難病者が無理なく働ける 職場と地域づくり 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 障害者職業総合センター 春名由一郎 [email protected] 難病のある人たちの職業的な 問題 就業支援? 企業責任? 職 業 準 備 就 職 活 動 就 職 職 場 適 応 就 業 継 続 ・「こんな状 態では就業 は無理。」 ・「就業はリ スク。」 ・「企業は甘 くない。」 ・「病気が 治ってから 来て下さ い。」 ・「病気を 開示すべき か?」 ・「手帳がな いと支援で きない。」 ・「病気の人 は採用でき ない。」 ・「病気を隠 して就職。」 ・「職場の人 の理解が欲 しい。」 ・「職場に迷 惑をかけら れない。」 ・「病気の再 燃、入院に より退職。」 職昇 、進 退、 職転 ・「障害者で はない。」 ・「能力を公 正に評価して 欲しい。」 ・「処遇の改 善。」 難病者の雇用管理のための 調査・研究会(2004-2006年度) 当事者ヒアリング 事業所訪問調査 約4000回答(患者会の協力;回収率40%) 15疾患で各100名以上の回答 専門医調査 難病連での雇用12例、看護師1例、薬局調剤補助1例 患者実態調査 パーキンソン病、多発性硬化症、クローン病/潰瘍性大 腸炎、重症筋無力症 121疾患 就労可能性が境界域にある疾患について 難病相談・支援センターヒアリング 難病がある人の就業実態 不 明 非就業で就 業希望なし 就業してい る(45%) (26%) 難病がある人(回答者全体) 就業原則 禁止 非就業で 就業希望あり (26%) (8%) 医師から の就業禁止 無し(18%) 特定疾患患者の自立度 ★大動脈炎症候群 ★★★潰瘍性大腸炎 ★サルコイドーシス ★ウェゲナー肉芽腫症 ★★★クローン病 原発性胆汁性肝硬変 ★★特発性血小板減少性紫斑病 ★バージャー病 ★天疱瘡 全身性エリテマトーデス 混合性結合組織病 ★★ベーチェット病 膿庖性乾癬 特発性拡張型心筋症 強皮症/皮膚筋炎、多発性筋炎 重症筋無力症 ★再生不良性貧血 結節性動脈周囲炎 ★★★ウイリス動脈輪閉塞症 ★★原発性免疫不全症候群 ★★★多発性硬化症 特発性間質性肺炎 ★特発性大腿骨頭壊死症 ★★表皮水疱症 ★アミロイドーシス ★後縦靱帯骨化症 悪性関節リウマチ ★★スモン ★脊髄小脳変性症 広範脊柱管狭窄症 パーキンソン病 重症急性膵炎 劇症肝炎 ハンチントン舞踏病 筋萎縮性側索硬化症 シャイ・ドレーガー症候群 0% 10% 20% 30% 40% 自立 一部介助 50% 全面介助 60% 70% 80% 90% 100% クローン病がある人の半数以上が 経験している職業的課題 1/2 遅刻、早退、欠勤をしないで出勤すること 8時間労働を行うこと 適度に休憩するなど能率向上の自己管理をすること 仕事中にトイレを利用すること 食事や休養など健康管理をすること 決められた通院を行うこと 仕事上の身分、仕事内容が安定して継続すること 就職活動(職場訪問、採用面接、求職登録等) 生活全般の満足を得ること クローン病がある人の半数以上が 経験している職業的課題 2/2 病気が原因で退職しない こと 適正な処遇を受けること 適正な仕事量であること 年間21日以上病欠をしな いこと 職業生活全般の満足を得 ること 仕事に就く意欲があること 仕事ができる自信があるこ と 精神的ストレスに適 切に対処すること昇 進をすること 適当な報酬を得るこ と 仕事を継続すること 十分な収入を得るこ と 常勤の職に就くこと 常用雇用されること Hawking教授の職業能力は? •筋萎縮性側策硬化症(発症から 35年以上;人工呼吸器使用) •物理学者 •研究、執筆、講演(海外を含む) ICFの枠組みからみると、 Hawking教授 が働けることは不思議なことではない。 健康状態(ALS) 機能障害 (全身の筋麻痺、呼 吸、心臓機能障害、 発声機能障害) 職業関連 活動 職業的目標 (物理学者、講義 の免除) 環境因子 個人因子 ・職住近接、段差のない家の提供、人的支 ・興味 ・スキル ・知識や経験 援(公的援助サービス、私的な看護婦)、人 工呼吸器(車椅子据付)、電動車椅子、特 殊な入力機器、コンピュータ読み上げ機 それは例外中の例外で・・・ 「難病があると働けない」 従来型の就業支援の概念枠組 (ICIDHモデル) 疾患・失調 機能障害 能力障害 社会的不利 病気が完治 しない、症状 が残る! 