土木工学設計製図(課題II)を はじめる前に

「設計論」
というほどのものではないが・・・
コンクリート工学研究室
岩城 一郎
設計とは?
(広辞苑)
せっ‐けい【設計】(plan; design)
 ある目的を具体化する作業.製作・工事など
に当り,工費・敷地・材料および構造上の諸
点などの計画を立て図面その他の方式で明
示すること.「ビルの―」
 比喩的に,人生や生活について計画を立て
ること.
土木における設計とは?



一般に土木構造物(橋,トンネル,擁壁,ダム
等)の構造設計(他に,配合設計,景観設計)
構造設計とは?:構造物に要求される性能
(主として,安全性能,耐久性能)を満足する
とともに,経済性を考慮し(景観,環境への影
響にも配慮し),材料,構造形式,部材寸法
等を決定し,これらを計算書や図面,その他
の方法により表すこと.
安定計算と断面計算に大別される.
安定計算と断面計算
安定計算
構造物そのものの安定(転倒,滑動)に関す
る安全性の評価
 断面計算
構造物を構成する部材に作用する力(断面
力:曲げモーメント,せん断力)に対する安全
性の評価
 人,ブックエンド,擁壁を例に

コンクリート構造物の設計法
許容応力度設計法
古典的な設計法,100年以上の実績と
経験(十分な実績,苦い経験)
 限界状態設計法
現在,またこれから発展する設計法,我
が国での実績は未だ20年程度と浅いが,
世界の趨勢,合理的な設計法

許容応力度設計法と限界状態設計法
限界状態設計法
許容応力度
設計法



荷重レベルの違い
理論の違い:弾性理論(線形理論)と弾塑性理論(非線形理論)
安全性の照査手法の違い:安全率と部分安全係数,応力による比較と
断面力による比較
許容応力度設計法
使用状態における作用応力σと許容応力度σaと
の比較 σ<σa:O.K.
 弾性理論(線形理論):コンクリート及び鉄筋の
応力-ひずみ関係は直線
 安全率kのみによる安全性評価(一般にコンクリート
の場合:3,鉄筋の場合:1.7程度)
 例えば,
f’ck=24N/mm2,k=3.0→σ’ca=f’ck/k=8N/mm2
fy=295N/mm2,k=1.7→σsa=fy/k=176N/mm2
小テスト σ’c=5.98N/mm2<σ’ca
σs=141N/mm2<σsa

限界状態設計法





終局限界状態,使用限界状態,疲労限界状態
抵抗値R(Resistance,断面耐力)と作用値S(Subject,
断面力)との比較:γi・S/R<1 例 γi・Md/Mud<1.0
弾塑性理論(非線形理論):コンクリート(2次曲線と直線),
鉄筋(バイリニア)
部分安全係数法:構造材料の品質のばらつき,荷重の大
きさの決定に対する不確実性などを考慮するためにいく
つかの安全係数を導入(材料係数,部材係数,構造解析
係数,荷重係数および構造物係数)
コンクリート標準示方書:1986年に限界状態設計法が採
用,2002年まで許容応力度設計法と併記,2002年より限
界状態設計法のみ(許容応力度設計法は付録扱い)
限界状態設計法による検討
安定計算
 転倒
 滑動
断面計算(荷重あるいは断面が厳しい条件)
 終局限界状態(曲げ):γi・Md/Mud<1.0
 終局限界状態(せん断):γi・Vd/Vcd<1.0
→ γi・Vd/Vyd<1.0(ただし,Vyd=Vcd+Vsd)
 使用限界状態(ひび割れ):w<wa
断面計算(曲げに対する検討)



設計曲げモーメント:Md(右下図に対応)
設計曲げ耐力:
Mud=Asfydz/γb =Asfydd(1-0.6pfyd/f’cd)/γb
安全性の照査γi・Md/Mud<1.0→O.K.
荷重状態
曲げ
モーメント図
岡村甫著:
鉄筋コンクリート工学(三訂版)
市ヶ谷出版社
断面計算(せん断に対する検討)



設計せん断力:Vd(右下図に対応)
設計せん断耐力(せん断補強筋なしの場合):
Vcd=βdβpfvcdbwd/γb
安全性の照査:
γi・Vd/Vcd<1.0
→せん断補強筋不要
+
荷重状態
せん断力図
5.鉛直壁の計算(ひび割れに対する検討)
使用状態における設計曲げモーメントMdを計
算
 鉄筋の応力σs=Md/(Asjd)
 ひび割れ幅:
w={(σs/Es)+ε’cs}{4c+0.7(cs-φ)}
 許容ひび割れ幅:wa=0.005c(一般の環境)
 安全性の検討:w<wa→O.K.

次回製図及び設計論IIの予告





11月10日(金)13:00-16:10
7011教室
教科書持参
個々の設計条件(HP上で公開)
今回の講義内容もHP上に公開:復習しておく
ことが望ましい