3.支援提供の基本姿勢 こども発達さぽーとセンター るぽろ (施設長) 嘉ノ海 令子 支援提供の基本的姿勢 中核的機能は子どもへの発達支援(子育ち支援) 親・家族の重要性(家族を含めたトータルな支援 への視点) 集団活動と個別プログラムの効果的な組み合わ せによる支援 地域での育ちが続く支援 児童期のニーズについての理解 児童期支援の中核的機能は 将来の自立に向けた発達支援 障害児通所支援、入所支援の中核的機能は、子ど もへの発達支援とし、個々の状態や年齢に応じて必 要な支援を提供する。 発達課題のある児童に対して、できるだけ早期の段 階から将来を見通した継続的な発達支援を行うこと を中核的機能とする。 より身近な地域で必要な時期に必要な(専門的な) 支援が提供できるよう質を確保する。 親・家族支援の重要性 家族を含めたトータルな支援への視点 子どもの適切な発達環境を整えるために、親・家族支援 を大きな柱とする。 子どもの発達課題や障害特性への理解を深め、具体的 な手立てと見通しをもった取組みを通して、「障害受容」 を支える。 子育て支援、子育ち支援、親子関係への支援、地域資 源などとの連携・情報支援をトータルに行う。 集団活動と個別プログラムの 効果的な組み合わせ 集団活動と個別プログラムの効果的な組み合わせに より支援を提供する。 子ども、親・家族との信頼関係をつくりながら、的確なアセスメ ントを行うことによって、集団活動と個別プログラムの効果的な 組み合わせによる計画を作成する。 アセスメントは、チームアセスメント、エンパワメント、権利擁護 の視点を加えることで、効率的、効果的な計画作成につながる ことが期待できる。 地域での育ちが続く支援 地域での育ちが続くように支援を紡ぐ。 発達課題に応じた支援が継続されるようにライフス テージのつながりを重視する。家族支援を含めた一 人一人の療育や発達の支援が地域の支援システム づくりにつながることを意図してサービスを実施する。 児童期のニーズについての理解 児童期のニーズの背景を充分理解し、ニーズの把握を行う。 児童期は自ら言葉での意思表示が困難な乳幼児から18歳までと、 その対象の年齢幅が大きい。 子ども自身が抱えるニーズ、親・家族のニーズ、生活環境や子育て 環境から生ずるニーズなどが混在し、子ども自身のニーズが見えなく なったり、他のニーズと相反する状況も発生するため児童期のニー ズの特殊な背景を理解した上で、情報の収集を行うようにする。 4.支援提供のポイント こども発達さぽーとセンター るぽろ (施設長) 嘉ノ海 令子 支援提供のポイント (1)児童期支援の特殊性 (2)親・家族支援~障害受容を支える視点~ (3)「気になる段階」からの支援場所として (4)アセスメントの重要性と 児童期特有のニーズについて (5)地域の支援システムづくり (6)入所支援特有の機能と求められる役割 (1)児童期支援の特殊性 1 支援対象が0歳から18歳までと広い年齢幅への対応 年齢によって関わる機関(スタッフ)の変動と多様性 2 「気になる」段階と呼ばれる時期への対応 3 「ゼロ」からのスタートを支援 4 子どもの「自立」に向けて、縦へのネットワーク を意識 1 支援対象が0歳から18歳までと広い年齢幅への対応 年齢によって関わる機関(スタッフ)の変動と多様性 乳幼児期 学齢期 (学齢後期) 保健所(保健センター)、医療機関 福祉事務所(家庭児童相談室) 児童相談所 保育所、幼稚園、児童館等 児童発達支援事業、児童発達支援センター 障害児入所施設、相談支援事業所 等 小学校、中学校、高等学校、特別支援学校 福祉事務所、児童相談所 医療機関、療育機関、教育相談所、教育委員会 放課後等デイサービス、放課後児童クラブ 障害児入所施設 等 企業や障害福祉サービス等での実習、体験 地域障害者職業センター、ハローワーク 障害者就業・生活支援センター 等 2 「気になる」段階と呼ばれる時期への対応 「気になる」段階の子どもとは ① 軽度の発達遅滞はあっても知的障害のレベルではない 