空間的マイクロシミュレーションを用いた 小地域単位

日本地理学会 2005/3/29
空間的マイクロシミュレーションを
用いた小地域単位でのトリップ推計
-第4回京阪神都市圏パーソントリップ調査による分析
花岡和聖*(立命館大・院)・矢野桂司(立命館大)
中谷友樹(立命館大)・村尾俊道(京都府)
研究背景①
• 都市構造の変化や世帯の多様化に伴う交通行
動の変化。環境問題に対する配慮
モータリゼーション
人口や産業の郊外化
少子・高齢化
女性の社会進出
環境
問題
都市構造の変化
世帯の多様化
核家族化
単独世帯
交通需要を把握し、都市
計画による誘導の必要性
交通行動の変化
研究背景②
• パーソントリップ調査(PT調査)
•
•
•
•
•
昭和43年以降50万人以上の都市圏で実施
京阪神都市圏では平成12年に実施
約2-3%の個人を抽出する標本調査
集計空間単位:市区町村を1-5ゾーンに区分
詳細なフェイスとトリップに関するデータ
• 住所、性別、年齢、免許保有、職業、産業、通勤・通学先、
自動車保有、世帯人員、就業時間、出発地、到着地、利
用交通手段、乗車・降車駅、所要時間、同行人数など
• 層別拡大によるサンプル率の補正
PT調査を利用する際の問題点①
• 詳細な属性データに比べて粗い空間単位
大ゾーン
入力ゾーン
中ゾーン
駅
小ゾーン(市区町村)
入力ゾーン
集計ゾーン階層
入力ゾーンと町丁目界
入力ゾーン概念図
地域内部の空間的差異を把握することが困難
PT調査を利用する際の問題点②
• 地域間や個人属性間のサンプル率の偏り
(サンプル率=有効サンプル数/母集団)
20-24歳
亀岡市
京都市
宇治市
サ
ン
プ
ル
率
京田辺市
年齢階級
入力ゾーン別サンプル率
特定の集団を過大・過小評価する可能性
サンプルの拡大補正の必要性
研究目的
京都府を事例に、空間的マイクロシミュレーション
(空間的MS)を用いて、PT調査のサンプル率の
補正と同時に、空間単位を小地域(町丁目)に細
分化し、より詳細な空間単位でトリップを推計する。
空間的マイクロシミュレーション(MS)の適用
• 空間的マイクロシミュレーションとは?
①詳細な空間情報を有したミクロデータを作成
②シミュレーションを実行
③結果を再集計・地図化を行い政策評価を実施
ミクロデータを用いることで意志決定レベルからのシミュレーション
を行うことで、個々で異なる政策の影響を評価 が可能
適用事例
医療需要:Clarke and Spowage(1985) 、Williamson(1996)
労働市場:Ballas and Clarke(2000) 、Rephann et al (2003)
人口推計:Holm et al (2002) など
本研究における空間的MS
• 対象地域:京都府のPT調査対象地域市区町村
• 使用データ:PT調査サンプル(約4万9千サンプル)
• 最適化アルゴリズム:焼きなまし法
• 3つの制約表(平成12年度国勢調査結果):
① 町丁目×性×年齢(5歳階級 19区分)
② 町丁目×性×通学地・従業地
③ 町丁目×性×年齢階級(5区分)
入力
ゾーン
細分化
町丁目
焼きなまし法の詳細
PT調査サンプルデータと制約表を用意
無作為抽出により推計サンプルデータを作成
各データから1サンプルを抽出し、仮に置換
繰り返し
メトロポリス基準
Prob(accept) = exp(-ΔE/T)
ΔE=Σ|制約-推計|
各サンプルの置換を決定
誤差及び反復回数が基準を満たせば終了
推計精度検証①(制約表との比較)
5
1
一4
人
当3
た2
り
人
当
の
た 1
誤
り
の
差
誤 0
亀岡市
京都市
差
0
20
40
60
80
100
120
140
一人当たりのサンプル数
1人当たりのサンプル数
宇治市
1
最終誤差の分布図
1
拡大
人
当
た
り
の
誤 0
差
0
10
20
30
40
1人当たりのサンプル数
誤差とサンプル数との関係
50
推計精度検証②(他の統計データとの比較)
京都市運転免許保有者数(女性)
実際値と推計値との比較
80000
実際値
推計値
70000
女(実際値)
60000
女(推計値)
50000
40000
30000
20000
10000
0
北区
上京区 左京区 中京区 東山区 山科区 下京区 南区
資料:京都府警察本部運転免許課 京都市統計書収録
右京区 西京区 伏見区
空間的MSの長所
サンプル率の高い補正精度
空間単位の細分化が可能
新たな制約表を容易に取り込める
ただし、問題点として、
①制約に含まれない変数は制約に含めた変数との相関
を前提
②細分化された空間単位では精度検証が困難
③細分化された空間単位での分布推計は、①と同様に制
約表に含めた変数との相関を前提
空間的MSによる推計結果①
免許保有率(18歳以上女性)
亀岡市
京都市
宇治市
入力ゾーン
亀岡市
京都市
宇治市
町丁目
空間的MSによる町丁目単位での保有率の把握
空間的MSによる推計結果②
居住入力ゾーン内で全トリップが完結する女性人口比率
亀岡市
京都市
宇治市
入力ゾーン
亀岡市
京都市
宇治市
町丁目
空間的MSによる推計結果③
京都駅
向島
亀岡市
京都市
宇治
宇治市
高比率
城陽
宇治地区へのトリップ数
自宅からのトリップで
自動車を利用
まとめ
•空間的MSの有効性
サンプル率の補正と容易な制約表の追加
地域内部のより詳細な空間的差異を把握できる
都市計画において有効な基礎資料を提供できる
今後の課題
•様々な最適化アルゴリズムによる推計の精緻化
•細分化した空間単位での推計精度検証の精緻化
•トリップデータの空間単位を細分化
•政策に基づいてシミュレーションた将来予測の実施