交通システム 東京大学交通ラボ:「それは足からはじまったー モビリティの科学」,技報堂出版,2000. 人間は「交流する動物」である <交通> 交流という人間の本質的な活動に伴って生じる 人や物や情報の行き来 <交通システム> 交通を支える技術的・制度的なしくみ <モビリティ> 交通システムによって規定される、交流の しやすさの善し悪し より高いモビリティを希求することは、人間 社会の本源的な欲求の一つといえる 交通システムに関する「四つの疑問」に答える (1)どうやって動かすか? (2)どうやって計画・制御するか? (3)人間はどう行動するか? (4)社会のなかでどう機能するか? (1)どうやって動かすか? 交通システム成立の基礎 「動力」「抵抗」 (2)どうやって計画・制御するか? 交通システムの安全性を確保し、実用的な交 通システムを実現するうえで不可欠 ・車両や航空機など単体の制御 ・交通システム全体の計画と制御 (3)人間はどう行動するか? ・利用者や操作者としての人間の行動 ・そうした行動を踏まえたマンマシンの設計 (4)社会のなかでどう機能するか? ・環境という側面からの交通技術 ・交通システムと社会とのさまざまなインタラクション ・交通プロジェクトの効果・影響 <「交通」に関する用語について> ・本文で用いる一般的な意味での「交通」 communication ・「交通」の一部である情報通信 telecommunication ・何かを運ぶという意味や、それに関連した概念や量 transport(英・仏) transportation(米) ・人や車などが行き来する状態や量に関連した概念 traffic <交通システムの進化のモーティベーション> ・もっとたくさん ・もっと速く ・もっと遠くへ ・もっと廉価に <交通システムに対する社会的要請の進化> ・もっと安全に ・もっと楽しく ・もっと快適に ・もっと美しく ・もっと人に、環境に優しく <交通システムの構成要素> 最も原始的な交通システム: 足と道 足に相当するもの:「交通具」 道に相当するもの:「交通インフラストラクチャー」 交通システムを構成する最も基本的な二大要素 交通具:「入れ物」 自転車、自動車、鉄道車両、船舶、航空機など 交通インフラストラクチャー:交通路や交通ターミナル 道路や鉄道線路、航路や航空路、駅や空港、 バスターミナルやトラックターミナルなど 運行制御:交通システムをより効率的かつ安全に運用 鉄道の列車計画や運行管理、道路の信号制御、 ITS(Intelligent Transport System)技術、航空交通官制など 営業:交通システムを商業的に運営 運賃・料金の体系、その徴収システム、座席予約 システムや顧客管理、マーケティング活動など 交通システムの構成要素: 要素1:交通具(あるいは、輸送具、運搬具) 要素2:交通インフラストラクチャー 要素3:運行制御 要素4:営業システム 交通システムは、交通というサービスの供給を支 える技術的・制度的なひとまとまりのしくみ <交通にかかわる古典的な学問領域> 交通システムにかかわる狭義の技術的分野 交通具:機械工学系や電気工学系 交通インフラストラクチャー:社会基盤工学系 (土木工学系) 運行制御:電子工学系 交通経営や交通政策:従来は経済学や商学 現代は社会基盤工学や都市工学も進出 その他にも心理学や教育学、医学、林学なども関連 現代ではこうした古典的な学問領域の境界を云々 する意味は小さい <交通サービスの市場> 交通システム:「交通サービスの供給システム」 「交通サービスの需要」 本源需要:交通サービスの消費そのものを楽しむ ヨットやバイクのクルージングとか、鉄道マニア の乗りつぶし旅行など 派生需要(連動需要):他の経済活動と連動して発 生する需要(交通サービスに対する大方の需要) 財やサービスの生産、流通、消費 物(原料、製品)の輸送、人(労働力)の輸 送(通勤)や業務打合せ、観光など 東京大学交通ラボ:「それは足からはじまったー モビリティの科学」,技報堂出版,2000. 