公共経済学 19. 個別消費税と利子所得税 19.個別消費税と利子所得課税 19.1 個別消費税と一般消費税 19.2 利子所得税と労働所得税 19.1 個別消費税と一般消費税 個別消費税=特定の財・サービスを課税対象とする税 (一般)消費税=原則的に全ての財・サービスを課税対象とする税 課税標準 所得 国税 地方税 所得税 道府県民税 法人税 市町村民税 事業税 資産 消費 相続税・贈与税 固定資産税 地価税 都市計画税 印紙税 特別土地所有税 登録免許税 不動産取得税 消費税 酒税 石油ガス譲与税(1/2) たばこ税 たばこ特別税 地方道路譲与税(全額) 航空燃料税 石油石炭税 揮発油税 自動車重量譲与税(1/3) 石油ガス税 自動車取得税 地方道路税 自動車重量税 軽油取引税 自動車税 関税 特別とん税 とん税 電源開発促進税 (注1) ガソリン税=揮発油税+地方道路税 (注2) =道路特定財源諸税 (注3) 自動車重量税の税収の1/3(約8割)が道路特定財源である。 軽自動車税 地方消費税 <税の存在しない場合の予算制約式> 財1と財 2 に関する個人の消費選択のモデルを用いて個別消費税と一般消費税の 効果の相違を比較検討しよう。 財 i の量を xi 、税が存在しないもとでの財 i の価格を pi1 とする( i 1, 2 )。また、 所得を m とすれば、予算制約式は p11 x1 p12 x2 m (19-1) である。 なお、以下では議論を単純化するために財2の価格は1であるとする( p12 1)。 <税が存在する場合の予算制約式と税額> 財 i に対する税率(従価税)を t i とし、 「生産者価格」は課税されても pi1 のまま変 化しないとする(水平な供給曲線) 。 そのとき、財 1 にのみ個別消費税を課すケース( t1 ケース( t1 t 2 [ tC ] )を比較検討する。 t2 0 )と一般消費税を課す 個別消費税のケースの予算制約式は、 (1 t1 ) p11 x1 x2 m (19-2) であり、一般消費税のケースの予算制約式は、 (1 tC ) p11 x1 x2 m (19-3) となる。 なお、個別消費税を導入したあとの財1の「消費者価格」を そのとき、 p12 (1 t1 ) p11 である。 p12 と表すことにする。 税率 t1 の個別消費税が課されたときの最適な消費の組み合わせを そのとき、個別消費税のもとでの税収 T1 は T1 x , x とする。 * 1 * 2 t1 p11 x1* であり、 x1* , x2* は(19-2) を満たすので T1 t1 p11 x1* = m ( p11 x1* x2* ) (19-4) と変形できる。 x , x とする。その であり、 x , x は 税率 tC の一般消費税のもとでの最適な消費の組み合わせを とき、一般消費税のもとでの税収 TC は TC = tC (19-3)を満たすので TC = tC p11 x1** x2** = m p11 x1** x2** と変形できる。 p x 1 ** 1 1 x2** ** 1 ** 2 ** 1 ** 2 (19-5) (問題 19-1) x1 x2 平面に個別消費税を導入する前の予算線と導入した後の予算線を描き、 縦軸の切片の値を書き入れなさい。また、無差別曲線を描き加えることで、税率 t1 のもとでの最適消費点 x1* , x2* を図示しなさい。 x2 p12 (1 t1 ) p11 p11x1 x2 m m x2* (1 t1 ) p11 x1 x2 m p12 x1* p11 x1 (問題 19-2)問題 19-1 の図のなかに税収 T1 を図示しなさい。 x2 1 * 1 1 px T1 T1 t1 p11 x1* = m ( p11 x1* x2* ) p11x1 x2 m m T1 x2* (1 t1 ) p11 x1 x2 m p12 x1* p11 x1 (問題 19-3)問題 19-1 で求めた税率 t1 の個別消費税のもとでの最適消費点 般消費税のもとでの最適消費点 x ** 1 x ** 1 x , x と税率 t * 1 * 2 C の一 , x2** が同じ無差別曲線上にあるとする。最適消費点 , x2** を問題 18-1 の図に描き加えなさい。また、そのときの税収 TC を図示しなさい。 