仕事・生活が できない! 就業・社会参加 ができない! 医療、介護 訓練、職リハ 雇用枠、作業所 慢性疾患の人たちの生活をどう支えるか? 急性疾患 感 染 等 潜 伏 期 予 防 早 期 発 見 1次 予防 2次 予防 死亡 治 癒 発 症 診 断 治 療 後 遺 症 ーリ シハ ョビ ンリ テ 3次 予防 慢性疾患 死亡 疾患の慢性化 ・経過観察 ・継続的受療 ・自己管理 ・環境の整備 ・リハビリテーション (4次予防) 新しい障害や健康の考え方 ICF(国際生活機能分類)(WHO, 2001) 健康状態 心身機能・ 構造 難病(診断名) 活動 参加 職業生活上の問題 就業機会の制約 症状 環境因子 職場環境整備、地域支援等 個人因子 障害者雇用対策基本方針 (平成15年3月28日厚生労働省告示第136号) 難病により長期にわたり職業生活に相当の制限 を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な 者に対する雇用管理に関する情報の収集・蓄積 に努める、 事業主はこうした難病患者に対し「個々の障害の 状況を十分に把握し、必要に応じて障害に関する 職場の同僚等の理解を促進するための措置を講 じるとともに、障害状況に応じた職務設計、勤務 条件の配慮を行う。 職業上の問題を解決する 環境整備とは? 職場内の物理的、人的、「態度」的、制度 的環境、地域の各種支援機関の利用・・・ 就職、職 業準備、 職務遂行、 職場内人 間関係、 通勤、処 遇、満足 度・・・ 環境整備 問題なし (解決 したものを含む) 職業上 問題あり の課題 仕事に必要な し 整備済み 整備なし(必 要or不必要) a b c d (分析から除外) 効果的な環境整備の例 クローン病で消化器系の機能障害有 職業的課題:「仕事を継続すること」(平均 問題発生率:58.3%) 「主治医・専門医と職場担当者を交えた仕事 内容のチェック」有 ⇒問題発生率0% 「職場内で必要な休憩や疾患の自己管理が できる場所の配慮」有 ⇒問題発生率0% 効果的な環境整備の例 クローン病で「疲れやすさ」有 職業的課題:「食事や休養など健康管理を すること 」(平均問題発生率:40.6%) 「病気や障害に関わらずキャリアアップができ るための人事方針」有 ⇒問題発生率4.8% 「上司・同僚の病気や障害についての正しい 理解」有 ⇒問題発生率12.9% 「仕事上の相談にのってくれる同僚・上司・上 役」有 ⇒問題発生率14.3% クローン病がある人へのガイドライ ン整備後の職業的課題の予測 半数以上の人が経 験するであろう職業 的課題 なし 20%~50%の人が経験す るであろう職業的課題 精神的ストレスに適切に 対処すること 昇進をすること 適当な報酬を得ること 仕事を継続すること 十分な収入を得ること 常勤の職に就くこと 常用雇用されること 適切な環境整備があれば仕事 ができると思うか? 絶対に仕事 はできない (10%) 絶対に仕事 ができる (12%) 仕事はできな いと思う 非就業者全体 (17%) わからない (23%) 仕事ができる と思う(38%) 環境整備の影響のシミュレー ション結果(20%以上が「問題あり」と した職業的課題数の変化) 脊髄小脳変性症 脊髄小脳変性症 パーキンソン病 多発性硬化症 パーキンソン病 多発性硬化症 神経線維腫症 神経線維腫症 強皮症 重症筋無力症 強皮症 重症筋無力症 ベーチェット病 シェーグレン症候群 ベーチェット病 シェーグレン症候群 現 状 混合性結合組織病 再生不良性貧血 網膜色素変性症 混合性結合組織病 再生不良性貧血 網膜色素変性症 クローン病 サルコイドーシス クローン病 サルコイドーシス 多発性筋炎・皮膚筋炎 多発性筋炎・皮膚筋炎 全身性エリテマトーデス モヤモヤ病 全身性エリテマトーデス モヤモヤ病 潰瘍性大腸炎 潰瘍性大腸炎 0% 20% 40% 60% 80% 環 境 整 備 後 の 見 通 し 100% (100%=52課題全て) 0% 20% 40% 60% 80% 100% (100%=52課題全て) 4000名弱の難病(特定疾 患)患者の職業場面での 生活機能の調査により、 2007年3月に発表。 難病があると仕事はできないの か? 難病のある人たちの多くは、適切な職場と 地域の環境整備があれば、問題なく働ける。 現状では、環境整備が不十分であるため、問題 が多発している。 