結膜弛緩症の治療戦略・・縫着法 横浜相鉄ビル眼科医院 大高 功 院長 ●縫着法による結膜弛緩症の治療は、我々が世界で最初に発表し、 American Journal of Ophthalmology に掲載された。 結膜弛緩症とは ●弛緩した結膜が、通常下眼瞼上にしわを作って いる状態 結膜弛緩症で発生する問題 ●流涙・・・下のメニスカスに結膜がのってい るので、そこを伝わって涙が外に出てくるか ら ●結膜下出血・・・皺になった結膜中の折れ曲 がった血管がまばたきでこすられることによ り血管が切れるから ●異物感・・・皺になった結膜の頂上をまばた きのたびにこすることによる刺激による ほんとうに手術で良くなるのか? 患者さんから のお手紙によ ると、やはり 効果があるよ うだ。 我々が注目した解剖学的特長 ●Fornixが浅くなって いる。 ●結膜の強膜への接着 が弱い 我々の考えた原因 ●普段の手術でも実感するとおり、加齢に よってテノン嚢は減少する。このため、結 膜の眼球に対する接着が弱くなり、下眼瞼 で押し上げられた結膜がしわになる。 ●加齢により皮膚にしわができるがごとく、 結膜自体も伸びていつことは確か。 なぜ下に発生するか(仮定) ●上を向いたときには上眼瞼は上がるが、下を 向いたときに下眼瞼は下がらないので、下方 の球結膜とfornixに、より強いストレスがか かり、結膜の接着が悪くなるのではないか。 ●下には長年汚れた涙液が貯留しているので、 上より強いストレスがかかっていることも 関係していると思われる。 治療法 切除法と縫着法がある 切除法 ●利点・・・容易 ●欠点・・・特にない 縫着法 ●利点・・・再建手術であること。 ●欠点・・・縫着時に、穿孔しないように 気をつける必要がある。 縫着法のコンセプト ●結膜を強膜に縫着することにより、再接 着を図り、ぴんと張った結膜と、下の深 いfornixを再建する。 ●糸の選択を工夫することにより、糸がと れてからも永続的な接着を目指す。 縫着法の具体的な方法 ●tractional sutureを置くことがお勧め ●8-0シルク糸で下結膜と強膜を3から6針縫着 する。 縫合は必ず2-1-1で。2-1だとすぐ脱落 して、意味をなさない。ナイロン系の糸だと、 炎症が起こらないので永続的な癒着が得られ ない。バイクリルは炎症が強すぎて、術後し ばらく、患者さんの異物感が強い。(paperで はバイクリルと発表したが、その後の検証で この結論に到達。まだ改善の余地あり) ●強膜は浅くすくうだけで十分な接着が得られ る。 厳密にはテノンをすくっているだけかも しれない。 ●limbsから6ミリ程度の場所。よく見るとfornix がしっかりわかるので、その場所に通糸する。 ●穿孔には注意すべきだが、数多くの網膜剥離 手術時の体験より、強膜を穿孔しても、網膜 まで穿孔することはまずない。 ●術後の目薬は、抗生剤と0.1%フルメトロンの ような弱いステロイドを1日3~4回。ステロイ ドが無いほうが強い炎症を起こして癒着を得 やすいと思われるが、患者さんの異物感が出 ることが多い。ステロイドを使用しても、十 分に癒着が得られる。 結果 ●結膜弛緩がな くなり ↓ ●深いFornixが再 形成される ●もちろん、うま くいけば、だ が・・・ ↓ 大高のあくまで個人的なこだわり 私は眼手術のプロとして、どんな手術でも、 可能な限り再建にこだわる。 よって、縫着法を選択している。 縫着した上で、どうしても余分と判断した 結膜が残った場合、そこを切除するにとど める。 ビデオを供覧します。
© Copyright 2024 ExpyDoc