x2 T1 t1 p11 x1* = m ( p11 x1* x2* ) TC = tC p11 x1** x2** = m p11x1** x2** p11x1 x2 m m T1 1 ** 1 1 px x2* TC TC (1 tC ) p11x1 x2 m x2** (1 t1 ) p11 x1 x2 m p11 x1* x1** x1 個別消費税のもとで生ずる超過負担 EB TC T1 である。 Excess Burden (問題 19-4)問題 19-1 の図のなかに超過負担 EB を図示しなさい。 x2 T1 t1 p11 x1* = m ( p11 x1* x2* ) TC = tC p11 x1** x2** = m p11x1** x2** Equivalent Valuation p11x1 x2 m m T1 EV x x EBは税率t1の個別消費税を導入するというプロ ジェクトにおける純費用(=-純便益)になっている。 EB * 2 TC 純便益=便益-純歳出 =-TC +T1 =-EB 便益=等価変分EV =-TC 純歳出=-税収T1 ** 2 (1 t1 ) p11 x1 x2 m p11 x1* x1** x1 (問題 19-5)無差別曲線(の集まり)が x2 x12 4x1 u ( u は実数)で与えられており、所得 p11 1 であるとする。このとき、①税率 100%( t1 1)の個別 * * 消費税を導入した場合の最適消費点 x1 , x2 と個別消費税の税収 T1 を求めなさい。② x1* , x2* を通る無差別曲線に対応する u の値 u * を求めなさい。③一般消費税のもとでの ** ** ** ** * 最適消費点 x1 , x2 が②で求めた u に対応する無差別曲線上にあるとする。 x1 , x2 が m 3 、財 1 の価格が と一般消費税の税収 TC を求めなさい。④超過負担 EB の大きさを求めなさい。 19.2 利子所得税と労働所得税 <税の存在しない場合の予算制約式> 消費財の価格は 1 に標準化されているとする。第 t 期の消費量(=消費支出額)を ct 、第t期の労働所得を wt とする( t 1, 2 )。また、(第1期の)貯蓄を s 、利子 率を r とする。 そのとき、2 期間を通じた予算制約式は c1 となる。 c2 w w1 2 1 r 1 r (18-3) <税が存在する場合の予算制約式と税額> 利子所得税率を tr とすれば、利子所得が rs であるから第 1 期と第 2 期の予算制約式は、 それぞれ c1 s w1 c2 w2 (1 r)s tr rs w2 1 (1 tr )r s (19-6) (19-7) である。 したがって、(19-6)、(19-7)より 2 期間を通じた予算制約式は c1 となる。 c2 w2 w1 1 (1 t r )r 1 (1 t r )r (19-8) * 利子所得税率 tr のもとでの第 t 期の最適消費量を ct* 、最適貯蓄水準を s とする。 そのとき、 tr のもとでの利子所得税額の割引現在価値 Tr は Tr = t r rs * /(1 r) であり、 (c1* , c2* , s * ) は(19-6)と (19-7)を満たすので、 w2 * c2* t r rs* = w1 Tr = c1 1 r 1 r 1 r と変形できる。 (19-9) 労働所得税率 t w のもとでの 2 期間を通じた予算制約式は c1 c2 w (1 t w ) w1 2 1 r 1 r (18-6) であり、税率 t w のもとでの最適な消費の組み合わせを c ** 1 ,c2** とする。 そ の と き 、 第 1 期 と 第 2 期 の 労 働 所 得 税 額 の 割 引 現 在 価 値 Tw は 、 Tw = t w w1 t w w2 /(1 r) であり、 c1** ,c2** は(18-6)を満たすので、 w2 w2 ** c2** Tw = t w w1 w1 c1 1 r 1 r 1 r と変形できる。 (19-10) (問題 19-6) c1c2 平面に利子所得税を導入する前の予算線と導入した後の予算線を描き、横軸 の切片の値を書き入れなさい。また、無差別曲線を描き加えることで、税率 tr のもと での最適消費点 c ,c を図示しなさい。 * 1 * 2 c2 c1 c2 w w1 2 1 r 1 r c1 * 2 c c2 w2 w1 1 (1 tr )r 1 (1 tr )r w2 1 (1 tr )r 1 r c1* w1 w1 w2 1 r w1 c1 w2 1 (1 tr )r (問題 19-7)問題 19-6 の図のなかに税収 Tr を図示しなさい。 