企業も社会も「働けない」という先入観があ るために、「働けるようにするための支援」が 実施されない。⇒問題が発生する。 悪循環を断ち切るため、ビジョンに基づく取り組 みが必要。 仕事に就きたい理由 経済的に自立したい: 75% 生きがいや仲間: 73% (現在、仕事に就いておらず、就業を希望してい る人=100%) 「できない」現 状の中でやっ ていくか? ビジョンに基づく取り 組みにより、「できる」 ことを証明するか? 公 正 な 「 能 力 」 従 来 の 「 能 力 」 バリア の除去 個別配慮 の実施 難病のある人への 労働関係機関の役割とは? 難病患者の就業についての 相談先の有用性 主治医や専門医 保健所(保健師) 医療ソーシャルワーカー(MSW) 難病相談・支援センター 公共職業安定所 役に立った 役に立たなかった 障害者職業センター 学校の教師や進路指導担当者 患者団体、難病連(難病相談会) インターネット上での情報交換 その他の専門的相談者 0% 20% 40% 60% 80% 100% 手帳の有無によって左右される 相談先の有用度 手帳有 手帳無 有意確 有効回 有効回 率 平均 平均 答数 答数 778 2.40 0.014 787 2.29 主治医や専門医 725 2.75 0.487 745 2.73 保健所(保健師) 662 2.77 0.000 647 2.87 MSW 623 2.86 0.294 627 2.89 難病相談・支援センター 738 2.65 0.000 738 2.83 公共職業安定所 641 2.79 0.000 633 2.97 障害者職業センター 667 2.85 0.222 699 2.88 学校の教師や進路指導担当者 682 2.71 0.100 730 2.64 患者団体、難病連(難病相談会) 657 2.83 0.308 695 2.86 インターネット上での情報交換 (値の小さい方向が、より役にたった/有用であった。) (薄塗は手帳有が役に立った/有用、反転は手帳無が役に立った/有用) 難病がある人の障害認定状況 1級 脊髄小脳変性症 3級 2級 6級 網膜色素変性症 多発性硬化症 パーキンソン病 5級 ベーチェット病 4級 クローン病 モヤモヤ病 多発性筋炎・皮膚筋炎 サルコイドーシス 重症筋無力症 神経線維腫症 全身性エリテマトーデス 強皮症 混合性結合組織病 特発性血小板減少性紫斑病 潰瘍性大腸炎 再生不良性貧血 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 就業支援は 「仕事ができない人への支援」ではない 自分に 何ができる のだろう? できない… 支 援 求職者 「強み」を見つ けることが最大 支援者 の支援 専門家の役割 関係者のブ レインストー ミング 働けるの だろう か? 「障害をもち ながら働く」イ メージづくり 本人も支援者も 「働ける!」ことを確信 貢献の 重視 いろいろな仕事に就けなくても、特定の 仕事では100%の労働者になれる 何度挑戦しても、 採用に至らない人 たちの存在 求 人 条 件 で の 順 位 付 け オンリーワンの貢献ができる仕事 求職者 求職者の強みや興 味の発見 企業 隠れた人材ニーズの発見 求人依存型の職探し 創造的職探し 所定の条件での競争・選抜においては、 「減点」項目の多い人は圧倒的に不利。 求職者の強み(得意なこと、できること)に注目し、求人以 前の段階にある膨大な「隠れた」人材ニーズを調査しマッ チングすることで、「貢献」に注目した職探しを行う。 ハローワークとの連携 個別的な「働くイメージ」にあった職場を探し出す、or、 作り出す必要 個別に企業にあたっての職探しは、難病相談・支援センター には荷が重い。 企業のニーズに詳しく、それを専門とするハローワークの活 用は不可欠 他の障害分野での社会資源の活用のノウハウ 難病相談・支援センターの役割 「無理なく働けるイメージ」を伝え、企業の不安を解消する 本人のセルフマネジメントへの支援、フォローアップを引き続 き行う 「具体的な企業での職探し」 への取り組み 見出された課題 難病相談・支援センターの 単独支援の限界 新たな実践 ハローワークとの連携 企業に対する職探しは無理 障害者雇用制度の限界 企業は障害者手帳のない人 の雇用のメリットがないという。 ハローワーク、障害者職業セ ンターなどの利用で、身体障 害者手帳が求められる。 「病人」が働くことの理解 企業は安全配慮義務があり、 病人は雇えないという。 