8.地域保健・衆衛生に関する法律(2) 母体保護法 母子保健法 学校保健法 担当 柳川洋 母体保護法 目的: 母性の生命、健康を保護することを目的とし、 不妊手術、人工妊娠中絶、受胎調節の実地指導につ いて定める 不妊手術 定義 生殖腺を除去しないで、生殖を不能にする手術 実施の条件 本人及び配偶者の同意のもとに実施 (未成年者は適用除外) 妊娠・分娩が母胎の生命に危険を及ぼす恐れ 数人の子供があって、分娩ごとに母体の健康 を低下 統計 2004年 不妊手術件数 2,900件 うち生命の危険 950件 健康の低下 1,900件 人工妊娠中絶 定義 胎児が母体外において生命を維持することができない時 期に人工的に胎児及び付属物を母体外に排出すること 実施の条件 本人及び配偶者の同意のもとに指定医が実施 妊娠の継続または分娩が身体的または経済的理由に よって母体の健康を著しく害する恐れ 暴行・脅迫によって妊娠 統計 2004年 人工妊娠中絶件数 30万件 うち母体の健康 30万件 暴行脅迫 900件 不詳 150件 受胎調節の実地指導 実地指導者の資格 胎児が母体外において生命を維持することがで きない時期に人工的に胎児及び付属物を母体外 に排出すること 実施の条件 本人及び配偶者の同意のもとに実施 妊娠の継続または分娩が身体的または経済 的理由によって母体の健康を著しく害する恐れ 暴行・脅迫によって妊娠 統計 ししし 母子保健法 定義 • • • • • • 妊産婦: 乳児: 幼児: 保護者: 新生児: 未熟児: 経緯 母子保健に関することは児童福祉法の 中に含まれていた(1947) 母子保健法として制定(1965): 母子保 健対策の強化のために分離 同名(改訂)(1994): 1歳6ヶ月健康診査 の法定化、基本的な母子保健対策の市 町村移譲 目的 母子保健に関する原理を明らかに 母性、乳幼児に対する保健指導、 健康診査、医療、その他の措置 国民福祉の向上に寄与 定義 • 妊産婦: 妊娠中または出産後1年以内 • 乳児: 1歳に満たない • 幼児: 満1歳から小学校就学の始期に達するまで • 保護者: 親権を行う者、後見人、その他の者で、乳児 または幼児を現に監護 • 新生児: 出生後28日を経過しない • 未熟児: 身体の発育が未熟のまま出産、正常時が出 生時に持っている諸機能を得るまで 保健指導 市町村長(特別区長)→妊産婦、配偶者、乳幼児の 保護者 妊娠、出産、育児に関する保健指導の実施 保健指導の勧奨 (医師、歯科医師、助産師、保健師など) 保健所、保健センター、母子健康センターなどにお ける保健指導 (集団、教育、個別指導) 婚前・新婚・母親・育児学級 保健相談 妊娠中の健康 出産準備 育児指導 家族計画 新生児訪問指導 市町村長(特別区長) →医師、助産師、 保健師に新生児の訪問指導をさせる (育児上必要があるとき) 重点的な内容 母乳栄養の確立 保温 感染防止 健康診査 市町村長(特別区長)が実施 (または勧奨) 母子健康手帳交付時に妊娠一般診察券、乳 児一般診察券を交付 妊産婦健康診査 乳児健康診査 1歳6か月児健康診査 3歳児健康診査 妊産婦健康診査 目的 母・児の障害予防(特に流産、早産、妊娠 中毒、未熟児出生の防止) 時期 妊娠前期と後期 内容 問診・診察、梅毒血清反応、血液検査、血 圧測定、尿検査、B型肝炎母子感染防止 乳児健康診査 目的 疾病異常の早期発見、健康な発達のための養護、 栄養指導 時期 3-6か月: 先天性股関節脱臼、心臓異常、悪性 腫瘍、離乳指導、生活指導 9-11か月:精神・行動の発達・異常、離乳指導、 育児・生活指導、予防接種指導 内容 問診・診察、尿検査、発達・栄養状態の確認、予 防接種励行 注意 母子健康手帳の記載を考慮して実施 1歳6か月児健康診査 目的 心身障害の早期発見、生活習慣の自立、う歯予防、 栄養指導、育児指導 時期 1歳6か月-2歳を超えない時期 内容 身体発育・栄養、身体・歯の異常、行動・言語・発達 異常、予防接種実施状況 1歳6か月に実施する理由 一人歩きを始める、視力・聴力異常がわかる、う歯予 防の開始、親の育児指導が必要 3歳児健康診査 目的 発達、栄養、疾病の有無、歯科、精神発達、食 欲不振及び諸種習癖、予防接種実施状況、各 種心身障害の早期発見 時期 3歳を超え、4歳に達しない時期 内容 身体発育、栄養、疾病異常、四肢の運動障害、 