2007年度 会計ファイナンス学科 新入生ガイダンス ファイナンス関連の取得可能な資格について ~証券アナリスト・FPとしての活躍~ 2007年4月4日 東洋大学経営学部 会計ファイナンス学科 堀田 真理 1 1.証券アナリスト 証券アナリストとは : 証券投資業務のプロフェッション 1.本来の仕事 企業を調査・分析 →企業の情報を取得 正しく評価 ・財務分析 ・企業戦略 ・業界動向 ・経済動向 2.活躍の場 投資家に対して 投資の判断材料を 提供 投資価値の判断 ・将来の株価予測 ・現在の株価は割安か割高か? ・ 金融業界(証券・銀行・生保・損保) ・ 投資顧問会社 ・ シンクタンク(研究所) ・ 一般企業の財務・IR部門 など 2 ※ IR(インベスター・リレーション): 自社についての情報を公平・適時に公開する広報部門 投資 投資家(株主) 企業 情報提供 情報取得 IR 個人 証券アナリスト 機関投資家・企業 セクターアナリスト 証券会社の調査部門 クオンツアナリスト 報酬 運 用 の 助 ファンドマネージャー 投資顧問 言 (運用のプロ) 統計学の手法に 基づいて分析 コンサルティング業務 ストラテジスト 投資戦略を設計 投資方針を提供 資金調達 証券市場 企業 運用 財務 IR 株式投資 投資信託 証券アナリスト (企業内での活躍) 3 3.試験制度 取得までに最低でも2~3年はかかる 合格率が低い? 特徴 ・証券アナリスト協会の通信教育講座を受けることが 絶対条件(1次+2次) ・ 2段階の試験をパスしなければならない 1次のみでも十分 第1レベル (4月・10月) (合格率 45%程度) CCMA (検定会員候補) として登録可能 (名刺・会員なみのサービス) 第2次レベル (6月) (合格率 40%程度) 3年間の実務経験 CMA (証券アナリスト検定会員) Step Up CIIA (国際公認投資アナリスト) 4 4.内容について ミクロ ・ H19年度から15年ぶりに大幅改訂 コーポレートファイナンス ・ 通信講座のテキストで対応可 ・ インターネットによる練習問題の配信 など 第1次レベル (基礎編) マークシート式 科目合格も可だが、最終的には期限内に 3科目合格が必要 分量が倍 ・ 「証券分析とポートフォリオマネジメント」 ファイナンス論・ 証券投資論 数学と統計ツール(計量分析と統計学) ・ 「財務分析」 → 簿記・会計・財務諸表 ・ 「経済」 → 金融論・国際金融・マクロ・ミクロ (応用マクロ・応用ミクロ) H20年度から科目名のみ変更 第2次レベル 4科目の総合問題 (実務的応用編) 統計学 記述式 ・ 「証券分析とポートフォリオマネジメント」 行動ファイナンス ・ 「コーポレートファイナンスと企業分析」 → コーポレートファイナンスの比重UP ・ 「市場と経済の分析」 → マクロ、国際金融 5 ・ 「職業倫理・行為基準」 5.資格取得のメリット 科目数、試験範囲は広いが・・・ ・ 1次試験が年2回へ → 合格しやすくなった ・ 1次レベルの試験のみの合格でも十分価値がある → CCMA制度の活用 ・ 内容は必ずしも金融機関の一部の人に必要なものだけではない → コーポレートファイナンスの知識は一般企業でも必要 コンサルティング業務でも必要 転職の際にも有利 ・ 証券アナリストを取得しているかどうかで、任せられる仕事の重要性、 信頼度も異なる ・ 公認会計士、米国公認会計士などとのダブルライセンスでの活躍も多い ※ (参考)証券アナリスト協会ホームページ http://www.saa.or.jp 証券アナリスト検定パンフレット(書店などで入手可能) 6 2.FP(ファイナンシャルプランナー) ※ 金融(ファイナンス) ・ パブリックファイナンス (金融論、ファイナンス論、証券投資論など) ・ コーポレートファイナンス(企業金融) ファイナンスの視点から ・ パーソナルファイナンス (FP) 「ライフプラン」を設計 人生の設計図 FP(ファイナンシャル・プランナー)とは : お金 設計・提案 家計のホームドクター 生活設計のアドバイザー 個人のライフプランとお金に関わる身近な存在として 総合的にアドバイスをする ※ Journal of Financial Planning 2007年2月号 P23による区分 大学でのパーソナルファイナンスに 関する教育科目としての認知度はまだ低いのが現状であるという 7 1.