地球と火星における ダストデビル現象 北海道大学理学部地球科学科 惑星物理学研究室B4 加藤美和 研究目的 • 私の研究目的 – Balme, M., and R. Greeley(2006)の論文の紹 介を通して, 火星と地球におけるダストデビルを 比較し, その共通点と相違点を見つける. • 論文の著者の研究目的 – 火星で起きるダストデビルが将来の有人火星探 査に影響を与えるかもしれないため, 危険度を予 測するために事前にダストデビル研究を行う. ダストデビルとは • 地球と火星で共通に起 きる大気現象のひとつ である. • 塵旋風ともいう. • 塵や砂を含んだ目に見 える空気の渦である. • 螺旋状の上昇気流であ る. El Mirage Dry Lake, Mojave Desert 00:55, 21 Mar 2005 (UTC) taken by Jeff T. Alu (http://www.answers.com/topic/mojavedustdevil-jpg-1より引用) ダストデビルの観測方法 火星 地球 • その場観測が主流であ • 着陸船や周回衛星の 画像解析が主流である. る. – 温度, 圧力, 風速, 風向 などから直径を見積もる. – 影から直径や高さを, 軌 跡から直径を見積もる. 左図は火星で観測されたダスト デビル通過前後の気象データ. ダストデビル通過前後で風向が 北西から北東に急変化し, 圧力と 温度がダストデビル通過時に一 時的に下降しているのがわかる. (Schofield, J. T., J. R. Barnes, D. Crisp, R. M. Haberle, S. Larson, J. A. Magalhaes, J.R. Murphy, A. Seiff, and G. Wilson(1997)より引 用, MPFによる気象データ) ダストデビルの観測例 地球 a 火星 b a d c • • • • c b e d a, b. アメリカネバダ州エルドラド峡谷にて撮影 c. アメリカアリゾナ州エロイにて撮影 d. アメリカアリゾナ州ツーソンにて撮影 全てBalme, M., and R. Greeley(2006)より引用 • • • • • • a. 火星の靄中に発生するダストデビル(NASA MPF images 165020033) b. 火星表面を移動するダストデビル(MER Spirit Navigation camera) c. 複数個同時発生するダストデビル(MOC NA images R1001267) d. 上空から見たダストデビル(MOC NA images M1001267) e. ダストデビルの軌跡(NASA Planetary Image Atlas image PIA02376) 全てBalme, M., and R. Greeley(2006)より引用 ダストデビルの発生地域の特徴 1. 2. 3. 4. 地球と火星ではダストデビルは似たような場 所で起きると考えられている. 強い日射が続く地域, または土壌温度が高 い地域. 地表面に塵や岩石の破片が多い乾燥地域. 緩やかな傾斜地. 風が集まるような地形, または風を妨げる地 形. ダストデビルの主な観測地点 地球 【世界地図|SEKAICHIZU】 (http://www.sekaichizu.jp)より引用 • 米ネバダ州エルドラド峡谷 • 米南カリフォルニア・モジャ ヴェ砂漠 火星 The Mars Orbiter Laser Altimeter Image Gallery(http://mola.gsfc.nasa.gov/images/top o_labeled.jpg)より引用 • アマゾニス平原 • アルギュレ平原 ダストデビルの大きさ 火星 地球 • 直径 : 数m程度である. • 高さ : 数m~数百m程度で ある. 地球上のダストデビル観測結果(気象データ) 観測場所 観測数 高さ(m) 直径(m) 直径の平均(m) 参考元の論文 Tucson 425 NA ~1.5-~46 ~10-11 Sinclair[1965] Avra Valley 1674 NA ~3-~30 ~7-8 Sinclair[1969] Tucson 508 NA ~3-~30 ~7-8 Sinclair[1969] ?? 588 NA ~1.5-~46 ~2-3 Carroll and Ryan[1970] AOC(1986) 2117 NA ~1-~100 ~4-5 Snow and McCelland[1990] AOC(1987) 1009 NA ~1-~100 ~7-8 Snow and McCelland[1990] • 直径 : 数十~数百m程度 である. • 高さ : 数十m~数km程度 である. 