電子化時代のレセプト点検 ~審査はどう変わるのか~ 日本医業経営コンサルタント学会 平成23年 6月10日 有限会社メディカルサポートシステムズ 認定医業経営コンサルタント 第5590号 細 谷 邦 夫 レセプト点検の重要性 2 レセプト(診療報酬明細書)とは レ セ プ ト 点 検 の 重 要 性 医療機関の収入の根幹 算定ミスが発生すると・・・ 本来予定されていた収入が確保できない ⇒請求漏れによる収入減 ⇒機器のリース料等支払の計算が狂う 実際に行われた医療行為が 保険請求に正しく反映されない ⇒過剰請求等による患者の不信感 3 レセプト(診療報酬明細書)とは レ セ プ ト 点 検 の 重 要 性 正しく請求するためには 各種医療関連法規の理解 点数表や通知など 療養担当規則 明細の記載要領 診療報酬改定に注意 新点数の届出等はできているか 解釈など情報収集は万全か 返戻・査定(減点)通知から請求ミスの原因を突 き止め、その対策を考える 院内のインフラの整備 電子カルテ・レセコンの機能活用 4 査定の真の恐ろしさとは レ セ プ ト 点 検 の 重 要 性 査定は単なる減額ではない 審査録の存在 状況によっては不正請求とみなされる 指導・監査へ繋がる危険を孕む 最悪のケースでは過去5年に遡って自主返還 不服の場合は必ず再審査請求を!! 減額されたものが復活 ⇒ 増収 審査員へのアピール ⇒再審査請求書を書くことにより事務員も勉強になる レセプト審査体制の強化 6 電子レセプトの普及率 電 子 化 時 代 の レ セ プ ト 審 査 医 療 機関数 オンライン フロッピー等 電子請求計 件数 % 件数 % 件数 % 病 院 8、677 8、328 96.0 207 2.4 8、535 98.4 診 療 所 88、022 33、783 38.4 35、347 40.2 69、130 78.5 計 96、699 42、111 43.5 35、554 36.8 77、665 80.3 医科件数ベース:87.4% 歯科:22.6% 保険者:73.8% 調剤:93.2%(機関数ベース) (社会保険診療報酬支払基金資料:平成23年3月31日現在) 7 支払基金の取り組み 電 子 化 時 代 の レ セ プ ト 審 査 審査支払い機関の在り方検討会の報告 支払基金サービス向上計画(平成23年~27年) 良質なサービスの提供 審査の充実 審査の不合理な差異の解消 審査に於けるPDCAサイクルの確率 保険者及び医療機関に対するサービスの向上 診療報酬改定を始めとする医療保険制度改定にかか る円滑な対応 効率的な事業運営 情報公開の推進及び説明責任の履行 その他 平成27年度にはレセプト電子化が概ね普及 電子点数表の公開 8 審査の体制強化1 電 子 化 時 代 の レ セ プ ト 審 査 平成22年10月診療分から支払基金がレセプトのコ ンピュータチェックを強化 適応、用法・用量チェックは平成22年2月から実施済み 1955品目(9月現在) 診療行為と病名(適応が明確化されているもの164項目) 各種処置、生活習慣病管理料、在宅酸素療法指導管理料 今後検査から特定保険医療材料まで拡大予定 医薬品と病名(禁忌・併用禁忌など791品目) ボルタレン(消化性潰瘍・アスピリン喘息・妊婦等は禁忌) イトリゾール(オーラップ・ハルシオン・リポバス等と併用禁忌) 今まで査定された事がないけど・・・ 禁忌チェックは目険ではすり抜ける可能性大 院外処方ではもう一つの理由で査定されない 9 審査システムの更新 審 査 支 払 機 関 の 動 向 電子チェックの推進 支払基金・国保連合会ともに新システムに移行 縦覧点検・突合点検・横覧点検(通覧点検)がス ムーズに実施できる 「歴史的転換点」(河内山理事長:全国支部長・審査委員長会議) 東日本大震災の影響 本年4月から実施予定が、当分の間延期された 時間に余裕が出来たので、今のうちにしっかり準備 国保は都道府県によって状況が異なる 査定が厳しくなるのか? 