PowerPoint プレゼンテーション

M1前期ゼミ発表
焼却灰の
資源化
M1
冨川 博貴
1
背景
一般廃棄物の焼却率:78.2%
日本の廃棄物処理(H13年度
版)
<焼却残渣>
特別管理一般廃棄物
溶融飛灰
中間処理(安定化)
焼却飛灰
焼却主灰
埋立
2
背景
<中間処理の問題点>
・灰溶融
→ ラン二ングコスト(高温処理)が高い、維持管理が大変
・セメント固化
→ 減容化できない、
Pb,Cd,Znを多く含む重金属の固定安定性に問題あり
・薬剤処理(キレート処理)
→ ランニングコスト(重金属安定剤)が高い、
作業環境対策(H2S対策)
・酸抽出
→ 設備が複雑で、維持管理が煩雑
薬品費等が高価
<最終処分場の逼迫>
年間564万tの埋立
焼却灰安定化・資源化技術の開発
3
資源化技術
溶融固化技術
ごみ
ガス化直接溶融
灰溶融
(溶融飛灰)
(主灰)
焼却炉
スラグ・メタル
溶融飛灰処理技術
水洗浄
山元還元
主灰安定化技術
エージング
分粒方式
水和固化
土木資材等
砂・砕石代替材
主灰/飛灰焼成技術
集じん器
(飛灰)
灰水洗
焼成(低温)
焼成(高温)
セメント原料
ブロック・骨材等
エコセメント 4
今回取り上げる技術
1.エージング
静置・養生させて、重金属を固定化(欧州で実用化)
2.分粒方式
粒度選別によって、細粒分を除き、粗粒分を利用(実証実験中)
3.水和固化法
水和反応を利用して、重金属を安定化(研究段階)
4.灰水洗システム
焼却飛灰を水洗して、塩類を除去(実用)
5.焼成処理
焼却灰を比較的低温で焼き固めて、骨材にする(実用)
5
1.エージング
焼却灰
水分
静置(エージング)
酸化
・大気中の二酸化炭素と反応し、炭酸塩生成
・固体中でゆっくりと反応し、結晶生成
重金属の溶出減少・安定化
土木資材
6
1.エージング
ー ドイツ実用例(前処理) ー
篩(10mm)
主灰
粗大物除去
粗大物
10mm以下
10mm以上
風力選別機
篩(32mm)
可燃物
32mm以上
粉砕機(ミル)
鉄分
非鉄金属分
32mm以下
磁力選別機
アルミ選別機
中間貯蔵
(エージング)
7
1.エージング
ー ドイツ実用例 ー
場所 : 屋外に野積みと屋内エージング(約20m)
規則 : ・最低3ヶ月 ・山積みにする ・定期的に積み直す
主灰 : 前処理した主灰で、灰中の金属分が0.5%以下
反応 : 水分と灰分の成分の化学反応で、約4週間で70-80℃に発熱
(3ヵ月後の温度は約40℃)
鉄やアルミは酸化
Pbなどの重金属は、岩石化され不溶
・エージング後、基準(LAGA)を満たしたものは買取され
て、路盤材として使用
・満たしていないものは、再度焼却
8
1.エージング
ー オランダ実用例 -
場所 : 屋外に野積み
規則 : 最低6週間
主灰 : 前処理した主灰(飛灰を含む)←主灰の品質保証有り
・サンプルの溶出試験を行い、合格したものを出荷
・基準値をオーバーしているが、地下水を雨水と遮断した状況で
土砂代替材として利用
舗装
土砂
40cm
25cm
遮水シート
焼却灰 3-5m
50cm
9
1.エージング
ー ドイツとオランダの比較 -
項目
オランダ
エージング期間
6週間
エージングでの反応
炭酸塩化
エージング場所
屋外
ボイラ灰の取り扱い 主灰に混合しエージング
基準のチェック
エージング前
ドイツ
3ヶ月
岩石化(mineralize)
屋内(屋外もある)
飛灰として埋立処分
エージング後
・各項目で大きな違い
・国内に見合った適正条件を求める必要有り
10
1.エージング
ー 国内研究例1 ー
方法 : 試料に20(w/w)%の水を加えて十分に混合し、
室温20℃の高温室で静置(12週間)
蒸気等で常時湿潤
灰
結果 : エージングによるpH、電気伝導度、金属溶出変化
期間 (week)
0
12
pH
12.5-12.7
11.7-12.1
電気伝導度
7.0-9.1
2.8-6.7
Pb
0.05-0.165 0.008-0.035
Cu
0.065-0.2
0.04-0.12
Al
0.773-0.1
8.8-78.1
電気伝導度[ mS/cm]
Pb,Cu,Al[mg/L]
東京都清掃研究所報告(1997)
11
1.エージング
ー 国内研究例2 ー
方法 : 実験用主灰を屋内で山積み(横2.2m,縦2.2m,高さ0.6m)し、