目 次 プロローグ 第I部 ものから捉えた交通 第1章 推進力を得るしくみ エンジン、モータなど 第2章 抵抗を減らす・抵抗を生かす 空気抵抗、摩擦など 第3章 ビークルの運動 サスペンション、姿勢安定、最適制御など 第4章 交通システムを計画しうまく動かす方法 信号制御、列車群運行計画、ITSなど 第5章 モビリティと環境保全技術 環境問題、電気自動車、燃料電池車、騒音対策など 第II部 人と社会から捉えた交通 第6章 人間行動のメカニズムと交通 第7章 安全・安心なシステム設計 マンマシン系、運転シミュレータなど 第8章 交通と社会のインタラクション 第9章 交通プロジェクトを評価する エピローグ 環境、情報技術 本講義の内容 交通システムの設計・計画・運用のための方法論 ならびに鉄道、道路等の個々のシステムにおける 具体的問題や手法について説明する。 <情報技術の社会への応用> ・対象(分野・システム)を理解する ・技術(手法・方法論)を理解する (交通システムを対象とした計画数学の事例紹介) <最適化の概念> 最適化すべき問題 数学モデル 数理計画法 変数,数式 定められた計算手順 を用いて解くための 方法論 知識ベース ルート候補の作成 輸送ルート計画 輸送ルート決定 ルート候補の作成 運用ルート計画 運用ルート決定 割当可能性判定 シミュレータ 集合分割モデル マッチングモデル 知識ベース 集合分割モデル 最小費用循環流 知識ベース 車両割当計画 最適割当 割当問題 工場 工場 工場 物流拠点 物流拠点 物流拠点 生産計画 月間・週間計画 デポを中心とした 区域配送 輸送需要の 車両への割付け 販売店 顧客 需要地 需要地 需要地 在庫管理 オーダー 輸送需要 輸送計画 品種・量 納期制約 オーダー 在庫制約 配送計画 幹線輸送計画 拠点間の 長距離輸送 積載計画 配車計画 車両手配 運行計画 作業計画 荷積・荷卸作業 容量・時刻制約 輸送ルート 車両運用 ITS (Intelligent Transport Systems) 「高度道路交通システム」 (全体構想:1996年) (1) ナビゲーションシステムの高度化 (2) 自動料金収受システム (3) 安全運転の支援 (4) 交通管理の最適化 (5) 道路管理の効率化 (6) 公共交通の支援 (7) 商用車の効率化 (8) 歩行者等の支援 (9) 緊急車車両の運行支援 新物流情報システムの構成 < 物流センター > 運行管理端末 配車計画端末 実績管理端末 通信 サーバ DB サーバ <車両> カーPC PCナビ GPS 新物流情報システムの特徴 【物流センタ】 ・DSRCの活用 ・最新移動体通信の活用 【管理トラック】 計算結果(配送計画) 計画 物流 D/B ・運行計画データ ・配送計画データ 配車効率 車両オンライン 化支援 運行管理 システム システム 運行実績データ のフィードバック ・配車計画の最適化 ・積載効率の向上 ・車両数削減、等 ・位置・動態情報 ・配送情報 実績 物流 D/B ・運行実績データ ・配送実績データ ・貨物の追跡 ・業務効率化 ・勤怠管理、等 ・配送計画・実績の表示 ・配送ルートナビゲーション ・配送先情報の提供 ・センタとのコミュニケーション 配送計画の結果画面例(車両割当) <シラバス> 第1回 概論 交通システム,交通システムの情報化 第2回 鉄道システム,列車運行管理システム 第3回 鉄道システムにおける設計・計画・運用問題 第4回 問題解決の事例紹介 第5回 道路交通システム,交通流制御,スケジューリング 第6回 ナビゲーションシステム,高度道路交通システム 第7回 問題演習 第8回 物流システム,物流情報システム 第9回 配送計画システム 第10回 航空システム,搬送システム,エレベータ群管理 第11回 鉄道システムにおける情報化 第12回 道路交通システムにおける情報化 第13回 問題演習 第14回 必要に応じて,補足と復習を行う 学習・教育目標 1. 交通システムについて理解する. 2. 交通システムの情報化について理解する. 3. 今後の交通システムについて理解する. <アンケート> 今後の授業の内容・進め方等について どのようなことに興味があるか ・どのようなことを知りたいか ・どのような話を聞きたいか 本講義を受講しようと思った動機 ・漠然としたものでもよい(単位が必要だから等でも) 授業の進め方等についての要望があれば ・数学はあまり使ってほしくない、とか ・逆にもっと手法を詳しく説明してほしい、など
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