本来のルールが厳密になるだけ 機械的にレセプトが審査されるということでは無い 10 用語解説 審 査 支 払 機 関 の 動 向 突合点検 処方せんを発行した医療機関のレセプト(医科・ 歯科)と、調剤を実施した薬局の調剤レセプトと を患者単位で照合する審査 縦覧点検 同一医療機関の同一患者のレセプトを複数月に 渡って照合する審査 11 院外処方せんの査定 電 子 化 時 代 の レ セ プ ト 審 査 処方せん 支 払 基 金 医科レセ 国 保 連 医科と調剤レセの突合 調剤レセ 1500点 超 医科レセプトと調剤レセプトの突合審査 調剤レセプトが1500点を超えると突合対象となる 査定は処方元から 薬剤師も審査委員に名を連ねる(H23.6~) 12 審査体制見直しの効果 審 査 支 払 機 関 の 動 向 査定率の前年同月比推移 審査月 H22.12 H23.1 H23.2 査定件数 20%弱 約15% 20%強 査定件数率 20%弱 約15% 15%弱 査定点数 約10% 約10% 10%弱 査定点数率 約10% 約10% 1%強 内訳 医薬品チェックが異常な伸び 間違いなくコンピュータチェックの効果 「支払基金プレスリリース資料より」 13 審査体制見直しの効果 審 査 支 払 機 関 の 動 向 「H23.4.28 支払基金プレスリリース資料より」 14 審査の体制強化2 電 子 化 時 代 の レ セ プ ト 審 査 予定されている流れ 診療報酬と介護報酬の突合確認の推進(平成23年度~) 審査支払情報を活用した医療費通知、ジェネリック差額通 知の作成(平成23年度~) 調剤レセプトの直接審査の推進 電子化による業務効率化に伴う支払の早期化 平成23年9月診療分より20日支払(平成23年1月17日事務連絡) 都道府県毎にバラつく可能性あり (第10回審査支払機関の在り方検討会資料より) 保険者サイド 電子化対応(平成23年度~) 審査支払機関の自由化(平成22年12月28日 保発1228第2号) 15 レセプトの審査 (対策を練るにはまず敵を知ることから) 審査とレセプトの流れ 審査支払機関 レセプト レ セ プ ト の 審 査 レセプト受付 事務点検・事務共助 保 険 医 療 機 関 保 一次 審査 審査専 門部会 険 返 戻 ・ 増減点連絡書 二次審査 再審査請求 者 支 払 返 戻 ・ 支払調整額通知 レセプト 再審査部会 再審査請求 17 査定のメカニズム 根本的なこと 保険診療への理解が不充分 レ セ プ ト の 審 査 診療報酬改定への対応不備 療養担当規則等の関連知識不足 レセプト点検の手法 単月点検・縦覧点検・突合審査・横覧点検 非常に多い事例 ケアレスミス 傾向診療 経済査定 18 査定の実例 1)傷病名漏れ ケアレスミスによる漏れ レ セ プ ト の 審 査 「臨床的に当然」なので病名を付けなかった 2)診療報酬上のルール 算定出来ない組合せの検査等 3)レセプト記載上のルール 検査数値等の記載漏れ 「臨床的に当たり前」は要注意! 19 レセプト審査の着眼点 病名漏れ レ セ プ ト の 審 査 薬剤の添付文書の内容 再審査請求をしても 復活の可能性は低い 明細の記載要領 薬剤の適応 検査数値 病名漏れ 検査実施日・前回実 同種・同効薬剤の併用 施日等の記載 内服と頓服 薬剤投与開始日 療養担当規則 禁忌 用法上制限のあるもの 定期的な検査の実施を求 めるもの 内服と点滴の併用 外傷のレセプト 縦覧点検(診療の流れを 見る) 検査のスパン・頻度 検査意義 薬剤の投与日数・量(維持 量への減額等) 20 カルテとレセプトの関係 カルテ=レセプトでなければならない カルテにあってレセプトに無い レ セ プ ト の 審 査 ⇒ 算定漏れ レセプトにあってカルテに無い ⇒ 不正請求 レセプト=カルテでは無い難しさ 症状詳記などが無いと査定の原因となる 