活褶曲地帯の地震動 澤田純男 1)、盛川仁 2) 、後藤浩之 1)、高橋千佳 2

活褶曲地帯の地震動
澤田純男 1)、盛川仁 2) 、後藤浩之 1)、高橋千佳 2)、
末冨岩雄 3)、福島康宏 3)
1)京都大学防災研究所、e-mail: [email protected][email protected]
2)東京工業大学 大学院総合理工学研究科、e-mail: [email protected]
3)日本技術開発株式会社、e-mail: [email protected][email protected]
要約
新潟県中越地方でのAVS30評価とそれを活用した2004年新潟県中越地震での地震動分布の補間推
定、重力探査による中越地域の深部基盤構造探査、微動アレー観測による柏崎市付近の深部地盤構
造調査を行い、以下の結果が得られた。
1) 新潟県中越地方において約 3,500 本のボーリングデータを収集・デジタル化を行った。
2) 地形分類とボーリングデータを統合した AVS30 を用いて、2004 年新潟県中越地震及び 2007 年
新潟県中越沖地震における計測震度分布を 250m メッシュで推定した。また、2007 年能登半島
地震についても 1km メッシュで示した。
3) 長周期微動アレー観測を 3 点で行い、柏崎地域の S 波速度モデルを構築した。
4) 重力と磁気を併合処理し、また MWP 法を改良して、現実の地盤へ適用可能な密度境界検出法を
開発した。そして、新潟県中越地方における深層地盤構造の推定を行った。
キーワード : 深部地盤構造,重力探査,磁気探査,微動アレー探査,最大地動分布
1.はじめに
新潟県中越地方は活褶曲地帯であるため、地盤構造が非常に複雑であるという特色を持つ。そこで、
課題2「地震動」では浅層・深層の両面から地盤情報の収集を行ってきており、昨年度のシンポジウム
では地盤のボーリングデータの収集結果と重力探査の調査結果(約2kmメッシュで実施)について主に
報告した1)。本報告では、その後の成果について報告する。
一つには、当初対象としていたエリアのやや北西で2007年7月に発生した新潟県中越沖地震(Mj=6.8)
に関連して、浅層地盤、深層地盤とも柏崎市を含むように対象を拡げた点である。深層構造について
は、重力探査の追加、長周期微動アレー観測を行う。柏崎平野では周期1.5~2秒程度のやや周期が長い
成分が卓越することが観測記録で明らかになっており、深層地盤構造を把握することは極めて重要で
ある。また、深層構造の精度向上のため、磁気探査を実施し、さらに水平方向の変化を的確に抽出で
きるように重力と磁気を併合処理する手法の開発と適用を行い、深層地盤構造の精度を向上させる。
浅層については、中越地震後の復旧工事でのボーリングデータなど追加を行い、範囲を拡げて250mメ
ッシュのAVS30(深さ30mまでの平均S波速度)の再評価を行った。また、2004年新潟県中越地震の震
度分布の再評価のみならず、同様に褶曲地帯での地震で規模も同程度の2007年能登半島地震、2007年
新潟県中越沖地震についても震度分布を評価する。特に新潟県中越沖地震においては、柏崎刈羽原子
力発電所やK-NET柏崎など断層近傍の極めて大きな地震動が観測されており、地盤構造の精度を高め
ることは、今後の設計用入力地震動の高度化などに大変有用である。得られた成果は、課題1で構築
するデータアーカイブスに収録し、今後広く活用されるように整備する。
10
2.中越地方における地盤情報データベース構築
500
N値から算出したAVS20(m/s)
面的な地震動分布推定を行う上では、表層地盤の増
幅特性を考慮することが必要となる。そのためには、
ボーリングデータの収集が重要である。福島ら 2) は、
「新潟県平野部の地盤図集」3)記載のボーリング柱状
図、「新潟県地盤図」4)のミニ柱状図から約880本をデ
ジタル化している。これに加え、関係機関の協力を得
て、国土交通省北陸地方整備局関連(約1240本)、新潟
県(約100本)
