素粒子実験領域,素粒子論領域,実験核物理領域 合同シンポジウム LHCが開く新たな地平 LHC計画とLHC加速器 2007年3月25日 近藤敬比古 (KEK) 1 アルプス山脈 レマン湖 ジュネーブ市 ジュネーブ空港 CERN LHCトンネル 周長 27km (山手線34km) 地下深さ~100m 2 LHC計画の主な歴史 1984.3 LHCに関するローザンヌワークショップ。 1988 Rubbia委員会ではLHC計画の優先を選択。 1990-94 LHC計画ワークショップ、実験提案 1994.12 LHC計画の承認。ただし10 → 14 TeVの2段階で。 1989 SSC建設開始 1993.10 SSC建設中止 1995.5 日本による第1次建設協力(50億円)の発表。 1996. インド($12.5M)ロシア(67MCHF )カナダ(Can$30M )の建設協力 1996.12 日本の第2次建設協力(38.5億円) LHCを2005年に一段階で建設する決定。 ATLAS、CMSの承認。 1997.12 アメリカの建設協力の決定 (加速器に$200M、測定器に$331M) 2000.11 LEP運転終了 1998.5 日本が第3次建設協力発表(50億円)。 2001-02 LHC建設コストの増加問題が発生。LHC完成を2007年に変更。 3 CERN理事会で建設強力を 発表する日本政府代表団 文部大臣(当時) 与謝野 馨 達磨(片目!) CERN 所長(当時) Chris Lewellyn Smith 1995年6月23日のCERN理事会に与謝野馨文部大臣(当時)が出席し、日本 による50億円のLHC加速器建設協力を宣言した。CERN非加盟国では日本が建 設協力の先陣を切り、LHC計画が全世界的規模のプロジェクトになった。 4 開発準備期間12年 LHC計画の主な歴史 1984.3 LHCに関するローザンヌワークショップ。 1988 Rubbia委員会ではLHC計画の優先を選択。 1990-94 LHC計画ワークショップ、実験提案 1994.12 LHC計画の承認。ただし10 → 14 TeVの2段階で。 1989 SSC建設開始 1993.10 SSC建設中止 1995.5 日本による第1次建設協力(50億円)の発表。 1996 インド($12.5M)・ロシア(67MCHF )・カナダ(Can$30M )の建設協力 建設期間11年 1996.12 日本の第2次建設協力(38.5億円) LHCを2005年までに一段階で完成する決定。 ATLAS、CMSの承認。 1997.12 アメリカの建設協力の決定 ($200M) 1998.5 日本が第3次建設協力発表(50億円)。 2000.11 LEP運転終了 2001-02 LHC建設コストの増加問題が発生。LHC完成を2007年に変更。 (2007.11 450+450 GeVのテスト運転) 5 LHC 加速器の主要パラメーター リング周長 陽子ビームエネルギー 最高ルミノシティー(輝度) バンチ衝突間隔 主リングダイポール 磁場、長さ 重イオン(208Pb82+)ビーム pp Luminosity f N 26.6 km 7.0 TeV 1034 cm-2s-1 25 nsec 1232台 8.33 Tesla , 14.2 m 2.76 TeV/nucleon 4010 10 34 2 1 L 10 cm s 2 4 XY 4 16m 2 B 6 11 2 285 rad x=y=16.7m, z=7.55mm 6 Cold-mass 1.9K thermal shield 50K 194 LHC主リングダイポールマグネット 2-in-1型, B=8.33T, T = 1.9K(超流動He温度) 7 Progress of the LHC machine 主リングダイポールマグネットの製造・検査・据付の進展 コイル部分の納入台数 180 training quench distrib. 01 02 03 170 160 150 140 Number of cryo-dipoles 130 120 110 100 90 励磁検査済台数 80 70 60 50 40 トンネルに据え付 けられたダイポー ルマグネット台数 30 20 10 0 0 1 2 3 4 5 6 7 not reached Number of quenches to reach 8.33 T 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 8 2006年11月27日 1624台の主リング超伝導マグネットがすべてCERNに納入された。 9 マグネットのトンネル据付作業 25台/week Alignment Welding Inspection Transportation 10 衝突点フォーカス用 超伝導四重極マグネット 日本のLHC加速器建設協力 KEKで開発・設計・製造された。 