企業向けの本人の能力のア ピールや病気への配慮の説 明をハローワークに担っても らうようになった。 個別マッチングの重視 障害者雇用に拘らず、短時 間などの条件があう求人を 探すようにした。 障害者雇用の担当でない、 一般の求人担当にアプロー チする。 身体障害者手帳を所持しない人 • 取得できるのに未取得の場合 – 手帳制度を知らない、認定されないと思い込ん でいる/過去に認定を渋られた、「自分は障害 者ではない」 • 認定基準に該当しない場合 – 疲れやすさ、皮膚、日光過敏、ストレスに弱い、 関節痛、腹痛・・・ – ⇒雇用率制度によらない支援の活用 • 職業紹介、職業リハビリテーション、雇用管理の指 導、医療・保健・福祉等の制度やサービス 障害者雇用支援制度の利用へ の障害者手帳の要/不要 手帳が必要 障害者雇用率への算 定対象(職安) 職場適応訓練(職安) 各種助成金 特定求職者雇用開発(職安) 障害者介助等(雇用支援機構) 障害者作業施設設置等(雇 用支援機構) 手帳は不要 職業相談(職安、職業セン ター、就業・生活支援センター) 職場定着支援(〃) ジョブコーチ支援(職業 センター) 職業準備支援(〃) 職務試行法(〃) トライアル雇用(職安) 「障害者雇用」だけではない 様々な制度やサービスの活用 障害者支援 雇用支援 生活支援 交通、所得、生活、教育、医療・・・・ 介護、支援機器・・・ 一般用の支援 職業訓練、起業・・・ フレックスタイム、短時間、パート・・・ 育児支援、・・・ 難病のある人への ジョブコーチ支援とは? 「ジョブコーチ支援」 従来の「就労支援」 実際の職業生活とは離れた場所で、「就業可能性」等を評 価・判定し、必要な訓練によって、「職業準備性」が高まっ た人だけが、職探しの対象 ⇒ いくら作業所等で「訓練」 しても一般就業にはつながらない ジョブコーチ支援(援助付き雇用) 1990年代から徐々に取り入れられ、現在の職業リハビリ テーションの主流となる取り組み 職業生活の最前線(職場;勤務時間外も含む)における継 続的で個別的な課題把握と、実際の職業場面での職場 適応を促進する個別的支援の提供 知的障害者の職業能力とは? 学習 職業関連活動 コミュニ セルフケ 知識の応 対人関係 社会生活 職務遂行 ケーショ ア 用 ン マンツー 作業補助 工程の単 声かけ 通勤指導 相談員 マン実務 純化 者 指導 機 健常者と 能 障害者雇用には「企業のメリットがない」 障 反復指導 のグルー 安全設備 という先入観、偏見にかかわらず、実際 プ作業 害 ( 単純化 は、企業の中で「戦力」と認められる雇 知 職員研修 職員研修 マニュア 職員研修 家族との レクリ 送迎バス エーショ 連携 ル化 的 用関係が増加している。 健康状態 職務再設 機 チェック 計 能 生活寮 ) 助成金、雇用率 個別レ ベル 環 境 因 サービ 子 スレベ ル 制度レ ベル 「心身に障害があっても、 仕事に障害はあり得ない。」 中村裕 1965年 「太陽の家」創設時 「障害者雇用は特別なことではない」 7.42% 2.94% 「障害者雇用は特別なことでは ない」 「仕事ができない・困難である」場合でも、課 題一つひとつの解決を図ることは可能 学生アルバイト、子育て・介護中のパートと同じ。 仕事内容の調整や配慮に少し時間をかける。 社外の専門的支援を活用する。 「障害者」といっても、健康な生活を送り、教 育を受け、仕事に就き、家族と暮らすなど、 普通のニーズをもっている人である。 最初からご本人のことをよく理解しようとする。 「クローン病」への「職場内支援」 のポイント 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 勤務中の自己管理への職場の配慮 病気や障害に関わらない人事方針 仕事上の相談にのる同僚・上司 職場内の休憩や疾患管理ができる場所の配慮 社内の親睦会などへの参加のしやすさ 通院への配慮 勤務中の休憩を取りやすくする コミュニケーションに時間をかける配慮 上司・同僚の病気や障害への正しい理解 必要な配慮についての 事業所側への伝達状況 脊髄小脳変性症 神経線維腫症 網膜色素変性症 モヤモヤ病 十分に伝えた 一部伝えた 特に伝えなかった パーキンソン病 クローン病 潰瘍性大腸炎 全身性エリテマトーデス 重症筋無力症 多発性硬化症 0% 20% 40% 60% 80% 100% 事業所への病名告知のメリットと デメリット メリット 病気や症状に応じた職場での配慮を受けられる可 能性 通院への配慮、能力的に無理のない仕事への配置、仕 事の内容や仕方の個別的な調整や変更、在宅勤務、短 時間勤務、勤務時間帯の変更、上司・同僚の病気や障 害への正しい理解など デメリット 「仕事はできない」との決め付けによる、就職時の 大きな不利をうけるリスク 「障害者扱い」での処遇での不利をうけるリスク どちらが真実を伝えているか? ~できないことを述べるのは簡単だが・・・ 「彼はクローン病です。