双極性(感情)障害の薬物療法 mori-30373-1 双極性障害の治療動向 • 欧米ではもっとも注目される心の病気に • 双極性障害の診断の範囲も広がる傾向 – アメリカでは推定患者数も急激に増えている – うつ病と診断されているケースが多い • 新たな治療薬の開発も盛んである – 小児や思春期に対する試験も行われている mori-30373-2 双極性障害は • うつ病から始まる方が多いので注意が必要 – 躁よりもうつ病のエピソード方が数も多く、長く続く – 再発予防を行っても、うつ病相の再発が躁よりも多い • 慢性の病気で、長期の治療が必要 – 予防しないと再発しやすい – 適切に治療しないと、再発の間隔が短くなる mori-30373-3 気分の変動と気分障害 mori-30373-4 双極性障害の薬物治療の現状 1. 気分の高揚が目立たず、うつ病として抗うつ薬だけが 出されているー単極性のうつ病との誤診が多い – 不安定化(なかなか安定した状態にならない) • – 気分安定薬の併用が欠かせない 中には再発の多い急速交代型(ラピッドサイクリング)に移 行 • 急速交代型では抗うつ薬の中止も必要になる 2. 双極性障害の診断治療を受けているが、なかなか安 定しない mori-30373-5 診断治療を受けているのに不調 • 躁を抑えることに主眼が置かれ、軽いうつが続いている – QOLの低下 – 自殺のリスク • 通院服薬はしているが再発してしまう – 薬を医師から指示された通り、きちんと服用していない – きちんと服用しているのに再発してしまう • 1種類の薬でコントロールできれば理想的ではあるが、現実には2- 3種類の併用が必要な場合が多い mori-30373-6 なぜ双極性のうつが注目されるのか • 長期に気分の変化を記録してみると – うつの週が人生のかなりを占め、気分の高揚した 週は少ない • 病気による人生への悪影響 – 対人関係のトラブル、職業上の困難 • 自殺 – 一生の間でみると約 15% にも – うつのときだけでなく、躁とうつの混じった混合状態 が危険 mori-30373-7 双極性障害患者は 平均して人生の1/3 を うつ症状で過ごす 気分の状態 気分高揚:躁・軽躁 急速交代 ごく軽いうつ 慢性軽うつ うつ 正常気分 Euthymia Depression Dysthymia Subsyndromal Elevated Cycling -NIMH の研究データ 、2002 mori-30373-8 双極性感情障害の治療法 いわゆる気分安定(化)薬 リチウム バルプロ酸 抗けいれん薬(気分安定薬 候補) ラモトリジン 第二、第三世代の抗精 神病薬 クロザピン オランザピン カルバマゼピン ギャバペンチン リスペリドン クエチアピン 心理面からの治療法 薬以外の身体的治療 認知行動療法(CBT) 電気けいれん療法(ECT) その他の心理社会的 光線療法 治療アプローチ 磁気刺激(TMS) ジプラシドン アリピプラゾール 迷走神経刺激(VNS) (?) mori-30373-9 治療のゴールは、一回の躁やうつの波を 抑えることよりも、長期の安定化である mori-30373-10 双極性障害治療の2つのステージ 1. 第一段階:躁やうつの急性期治療 1. 2. 3. 4. 5. 6. 重い躁(妄想や攻撃性、暴力を伴う) 機嫌の良い多幸的な躁 軽い躁 躁うつが混じった混合状態、 うつ 急速交代型 2. 第二段階:躁とうつのエピソードの再発防止 1. むしろこちらが重要 1. 2. 完全に再発がなくなることが理想 再発までの間隔が長くなり、症状が軽くなる mori-30373-11 急性期の治療 ー状態により選択する薬が異なるー 重い躁(妄想や激しい興奮、攻撃性、暴力を伴う) 機嫌の良い多幸的な躁 軽い躁 躁とうつが混じった混合状態(見かけ上はいらいら の強いうつ) 5. 急速交代型ラピッドサイクリング 1. 2. 3. 4. mori-30373-12 状態別の薬の選択(1) 重い躁(妄想や激しい興奮、攻撃性を伴う) • 新しいタイプの抗精神病薬(オランザピン、リス ペリドン、クエチアピン)かバルプロ酸、その併用 – さらに鎮静させる必要があるときは、ロラゼパム、ク ロナゼパムなどの効果の強い抗不安薬を短期間併 用する クロナゼパムの錠剤 – 古いタイプの抗精神病薬は過度の鎮静、パーキンソ ン症状、うつ転などの副作用が出易い mori-30373-13 状態別の薬の選択(2) • 機嫌の良い多幸的な躁, 軽い躁 – リチウムを単独で • 躁とうつが混じった混合状態(見かけ上はいらいら の強いうつ) – バルプロ酸を • 急速交代型ラピッドサイクリング – 抗うつ薬を徐々に減らして中止し、バルプロ酸に – 効果不十分であれば2-3種類の気分安定作用のある 薬の併用に mori-30373-14 状態別の治療(3) うつ病エピソード • まずは主剤の気分安定薬を十分に用いる • ラピッドサイクリングの可能性がないかチェックする • 一ヶ月以上慢性的にうつ状態が持続する場合は抗うつ薬の服 用を考慮する – かならず気分安定薬と併用する – 抗うつ薬だけの服用は波が多くなるので避ける(特に古いタイプの三環系 抗うつ薬は躁にスィッチする危険が高いので避ける) – リスクの低いSSRI, SRNI, ブプロピオン(わが国では試験中)を用いる • 症状によっては非定型(新世代)の抗精神病薬も考慮する – 古いタイプの抗精神病薬では逆にうつに転じるリスクも mori-30373-15 双極性感情障害の治療法 いわゆる気分安定(化)薬 リチウム バルプロ酸 抗けいれん薬(気分安定薬 候補) ラモトリジン 第二、第三世代の抗精 神病薬 クロザピン オランザピン カルバマゼピン ギャバペンチン リスペリドン クエチアピン 心理面からの治療法 薬以外の身体的治療 認知行動療法(CBT) 電気けいれん療法(ECT) その他の心理社会的 光線療法 治療アプローチ 磁気刺激(TMS) ジプラシドン アリピプラゾール 迷走神経刺激(VNS) (?) mori-30373-16 第二段階: 躁とうつのエピソードの再発防止 気分の波の安定化 • むしろこちらが重要 • ムードスタビライザー(気分安定薬)の服用だけで なく、心理社会的な面からの注意も欠かせない • 現時点では本当の意味でムードスタビライザーと 呼べる薬物は存在していない – リチウムが現時点ではもっとも、それに近い薬剤 mori-30373-17 双極性障害治療の基本薬 ムードスタビライザー • 双極性障害治療の基本となる薬 – 躁うつ治療・再発予防薬のこと – その定義はあいまいである – 本当の意味でムードスタビライザーといえる薬はない • 抗躁薬と呼ぶべき薬も、マーケティング上そう呼ぶ傾向がある • 現時点では • かなりそういえるのはリチウム(微量の金属元素) • 次がバルプロ酸(元来はてんかんの治療薬) • その次がカルバマゼピン(同じくてんかんの治療薬) mori-30373-18 理想のムードスタビライザー 躁に効く 副作用が少ない うつに効く 安全性が高い mori-30373-19 4種のムードスタビライザー候補 mori-30373-20 リチウムといえば mori-30373-21 リチウム元素とは mori-30373-22
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