日本の長距離フェリー

日本の長距離フェリー
日本長距離フェリー協会会長
(商船三井フェリー株式会社社長)
鈴木 修
(1)長距離フェリーとは?

総トン数1万トン前後、全長200m内外の大型フェ
リーで、原則300km以上の航路に就航するもの。

日本の高速道路網が未だ充実していなかった昭和4
3年8月に阪九フェリーが小倉・神戸航路に「フェリー
阪九を就航させ、以降国道のバイパスとして急速に
発展。 最盛期には18社が計27航路を展開。
(2)長距離フェリーと短距離フェリーの違い

短距離フェリー
宇高国道フェリー 「たかまつ丸」 960GT 全長71.8m
Speed 13knots
乗客 488名、乗用車 53台、トラック 23台
片道航送距離 8miles 60分

長距離フェリー
商船三井フェリー大洗航路 「さんふらわあさっぽろ」
13,654GT 全長192m Speed 24knots
乗客 632名、乗用車100台、トラック180台
片道航送距離 405miles 22時間
(3)大型フェリーの立体図
(4)日本長距離フェリー協会

(社)日本旅客船協会(会員592事業者)の内、特に固有
の問題点を抱える長距離フェリー事業者(当時18社)が任
意団体として昭和48年に設立。
長距離フェリー固有の問題点としては、
(i) 長距離フェリーに係る法規制問題
(ii) モーダルシフトの推進
(iii)港湾並びにその付帯施設の整備に膨大な資金を要
する問題
(iv)認知度の低さ(離島、本四航路等に比較しての)
(4)日本長距離フェリー協会(続き)

設立当初18社の会員、27の航路が存在したがその
後2度のオイルショックや円高不況を経てフェリー会
社の統廃合が進み、一方一昨年来の高速道路料金
の値下げの影響による減便や航路からの撤退もあっ
て、現在その会員は10社 航路数は16に止まる。
(5)日本長距離フェリー協会の10社
(50音順)
(5)長距離フェリー協会10社の航路網(続き)
(5)長距離フェリー協会10社の航路網(続き)
新日本海フェリー
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
⑬
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⑮
⑯
エンジョイ! フェリーで行こう!
舞鶴⇔小樽 (
毎日運航)
新潟⇔小樽 (
毎日運航)
敦賀⇔苫小牧東(
毎日運航)
敦賀⇔新潟⇔秋田⇔苫小牧東(
毎日運航)
川崎近海汽船
やすらぎとだんらんを乗せて北の大地を結ぶ SEARO AD !
苫小牧⇔八戸(
毎日4便)
太平洋フェリー
太平洋フェリーでよい旅を!
名古屋⇔仙台⇔苫小牧(
毎日運航)
商船三井フェリー
さんふらわあ、ロマンチック海道!
大洗⇔苫小牧(
毎日2便)
追浜⇔御前崎⇔苅田⇔大分(
週4便)
オーシャン東九フェリー 私たちはいつも新しい物語を太平洋に描いています!
東京⇔徳島⇔新門司(
毎日運航)
名門大洋フェリー
快適な瀬戸内海の旅をお楽しみください!
大阪⇔新門司(
毎日2便)
阪九フェリー
クルージングという名のやさしさを!
泉大津⇔新門司(
毎日運航)
神戸⇔新門司(
毎日運航)
フェリーさんふらわあ
船に泊まろう!
関西汽船
大阪⇔松山⇔別府(
毎日運航)
ダイヤモンドフェリー 神戸⇔大分(
毎日運航)
大阪⇔志布志(
毎日運航)
宮崎カーフェリー
食べてみて、宮崎お肉フェア!
大阪⇔宮崎(
毎日運航)
(6)長距離フェリー航路の輸送実績
千台、百万台キロ)
(単位:
国土交通省海事レポート
出典:
区分
航路数
航路距離
就航隻数
H20年度
11航路
8,420km
39隻
H21年度
11航路
8,420km
37隻
平成22年4月1日現在)
(
平成21年4月1日現在)
(
対前年比
構成比
対前年比 輸送実績
構成比
輸送実績
区分
61.5%
1,183
台 普通トラック
38.5%
740
その他
数 乗用車・
100.0%
1,923
計
62.8%
744
台 普通トラック
37.2%
440
その他
キロ 乗用車・
100.0%
1,184
計
2,575千人
旅 輸送人員
1,364百万人キロ
客 輸送人キロ
60.7%
1,090
-16.0%
39.3%
706
-16.2%
100.0%
1,796
-16.1%
62.1%
700
-13.7%
37.9%
428
-12.2%
100.0%
1,128
-13.1%
-20.8% 2,328千人
-15.8% 1,253百万人キロ
-7.90%
-4.60%
-6.60%
-5.90%
-2.70%
-4.70%
-9.6%
-8.1%
(7)長距離フェリーの果たす役割