こ れは難病に指定されてい る腸疾患です。定期的に 通院する必要があります。 腹痛があったり、トイレに 頻繁に行かなくてはいけ ないことがあります。入院 の可能性もあります。障害 者雇用率にはカウントされ ません。」 「彼は、大学ではデザインを 学んで、前職ではホーム ページ制作も経験しました。 ウェブデザインには自信が あります。持病がありますが、 御社にはフレックス制度が あるので管理も心配ないと、 医師の手紙もあります。職 場での配慮の仕方や雇用管 理についてお困りの点があ れば、無料の支援が提供さ れます。」 「クローン病」への「地域支援」の ポイント 1. 2. 3. 4. 5. 必要な環境整備について会社側に伝える こと 役に立つ医療ソーシャルワーカー(MSW) に相談すること* 患者団体、難病連(難病相談会)に相談 すること 保健所(保健師)に相談すること 役に立つ学校の教師や進路指導担当者 に相談すること* 無理な就労支援からの脱却 欠陥品の売り込み 押し売り だまし売り たたき売り サボタージュ 高度化した就労支援 複雑な評価や訓練 障害受容の支援 行動変容の心理学 専門や報酬体系を超 えたインフォーマル支援・・ 「100%の労働力であ ることを本人も支援者 も確信できること」が全 ての就労支援の基本 本人の自己実現欲求 社会ニーズと本人の貢 献のマッチング 本人のニーズに社会 全体で応える就労支援 「合理的配慮」 (Reasonable Accommodation) 職業能力の公正な評価の前提 過大な負担にならない限り、障害や病気による能 力への影響をなくす配慮を行う社会的責務 その欠如は「障害を理由とした差別」の一つであ るとみなされる。 米国、EUで導入済み。国連障害者権利条約 に含まれる。 判例や、企業と労働者の合議によって具体的内 容が示されつつある。 障害者雇用率制度 • 企業は、全従業員の1.8%は、身体障害者 、知的障害者を雇用する義務がある。 • 精神障害者は雇用義務はないが、雇用し た場合、雇用率にカウントされる。 • 「その他の障害「 – 職業リハビリテーション、ハローワークでの就 業支援などの対象になる – 発達障害、難病(身体障害認定なし)、肝臓機 能障害 雇用助成金制度が活用できる場合 • 個人移動用の支援機器(電動車椅子など) • コミュニケーション・パソコン利用のための支援機 器(含ソフトウェア) • 仕事用の機器や道具、作業机等の個別的な環 境整備や改造 • 職場の出入りの施設改善(ドア、スロープ、駐車 場、非常口など) • 職場内の移動の施設改善(手すり、通路、床面、 案内など) • トイレ、休憩所、食堂等の施設改善 • 職場介助者や手話通訳者などの専門的支援者 職業リハビリテーション、ジョブコーチの活用 • • • • • • • • • • • 必要に応じた同僚等の作業補助 仕事上の相談にのってくれる同僚・上司・上役 生活全般について相談できる専任の相談員 偏見・差別防止のための管理職・職員への啓蒙 従業員の意見を積極的に聞く企業側の態度 社内の従業員の親睦活動、サークル活動などの参加 しやすさ 能力的に無理のない仕事への配置(デスクワークなど ) 仕事の内容や仕方の個別的な調整や変更 職業生活支援サービス(ジョブコーチ、通勤支援など) 職業能力開発校や民間・福祉施設等での職業訓練 必要な環境整備について会社側に伝えること 雇用管理上の助言 • • • • • • • • • • • • • • • ユニバーサルデザイン等、誰もが使いやすい機器・機材 冷暖房、エアコン、空気清浄機など 就職時や配置転換時の研修や技能訓練 マンツーマン個別実務指導(オンザジョブトレーニングなど) 産業医・産業保健師による事業所内の健康管理 主治医・専門医と職場担当者を交えた仕事内容のチェック 職場内で必要な休憩や疾患の自己管理ができる場所の配慮 通院への配慮 勤務時間中の服薬や自己管理、治療等への職場の配慮 