非一様空間格子幅・時間ステップ幅 および衝突効果 寺田 直樹 名古屋大学太陽地球環境研究所 1.Introduction 複雑な形状の物体 周りの場を解く (適切な境界条件) 例1.飛翔体周りの電磁環境の解析 解像が必要な領域 に計算格子を集中 例2.衝撃波の反射解析 非一様な格子分布の利用は、数値流体力学の分野では 20年以上にわたり盛んに研究が行われている。 ⇒ しかし、粒子・ハイブリッドモデルでは 直交格子を用いるのが一般的 講義の流れ ・ 非一様な格子分布 (テキスト p.233~) を粒子・ハイブリッドモデルで利用する為の 手法を中心に説明。 ・ 粒子数の動的変更 (テキスト p.237) 非一様な格子分布 ・ 非一様な Δt (テキスト p.238~) と併用されることが しばしばある ・ 衝突効果 (テキスト p.240~) 2.非一様な格子分布 (流体計算) 格子の種類 ・ 構造格子 (b) ・ 非構造格子 (a) ・ 構造格子と非構造格子の組み合わせ ・ 解適合格子 非構造格子 ・ 格子点の並びに規則性をもたない ・ 格子の自由度が高い ・ 有限要素法や有限体積法で使用される ・ 三角形(三次元では四面体)が最も多く用い られるが、四角形(三次元では六面体)や その他のセル形状やその混在もしばしば 用いられる 例.非構造格子を用いた デルタ翼周りの流れ場の計算 構造格子 ・ 格子点の並びに規則性をもつ ・ 差分法や有限体積法で使用される 境界適合格子 マルチブロック 重なり格子 格子自由度の 低さを補う などがある 例.境界適合格子を用いた 電極間プラズマの計算 非構造格子と構造格子の組み合わせ 三角形(三次元では四面体)セルを用いると 流速計算が多くなる ⇒ 高レイノルズ数流れの計算では、高い 空間分解能が必要となる物体近傍に のみ構造格子(またはプリズム形状の 非構造格子)を用いる → 例 解適合格子 流れの計算結果をもとに格子点を移動、 または格子点を追加・削除 非構造格子 [Togashi et al., 2001] [Togashi et al., 2001] CFD (Computational Fluid Dynamics) 航空宇宙分野などが牽引役 ・ 1970年代後半~80年代 効率の良い計算が最重要課題 ⇒ 境界適合格子 ・ 1990年代~ 実形状周り流れの計算を目指す ⇒ 非構造格子 CFD Space plasma の大部分 実形状 (形状の微妙な差で 空力性能が決まる) 実形状 プラズマの粒子性 非構造格子 構造(or 非構造) 格子 + 粒子コード 2.2 粒子コードへの適用 ・ 非構造格子 格子形状が三角形(四面体) ⇒ e.g., Kazeminezhad et al. [1995] プログラミングがやや複雑 物体形状が複雑な場合に使用 (飛翔体環境など) 格子形状が四角形(六面体) ⇒ e.g., Kallio and Janjunen [2001] 三次元で六面体を用いた場合は、+n レベルの格子では格子体積が 1/8n に。 → 隣接するグリッド間内の粒子数の変化が激しい。 粒子分割・合体(後述)が必要となる場合が多い。 ・ 構造格子(境界適合格子) プログラミングが比較的容易で汎用性に富む 物体形状が相当複雑でない限り十分 粒子分割・合体 ・ 解適合格子 ⇒ e.g., Lipatov [2002] 2.3 境界適合格子 + 粒子コード ・ 境界適合格子における変換式 ・ 粒子コードへの適用 - 補間法 - 粒子局在化法 ・ 適用例 適用例 (1) デバイス内での電子軌道計算 [Westermann, 1994] 適用例 (2) 金星電離圏 金星電磁圏のグローバルハイブリッド シミュレーション [Terada et al., 2002] 球面上への準一様な格子分布 [Tsugawa et al., 2000] 非一様な格子分布の導入により、 ・ 複雑な形状場での適切な境界条件 ・ 局所的なグリッド集中による計算の効率化 が行われる。 さらに計算の効率化を行う、 ・ 粒子数の動的変更 (section 3) ・ 非一様時間ステップ幅 (section 4) を説明していく。 非一様な格子分布 と併用されることが しばしばある 3.粒子数の動的変更 非一様格子を用いる際には、粒子数の動的変更が 必要となる場合がある ・ 粒子分割 ・ 粒子合体 粒子分割・合体の例 [Lapenta and Brackbill, 1994] ・ 粒子分割 同一速度の2粒子に分割。 ソース項が変化しないように粒子を分割する。 ・ 粒子合体 運動量保存とエネルギー保存を共に満たすことはほぼ不可能。 のものを合体。 合体により粒子数を1/2にした分布のテスト Lapenta and Brackbill [1994] では計算効率が2倍ほど改善 しかし、 ・ 合体は近似でしかない。 ・ 分割において、細かいグリッドでの速度分布に偏りが 出ないようにする為には、上流の粗いグリッド内にも 十分な数の粒子が必要。 ・ 分割・合体によって系の発展が変わる。 などの問題点がある。 グリッド幅 → 粒子数 グリッド幅 ← 粒子数 イオン慣性長 グリッド幅 c / pi 1/ n → 粒子が多い所では グリッドを細かくする 4.非一様時間ステップ幅 時間ステップ幅 Δt は、対象とするプラズマ現象を解くのに 十分小さくなければならない。 例えば一般的な陽解法ハイブリッドコードにおいては、 を共に満たす必要がある。 このことから、 などの場合は、小さな Δt が必要な領域でのみ小さな Δt を用いることによって、計算効率を大幅に改善する ことが期待できる。 非一様時間ステップ幅 1.背景場が空間変化する場合 例. Wu [1985] 地球磁気圏グローバルシミュレーションでは内部磁気圏領域で Δt を小さくしなければならない ・ 強い固有磁場のために Ωi1, 1/VA が小さくなる ・ 地球中心から 1RE 地点でのアルベン速度は VA ~ 700VSW SW / ニ領域で異なる Δt を用いたスキーム 非一様時間ステップ幅 1.背景場が空間変化する場合 小さな時間ステップの間に速いグリッド側から 遅いグリッド側に伝搬していく短周期擾乱 ⇒ 有限の伝搬速度の双曲型システムの場合、 緩衝層(通常2~3グリッド)で対処 非一様時間ステップ幅 2.グリッド幅が空間変化する場合 例. Lipatov [2002] n1 x x / 2 ・ 格子幅は (n は格子分割のレベル) n 1 ・ 時間ステップ幅は tn t1 / 2n1 ・ 先程と同様に緩衝層を用いて遅いグリッド側の場を補正 ・ 緩衝層では(計算の安定性のために)一時的に粒子分割を行うことも 非一様 Δx と非一様 Δt の併用 5.衝突効果 ・ 特定のエネルギー帯で衝突頻度が高い衝突過程 ・ 衝突以外の物理過程の介在 (例.惑星電離圏) など・・・ ⇒ プラズマ速度分布が非マクスウェル分布に 流体モデル + 衝突効果 粒子モデル + 衝突効果 PICコード + モンテカルロ衝突 [cf. Vahedi and Surendra, 1995] 1タイムステップ(Δt)ごとに衝突粒子を決定する方式を採用 (Δt 間の複数回衝突についてはテキスト 5.2.2 参照) Δt 間の衝突確率 Ar+-Ar 衝突断面積 モンテカルロ衝突のアルゴリズム モンテカルロ衝突のアルゴリズム (「空衝突」導入) 下図 下図 ・ 全ての粒子についての計算は 3. のみに ・ 4., 5. は N×Pnull 個の粒子に ついて計算 境界適合格子 ・ 写像の概念を用いて、等間隔直交格子上(計算空間)で計算 を行う (詳細は後述) ・ 格子にそこそこの柔軟性はあるが、特定の領域に格子点を 極端に集中させるのは困難な場合が多い マルチブロック、重なり格子 マルチブロック法 重なり格子法 複雑な形状の場合には、複数の格子を組み合わせて 流れ場を覆う方法が一般的に用いられる 境界適合格子における変換式 (Appendix 1) という形の方程式は、計算空間 (x, h) では、 となる。 ここで 例えば、点 (i, j) での である。 の差分式は などで数値的に評価しておく。 粒子コードへの適用 粒子コードに境界適合格子を適用するためには、 多数個の粒子量(ラグランジュ量) と 非一様な格子点上の場の量(オイラー量) を効率的に結びつける方法が必要である。 例えば、粒子量( )からソース項( )を 格子点上でいったん求めれば、場の量に関する 方程式については Appendix 1 の変換式がその まま使用できる。 粒子コードへの適用(2) 境界適合格子 + 粒子コード の具体的な計算手順は、 1.粒子量( )を格子点上に集めてソース項( )を計算する 2.格子点上で場の量( )を進める (計算空間、 Appendix 1) 3.格子点上の場の量( )から、粒子に働く力 4.粒子量( を計算する )を進める (物理空間) 下線部分の粒子量と格子点上の 場の量とのやりとりを行う方法 「補間法」 「粒子局在化法」 補間法(1): 補間係数の求め方 通常の等間隔直交格子上での area-weighting method では、 粒子に働く場は格子点上の場 より、 で与えられる。 補間法(2): 補間係数の求め方 粒子局在化法 「粒子追跡アルゴリズム」 金星電磁圏シミュレーション 金星電離圏 金星電磁圏のグローバルハイブリッド シミュレーション [Terada et al., 2002]
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