モーダルシフトの受け皿
大規模災害時の交通・輸送手段
トラック運転手の負担軽減→交通事故防止、道
路混雑問題の解消
生産地から消費地への第一次産品の大量安定
輸送
(8)モーダルシフト


日本の総CO2排出量に占める運輸部門の割合→
19%
貨物分野に限っても7.6%を占める
国土交通省・経済産業省の指導により物流業界と
産業界が連携して「グリーン物流パートナー会議」
を設置し、トラックによる幹線貨物輸送を地球に優
しく、大量輸送が可能な海運または鉄道に転換す
るモーダルシフトの推進が行われている。
(8)モーダルシフト(続き)

10tの貨物を1,000km輸送する場合のCO2排
出量)
全行程トラック: 1,350kg
両端各100kmをトラック、間の800kmをフェリー
利用の場合:
582kg
単純に輸送単位あたりのCO2排出量で比較する
とフェリーはトラック輸送の 1/3-1/5
(9)モーダルシフト推進のための政府の施策




鉄道運輸機構を活用したモーダルシフト船の建
造推進
港湾施設等のインフラの整備(複合一貫輸送に
対応した内貿ターミナルの整備)
規制の見直し(危険物輸送の規制緩和、航行区
域規制の緩和)
低炭素化への支援(燃料効率向上のための諸
施策への補助等)
(10)2011年度予算概算要求(モーダルシ
フト支援関連項目)

海事局
内航海運・フェリーの競争力強化(低炭素化事業
他) 6.5億円

総合政策局
モーダルシフトなどの推進 2億円
その他、離島航路維持のための支援を含む「地域
交通確保維持改善事業として453億円

(11)長距離フェリー業界の課題



少子高齢化社会(人流・物流の停滞/減少)→バ
リアフリー化、モーダルシフトの推進、環境対策
の取り進め
コスト競争力 (船価、RORO船の優位性) →カ
ジュアルフェリー vs 豪華フェリー、 地方自治
体による支援(港湾使用料の減免)、国による支
援(固定資産税の減免、石油石炭税の減免)、
規制緩和(航域規制の緩和)
船員問題→自国海運維持のための船員育成政
策
(12)高速道路料金問題
自民党時代の割引政策
08年10月~ ETC深夜5割引他
09年3月末~ 土日祝日高速1,000円
 民主党の選挙公約
大都市以外の高速道路3年以内に無料とする。
(旧道路公団の43兆円の借金は実質国庫負担)
(目的)
-地域経済の活性化
-流通コストの削減
-出入り口の数が増えて利便性が向上

(12)高速道路料金問題(続き)

高速道路料金1000円化による渋滞頻度
(09年度、運輸調査局調べ)
GW期間中 対前年比 194%
お盆期間中 対前年比 157%
お盆期間中の事故件数 144%(NEXCO西日本管内)
 トラック業界への負の影響
-超過勤務等による人件費の増加、燃料費増
-渋滞による輸送時間の長時間化
-ドライバーの休憩時間の短縮・心理負担
(12)高速道路料金問題(続き)

長距離フェリーへの影響(逆モーダルシフト)
*長距離フェリー各社は貨物・旅客とも軒並み対
前年比2割以上の減収
*瀬戸内航路(関西/九州)においては阪九フェ
リー及びフェリーさんふらわあ(関西汽船+ダ
イヤモンドフェリー)が減便
*業界を挙げての無料化反対の署名活動(平
成21年10月末~12月末 31万人の署名)
(12)高速道路料金問題(続き)


平成22年度の無料化社会実験→財源問題(6
000億円の概算要求に対し1000億円)から37
路線に止まる。
他方、自民党政権時代に認められた高速道路
利便増進計画の予算3兆円(10年間)を使った
新たな料金制度の提案(上限料金制)
普通車:2000円
中型車・大型車:5000円
特大車:10000円
(12)高速道路料金問題(続き)


上限料金制度→長距離になればなるほどトラッ
クが有利、特に大型車に区分される有人トラック
の比率の高い瀬戸内航路のフェリーは壊滅的打
撃を被る。
トラック業界→短距離輸送の頻度が高いことから
逆に値上げになるとして猛反発。
民主党内からの強い反発に前原国交大臣は国
会での議論に委ねるとしており見通し不明。
(13)結び
環境に優しく、又大規模災害発生時には重
要な国民の足となる 「長距離フェリー」の
存続を危うくする高速道路料金政策には断
固反対を貫いていきます。
 みなさま方のご理解とご支持をよろしくお願
い致します。

ご清聴深謝!!