病気や障害に関わらずキャリアアップができるための人事方針 在宅勤務 短時間勤務 勤務中の休憩をとりやすくする 勤務時間帯の変更(時差出勤、フレックス勤務等) 上司が病気のことを知っていること 社会資源の有効活用 • 医療的な器具や支援機器(義装具など) • キャリアアップのための職業スキル習得のための 支援 • 主治医や専門医に相談すること • 保健所(保健師)に相談すること • 医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談すること • 難病相談支援センターに相談すること • 学校の教師や進路指導担当者に相談すること • 患者団体、難病連(難病相談会)に相談すること • インターネット上での情報交換に相談すること • その他の専門的相談者に相談すること • 職場外の生活面についての支援サービス(介護、 生活寮など) 「病気や障害への支援体制の構築」 見出された課題 事業主の誤解や偏見 雇用管理ガイドラインに示さ れた環境整備の企業の負担 感が大きい。 新たな実践 本人の取り組みの課題 病気の非開示の希望 職場の上司は配慮してくれて も、同僚との人間関係の中で、 仕事の無理をする。 就職が決まっても、継続でき ず辞める人がいる。 障害者手帳のない人への 支援 進行する病気への対応 病気と環境整備の適切な説 明方法の検討 本人側の自己管理、「患者 力」の育成 地域支援体制の整備 月1回程度の労働関係機関、 保健医療関係機関、行政等の 参加による意見交換会 障害者手帳が不要な就業支援 の明確化。 気軽な相談場所、障害認定や 年金等の関連領域との調整な どの難病センターの役割 難病のある人への 職業準備支援とは? これまで「働けない」とされてき た人が、何故、働けるのか? 職務の遂行 職業生活の遂行 企業 就労支援 日常生活の遂行 福 祉 、 教育 疾病・障害の管理 医療、保 健 ・「就職可能性の判断基準 は?」 ・「就業支援機関に送っても よい人はどんな人か?」 ・「就職希望のある人に、就 職を諦めさせるのも就労支 援。」 ・「支援しても、社会に理解が ないから就職は難しい。」 ・「就労には主治医が反対し ている。」 難病と診断された・・・ -もう普通に働くことは無理・・・ ショック 回復への期待 1. 2. 病気が良くなると思う。 悲哀 3. 回復しないことの悲しみ、怒り。 防衛 4. 病気や障害を否認してがんばる。病気を隠して 働く。 受容 5. 病気や障害を受け入れる。 「働くことを諦める」ということも 考えた方がよいか・・・? 無理をすれば働けるかもしれないが・・・ もっと、がんばれ、ということか・・・ 「英雄の旅」 を支える 1. 2. 3. 4. 5. 発病前の生活 発病、症状の悪化 病気や障害の現実 の否認、変化の拒絶 助け手との出会い 病気や障害を人生 への「チャレンジ」と 受け止める 6. 7. 8. 9. 10. 11. 12. 試練・仲間・妨害者 手探りでの歩み、戦い 最大の試練 発見や新しい喜び 新たな生活の模索 新たな生活の確立 「病気や障害のおかげ で今の自分がある」と 言えるようになる 「就業希望者の除外なし」 見出された課題 体調悪化、入院によ る脱落 新たな実践 就業支援から自然に 脱落していく。 就業意欲の低下 就業希望者の発掘 就業の進展がないと、 急速に意欲が低下 意欲が低下した人は 放置される。 これまで就業希望がある とは思わなかった人に就 業希望があることを見出 した。 求職者のフォローアップ 一時、連絡が途絶えた人 に、定期的に連絡をする。 「本人を主人公にする」 見出された課題 「夢物語」から発展しない 新たな実践 本人に夢を語ってもらった り、面接でニーズを把握し たりするが、就業イメージ が明確にならない。 本人の希望が明確でな い 本人の興味や希望が現 実感がなく、移り変わって しまい、支援の方向性が 定まらない。 「患者」ではなく個人として の理解 今まで長年知っていると思っ ていた人を、一人の人間とし て全く理解できていなかった ことに気づかされた。 キャリアの方向性の理解 参加者の夢、経歴や仕事へ の想いを理解しつつ、具体的 な働くイメージを一緒に考え るようになった。 