21 【参考】指導・監査の方向性 保険医療機関等に対する指導・監査の検証 レ セ プ ト の 審 査 及び再発防止策に関する検討チーム中間 とりまとめ(平成22年12月17日) コンプライアンス及び情報の迅速な共有を徹底 する具体的仕組み 地方支分部局を含めた組織・人事の見直し 内部監察体制等の構築 保険医療機関等に対する指導監査業務の見直 し等 指導監査の在り方に関しての見直し(平成23年度中) コンタクトレンズ検査料の在り方の検討(平成24年診療報酬改 定に向けて) 返還の状況 平成21年度の保険医療機関等からの返還額 レ セ プ ト の 審 査 指定・登録取消の状況 保険医療機関等:16機関(対前年度17機関減) 保 険 医 等 :16名(対前年度25名減) 特徴 約30億3千万円(対前年度6億2千万円減) 内訳:指導による返還分:約21億2千万円 監査による返還分:約 9億1千万円 歯科の取消件数比率が高い。不正内容は架空請求・付増 請求・振替請求・二重請求 勤務表・タイムカード・日誌等虚偽作成・改竄など悪質な物 取消の発端 保険者・医療機関従事者・医療費通知に基づく被保険者 からの通報が11件と大部分を占める 23 医療費通知について 窓口で負担金を貰ってないから大丈夫? レ セ プ ト の 審 査 無料健診で項目外の検査をしてあげたが・・・ 診療時に請求を忘れた検査項目があった・・・ 医療費通知 保険者から患者様へのレセプト点数の通知 苦情・医療機関への不信のきっかけ・説明責任が重要 一部負担金を貰わないのはそもそも健康保険法違反 保険者の姿勢 医療費削減の一環として強化する傾向 領収書を貰おう運動 ⇒ 領収書・明細書の義務化 医療費通知をさらに踏み込んだ内容の通知を行っている 保険者もある 査定が発生した場合の差額は返金すべきか? 24 レセプト作成上のポイント レセプト作成上の留意事項 レ セ プ ト 作 成 上 の ポ イ ン ト 保険診療・診療報酬の算定ルールについて 正しく理解すること レセプトとカルテはイコールではない 傷病名と診療行為でしか表現できない 「説明不足」であることが多い 臨床の常識とレセプトの常識の乖離・思いこみ 自分が審査員であったらそのレセプトをどう見 るか? 26 返戻・査定を受けたら 病名は漏れていなかったか 入力項目は正しかったか 点数表上の回数制限等に抵触していないか 縦覧点検にかかるような内容ではないか 薬剤の添付文書(DI)に記載されている使用方法・ 適応・禁忌はどうか 療養担当規則に抵触していないか 返 戻 ・ 査 定 対 策 「保険医療費は,医療保険の加入者からの保険料や国 庫補助等によりまかなわれているため,必要性が認め られない診療,また妥当適切でない診療には支払われ るべきではない」 納得のいかない査定には再審査請求を! 27 返戻・査定を受けたら2 返 戻 ・ 査 定 対 策 再審査請求の手続き 再審査請求書に必要事項を記載する 国保・社保で用紙が違う 国保はHPからダウンロード可 社保はOCR用紙なので取り寄せる 医師会によっては複写レセを付けて医師会に提 出する場合も 取り下げ請求 レセプトを一度戻して貰い、修正の後再請求する 手続き 28 信 頼 さ れ る 医 療 機 関 を 目 指 し て まとめ 正しいレセプトはリスクマネジメントに繋がる 医療費通知・領収書・明細書・査定 電子化のメリットの反作用 レセプトの電子チェックの推進 レセコン・電子カルテの機能活用を! 電子カルテを使う医師こそが点数表を読むべき 手書きレセプトの時代に回帰 医療事務職の存在がより重要になる 臨床現場と保険診療の橋渡し役 レセプトは請求書作成という事務作業 医師の診療内容と保険診療のルールのマッチングを 図る 29 ご清聴ありがとうございました 30
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