H+ 1.75 相関を過大評価してい るので、束縛状態が出 来やすい HPCによる高精度のDMCとLDAの計算に よって、長年の問題が解釈できた。 H- Kon do sin glet rs 13.8 相関を過小評価してい るので、2つ目の束縛状 態が出来ずらい 12
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