境界域知能(ボーダーライン)児 ② その時点で障害の診断が明確にできない児(ハイリスク 児や発達障害児を含む) ③ まだ診断・告知を受けていない児 ④ 客観的には障害が認められても、保護者がそのことを受 容できず申請に至らない児 将来的に支援が必要かどうか確定できない時期 障害の受容が充分にできない時期 育児不安を支える視点 子育て支援の立場での 専門的な支援の必要性 3 「ゼロ」からのスタートを支援 親の考え方や姿勢によって、子どもの 環境は大きく変わる ・子どもの発達に必要な療育機関など への通所やサービスの利用をしない ・子どもの障害を理解せずに、不適切 な関わりをする ・前向きな子育てができないなど、親 自身が精神的に不安定な状態になる 育児不安 育児放棄 虐待 関わりの難しい子育てを 一生懸命している親・家族 将来への見通しが もてず不安な気持ちを 抱えている親・家族 子どもの発達や障害に関する知識・理解 福祉サービスに関する情報 育児面、医療面、療育面、心理面など 幅広い相談支援、情報理解のための支援 4 子どもの自立に向けて 縦へのネットワークを意識 子どもの成長・発達とともに 個々がもつ発達課題、支援ニーズ変化 親・家族が抱える生活ニーズ変化 × 一機関だけでは支えきれない •移行期支援の視点 •横断的な連携 •ケアマネジメントの必要性 •生活の継続性と関わりの 連続性への視点 縦のネットワーク構築 (2)親・家族支援~障害受容を支える視点~ 「障害告知」における支援 障害告知 「思い描いていた健康な赤ちゃんを失う」 親の心的危機 対象喪失経験 「なぜ自分の子どもが・・・」「何かの間違いだ」「子どもを育てる 自信がない」など 事実の否認、混乱、怒り、絶望感、哀しみ、拒否 不安などの心理的反応 障害受容とは 「わが子の障害の受容」と「障害のあるわが子の受容」 子どもの発達、成長とともに緩やかに子どもの姿を 受け止めていく 子どもへの発達支援の確実性、信頼性が受容過程を 側面的に支える 親の不安を受け止める、理解する 親の受容能力に合わせた具体的な助言 「障害受容」を支えるということ 告知時期 障害告知 関わるスタッフ の対応 告知の仕方 親・家族の心理的反応 子どもの障害理解 への支援 親への心理的 サポート 子どもへの発達支援 育児への 具体的支援 (3)「気になる」段階からの支援場所として 親にとって身近で敷居の低い場所である。 障害の確定診断前からフォローできる場所 である。 発達支援のサービスを体験的に利用できる 場所である。 常にアクセスできるように、地域に事業内容など 情報発信している。 新生児・周産期医学、障害児医療の進歩 母子保健行政の充実 療育方法・療育技術の進歩 発達支援機関の多様化 家族の在り方の多様化 児童虐待 ノーマライゼーション理念の拡がり 発達障害者支援法制定など 早期から親子への サポート体制をつくる 早期発見・早期対応 市町の地域自立支援 協議会の活用 出産前後や 乳児期にわかる 巡回支援 1歳半、3歳児 健診などでわかる 医療・保健 連携 巡回支援 医療、保健 保育所、障害児通所 入所支援など確実 で強固な連携体制 をつくる 保育所等の 日常生活の場 でわかる 福祉 母子保健 (4)アセスメントの重要性と 児童期特有のニーズについて 【アセスメントの過程】 子ども・親との面接 情報収集 適切な情報選択 情報量・質の検討 正確性・事実性 信頼性・偏向性 偏見・先入観 情報源・・相談者自身、関係者、相談者の 環境、相談者に関する記録や資料 情報収集手段・・・面接、観察、記録・資料 情報の種類・・相談者の生活史(生育歴) 環境に関する情報 検討 情報の量・質が適切か 情報の正確性、事実性、信頼性を確認 情報が偏っていないか 偏見や先入観によって歪められていないか 収集した情報の吟味 情報の分析統合 情報の判断 ニーズの確定 利用者の状況理解 ニーズ把握 問題(要因)の確認 課題の整理 計画策定 目標、支援期間、 支援内容の設定 具体的な支援方法 の確認 利用者の意思や権利が尊重されているか 児童期特有のニーズについて 自ら言葉で意思表示できない乳幼児期は親・家 族から発信されるニーズが前面に押し出されや すい。