ライフプランとFPの仕事 ライフプラン マイホームの取得 20代 大学 30代 就職 貯蓄 資産運用 結婚 40代~50代 出産 60代~ 退職 老後 住宅資金 出産費用 住宅ローン 結婚資金 子供の教育費 保険の見直し 子供の結婚 転職 保険の見直し 退職金の運用 年金 節税対策 相続の問題 将来の個々のライフプランに応じたお金の設計について 不安があれば、相談に応じて、お客様の夢の実現に向けてアドバイス をする FPとしての仕事 8 2.FPが必要とされる内容 ライフプランに応じて総合的なアドバイスをするためには広い範囲の 知識が必要(6分野) ・ ライフプランニングと資金計画 ・ リスク管理 (保険) ・ 金融資産運用 (住宅ローン、年金、社会保障など) 年金・保険論 → 金融・ファイナンス関連科目 ・ タックスプランニング(所得税中心) → 会計・税制関連科目 ・ 不動産(取得・売却・登記簿の見方・不動産広告など) ・ 相続と事業承継 (相続税中心) 9 3.資格の制度 国家資格 制度としては複雑な試験制度 3級レベルといえども範囲は2級と同様に広範囲 暗記が中心で合格率も高い→ 短期間での取得可能 民間資格 (厚労省) (日本FP協会認定) 「FP技能士」(学科+実技) AFP 3級 ○×問題 3択1式 計算・文章問題 (国内ライセンス) (年3回) + α 研修講座の受講 課題レポート(提案書)の合格 2級 (年3回) 4択1式 計算・文章問題 (登録・継続研修) (学科免除) 1級 (年2回) ※ 実施団体は「日本FP協会」と「きんざい」の2つ。 学科の方が合格率が低い傾向。 実施団体により、実技の合格率も異なる。 最終的には学科+実技の合格が必要。 R CFP 6科目の試験合格 エントリー研修 実務経験 (国際資格) 10 どのレベルから始めるべきか?? 4.FPの活躍の場 FPの必要性はかなり高い まずは3級から・・・ ・ 独立系FP コンサルティング業務、講演、原稿執筆活動など CFPまでは必須 (ただし軌道にのせるのは困難?) ・ 企業系FP 金融業界(銀行・証券・生保・損保)では、もはや必須 住宅・不動産業界でも需要は大きい 商品をすすめるサービスとしてFPとしての アドバイスをする 一般企業の場合 → 従業員の福利厚生、日本版401Kなど AFPまでは必要 ・ 生活に必要な基本的なお金の知識として 就職のためにも有利な資格 最低3級は必要 11 ・ 今や自己責任の時代 → 自分や家族を守るためにも、トラブルに巻き込まれない ためにも、知っていないと損をする知識が多い ・ FPを通じて、「ライフプラン」という考え方を身につける ・ FP+税理士 としての活躍 (税理士の場合、2級の試験免除制度あり。研修のみ必要) (参考) 日本FP協会ホームページ http://www.jafp.or.jp 12 ファイナンスの視点からライフプランを考える ~10年後の自分をシミュレーションしてみよう~ 2007年4月4日 「会計ファイナンス学科 新入生ガイダンス」 東洋大学経営学部 会計ファイナンス学科 堀田 真理 ※ 2006年度「基礎実習講義(金5)」において使用したものを一部修正したものである。 13 1.目的 キャッシュフロー表の作成 ~ (作成課題) 10年後の自分~ キャッシュフロー表の作り方を学ぶとともに、 ライフプランニングの考え方をファイナンスの視点から 身につける (参考文献) 日本ファイナンシャル・プランナーズ協会 「10代から学ぶパーソナル・ファイナンス」 第9章:ライフプランとお金 「これならわかる生活設計の手引き」Ⅲ 14 2.ライフプランの考え方を身につけよう まずは自分自身の将来について、夢や目標を考える (いつ、どのようなことをしたいのか? 家族はどうなのか?) → ライフイベント表 その実現に向けて、どうすればよいのか? そのための資金は十分か? など ライフイベントと合わせて、具体的な 情報を数値化したシミュレーション キャッシュフロー表 キャッシュフロー表上で、さまざまな可能性を試すことができる のも、大きな魅力! 