磁場勾配: 215 T/m 長さ:5 m, 口径:70 mm この技術はJ-PARCのニュートリノ ビームに応用されている。 東芝工場でのコイル巻き作業 衝突点 KEK製 Fermilab製 KEKでの性能テスト CERN LHCトンネル内 Fermilab 11 最初の大規模なセクター冷却テストが進行中 マグネット平均温度 1月15日 2月6日 2007年1月15日から始まったオクタント(sector 7-8)の冷却テストの経過 7 2 8 300K (1/15) → 80K (2/6) → 20K (2/26) → 4.5K (3/7) → 1.9K(もうすぐ) 12 LHC加速器運転の近未来予定 2007年3月 最後のマグネットの据付終了 2007年8月末 加速器をclosedにする 2007年11月 First collisions @ S 900 GeV 2008年6月 First collisions @ S 14 TeV 2008年末まで -1 L 2 4 fb 2009年末まで -1 L O ( 10 ) fb 2010年以降 L = 1034 cm-2s-1→ -1 L 100 fb 年 2007年3月現在、この予定より5週間の遅れが生じている。 13 LHCプロジェクト予算規模(概算) 建設 運転 LHC加速器と土木工事 実験装置(factor ×1.5込み) ATLAS 529 MCHF CMS 518 MCHF ALICE 125 MCHF LHCb 75 MCHF CERN人件費(LHC分) 総 計 2950億円 1683億円 886億円 ~ 5500億円 CERNの経費(計算機含む) 225億円/年 外が出す実験運転経費(4実験を含む) 40億円/年 総 計 ~ 265億円/年 14 LHC計画の目的(1) 標準模型の最後の未発見粒子ヒッグス粒子を 発見しその性質を調べる。 → 質量の起源やEWSBの起因の探求 グラショー・ワインバーグ・サラム の電弱統一理論 基礎方程式はゲージ対称だが、現実は ヒッグス場の存在によって自発的に対 称性が破れているとする。 実験といろいろな理論による予想領域 mH = 114.5 ~ 1000 GeV ← LHCの到達範囲 v 1/ 2GF 246 GeV 15 LHC計画の目的(2) BSM 標準模型を越える物理を研究する。 f H H f mH2 2L2cutoff 6m2f lnLcutoff / m f ..... 2 16 ヒッグス粒子の量子質量補正 2 糸口は階層性問題の解決 ① 超対称性粒子でL2項をキャンセルする 1 TeV領域にSUSY粒子がうようよ存在する。 LSPは暗黒物質のよい候補。 ② 1~10 TeVに新物理がある ・ Little Higgsモデル ・大きな余剰次元モデル ・ ・ 16 山口昌弘氏(東北大)の発表(2003.5)より借用 17 LHC 山口昌弘氏(東北大)の発表(2003.5)より借用 18 宮沢弘成先生いわく ・・・・ 超対称の誕生 宮沢弘成 ………………………… この相対論的超対称は物理 でないと思った。自然界では 超対称の片鱗さえも伺えな い。超対称ならばすべてフェ ルミ、ボーズ粒子は縮退し た超多重項をつくるはずだ が、そうはなっていない。相 対論的超対称は理論上可 能だが、実際は実現されな い対称であろう。 …………………… 超対称は ローレンツ群を拡張したものであ り、基本対称ではないのである。 基本のローレンツ不変性はどこ までも成り立っているようだが、 拡張された空間反転、時間反転 はいずれも不変ではない。超対 称も同様であろう。窮極において も超対称ならば、窮極の素粒子 がフェルミオンとボゾン両方がな ければならない。これは窮極素 粒子は極めて少ない(フェルミオ ン一元論)という原理に反する。 数理科学 2007年3月号より転載 19 ま と め LHC計画は1994年にCERN加盟国で決められ、その後、日本、ロシ ア、カナダ、アメリカなどの建設協力を得て、欧州ベースの世界規 模のプロジェクトとなった。 日本は非加盟国の先頭を切ってLHC計画への出資を宣言した。 LHC加速器はpp衝突で ECM=14TeV, L=1034 cm-2s-1を実現する。 1232台の超伝導ダイポールマグネットの製造・検査は完了し、トン ネル内据付がほぼ終わりつつある。現在1/8セクターの冷却・励磁 テストが進行中である。 予定では、2007年末に900GeVのpp衝突テストを経て、2008年中ご ろに14TeVのpp衝突実験が始まる。 20 バックアップ資料 21 CERN (Conseil Europeen pour la Recherche Nucleaire) ・欧州合同の高エネルギー粒子物理学研究所 ・欧州20カ国が国民総生産に比例して出資 ・年間予算 1000億円 ・1954年設立 ・職員数 2500人 ・利用者数 全世界から6千人 - LEP, LHC ・加速器:PS, ISR, SPS (SppS), Webの誕生地 !! CERN ジュネーブ 1990年末にCERN職員Tim Berners-Lee氏 は、世界中に分散している実験のチームメン バーの研究者間で、瞬時に同じ情報をアクセ スするにはどうしたらよいか悩んだ末、Web の発明に至った。