3ヶ月間エージングを行った。
結果 : エージング主灰の各種含有量および溶出量(環境告示46号)
含
有
量
溶
出
量
エージング方式
分析項目
単位
0ヶ月目
3ヶ月目
Cd
mg/kg
2.8
3.5
Pb
mg/kg
600
800
As
mg/kg
1.9
<1
T-Hg
mg/kg
0.15
<0.01
ダイオキシン類 ng-TEQ/g
0.017
Cd
mg/L
<0.001
<0.001
Pb
mg/L
0.010
0.006
Cr(VI)
mg/L
<0.01
<0.01
As
mg/L
<0.005
<0.005
T-Hg
mg/L
<0.0002
<0.0002
Se
mg/L
<0.005
<0.005
土壌環境
基準値
1
0.01
0.01
0.05
0.01
0.0005
0.01
平成14年度廃棄物処理等科学研究 研究報告書より
12
1.エージング(炭酸化処理)
ー 国内研究例3 -
方法 : 焼却灰に所定量の水を添加し、焼却炉排ガスを通気
灰
煙突
排ガス
かくはん機
IDFへ
炭酸化処理灰
<結果>
処理灰Pb溶出濃度,処理灰pHは処理時間が長くなるほど低下し、
30ー60分で土壌環境基準である0.01mg/L以下を達成
しかし、処理時間は処理前溶出濃度の大小に大きく影響
13
2.分粒方式
<方法>
重金属などの有害物質が、焼却残渣の微細粒子に付着してい
ることに着目し、細粒分を取り除き安全な粗粒灰を利用する
灰
分級機
細粒灰
粗粒灰
資源として利用
不燃物
有効利用できる粒径に関して明確化されていない
14
2.分粒方式
実験方法 : 各種粒径に分けた灰を適量採取し、それぞれ分析を
行い、適切な分粒径域を検討した。
結果 : エージング主灰の各種含有量および溶出量(環境告示46号)
含
有
量
溶
出
量
2mm
分析項目
単位
以下
Cd
mg/kg
4.1
Pb
mg/kg
490
As
mg/kg
2.7
T-Hg
mg/kg
<0.01
Ca
%
21
ダイオキシン類 ng-TEQ/g
pH
at18℃
9.9
Cd
mg/L
<0.001
Pb
mg/L
0.008
Cr(VI)
mg/L
<0.01
As
mg/L
<0.005
T-Hg
mg/L
<0.0002
Se
mg/L
<0.005
分粒方式実験1回目
2-4
4-26.5
mm
mm
3.4
2.4
500
900
3.0
3
<0.01
<0.01
19
15
10
9.6
<0.001
<0.001
0.01
<0.005
<0.01
<0.01
<0.005
<0.005
<0.0002
<0.0002
<0.005
<0.005
26.5mm
以上
<1
120
4.2
0.019
11
9.8
<0.001
<0.005
<0.01
<0.005
<0.0002
<0.005
2mm
以下
6.1
460
<1
<0.01
25
0.012
10.5
<0.001
0.055
<0.01
<0.005
<0.0002
<0.005
分粒方式実験2回目
2-4
4-26.5
mm
mm
5.6
6.9
790
900
<1
1
<0.01
<0.01
21
21
0.011
0.008
10.8
10.5
<0.001
<0.001
0.026
0.017
<0.01
<0.01
<0.005
<0.005
<0.0002
<0.0002
<0.005
<0.005
26.5mm
以上
<1
300
<1
<0.01
6
0.03
<0.001
0.008
<0.01
<0.005
<0.0002
<0.005
土壌環境
基準値
1
0.01
0.01
0.05
0.01
0.0005
0.01
平成14年度廃棄物処理等科学研究 研究報告書より 15
3.水和固化法
<方法>
焼却灰に添加材・水を加えて混練後、蒸気養生を行い、固化体とする
添加材1
焼却灰(主灰)
分級
混練
砂代替材
CL除去
砕石代替材
粗破砕
磁選
微粉砕
添加材2
混練
磁化物
がれき
蒸気養生
成型
破砕
蒸気養生
16
3.水和固化法
実験結果 : 主灰の各種含有量および溶出量(環境告示46号)
含
有
量
溶
出
量
分析項目
Cd
Pb
As
T-Hg
pH
Cd
Pb
Cr(VI)
As
T-Hg
Se
単位
mg/kg
mg/kg
mg/kg
mg/kg
mg/L