⇒第三者のニーズ 親・家族のニーズは子ども自身のニーズと相反 することもある。 子どもの生活・子育て環境を整えるために、子 育てに不安を抱える親支援からスタートするが、 年齢が上がるにつれ子ども本人を中心にニー ズを明確化していく。 親・家族から発信されるニーズ 親の関心事 子どもの発達の遅れを解消する 障害を治す、良くする 治療・訓練ニーズの顕在化 潜在的ニーズ 障害受容、育児に向う姿勢 夫婦、家族関係の葛藤、対立 緊張、母親の心理的葛藤など 子どものニーズ 親・家族のニーズ 子どものニーズ 子どものニーズ 療育、訓練、教育⇒発達支援 障害受容、障害認知、育児不安 ⇒ 育児支援、親支援 児童期支援のニーズの背景 • • • • 子ども自身の特性から生ずるニーズ 親・家族の特性から生ずるニーズ 子どもの生活環境から生ずるニーズ 子育て環境から生ずるニーズ 【『新・社会福祉学習双書編』】 (5)地域の支援システムづくり ①移行期支援の視点 ②横断的な連携 ③自立支援協議会の中で支援システムの 構築を検討 ④継続性、一貫性のある支援体制を つくるための努力 (6)入所支援特有の機能及び求められる役割 虐待・虞犯累犯 貧困・養育者不在 養育者の疾病 など 個別支援 集団的支援 思春期支援 就労・自立活 動支援 セーフティネット 社会的養護 家族支援 発達支援 家族関係の再構築 療育相談 短期入所(ミドルステイ) レスパイト など 在宅支援 つなぐ支援 家庭復帰・障害者福祉サービス・就労 三田谷学園 施設長 高野 康彦 5.アセスメントのポイント 発達支援と保育支援 専門機関・専門職種による療育 被虐対児 支援児 リスク児 保育支援 発達支援 気になる児 外国人児童 いろいろな 背景の子 32 (1)相談支援時の状況把握 ☆主訴の聴き取りと受け止め ・・・・・・保護者の葛藤の大きさ 理解しにくい子ども 関わりにくい子ども 保護者の傷つき体験 子どもについての理解・気づきの少なさ 医療機関利用情報 33 発達障害のある子の 保護者の負担とリスク • • • • • 育てにくさ 関わりにくさ 理解のしにくさ 行動の問題への心配 将来への心配 子育ての辛さ・負担感 達成感・喜びの少なさ 親としての自信の喪失 適切に関わる回数の減少 34 (2)アセスメント ①初期状態の把握 ☆発達特性(障害特性、個人内差)の把握 「検査の数値」に表れない状態の観察 (行動、親子関係等を含めた包括的な観察) 粗大・微細運動、バランス等の動作、協応動作、 注意力・集中力、自己制御、知覚感覚、話し方等 子ども自身の混乱や不安の把握(自尊心・自信等) 複数の検査・評価の組み合せ(テストバッテリー) 田中ビネー、WISC-Ⅲ、K-ABC、DN-CAS CHAT、ASQ、PRS など (通常は、療育開始後に加えて実施) ⇒ 特に「気になる子」「発達障害」の正しい理解は重要 35 「発達の障害」分類と重複図 広汎性発達障害 学習障害 自閉症 ADHD 知的障害 感覚およびその統合と最終産物 (イメージ図:感覚統合Q&Aより) 感覚 入力の統合 第1段階 第2段階 眼球運動 固有覚 触覚 第3段階 第4段階 話し言葉 聴覚 前庭覚 最終産物 言葉 姿勢 集中力 組織力 バランス 身体知覚 自尊心 筋トーン 身体の両側統合 自己制御 重力に対する安心 感 運動企画 目と手の協応 自信 活動レベル 視知覚 学習能力 注意力 目的的活動 抽象的思考や論理的 能力 吸う 情緒的安定 身体と脳の特殊化 食べる 視覚 母と子のきずな 触覚的心地よさ 37 (2)アセスメント ①初期状態の把握 ☆生活全般にわたる状況の把握 日常生活動作、IADL、健康、生活基盤、コミュニ ケーションスキル、社会生活技能、社会参加、 教育・保育などの生活全般にわたるアセスメント (生活場面の正確な把握) 家庭環境、保育環境、教育環境、地域環境等の 把握 38 (2)アセスメント ②基本的ニーズの把握 ☆ 「生活」に即したニーズ把握 家庭内での困っていること 外出時に困っていること 「園」で困っていること 将来困ると思われること 39 (2)アセスメント ③社会資源の把握 ☆ 地域社会資源の把握 地域の活用できる資源(制度上のサービスだ けでなく、インフォーマルなものも含めて) 地域の資源を本人や家族が活用できるため には。 