はじめての水道 京都市分

はじめての水道設備
第2章
3時限目
第2章 機械・電気・計装設備の役割と維持管理
2.1
2.1.1
2.1.2
2.1.3
2.1.4
2.1.5
2.1.6
機械・電気・計装設備の概要
総説
機械・電気・計装の基本事項
維持管理の基本事項
点検整備作業
安全管理
自家用電気工作物保安規定
2.1 機械・電気・計装設備の概要
2.1.1 総 説
機械・電気・計装設備
多種多様な機器から構成
水道施設運用の中枢を担う
使用目的や機能を理解,適切な維持管理に努める必要
運転管理
保全管理
効率的な施設運用
設備の性能や機能の保持
異常時の対応を考慮
故障の及ぼす影響を最小化
維持管理上の注意事項
保安面や安全衛生面に留意した取組
設備管理の概要
設 計
基本計画
基本設計
実施設計
工事目的の明確化
最適な計画の策定
工事案の比較検討
最適案の概略設計
詳細設計の実施
設計図書作成・工事費算定
工 事
運転管理
設備管理
施工前
運転計画
機器・施工承諾
施工計画書の確認
施 工
設計
連
携
工事
施工状況等の確認
試運転立会
事故・
故障情報
連
携
運転
連携
連
携
監視操作
研修・訓練
連
携
管理目標の例
保全
完 成
水量
完成検査
設備の引継
保全計画
保全計画に
基づき実施
水圧
保全管理
保全計画の見直し
更新計画への反映
保全データ
の分析評価
保全情報
管理方法の例
日常
点検
定期
点検
定期
整備
水質
2.1.2 機械・電気・計装設備の基本事項
機械設備
水の輸送・遮断
ポンプ設備
浄水処理
バルブ類
水処理機械
薬品注入設備
電気設備
電源の供給
設備の運転制御
停電時の対応
受変配電設備
運転操作設備
発電設備等
計装設備
水道施設の監視,制御及び情報処理
計装用機器(水量・水位・水圧・水質等)
監視制御システム
機械・電気・計装設備の例
機械設備
配水ポンプ
スラッジ掻寄機
ポンプ吐出し弁
次亜塩素酸ナトリウム注入設備
電気設備
高圧配電盤
現場制御盤
非常用自家発電設備
計装設備
超音波流量計
監視制御設備
2.1.3 維持管理の基本事項
機械・電気・計装設備の機能を長期的に安定して確保
構造・性能・システム全体を熟知
適正な維持管理を実施
機械・電気・計装設備の維持管理
運転管理
保全管理
設備を操作,水処理・水運用を適切に実施
設備の状態を確認,正常な状態を保持
運転管理目標に基づく最適な施設運用
故障に伴う影響の予防または最小化
ライフサイクルコストの低減化
主な業務内容
運
転
異常時対応
記
録
マニュアル作成
最適な保全管理計画の策定及び実施
点検結果の記録
データ解析・評価
保全管理の詳細
保全管理の分類
予防保全:故障の発生や性能の低下を事前に予防
時間計画保全:時間計画に基づく保全-性能低下を防止
定期保全:予定の時間間隔で定期的に実施
過剰な保全-費用増大の傾向
継時保全:予定の累積動作時間に達した際に実施
状態監視保全(予知保全)
劣化傾向等を連続または定期的に監視して保全
監視や点検の手間が増大
事後保全:故障発生後に修理
緊急保全
予防保全対象が故障した場合に実施
通常事後保全
予防保全対象以外が故障した場合に実施
取替対応等
2.1.4 点検整備作業
点検整備作業のポイント
1.水道事業を継続する為に不可欠な電気・機
械・計装設備を健全に保つことを目的として行う
作業。
2.日常点検、定期点検、精密点検に大別され、
設備毎にその内容は定められており、その結果
は記録として残しておく事が重要である。
日常点検
①運用時における異常の有無の確認が目的。
②1日から1箇月程度の周期。
③通常巡視(日常巡視点検)と月次点検。
④日常巡視点検 視覚,聴覚,嗅覚,触覚を用い
てその異常を感知する ⇒「日常巡視記録用紙
」。
⑤月次点検 運転中の機器を外観点検 ⇒「月次
点検記録用紙」
⑥異常の兆候がある場合,その程度に応じて臨
時点検に切り替える。
定期点検
①性能の維持及び確認が目的。
②3ヶ月から1年程度の周期。
③法定点検も含まれる。