mg/L
mg/L
mg/L
mg/L
mg/L
主灰
13
300
1.5
<0.01
11.1
<0.0001
0.95
<0.01
<0.003
<0.0005
<0.003
砂
代替材
4.4
470
2.1
<0.01
10.6
<0.001
<0.005
<0.02
<0.005
<0.0002
<0.005
砕石
代替材
5.6
620
4.0
0.04
11.0
<0.001
<0.005
<0.02
<0.005
<0.0002
<0.005
土壌環境
基準値
0.01
0.01
0.05
0.01
0.0005
0.01
平成14年度廃棄物処理等科学研究 研究報告書より
17
3.水和固化法
結果
1.砂代替材として
・金属の溶出抑制 - 土壌環境基準を満足
・圧壊強度は天然砂の1/4 - 強度の向上方法を検討
2.砕石代替材として
・膨張の抑制で土木資材の製造が可能
・水和反応による固化で、重金属の溶出が抑制
・Clは水洗により除去可能。その際、重金属の溶出は基準以下
18
4.灰水洗システム
<方法>
温水の溶解槽で1時間攪拌することにより、灰中の塩素を
除去してセメント原料に利用
焼却灰とセメント原料の成分構成
石灰石
粘土
けい石
酸化鉄原料
石膏
普通セメント
焼却灰
ばいじん(飛灰)
酸化
カルシウム
(CaO2)
%
47-55
(株)太平洋セメントHPより
二酸化
珪素
(sio2)
%
酸化
アルミニウム
(Al2O3)
%
酸化
第二鉄
(Fe2O3)
%
45-78
77-96
10-26
3-9
三酸化
硫黄
(SO3)
%
塩素
(Cl)
ppm
40-90
28-41
60-66
23
36
21-25
27
11
焼却灰・飛灰の主要成分
は粘土に近い
5-8
14
6
3-5
6
1
37-59
2-3
50-100
11000
150000
塩素を除去すれば、
粘土の代替材
19
4.灰水洗システム
塩素除去率
97%
(株)太平洋セメント
HPより
20
4.灰水洗システム
処理灰
21
4.灰水洗システム
<普通ポルトランドセメント>
処理灰
3-5%
珪石 鉄原料
4%
2%
粘土
11-13%
石灰石
78%
<エコセメント>
焼却灰など
49%
その他
1%
石灰石
50%
灰水洗システムではセメント原料に数%しか含まれない
しかし、普通のセメントとして利用される。
22
5.焼成処理
<方法>
焼却灰をロータリーキルンで1000~1150℃で燃焼させて、強度
あるペレット(焼成骨材)にして、土木資材等に利用
<特徴>
・重金属の除去 ー 高温での揮発除去
・飛灰の無害化 ー ダイオキシンの加熱分解
・土木資源化
― 無害化された飛灰そのものが人工骨材
・金属リサイクル ー 重金属は二次飛灰で回収、精錬原料23
5.焼成処理
焼却灰
焼成骨材
副原料
焼成
混合
粉砕
成型
集塵(二次飛灰)
精錬原料
(金属リサイクル)
乾燥
洗塩
活性炭吸着
脱塩素
排水
排気
24
5.焼成処理
<骨材の安全性>
環境庁告示46号による溶出試験結果
Pb
Cd
Cr(VI)
As
Se
T-Hg
春
<0.001
<0.001
<0.01
<0.0010
<0.0003
<0.00005
夏
<0.001
<0.001
<0.01
<0.0010
<0.0003
<0.00005
秋
<0.001
<0.001
<0.01
0.0011
0.0003
<0.00005
冬
<0.001
<0.001
<0.01
<0.0007
0.0003
<0.00005
基準
0.01
0.01
0.05
0.01
0.0005
0.01
土壌汚染対策法に基づく含有量試験結果
Pb
Cd
Cr(VI)
As
Se
T-Hg
春
18.3
0.03
<0.4
2.7
<0.03
<0.0016
夏
2
<0.02
<0.4
0.42
<0.03
<0.0016
秋
9.9
0.02
<0.4
0.83
<0.03
<0.0016
冬
7.2
0.13
<0.4
2
<0.03
<0.0016
基準
150
150
250
150
150
15
(株)住友金属鉱山より
25
5.焼成処理
<JIS A 5002の規格と焼成骨材>
項目
1.種類・区分
①種類
②比重による区分
③実積率(%)
④圧縮強度(N/mm2)
⑤コンクリートの単位
容積質量(kg/L)
