糸魚川ジオパークと地域振興 地学雑誌 Journal of Geography 120(5)

糸魚川ジオパークと
地域振興
地学雑誌 Journal of Geography
120(5) 819-833 2011
竹之内 耕
紹介者:静岡大学総合科学専攻2年
中村圭佑
ジオパークとは
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ジオパーク(英: geopark)とは、地球科学
的に見て重要な自然の遺産を含む、自然
に親しむための公園。地球科学的に見て
重要な特徴を複数有するだけでなく、そ
の他の自然遺産や文化遺産を有する地域
が、それらの様々な遺産を有機的に結び
つけて保全や教育、ツーリズムに利用し
ながら地域の持続的な経済発展を目指す
仕組み。
(Wikipediaより)
はじめに①
糸魚川ジオパーク(新潟県糸魚川市)
は、2009年8月22日、世界ジオ
パークに認定された。
市民が「ジオパークとは何か」を考えつつ、世
界ジオパークによる地域づくりのスタート台に
立った歴史的な瞬間で、市民と行政が長期にわ
たり少しずつ進めてきた取り組みの成果
はじめに②
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洞爺湖有珠山ジオ
パーク
島原半島ジオパーク
甚大な火山災害を出発点と
してその復興過程がジオ
パークに
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糸魚川ジオパーク
自然と文化を財産として大
切にしてきた歴史がジオ
パークに
本研究の目的
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歴史的経緯
市民と行政が果たしてきた役
割
地域振興
保護と教育の関係の整理
市民意識の変化と市民活動
ジオパークが地域振興に与える
可能性について考察する
ジオパークの仕組み

世界遺産
⇒保護が目的
積極的な
学習機能
ジオパークは持続可能な社会や地球を作
るための啓蒙活動のツールであると同時
に、ジオパークの積極的な地域振興が求
められる。
 この意味で世界ジオパークは世界遺産の
弱点を克服すると期待されている。

ジオパークの素材の3要素
①地形や地質
②動植物や生態系
③人々の歴史・伝統・文化
つまり・・・
地球表層とそのうえで繰り広げられている生物
圏(ヒトを含む)のシステムと相互作用、それ
らの変遷を関連付けて理解する場所がジオパー
クである。
またこれは、階層構造になっており、下位の要
素が上位に対して基礎にあたる。この階層構造
を前提として三要素間でさまざまな相互関係。
ジオパークの活動の3要素
①保護
②教育
③ジオツーリズム
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これらの活動の3要素の優先順位を認識し、
バランスよく実践されると地域振興につなが
る。
ジオツーリズムはジオパークのメッセージを
多くの人に伝えるための装置であり持続可能
な地域振興を実現するための手段
市民の誇り

世界ジオパークに認定されて一番変化し
たもの
⇒故郷に対する新たな認識と誇りが醸
成されたこと
その誇りが現在の糸魚川を支えるマンパワーの源であり
ジオパークを活用した様々なアイディアの源
例「ジオパーク推進市民の会」「糸魚川ジオパーク検定」
副読本「糸魚川ジオパークのことがわかる本」を配布
ジオパークガイド
ジオパークガイド養成講座を何度も開講し、2010
年12月現在、600人以上の人が参加している。
 糸魚川ジオパークガイドになるには、養成講座に
4回以上参加し、ジオパーク検定(初級)に合格し、
実技試験を受け、合格する必要がある。
 現在35名のジオパークガイドがいるが、早い段
階で50名~100名のガイドを育成し、市民の
多くがジオパークガイドを務めることが可能なジ
オパークの実現を目指している。
 2011年1月、ジオパークガイドからなる『糸魚川ジ
オパークガイドの会』が設立された。

観光システムの整備と改良
ジオサイトへの来訪者の輸送や宿泊、案内、また、食
や土産、イベント開催など来訪者の滞在時における歓
待は、快適なジオツーリズムを支える基本的要素
 糸魚川はもともと観光地ではない
それらの整備が急務

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これまで季節限定であった定期
観光バスを通年に変更
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駅からジオサイトへのシャトル
バスの運行
土産コーナーの設置
学校の修学旅行の誘致
ジオパークにちなんだ商品開発
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ジオまる ぬーな
まとめ
① 世界ジオパーク認定をめざしたジオパーク建設
の課程において、糸魚川市が進めてきた文化行
政や地域づくりの取り組みが土台となった。
② 世界ジオパーク認定を契機として、市民が郷土
の自然や文化に対して世界的価値を認識。市民
エネルギーの源泉となった。
③ 自然・文化資源を活かし、24カ所のジオサイ
トを設定した。地域振興に役立てる集落が出て
きている。
④ 2007年以降わずか3年ではあるが、世界ジ
オパーク建設を進めてきた結果、住民意識が高
まってきている。地域振興を内包したジオパー
クの優れた仕組みの現れであろう。