精神発達、言語障害、予防接種実施状況、視 聴覚検査 妊娠の届出と母子健康手帳 妊娠の届出 妊娠した者→速やかに市町村に届出(保健所 を設置する市、特別区は保健所経由)、診断書 や証明書は不要 届出の目的: 妊娠を行政的に把握し、母子 保健対策の出発点とする 母子健康手帳 市町村長→妊娠を届け出た者に交付(保健所 を設置する市は保健所、その他の市町村では、 市役所、町村役場) 内容: 妊娠、出産、育児に関する一貫した記 録と情報 妊産婦訪問指導 市町村長(特別区長) →医師、助産師、保健師を訪 問指導させる (健康診査の結果必要があるとき) 内容(特に若年初産婦に重点をおく) 妊娠・出産に障害(低所得者層に必要な援助) →医師、歯科医師の診療勧奨 妊娠中毒症、糖尿病、貧血、産科出血、心疾患 合併妊娠(療養援護費の支給) →重症化防止、妊産婦死亡・後遺症防止、 未熟児・心身障害発生防止 低体重児の届出と未熟児訪問指導 低体重児の届出 保護者→2500g未満の乳児の出生のとき、 速やかに都道府県(政令市または特別 区)に届出 未熟児訪問指導 知事(保健所を設置する市長、特別区長) →未熟児について養育上必要に応じて、 医師、保健師、助産師を訪問させる (訪問指導を行うときは市町村長に通知) 養育医療 知事(保健所を設置する市長、特別区長) →未熟児で養育のために必要な医療の 給付ができる (能力に応じて一部負担) 内容 入院の医療給付 重症黄胆の交換輸血 母子健康センター 市町村(特別区)は、母子保健センターの 設置に努力する(市町村母子保健活動の 拠点として1958年度より) 内容 母子保健に関する相談 母性、乳児、幼児の保健指導 助産 学校保健法 目的 学校における保健管理、安全管理の 必要事項 児童・生徒・学生・幼児(学童)・職員の 健康保持増進 学校教育の円滑な実施と 成果の確保 就学時健康診断 実施主体と時期 市町村(特別区)教育委員会が、就学前年の11月 末までに実施 内容 栄養、脊柱・胸郭、視力・聴力、眼・耳・鼻咽喉・皮 膚疾患、歯・口腔疾患、その他(知能検査、心臓、 腎臓疾患) 対応 小学校就学にあたり、健康状態を把握して、必要 な治療勧告、保健相談、就学義務の猶予・免除、 盲・聾・養護学校への就学指導 児童・生徒・学生、幼児の健康診断 実施主体と時期 学校長が実施 定期健康診断: 毎年6月30日までに実施 臨時健康診断: 必要に応じて 内容 定期: 就学時健康診断の項目[栄養、脊柱・胸 郭、視力・聴力、眼・耳・鼻咽喉・皮膚疾患、歯・口 腔疾患、その他(知能検査、心臓、腎臓疾患)]の ほかに、慎重、体重、座高、結核、心臓、尿、寄生 虫卵、その他 臨時: 伝染病、食中毒、自然災害、夏休みの直 前・直後、卒業時、その他(結核、寄生虫など) 出席停止・臨時休業 出席停止 学校長→伝染病、疑い、おそれのある学童の出席停止 対象疾患 第1種(13疾患): 感染症法の一類、二類(治癒する まで) 第2種(8疾患): いわゆる学校伝染病(出席停止期間 の基準による) 第3種(4疾患): 腸管出血性大腸菌感染症、流行性 角結膜炎、急性出血性結膜炎、その他の伝染病(伝染 のおそれがなくなるまで) 臨時休業 設置者→伝染病予防法上必要があるとき臨時休業(全 部または一部) 学校伝染病の出席停止期間 インフルエンザ: 解熱後2日 百日せき: 特有のせき消失 麻しん: 解熱後3日 流行性耳下腺炎: 耳下腺腫脹消失 風しん: 発疹消失 水痘: 発疹の痂皮化 咽頭結膜熱: 主要症状消退後2日 結核: 伝染のおそれがなくなるまで 学校医・学校薬剤師の任務 学校医 学校保健安全計画の立案 環境衛生の維持改善の指導と助言(学校薬剤師と協力) 学童の健康診断 疾病予防措置と保健指導 学童の健康相談 伝染病、食中毒の予防 救急処置(校長の求めに応じて) 就学時健康診断、職員の健康診断 (市町村教委、設置者の求めに応じて) その他の保健管理 学校薬剤師 学校環境衛生検査(学校医が指導、助言) 医療費の援助(学校病) 必要に応じて医療費の援助 (生活保護法による要医療者または準ずる者) 疾患名 (1) トラコーマ、結膜炎 (2) 白癬、疥癬、膿痂しん (3) 中耳炎 (4) 慢性副鼻腔炎 (5) う歯 (6) 寄生虫(虫卵保有者を含む)
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