疫学調査の基本概念 - SQUARE - UMIN一般公開

疫学初級者研修
~疫学調査の基礎概念~
平成12年2月14日(月)
岡山理科大学情報処理センター
疫学とは
疫学調査の「三要素」
疫学調査のステップ
疫学とは
疫学とは
例えば
:健康
:発症
食べた人たち
食べなかった人たち
食べた人たちは、食べなかった人たちに比べて、
8倍発症しやすい
疫学とは
原因
結果
この過程で「共通の認識」が得られる原理があるはず。
この原理を「共通の約束ごと」として
明記したのが疫学
食べて
個人
発症
因果関係?
食べた人たち
食べなかった人たち
集合
集合体になると 数が多いということで
共通認識を得ることができる
これは 他に確定することがなければ
「実証」となり得る
疫学調査のいろいろ
1 全数調査
・通常の食中毒調査はこれに該当
・調査対象の全数を調査する
2 コホート調査
(コホートとは「共通の性格をもつ集団」の意味)
・「食べた」人と「食べない」人を選んで調査する
(例)
ある講演会に出席した集団から、懇親会まで出席
した人(食べた人)と出席しなかった人(食べなかった
人)を同じ数選び、発症の有無を調査する。
3 症例対照調査(ケースコントロール調査)
(ケース
:症例(患者の意味)
コントロール:対照(健康な人の意味))
・「患者」と「健康な人」を選んで調査する
(例)
サルモネラ・オラニエンブルグによる散発の患者群か
ら聴取調査により「いか菓子」の喫食が浮かんできた。
そこで、「健康な人」をランダムに選び、過去に「いか菓
子」を食べたことがあるか調査し、発症の有無と「いか菓
子」の関係を究明する。
欧米で行われている症例対照調査の例
◆O157による患者が散発ではあるが、
集団発生である疑いがある場合など…
・規定の聴取調査票により調査
患者群、対照群に対し、調査の目的を相手に 伝
えることに始まり、喫食調査、過去の行動など を
聴き取る
・対照群はランダムに選ぶ
電話番号の末尾を1番ずつ変えた番号に次々 と
電話をかけていく
疫学調査の「三要素」
疫学の「三要素」
疫学の「三要素」は
Time
Place
Person
時間
場所
人
疫学の「三要素」 ①時間
Epidemic Curve
(流行曲線)
患者数
●発生規模
●過去の状況
●現時点での状況
●将来の方向
時間
を簡単な視覚描写でとらえる
ことができる。
疫学の「三要素」 ①時間
患者数
●点曝露源
急なのぼり傾斜、そしてゆる
やかな下り傾斜を示すものは
点曝露源
時間
患者数
●共通曝露源
ピークが明確でなく平坦な
山が続くものは、持続性又は
間欠的な共通曝露源がある
時間
参考:資料⑩⑫
疫学の「三要素」 ②場所
Spot Map (スポットマップ)
●散布状況
●潜在的曝露の経路
●伝播の様相
を示すのに大きな役割を担う
ことがある
食中毒の場合は
建物の平面図、テーブルの配
置図などに特徴が現れること
がある
疫学の「三要素」 ③人
年齢
性
職業
暴露に関する「人」の特徴を把握する
※症例の定義
症例の定義
患者の聴取調査の結果、調査票に「微熱」「軟便のみ数回」
「頭痛があったが風邪か?」などと書かれていたら、
その人を患者として扱いますか?健康な人としますか?
集められた調査票には、発症についてさまざまな情報が
記されている。調査対象となる疾病以外のものも含まれて
いる可能性も高い。
そこで、調査対象となる疾病と喫食の有無について、より
正確な因果関係を立証するために、患者の疾病に関して
定義しておく必要がある。 それを「症例の定義」という。
「症例の定義」の基本的な考え方①
●できるだけ具体的であること
●2つ以上の症状を組み合わせるときは
AND か OR のどちらでつながれるか
明記する
●症状の他に「時間・場所・人」の制限を含
むこと
「症例の定義」の基本的な考え方②
●ケースバイケースで決定すればよい
(必要に応じて変えられるべきものである)
●はじめは緩やかな定義
→有意な喫食物がでなければ厳しく
●頭痛、腹痛、軟便等の単一症状は
発症者として扱われない場合がある
「症例の定義」の例
●邑久
腹痛、下痢、血便、嘔吐、嘔気の消化器症状のうち1
つ以上を有するもの
●埼玉
腹痛、下痢、粘血便、嘔気、嘔吐の消化器症状のうち
1つ以上を有するもの
●堺市
入院したすべての患者、多発校の学童、あるいは教
職員、またこれらの家族で腹痛、下痢、血便のうちい
ずれかの症状を呈したもの。
感染経路の明らかでない一般市民で血便を有した
もの、又は腹痛、下痢を有したもので菌陽性であった
もの
※疫学調査のステップ
参考:資料⑬⑭