地域に理解してもらうには 40 (2)アセスメント ④課題の整理 認知特性の整理 社会性・行動・情緒の発達課題の整理 環境要因の把握と整理 ⇒ 二次障害の発生機序(予測も含めて) 遅れと特異性の見極め 誤学習と未学習の視点からの理解 得意さ・強み、苦手さ・弱さの把握 41 発達障害と二次障害 本人の素因 環境 (大人) 感情の社会化の未形成 反応性愛着障害 自尊心の喪失 自己認識の未形成 傷つき体験の悪循環 二次障害 の併発 外在化表現・内在化表現 42 6.支援の評価 支援の評価基準 視点 発 達 や 療 育 の 支 援 評価の項目 質の高い 支援の提供 評価の方法 ①利用児童の発達度や家族の支援内容への満足度 ②要望・苦情解決の件数 ③支援の質の第三者評価の導入 ①資格取得の促進 (キャリアアップ)による有資格者数 職員の質の向上 ②OJT、OFF JTの実施件数 ③部内外研修、自主研修の実施件数(時間) 家 族 支 援 ①利用児童数の増減 事業の推進 ②事業所、利用者と社会資源との関係図の作成 ③他の関係機関、事業と連携した件数(支援会議) 発達や療育支援の視点による評価 • 例えば、各種の発達検査による分析などを行い、 児童の発達の伸びを評価する • 児童の生活ぶりに対する家族の評価を把握する • 家族が行う事業者評価表(例えば、満足度評価、 苦情処理件数など)に発達支援の視点を加えたも のを事業所で作成し、そのチェック度を評価する • 関係機関の事業所に対する発達支援技量の評価 を確認する 家族支援の視点による評価 • 家族にとって生活のしやすさという実感が生まれ 見通しがもてているか把握する • 家族、特に母親のストレスの予防マネジメントに ついて、どのような対応が出来たか評価する • 家族と社会資源の結びつきがエコマップ上どのよ うに拡がっているか確認する 児童発達支援管理責任者の役割 • 支援提供の視点が実施されているか把握し、必 要に応じ助言指導する • 個別支援計画の進捗状況を把握し、必要に応じ 助言指導する • 支援の質の向上のための研修やスーパーバイズ 体制等について検討する • 事業全体のマネジメント -職員のマネジメント -リスクマネジメント スーパービジョン スーパービジョン(super vision)とは、スーパーバイザー(指導する者)とスーパ ーバイジー(指導を受ける者)との関係間における対人援助法で、対人援助職者(医 療福祉教育現場、特に相談援助職)が常に専門家としての資質の向上を目指すため の教育方法です。大別すると、個人スーパービジョンとグループ・スーパービジョンが あり、個人は1対1で、グループは数人でスーパーバイザー(指導者)につくことをいい ます。具体的には、実際の面接場面や模擬面接(ロールプレイ)を通して、下記の3点 の機能をふるに発揮し、スーパーバイジーに対して自己の盲点について自らが気づく ことを促します。 1.管理的機能:スーパーバイジーの能カを把握し、それに見合う業務を担当させるな かで成長をはかれるように管理する。 2.教育的機能:すでに獲得している知識、技術の活用を促す方法を示唆したり、不足 している知識を指摘し課題を示す。 3.支持的機能:スーパーバイジーが業務上で出来ていることを認めるとともに、出来 ていないことに気づき、取り組もうとする意思を励ます。 出典:医療用語・福祉用語辞典
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