顧客の要望や情報をもとに、キャッシュフロー表を作成し、顧客の夢の 実現にむけて、改善点などのアドバイスや提案をしていくのがFPの仕事 FPがおこなう提案書の作成には欠かせないもの 15 3.作成例:具体的なキャッシュフロー表の作成 作成に必要なデータ 以下の状況を前提にライフイベント表とキャッシュフロー表を完成させる。 ※ 「自分」を中心に、今後10年間(30歳ぐらいまで)を予測する。 1.現在(2006年)の家族状況 家族 父 母 自分 妹 現在の年齢 52歳 51歳 19歳 16歳 職業 会社員 専業主婦 大学1年生 高校1年生 備考 独身・同居 独身・同居 16 2. 私の将来の希望 ① ・ 現在は両親と同居中。生活費がかからない分、アルバイトで収入を得ながら、 在学中に資格取得(簿記検定・FP、自動車免許など)を目指したい。 ・ 自分のパソコンを持ちたい。 ・ 中国で開催予定のオリンピックに行ったり、卒業時には卒業旅行でヨーロッパに 行きたい。 ② ・ ・ ・ ・ ・ ・ 取得した資格を生かして、金融業界に就職後は、独立して独り暮らしを始めたい。 マイカーを取得し、時々は家族と国内旅行をしたい。 持ち運びが便利なノートパソコンに買い換えたい。 父の定年退職時には、記念に家族で海外旅行をしたい。 ダイビングやゴルフなどの趣味をもっと充実させたい。 結婚後の資金を得るためにも、株や投資信託などの資産購入を始めてみたい。 ③ ・ 28歳で結婚して、早めに子供が欲しい。子供が生まれたら、なるべく妻には、 子供と接する時間を大切にしてほしい。 ・ 結婚式は、友人を招待して盛大にホテルで行ないたい。 ・ 新婚旅行はイタリアに行きたい。 ・ 子供誕生後は、マイカーを買い換えたい。 17 3.今後の収入と支出の予定 (1) 今後の収入 (※ 単純化のため、株や預金にかかわる収益は考慮しない) ① アルバイト収入 年間収入(手取り) 80万円 (19歳~22歳) ② 就職後の給与 年齢別 年間収入(手取り) 23歳~24歳 250万 25歳~26歳 300万 27歳~28歳 350万 29歳~30歳 400万 ③ その他の収入(今後、予想されるもの) ・ 結婚後の配偶者の収入 ・ 親からの援助 250万 (第1子誕生後は80万) 30万 (独り暮らしスタート時の住宅資金) 100万 (結婚資金) 18 (2) 今後の必要資金 ① 経常的な生活費 項目 (単純化のため、基本生活費のみ、変動率を1%とする。) 現在の支出額 (年間額) 今後の支出額 (年間額) 備考 基本生活費 0 120万 240万 就職後 結婚後 住居費(家賃) 0 80万 120万 就職後 結婚後 養育費 0 24万 第1子誕生後 保険料 0 10万 40万 就職後 結婚後 20万 50万 就職後 ※ その他の費用 ※ 趣味娯楽費、資格取得のための費用、マイカーの維持費など 19 ② 一時的に必要な支出(イベント費) 時期 イベントの内容 20歳 自動車免許取得費 パソコン購入費 海外旅行費(中国) 卒業旅行の費用 自動車購入 パソコン買換え 国内旅行 国内旅行 海外旅行(父の退職記念) 資産購入 結婚 (結婚資金) 新婚旅行 第1子の出産 自動車買換え 21歳 22歳 23歳 24歳 25歳 27歳 28歳 29歳 30歳 必要資金 25万 20万 15万 30万 100万 20万 10万 10万 50万 50万 400万 50万 30万 200万 以上のデータをもとに、今後10年間のライフイベント表と 予想されるキャッシュフロー表を作成する。 なお、初年度(現時点)での貯蓄残高を20万円とする。 