④各部点検清掃や消耗部品の取替え,試験校正
,電気回路の絶縁抵抗測定など。
⑤各種点検作業手順書に従って点検記録及び調
整内容も一定の様式に整備。
⑥異常の兆候がある場合,異常の程度に応じて
臨時点検 。頻繁に校正が必要になった計器
は精密点検を行う。
精密点検
①性能の確認及び回復が目的。
②数年の周期。
③機器の分解点検・部品の交換など。
④点検結果から,部品交換の必要性や,更新時
期の検討などを行う。
⑤委託して行なう場合、数年に1回程度である
事から,予算要求を忘れないようにする。
2.1.5 安全管理
• 水道事業の安定した継続は生活に必要不可欠
• 従事する人々の安全及び衛生の管理も重要
1)労働安全衛生法
①職場における労働者の安全と健康を確保するとともに,
快適な職場環境の形成を促進する。
②水道事業者を始め,安全管理者,衛生管理者,現場技術者
,従事者などすべての人々が協力して取り組むことが必要
2)水道法
水道法第21条で水道水の汚染を防止するために,水道
の取水場,浄水場又は配水池において業務に従事する者
及びその構内居住者について,定期的及び臨時の健康診
断を義務付け。
安全衛生対策
(2)労働災害
• 作業設備の不備や作業方法の不適合など物的,技
術的要因,経験,訓練不足,不注意,過失,怠
慢などの人的要因。
• 発生確率を分析した「1:29:300」という数字で
表されるハインリッヒの法則。
安全作業の基本事項
作業を安全に行なう為に必要な基本事項
は、以下のとおりです。
(1)作業服装や保護具を正しく着用する。
(2)作業前ミーティングを行う。
(3)部品,材料,工具の整理整頓を行う。
(4)作業手順に則って作業を行う。
(5)単独作業は避ける。
(6)4S(整理・整頓・清掃・清潔)を行う。
(7)ヒヤリ・ハットを報告し,対策を講じる。
(8)定期的にKYT(危険予知訓練)を行う。
酸素欠乏箇所での作業
①空気中の酸素濃度が18%未満である状態を酸素欠
乏と言う。
②酸素欠乏危険箇所における作業を行なう際には
, 酸素欠乏危険作業主任者が酸素濃度の測定を
行う。
③測定は結果は一定の様式を定めて記録し3年間
保存する。
④酸素欠乏危険場所で作業を行なうには酸素欠乏
危険箇所について特別教育を受けた者しか作業
に就くことは出来ない。
酸素濃度と酸素欠乏症の症状などの関係
段
階
空気中濃度
濃度
分圧
動脈血中酸素
飽和度
酸素欠乏症の症状等
分圧
(%) (mmHg) (%) (mmHg) 安全下限界だが,作業環境内の連続換気,酸素濃度測
18
137
96
78
定,安全帯等,呼吸用保護具の用意が必要
脈拍・呼吸数増加,精神集中力低下,単純計算まちがい,
1
16~12
122~91
93~77
67~42
精密筋作業拙劣化,筋力低下,頭痛,耳鳴,悪心,吐
気,動脈血中酸素飽和度 85~80%(酸素分圧 50~5nnHg)
でチアノーゼが現れる。
判断力低下,発揚状態,不安定な精神状態(怒りっぽ
2
14~9
106~68
87~57
54~30
くなる),ため息頻発,異常な疲労感,酩酊状態,頭
痛,耳鳴,吐気,嘔吐,意識もうろう,階段,梯子か
ら墜落死,溺死の危険性など
吐気,嘔吐,行動の自由を失う,危険を感じても動け
3
10~6
76~46
65~30
34~18
ず叫べず,虚脱,チアノーゼ,幻覚,意識喪失,昏倒,
中枢神経障害,チェーンストーク型の呼吸出現,全身
けいれん,死の危機
4
6 以下
46 以下
30 以
下
18 以下
数回のあえぎ呼吸で失神・昏倒,呼吸緩除・停止,けい
れん,心臓停止,死亡
2.1.6 自家用電気工作物保安規程
区
分
具
体
例
・一般電気事業者
事
電
気
工
作
物
電気事業の用に供
・卸電気事業者
する電気工作物
・特定電気事業者
業
・特定規模電気事業者
用
・電気事業者のサービスステーション,研究所,寮等直接電
電
気を供給するため以外の施設
気
・電気卸供給事業者
工
作
自家用電気工作物
物
・特別高圧または高圧受電事業者
・小規模発電設備以外の発電設備を有する事業者