最初のWebに使われたパソ コンは NeXTStepと呼ばれたもの。 22 LHC Tunnel 周長 27 km ( 山手線 34.5km ) 23 15.1 mm (both) strand : 28(inner), 36(outer) Rutherford type Cable 11850A @7T outer layer inner layer Strand inner, outer No. of filament : 8900, 6500 Filament dia.: 7 , 6 m Cu/NiTi: 1.65 , 1.95 Diameter: 1.065, 0.825 mm mm 主リングダイポールマグネットの超伝導コイル部 24 Dipole: integral field Cold mass Firm 1 Firm 2 Firm 3 40 upper limit for single magnet (3 sigma) 10.13 20 10.11 0 10.09 -20 Units Int transf func (Tm/kA) 10.15 lower limit for single magnet (3 sigma) -40 10.07 0 100 200 300 400 500 600 700 Magnet progressive number 800 900 AT-MAS L Evans @SUSY06 25 圧力 He4の状態図 He I 液体ヘリウム He II 超流動状態 1気圧 温度(K) Heat Exchanger Tubeの 中を真空引きによって 温度を下げ、Tubeの壁を 通しての熱交換によって 1.9K,1気圧の状態を実現 するのがキーポイント。 ・HeIIの熱伝導率特性は1.9Kが最大であ る。 ・超伝導ケーブルの比熱は4.5Kの半分で よりクエンチし易くなる。 1.8K,0.013bar 1.9K,1 bar D B F C 液体He供給(4.6K,3 bar) QRL(cryogenic distribution line) 26 2008 draft schedule 3 months ++ shutdown (no beam) 4 weeks checkout (no beam) 8 weeks beam commissioning 26 weeks -- physics run (protons) 20 days physics 4 days MD 3 days technical stop LHC Hardware Commissioning to 7TeV LHC Machine Checkout LHC Beam Commissioning LHC Physics run LHC Physics run From R Bailey, Jan 2007 LHC Commissioning WG 27 Beam Parameter Evolution at 7TeV/beam accelerator policy : just one change per each stage Parameters Beam levels Rates in 1 and 5 Rates kb N * 1,5 (m) Ibeam proton Ebeam (MJ) Luminosity (cm-2s-1) Events/ crossing Luminosity (cm-2s-1) 43 4 1010 11 1.7 1012 2 1.1 1030 << 1 1.2 1030 43 4 1010 2 1.7 1012 2 6.1 1030 0.76 1.2 1030 156 4 1010 2 6.2 1012 7 2.2 1031 0.76 4.4 1030 936 4 1010 11 3.7 1013 42 2.4 1031 << 1 2.6 1031 936 4 1010 2 3.7 1013 42 1.3 1032 0.73 2.6 1031 2808 4 1010 2 1.1 1014 126 3.8 1032 0.72 7.9 1031 2808 5 1010 2 1.4 1014 157 5.9 1032 1.1 1.2 1032 2808 5 1010 1 1.4 1014 157 1.1 1033 2.1 1.2 1032 Considered to be an all-out maximum with the hardware as installed 28 29
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