2. 組成・物性
①強熱減量
②三酸化硫黄
③塩化物
④有機不純物
⑤粘土塊量
⑥際骨材の微粒分量
3.粒度分布(15~5)
<15mm
<10mm
<5mm
<2.5mm
構造用軽量コンクリート骨材
(JIS A 5002)
焼成ペレット
(実測値)
膨張けつ岩、膨張粘土、
焼成フライアッシュなど
L:<1.0,M:<1.5, H:<2.0
A:>60%, B:50-60%
4:>40, 3:>30, 2:>20, 1:>10
15:<1.6, 17:<1.8,
19:<2.0, 21:>2.0
飛灰、 主灰等
<1%
<0.5%
<0.01%
標準色液より薄いこと
<1%
<10%
0.32-0.76
0.09-0.23
0.001-0.006
90-100%
40-70%
0-15%
-
100%
43-66%
0-3%
0%
1.53-1.84
53.2-63.2
42.7-59.5
>2.0
焼成骨材は
軽量コンクリート骨材
車止
縁石
空洞
ブロック
26
各技術の比較
エージング
・特殊な設備は無く、
維持管理し易い
・安価
有(欧州)
・国内の実績少
・運用基準の検討
・野積みの場合、ある
程度のスペースが必要
エージング(炭酸化処理)
特徴
実績
課題
・比較的簡易な設備
・安価
・発生源での処理
・短時間で効果
実証実験中
・実績がない
・大量生産が難しい
27
各技術の比較
水和固化
分粒方式
・安価
・維持管理軽微
・屋内外、場所不問
実証中
・分級の程度により、重金属
の残留量に違い
・細粒分の別途処理必要
・分級前後の一時貯留ヤード
必要
特徴
・数~15時間といった比
較的短時間の処理
・砂・砕石代替材として利
用可能
実績
無(実験段階)
課題
・研究段階のため、灰の組成
やばらつきに対する対応の研
究の必要有り
28
各技術の比較
灰水洗システム
・既存のセメント設備を利用
できる
・経済的に優れている
・主灰については、性状に
問題なし
有(埼玉県熊谷工場)
・受け入れ量に問題あり
・セメント原料には、数%しか
含まれない
焼成処理
特徴
実績
課題
・重金属が除去できる
・溶融処理よりも低温のため、
扱いやすい
・ダイオキシンの分解が可能
・ブロック・骨材等、有効利用の
幅が広い
有(F市焼却灰再資源化施設)
燃料・電気等のランニング
コストが高い
29
まとめ
<各技術の他より優れている点>
①コスト面
: エージング(炭酸化処理も含む)方式、
分粒方式、灰水洗システム
②処理レベル : 焼成処理、灰水洗システム
③処理量
: 焼成処理、エージング方式
④処理時間
: 水和固化法、炭酸化処理
⑤有効利用性 : 焼成処理、水和固化法
どの技術も一長一短であり,まだまだ開発の必要有り
30
まとめ
<これからの開発点>
・エージング : エージング期間の短縮化(効果の促進化)
・炭酸化処理 : 実炉での効果の確認
・分粒方式
: 資源に使用する分粒径域の明確化
・水和固化法 : 各種焼却灰での適応性
・灰水洗
: セメント原料としての含有量増加
・焼成処理
: コスト削減
将来的には、現在の溶融固化による溶融スラグや
エコセメントよりも、安価なエージング処理や焼成処理
による安定化・資源化が主流となるほうが有効である
31
参考資料
参考文献
・島岡隆行:平成13・14・15年度 廃棄物処理等科学研究 研究報告書「埋立所分量を
目的とした廃棄物処理残さの土木資源化と環境負荷低減技術」
・廃棄物研究財団:平成13・14年度 廃棄物処理等科学研究 研究報告書「廃棄物処
理残さ物に係るダイオキシン類の分解・安定化技術に関する研究」
・廃棄物研究財団:「財団だより 2004年4月 N0.59」
・篠崎かおり:平成9年度 東京都清掃研究所研究報告「エージングによる焼却灰の改
質について」
・(株)住友金属鉱山:「都市ごみ焼却灰を焼成した骨材の有効利用」
・島岡隆行:第14回廃棄物学会研究発表会P.494―496 「焼却炉実排ガスを用いた炭
酸か処理による焼却灰中重金属類の不溶化」
・坂本雄三:第14回廃棄物学会研究発表会P.521―523 「焼却飛灰焼成体のコンクリー
ト骨材への応用」
参考HP
(株)太平洋セメント: http://www.taiheiyo-cement.co.jp/
環境省HP: http://www.env.go.jp/
32