観測機 Viking Viking MPF IMP MOC WA MOC WA MPF IMP MOC NA MOC WA 火星上のダストデビル観測結果(画像解析) 観測数 高さ(㎞) 直径(m) 参考元の論文 ~100 1-2.5 70-1000 Thomas and Gierasch [1985] ~30 平均 ~1.3 ~100 Wennmacher et al. [1996] 5 0.05-0.25 15-80 Metzger et al. [1999] NA ≦6 NA Edgett and Malin [2000] NA 0.4-2.6 <1750 Biener et al. [2002] 14 NA 15-550 Ferri et al. [2003] ≧20 0.17-1.8 25-509 Fisher et al. [2005] ≧14 3.8-8.5 NA Fisher et al. [2005] NAは観測結果として有効でないことを意味している. ダストデビルの寿命と発生時刻 地球 • 火星 • 寿命は数分~数十分程度 である. • 寿命は一年以内のオー ダーということがわかって いるが, 具体的な長さはわ かっていない. • 発生時刻は現地時間の12 時~13時が最も多い. • 発生時刻は現地時間の10 時~17時が最も多い. まとめ 共通点 発生地域 日射が多い 地表面に十分塵がある 上昇気流が発生しやすい地形 相違点 地球 用いるデータ 気象データ 大きさ 小さい(直径数m程度) 発生時刻 長い(10時~17時) 火星 画像データ 大きい(直径数十~数百m) 短い(12時~13時) 火星のダストデビル観測における 問題点 • 私の研究における問題点 – 周回衛星による観測地域の範囲は広いが, 時間 的に連続していないため, ひとつひとつのダスト デビルについて十分な観測を行えていない. • 論文の著者の研究における問題点 – 火星の気象データが着陸探査機によるものしか ない. – 画像解析に用いる軌跡とダストデビルとの関係 性が明確でない. 今後の展望 • 私の展望 – ダストデビルの発生から消滅までのデータを得る ため, 静止周回衛星による長期観測を行う. • 論文の著者の展望 – 火星の気象データを地球のものと比較できるよう にするため, 火星のその場観測を広範囲に充実 させる. – 現在の画像解析で用いられるダストデビルの軌 跡とダストデビルの関係性を調べる. – その場観測や画像解析では限界があるので, モ デルによるシミュレーションを行う. 参考文献 • • • • • • • • • • Balme, M., and R. Greeley(2006);Dust Devils on Earth and Mars, Rev. Geophys., 44, RG3003, doil:10.1029/2005RG000188 Sinclair, P. C.(1969);General characteristics of dust devils, J. Appl. Meteorol., 8, 3245 Schofield, J. T., J. R. Barnes, D. Crisp, R. M. Haberle, S. Larson, J. A. Magalhaes, J.R. Murphy, A. Seiff, and G. Wilson(1997);The Mars Pathfinder atmaspheric structure investigation meteorology experiment, Science, 278, 1752-1758 伊藤宏記(2008);地球と火星のダストデビル、神戸大学 理学部 地球惑星科学科 卒業論 文 東京工科大学・札幌市立大学デザイン学部・自然科学研究機構国立天文台・宇宙航空研 究開発機構;月探査情報ステーション(http://moon.jaxa.jp/ja/index_fl.shtml) Paul Raeburn(1999);火星 解き明かされる赤い惑星の謎、日経ナショナルジオグラフィッ ク社 日本惑星協会(http://www.planetary.or.jp/top.html)(1999) 財団法人横浜市青少年育成協会(2005);はまぎんこども宇宙科学館ホームページ (http://www.ysc.go.jp/ysc/ysc.html) The Mars Orbiter Laser Altimeter Image Gallery, JPL/NASA (http://mola.gsfc.nasa.gov/images.html) NASA Photojournal (http://photojournal.jpl.nasa.gov/)
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