20 4. ライフイベント表 ライフイベント表 年齢 年号 ○年後 2006 現在 2007 1 2008 2 2009 3 2010 4 2011 5 2012 6 2013 7 2014 8 2015 9 2016 10 2017 11 自分 配偶者 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 27 29 28 30 29 子 1 2 父 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 母 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 妹 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 イベント パソコン購入、運転免許取得 海外旅行(中国) 大学卒業、海外旅行(卒業旅行) 就職、独り暮らしスタート、マイカー購入 パソコン買換え、国内旅行 国内旅行 父の定年退職、記念旅行(海外)、株の購入 結婚、新婚旅行(海外) 第1子の誕生 マイカーの買換え (出所)「10代から学ぶパーソナル・ファイナンス」(日本FP協会)P102を参考に作成 21 5.キャッシュフロー表の作成 今の現状だと数年後には貯蓄が赤字?? キャッシュフロー表(対策前) 年号 ○年後 自分 配偶者 子 年齢 父 母 妹 自分 収入 配偶者 親の援助 収入合計 基本生活費 住居費 養育費 支出 保険料 イベント費用 その他の支出 支出合計 年間収支 貯蓄残高 2006 現在 19 2007 1 20 2008 2 21 2009 3 22 2010 4 23 2011 5 24 2012 6 25 2013 7 26 2014 8 27 2015 9 28 27 52 51 16 80 53 52 17 80 54 53 18 80 55 54 19 80 56 55 20 250 57 56 21 250 58 57 22 300 59 58 23 300 60 59 24 350 80 0 0 0 0 30 20 50 30 110 30 280 120 110 0 10 100 50 390 -110 0 250 120 80 0 10 30 50 290 -40 -40 300 120 80 0 10 10 50 270 30 -10 300 120 80 0 10 0 50 260 40 30 350 120 80 0 10 100 50 360 -10 20 61 60 25 350 250 100 700 240 150 0 40 450 50 930 -230 -210 80 0 0 0 0 0 20 20 60 20 80 0 0 0 0 45 20 65 15 35 80 0 0 0 0 15 20 35 45 80 22 貯蓄残高をプラスに改善するためには? ※ (例) イベント費用: 27歳時の100万→80万に(旅行費削減) 28歳時の450万→350万に(結婚資金削減) 30歳時の200万→150万に(安い自動車に) その他の支出: 就職後の50万→30万に(趣味娯楽費の削減) キャッシュフロー表(対策後) 年号 ○年後 自分 配偶者 子 年齢 父 母 妹 自分 収入 配偶者 親の援助 収入合計 基本生活費 住居費 養育費 支出 保険料 イベント費用 その他の支出 支出合計 年間収支 貯蓄残高 2006 現在 19 2007 1 20 2008 2 21 2009 3 22 2010 4 23 2011 5 24 2012 6 25 2013 7 26 2014 8 27 2015 9 28 27 52 51 16 80 53 52 17 80 54 53 18 80 55 54 19 80 56 55 20 250 57 56 21 250 58 57 22 300 59 58 23 300 60 59 24 350 80 0 0 0 0 0 20 20 60 20 80 0 0 0 0 45 20 65 15 35 80 0 0 0 0 15 20 35 45 80 80 0 0 0 0 30 20 50 30 110 30 280 120 110 0 10 100 30 370 -90 20 250 120 80 0 10 30 30 270 -20 0 300 120 80 0 10 10 30 250 50 50 300 120 80 0 10 0 30 240 60 110 350 120 80 0 10 80 30 320 30 140 61 60 25 350 250 100 700 240 150 0 40 350 30 810 -110 30 23
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