病気や障害と共存して生きる 仕事や社会参加ができないことを、病気や 障害のせいにしないこと 自分に何ができるかに焦点をあてること 病気や障害の自己管理能力を高めること 周囲の環境に上手に働きかけるスキルを 身につけること 「病気や障害をもちながら働く」 イメージづくりのコツ 「難病患者」「障害者」「支援対象者」というフィルター を取り除いて、その人の人生経歴、夢や希望、人柄、 能力に注目する 病気や障害の肯定的な受容を支援する 病気や障害の存在の新しい自己イメージへの再統合 環境調整による「参加と活動」の可能性 ブレインストーミングをする 仕事の世界を知っている人や本人の人脈 就業中の疾患管理についての見解 (保健医療福祉関係者と本人だけで煮詰まらない) 「病気や障害のある人の生活・人生の 再構築」のための医療と雇用の連携 病気や障害の人 生への登場 発病、発症、病名告 発病、発症、病名 知、症状悪化 告知、症状悪化 入院、症状管理 入院、症状管理 就業意欲低下 就業意欲低下 機能訓練 機能訓練 「病気をもちながら 働く」新しい自己イ メージづくりのブレ インストーミング 病気や障害と共存する 職業生活の再構築 就職活動 就職 復職 転職 配置転換 ハローワークによ る職探しと、疾病 管理のための支 援体制構築 新たな人生 の充実 職業生活と疾患管 理の両立 QOLの向上 安全配慮 退職防止 就業継続時の予 防的対応の役割 分担、進行する病 気のキャリア支援 難病のある人への 就労移行支援とは? 自立支援と就労支援を後押しす る動向 多様な就業形態(2000年~) 重度障害者の一般雇用に向けて(2002年~) ジョブコーチ支援、障害者就業・生活支援センター 個別教育支援計画(2004年~) 障害者自立支援法(2006年~) 就業支援のユニバーサル化(2006年~) 在宅、短時間、フレックス勤務・・・ ハローワークによる地域連携によるチーム支援 障害者権利条約(2007年~) 「合理的配慮」による企業の環境整備の取り組み 就労移行支援事業と労働施策の連携 再チャレンジ 就労移行支援事業 養護学校 卒業生 離職者 在宅者 【障害者就業・生活支援センター等】 ○基礎体力向上 ○職業習慣の確立 ○集中力、持続 力等の習得 ○マナー、挨拶、身なり等の習得 等 ○適性や課題の 把握 ○施設外授産 等 ○職場見学・ 実習 通所前期 (基礎訓練期) ○就職・職場定着支援 ○就業に伴う生活支援 ○事業主支援 ○関係機関との連絡調整 等 ○職場開拓 ○就労移行支援体制加算 (就労移行支援事業所) ○トライアル雇用 等 通所中期 (実践的訓練期) ○専門的支援 (職業評価) 就職後の 継続支援 ○求職活動 通所後期 (マッチング期) ○職業紹介 ○求職活動支援 ○求人開拓 就職 就職後 訪問期 (フォロー期) 6か月 職場定着期 【不適応時】 連 携 ○専門的支援 (ジョブコーチ支援等) 【地域障害者職業センター】 【地域障害者職業センター】 離職の 場合 【ハローワーク】 ○障害者雇用納付金制度に基 づく各種助成金 ○特定求職者雇用開発助成金 ○試行雇用(トライアル雇用)事業 ○障害者委託訓練 ○職場適応訓練(短期) 等 【企 業】 難病のある人は、地域に就業 の相談先がほとんどない 主治医や専門医 保健所(保健師) 医療ソーシャルワーカー(MSW) 難病相談・支援センター 相談あり 相談なし 知らなかった 公共職業安定所 障害者職業センター 学校の教師や進路指導担当者 患者団体、難病連(難病相談会) インターネット上での情報交換 その他の専門的相談者 0% 20% 40% 60% 80% 100% スムーズな地域連携??? 難病ですか。難病相談・支 援センターにご紹介しま しょう。 就業希望ですか。ハロー ワークにご紹介しましょう。 「難病患者の就労支援」? 「就労支援を行う必要?」 就業を希望するような人は支援対象か? 医療や生活の支援で手がいっぱい 難病支援の専門性は就業支援とは全く違う 「自分の地域では就労支援は無理」 ハローワークの敷居が高い、連携困難 現状の制度やサービスの限界 行政や関係機関、企業の無理解 難病支援には、従来の分野別の縦割り を超えた本人中心の支援が必要 従来の専門分 野別支援 本人の個別ニーズ に応じた地域連携 就職(=最終ゴール) 障害のあ る人 労働 評価 支援 職業生活上 の生活機能 教育 評価 支援 ナチュラル・サポート 職業準備 就職活動 職場適応 就業継続 キャリアアップ 福祉 評価 支援 医療 診断 治療 医療支援 福祉支援 教育支援 労働支援 自立支援と就労支援の連携 就業=究極のゴール 社会的不利 職業的目標の 自己決定 就業の諸局面での個別ニーズ 能力障害 職業準備 就職活動 職場適応 就業継続 キャリアアップ 疾患、機能障害 医療 働ける人は例外 福祉 教育 職業 就業希望を重視する個別支援 就労支援は自立支援のための 不可欠な手段である 病気や障害による多くの活動制限や参加 制約は、職場の環境整備によって解決で きる。 