t r rs* w2 * c2* = w1 Tr = c1 1 r 1 r 1 r c2 c1 c2 w w1 2 1 r 1 r Tr c1 * 2 c c2 w2 w1 1 (1 tr )r 1 (1 tr )r 1 (1 tr )r 1 r c1* Tr w1 w2 1 r w1 c1 w2 1 (1 tr )r (問題 19-8)問題 19-6 で求めた税率 tr の利子所得税のもとでの最適消費点 働所得税のもとでの最適消費点 c ** 1 c ** 1 ** 2 ,c c ,c と税率 t * 1 * 2 w の労 が同じ無差別曲線上にあるとする。最適消費点 ,c2** を問題 19-6 の図に描き加えなさい。また、そのときの第 1 期と第 2 期の労働 所得税額の割引現在価値 Tw を図示しなさい。 t r rs* w2 * c2* c2 = w1 Tr = c1 1 r 1 r 1 r w2 w2 ** c2** Tw = t w w1 w c 1 r 1 1 r 1 1 r c1 c2 w w1 2 1 r 1 r Tw c2** Tr c1 * 2 c c2 w2 w1 1 (1 tr )r 1 (1 tr )r 1 (1 tr )r c1** c1* w1 w2 1 r w1 c1 w2 1 (1 tr )r 利子所得税のもとで生ずる超過負担 EB Tw Tr である。 (問題 19-9)問題 19-6 の図のなかに超過負担 EB を図示しなさい。 t r rs* w2 * c2* = w1 Tr = c1 1 r 1 r 1 r c2 c1 c2 w w1 2 1 r 1 r Tw c2** Tr c1 * 2 c c2 w2 w1 1 (1 tr )r 1 (1 tr )r EB 1 (1 tr )r c1** c1* w1 w2 1 r w1 c1 w2 1 (1 tr )r (問題 19-5)無差別曲線(の集まり)が x2 x12 4x1 u ( u は実数)で与えられており、所得 p11 1 であるとする。このとき、①税率 100%( t1 1)の個別 * * 消費税を導入した場合の最適消費点 x1 , x2 と個別消費税の税収 T1 を求めなさい。② x1* , x2* を通る無差別曲線に対応する u の値 u * を求めなさい。③一般消費税のもとでの ** ** ** ** * 最適消費点 x1 , x2 が②で求めた u に対応する無差別曲線上にあるとする。 x1 , x2 が m 3 、財 1 の価格が と一般消費税の税収 TC を求めなさい。④超過負担 EB の大きさを求めなさい。 ① 税率 100%( t1 1)の個別消費税を導入した場合の最適消費点 x , x と個別消費税 * 1 * 2 の税収 T1 を求めなさい。 t1 1のもとでの予算制約式は 2x1 x2 3 である。また、無差別曲線の x1* , x2* にお 4 である。したがって、 2x1* 4 2 より x1* 1 であり、 x2* 3 2x1* 1となる。そして、 T1 t1x1* 1である。 * ける接線の傾きは 2x1 ② x , x を通る無差別曲線に対応する u の値 u * 1 * 2 * を求めなさい。 2 u* x2* x1* 4x1* 112 4 4 ③ 一般消費税のもとでの最適消費点 るとする。 x ** 1 x ** 1 , x2** が②で求めた u * に対応する無差別曲線上にあ , x2** と一般消費税の税収 TC を求めなさい。 x , x2** における接線の傾きは 2x1** 4 であり、一般消費税のもとでの予算 ** 制約式は (1 tC )(x1 x2 ) 3 だから、その傾きは-1である。したがって、 2x1 4 1 2 ** より、 x1 3 / 2 だから、 x2** x1** 4x1* u* (3 / 2)2 4(3 / 2) 4 1/ 4 となる。そし て、 TC m ( x1** x2** ) 3 (3 / 2 1/ 4) 5 / 4 である。 無差別曲線の ** 1 ④超過負担 EB の大きさを求めなさい。 EB TC T1 5 / 4 1 1/ 4 19.個別消費税と利子所得課税 19.1 個別消費税と一般消費税 19.2 利子所得税と労働所得税
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