履歴 • • • • 1956:神田駿河台生まれ 1975:都立墨田川高校卒業 1982:東京医科歯科大学卒業 内科一般研修2年→神経内科研修2年→ネ ズミのお医者さん2年→神経内科2年→スコッ トランド2年→神経科学研究2年→重症心身 障害者診療6年→精神科・痴呆病棟+病理解 剖研修4年→厚生労働省2年 職業訓練に欠けているもの • コミュニケーション技術 • プレゼンテーション技術 • 日本語文章作成技術 職業人としての責任 説明責任 家族への,仲間への そして市民への 市民への説明責任 1. 治験はなぜ必要なのか? 2. エンドポイントとは何ぞや? 3. リスクコミュニケーション, Media Relations & Public Relations “新薬”からの連想は? • • • • • • それを報道する新聞紙面 癌,難病といった病気のこと 遺伝子,たんぱく質といった医学技術 薬害のリスク 巨大な製薬会社やビジネスチャンス 治験・承認申請 “夢の新薬”と“治験”の必要性 治験って,何ですか? • • • • • • • 本当に効くんですか? 人体実験ですか? 怖いですか? 副作用にはどんなものがありますか? 死んじゃったりしないんですか? 生命保険とか,あるんですか? お金がもらえるんですか? 一般市民の治験のイメージ なぜ治験が必要なのか? • • • • • • 培養細胞や動物実験だけでは駄目なの? 安全な薬だけ選べばいいのでは? 人体実験は危険ではないのか? 丈夫な人だけ選んで試せばいいのでは? お医者さんが判断すればいいのでは? なぜプラセボが必要なのか? 犬猫と同じわけにはいかない プラセボ(偽薬) の必要性 いわしの頭か 夢の新薬か 盲検の意義 治験がないと何でもあり “人体実験”の時代 ジェンナーや華岡青洲の時代 市民への説明責任 1. 治験はなぜ必要なのか? 2. エンドポイントとは何ぞや? 3. リスクコミュニケーション, Media Relations & Public Relations エンドポイントとは何ぞや? 測る=物差し=エンドポイント エンドポイントとは何ぞや? 評価指標は何のため? 評価指標は誰のため? 風邪の治療薬の評価指標 あなたなら何を考える? 代用 vs 真のエンドポイント 代用 vs 真のエンドポイント 風邪が“治る”ってどういうこと? • • • • 鼻水が出なくなる のどが痛くなくなる 咳が出なくなる 熱が出なくなる 風邪をひくと,何が困りますか? 急性気管支炎に対するアジスロマイシン 220人のRCT:プラセボ108、実薬112 Lancet 2002;359:1648 主要評価指標は? “職場復帰までの日数” エンドポイントの多様性について 誰にとっての?,何のための? 価値観の多様性そのもの 父親にすい臓がんが見つかった • • • • • 治るのか?駄目なのか? 手術するのか?どんな手術か 化学療法は?放射線は? 入院期間は?退院できるのか? お金はどのくらいかかるのか? 治療の様々な成果(アウトカム) • • • • • • • 生死:一日でも長く 腫瘍用量縮小 血清腫瘍マーカー低下 口から食事が食べたい 旅行がしたい 痛みがない 家族と一緒にいたい 評価指標は誰のため? • • • • • • • • 患者の価値観 家族の価値観 医者の価値観 看護師の価値観 病院経営者の価値観 製薬会社の価値観 規制当局の価値観 マスコミの価値観 評価指標の理想と現実 • 現実世界のご利益の反映度 – 誰にとっての?何についての? • • • • • 観察期間 イベント数 被験者への負担 治験実施側の負担 測定系の問題:安定性、再現性、客観性 イベント数の問題 同じ薬,同じ疾患でも 開発相で評価項目が異なる 関節リウマチ治療薬の例 • 前期第II相:血沈とCRP • 後期第II相:アメリカリウマチ協会の臨床基準 • 第III相:骨破壊の抑制 代用エンドポイント? 決してデジタルで割り切れない • 警察官の多い地域ほど犯罪が多い→警察 官が犯罪を起こしている • 携帯電話普及率の高い国ほど糖尿病が多 い→携帯電話が糖尿病を起こす • 携帯電話を使う人ほど脳腫瘍が多い→携帯 電話(の電磁波?)が脳腫瘍を起こす • アスベスト産生工場に近いほど中皮腫発生 率が高い→アスベストが中皮腫を起こす 代用エンドポイントとしての コレステロールの問題点 • 観察研究は膨大だが・・・ – 低すぎるのも問題? • ご利益を示した介入研究はスタチンだけ • ホルモン補充療法HRTの苦い経験 – コレステロールが下がると心血管死が増える! よくあるエンドポイントの問題点 • 真のエンドポイントとの関係が不明 – 観察研究だけで介入研究がない • 薬剤によって介入研究結果が不定 • 標的疾患が違うと通用しない? – 血圧、コレステロールと心臓・脳のイベント ホモシステイン仮説の歴史 • 1968年:ホモシステイン血症と動脈硬化 • 観察研究では華々しい成果 – 動脈硬化:1990年代から次々と • 探索的介入研究でも行けそう – Lancet 2000;355:517 – NEJM 2001;345:1593 • 本格的な介入研究では否定 – NEJM 2004;350:2673 – 欧州心臓学会2005 Lancet 2000;355:517 • • • • 対象:健康成人158人,動脈硬化症167人 介入方法:5mg葉酸+250mg VB6 vs プラセボ 観察期間:2年 エンドポイント – 運動負荷心電図異常 • 結果 –odds 比 0.40 [0.17-0.93]; p=0.035 – ホモシステインの低下 • 14.7 → 7.4 μM/L vs 14.7 → 12.0 μM/L NEJM 2001;345:1593 • • • • • 対象:冠動脈形成術を受けた205人 介入方法:葉酸+VB6+VB12 vs プラセボ 観察期間:6ヶ月 エンドポイント:再狭窄 結果:有効 – 最小内腔径: 1.72+/-0.76 vs. 1.45+/-0.88 – 再狭窄率: 39.9+/-20.3 vs. 48.2+/-28.3 % NEJM 2004;350:2673 • • • • • 対象:ステント挿入の患者636人 介入方法:葉酸+VB6+VB12 vs プラセボ 観察期間:6ヶ月 エンドポイント:冠動脈造影による狭窄評価 結果:実薬群の方が悪かった! – 最小内腔径:1.59+/-0.62 vs. 1.74+/-0.64 – late luminal loss: 0.90+/-0.55 vs. 0.76+/-0.58 – 再狭窄率:34.5 % vs. 26.5 % ESC2005:ノルウェーの研究 • 対象: 心臓発作の既往のある3749人 • 介入:葉酸0.8mg、VB6 40mg、葉酸 0.8mg+ VB6 40mg、プラセボの4群 • 観察期間:3.5年 • エンドポイント:心血管イベント発生率 • 結果:イベント発生率は有意差なし.葉酸 +VB6群では相対危険度が上昇 代用エンドポイントの“成熟度” エビデンス指標作成は可能か? Meta-analysis? 今日のお話 1. 治験はなぜ必要なのか? 2. エンドポイントとは何ぞや? 3. リスクコミュニケーション, Media Relations & Public Relations Media Relations & Public Relations 他人事ではありません 説明責任を果たしつつ 水戸黄門サイクルからの脱却から, Media Literacyへ ロフェコシキブの事例 • Cox2阻害薬(当初は):夢の鎮痛薬 – 効果は同じで副作用がない – 世界に先駆けて米国で承認(1999.4) – 日本では承認されていない • 市販後に心筋梗塞の副作用が明らかに – どこかで聞いたような・・・・ • スケープゴート探し? – FDAが悪い?企業が悪い? 医療事故の 人気の秘密 白衣の悪代官 をこらしめる 水戸黄門ごっこ ー医療事故スキャンダル人気の秘 密ー • 勧善懲悪 –国民が水戸黄門,悪代官は医者 • 視聴率が稼げる • 制作費いらず • 何回繰り返しても飽きない 何回繰り返される秘密 • • • • • • 自分が水戸黄門気取り 悪人を懲らしめていい気持ちになる いい気持ちになっただけで満足する 自分の頭で考えなくなる 原因も対策も考えなくなる また悪人が出てくる デ ジ タ ル 理 解 の 問 題 点 白黒では決められない薬の価値 百薬の長か中毒か? 誤ったイメージ 正しい理解 対立構造を解く 市民 病院 メディア 行政 対立構造、Zero-sumゲームの解消 →Win/Win Approaches 売手善し、買手善し、世間善し 世界一の日本のシステムの数々 • 国民皆保険制度 • 地震・火山噴火情報 • 交通(自動車,鉄道運行) • 郵便・宅配便 インフォームド・コンセントの歴史 • • • • • • • • • • 1934:子宮摘出術に対する説明義務判例 1965:唄孝一論文;説明と同意 1968:和田移植 1971:乳房全摘術不法行為責任判決 1981:医療慣行尊重最高裁判決 1990:旧GCP 1993:ソリブジン事件 1997:臓器移植法 1998:新GCP 2000:エホバの証人輸血損害賠償事件 他にもたくさん問題が • 開発失敗を生かすには • 臨床試験登録システムの増殖 • フィリピン化 or Strong PMDA ? 失敗事例の情報公開 • 医療事故ではすでに歴史あり –事例検討、臨床研究 –医療事故報道、裁判 –行政の取り組み • 新薬開発ではなぜできないのか? –企業秘密?Stake Holderへの配慮? –Win / Win Approach可能 雨後のタケノコのような 臨床試験登録システムの乱立 フィリピン化かStrong PMDAか 国民総生産の変遷 1986年から現在まで もはや右肩上がりではない ネイチャー、サイエンスバブル時代 の変遷 日本の医学はキセル乗車 臨床現場 基礎研究 Nature, Scienceと現場をつなぐ仕事にも臨床医を !!
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