職業生活に必要な環境整備のための制 度やサービスが活用できる。 企業ニーズと求職者の個別的マッチング による、職場開拓が不可欠。 適切な生活支援、医療支援は、 就労支援そのものである 病気や障害により、社会参加のイメージを 失った人の、自己イメージの再構築の支援。 適切な自己管理能力の獲得の支援。 職業生活を前提とした、移動、交通、家事、所 得、医療、地域生活等の生活全般の支援。 継続的な状況把握による、予防的な支援の提 供。 社会全体での就労支援へ 企業と福祉の文化 交流と人脈づくり 職場内支援、「ナチュラル・ サポート」、事業主支援制 度の活用、合理的配慮 企業責任? 就労可能性の発 就労支援? 見、個別のキャリ ア支援 職 業 準 備 就 職 活 動 ジョブコーチ支援、職業生活の 継続支援、関係機関の連携 就 職 職 場 適 応 就 業 継 続 退昇 職進 、 転 職 、 難病相談・支援センター 難 病 患 者 ・ 家 族 等 各種の相談支援 各種相談 (就労・住宅等) 生活情報提供 都道府県 難病相談・ 支援センター 既存の施策との有機的連携 福祉施設等 連携・連絡調整 連携・連絡調整 市町村 各種公的手続支援 日常生活支援 等 活動支援 難病相談・ 支援員 保健所 連携・連絡調整 難病医療 連絡協議会 連携・連絡調整 患者会・家族会 連携・連絡調整 育成 ボランティア 連携・連絡調整 連携・連絡調整 難病医療 拠点・協力病院 公共職業安定所等 地域交流会等の推進 患者の就労支援 難病情報センター 労働分野での「就労移行」支援 職業講習、職業評価、職場体験等のアウトリーチ 実習・就職先の開拓 ケース会議 本人に10万円/月の訓練手当、企業に25千円/月の委託費 トライアル雇用(3ヶ月の試験的雇用) 本人・保護者、会社、労働関係機関、福祉施設の担当者 ジョブコーチ付きの実習 職場適応訓練(6ヶ月) ハローワークから、企業を訪問して障害のある人に適した仕事を探す 企業に5万円/月の奨励金 ジョブコーチによる職場定着支援 継続的フォローアップ 障害者就業・生活支援センター等 障害者就労支援基盤整備事業 就労支援セミナー 障害者就労アドバイザー 労働局 福祉施設 企業 ○企業での就労の理解不足 ○就労支援ノウハウの不足 ○就労意欲の高い人材 ○戦力となる人材 ○生活面での課題への対処 ・一般雇用に対する不安 ・訓練内容のミスマッチ ・雇用したくても人材がいない 地域障害者就労支援事業 ジョブコーチ支援 職場適応訓練 トライアル雇用 福祉施設等 障害者団体 ハローワーク 障害者職業 センター 障害者就労 支援チーム その他 障害者雇 用支援セン ター 障害者就 業・生活支 援センター 福祉事務所 地域生活 センター 就 労 支 援 計 画 の 作 成 チ しー てム 支構 援成 を員 実が 施連 携 企業 フ ォ ロ ー ア ッ プ 職場定着 職業生活 の安定 難病相談・支援センターを核とした個人中心の就業支援 難 病 患 者 ・ 家 族 等 各種の相談支援 各種相談 (就労・住宅等) 生活情報提供 都道府県 難病相談・ 支援センター 既存の施策との有機的連携 福祉施設等 連携・連絡調整 連携・連絡調整 市町村 各種公的手続支援 日常生活支援 等 活動支援 患者会・家族会 難病 就業 相 難病相談・ 談・ 支援員支援 支援 者 員 保健所 連携・連絡調整 難病医療 連絡協議会 連携・連絡調整 連携・連絡調整 育成 ボランティア 連携・連絡調整 連携・連絡調整 公共職業安定所、障害者 職業センター等 地域交流会等の推進 患者の就労支援 難病医療 拠点・協力病院 難病情報センター 夢物語でしょうか? 仕事に就くことを望むことは、難病や慢性疾患をも つ人にとっても、当然のニーズ。 「仕事ができるか、できないか」ではなく、「どうすれ ば、職業生活と疾患管理の両立が図れるか」、を問 題にする。 就業支援のためには、プラスを発見して伸ばすこと と、マイナス面のリスク管理の両方が必要。 就業支援とは、難病がある人たちが社会に貢献で きるようにするための、地域との関係づくり。
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