・爆発性等の危険性があって,電気工作物の操作による事故
の発生のおそれのある場合
・配電線路を有する低圧受電の工場等
・一般住宅
一般用電気工作物
・低圧受電の店舗,工場等
・小規模発電設備を有する民家等
自家用電気工作物保安規程のポイント
1. 事業用電気工作物を設置する者は,自己責
任で電気の保安を確保する義務がある。
2. 保安規程は,自家用電気工作物の保安業務
の具体的な内容を示してある。
3. 電気主任技術者は,事業用電気工作物の工
事,維持及び運用に関する保安の監督を行
う有資格者である。
4. 自家用電気工作物によっては,保安管理業
務を外部に委託する事によって,電気主任
技術を自ら選任しない事が出来る。
1)自家用電気工作物
事業用電気工作物を設置する者は電気の保安を確保す
る義務があり,次のことを行うことが必要である。
①事業用電気工作物を経済産業省令で定める技
術基準に適合するように維持する
②事業用電気工作物の工事,維持及び運営に関
する保安を確保するために保安規程を定め,
国に届ける。また,設置者及びその従業者は
保安規程を守る
③事業用電気工作物の工事,維持及び運用に関
する保安の監督をさせるために電気主任技術
者を選任し,国に届ける。
2)保安規程
自家用電気工作物の工事,維持及び運用に関す
る保安を確保するために設置者が定めるルール
3)主任技術者
①事業用電気工作物の工事,維持及び運用に関
する保安の監督をさせるために,設置者が選
任した有資格者である。
②事業用電気工作物の工事,維持又は運用に従
事する者は,電気主任技術者がその保安のた
めにする指示に従わなければならない。
③基本的に電気主任技術者免状の交付を受けて
いる人を選任。
④7,000V以下で受電する需要設備においては,
電気監理技術者又は電気保安法人に保安業務
を委託することができる。
4)電気を取り扱う業務①
電気の危険性
①通過電流の大きさ,②通電時間,③通電経路
④電流の種類,⑤周波数及び波形
電流値
人体への影響
1mA
最小感知電流といって,ピリピリ感じる。人に危険はない。
5mA
生理的に悪影響を及ぼさない最大の許容電流値である。危険性の始まりで
ある。
10~
20mA
不随電流といって,離脱の限界である。持続して筋肉の収縮が起こり,握
った電線を離せなくなる。離脱の限界である。
50mA
痛み,気絶,疲労,人体構造損傷の可能性,心臓の律動異常の発生,呼吸
系統への影響が出る。心室細動電流の発生ともいわれ,心拍停止の可能性
がある。
100mA
~3A
心室細動の発生,心拍停止が現れ,極めて危険である。
6A以上
心筋は持続的に収縮し続ける。呼吸麻痺による窒息,火傷。
4)電気を取り扱う業務②
電気の危険性
①感電は通常低圧の場合,充電部に直接接触する
ことによってのみ発生。
②高圧以上になると直接接触しなくても,一定の
距離以内に近づくことにより,閃絡(フラッシ
ュオーバー)による電撃を受ける。
充電電路の使用電圧
(kV)
充電電路に対する接近限界距離
(cm)
22以下
20
22を超え33以下
30
33を超え66以下
50
4)電気を取り扱う業務③
作業指揮者
①停電作業等を行なう際に事業者は作業指揮者を
任命しなければならない
②作業指揮者は作業を直接指揮しなければならず
,作業自体をする事は出来ない
作業前ミーティング
(ツールボックスミーティング:TBM)
①作業指揮者は作業員全員に対し,作業日時・作業
指揮者・役割分担・使用機器・保護具などを明示
②作業手順書に基づいて,作業手順を周知させる。
5)保安管理業務外部委託
(1)保安管理業務の外部委託が可能な電気工作物
イ)7,000V以下で受電する需要施設の設置の工事
のための事業場又は7,000V以下で受電する需要設
備のみの事業場。
(2)保安管理業務の受託が可能な法人等
電気事業法施行規則第52条の2でその資格要件が定
められている,個人事業者及び法人。
(3)保安管理業務外部委託の申請に必要な書類
(4)申請書類に記載が必要な事柄