、長岡市(旧三島町、旧越路町、旧小国
町、旧山古志村を含む)関連(約750本)
、小千谷市関
連(約100本)
、見附市関連(約100本)、の他土木学会
関連や防災科学技術研究所関連等で(約100本)
、を収
集し、約3,500本のボーリングデータベースを構築した。
特に、北陸地方整備局の約270本など300本を越える地
震後の調査結果を反映している点が特徴である。
昨年度は、道路橋示方書5)による次式によりN値から
S波速度を算出して、地盤の増幅度を評価するパラメ
ータAVS30(深さ30mまでの平均S波速度)を評価した。
Vs = 80N 1 / 3
Vs = 100N
(砂質土)
400
300
200
道路橋示方書
内閣府技術資料
100
100
200
300
400
S波速度から算出したAVS20(m/s)
500
図 1 中越地方の AVS20 評価における
N 値と S 波速度の関係の適用性
(1)
1/ 3
(粘性土)
(2)
最近では、内閣府が自治体での揺れ易さマップ作成を推進するための技術資料 6)を公表しており、次式
の関係で N 値から S 波速度を求めている。
Vs = 94.38 N 0.3144
(砂)
(3)
Vs = 111.3 N
(粘土)
(4)
0.3020
Vs = 123 .05 N
0.2433
(礫)
(5)
地震防災分野ではこの式の利用も増えると思われるので、新潟県中越地方での PS 検層実施地点で、PS
検層による S 波速度からの AVS20 と N 値から換算した S 波速度からの AVS20 の比較を行った結果を、
図 1 に示す。なお、AVS20 で比較している理由は、半数以上が深さ 20m までしか調査していない K-NET
観測点のものであることによる。内閣府式による AVS30 の方が明らかに大きいことがわかる。したが
って、昨年度までと同じく道路橋示方書の式を用いてボーリング地点の AVS30 を評価した。250m メ
ッシュの AVS30 の推定は、昨年度と同じく若松ら 7)8)による 250m メッシュでの AVS30 とボーリング
地点の AVS30 を統合する末冨ら 9)の方法で行った。得られた分布を図 2 に示す。2007 年新潟県中越沖
地震の強震域にも適用できるように、昨年度より対象範囲を西側に拡げている。
3. 観測記録を用いた地震動分布の推定
(1) 250m メッシュ最大地動分布の評価
昨年度の報告と同様にして、78 地点での観測値と図 2 の再評価した AVS30 を用いて、司・翠川式 10)
をトレンド成分(平均値)とする simple Kriging 法を用いて評価した 250m メッシュでの震度分布を図
3 に示す。○印は観測値である。計測震度は、童・山崎 11)を用いて最大速度から変換している。計測震
度の増幅度は、地盤の非線形化の影響を考慮している末冨ら 9)を用いて(Vs30 と同時に評価した Vs
20 の関数として)評価している。
2007 年能登半島地震、2007 年新潟県中越沖地震についても、褶曲帯で起こった同程度の規模の地震
であるので、同様に震度分布を評価した(図 3、図 4)
。能登半島地震(Mj= 6.9)は、2007 年 3 月 25
日 9 時 41 分頃に、能登半島沖の深さ 11km での地震が発生した。輪島市、穴水町、七尾市で震度6強
11
の強い揺れが観測されている。新潟県中越沖地震(Mj= 6.8)は、2003 年 7 月 16 日 10 時 13 分頃に、
新潟県上中越沖で発生し、新潟県長岡市、柏崎市、刈羽村、長野県飯綱町で震度 6 強を、新潟県上越
市、小千谷市、出雲崎町で震度 6 弱を観測した。能登半島については、地盤情報が乏しいので、1km
メッシュ地形分類を用いて増幅度を評価した推定である。
見附市
AVS300.0
長岡市
川口町
100.
120.
140.
160.
180.
200.
220.
240.
260.
280.
300.
340.
380.
420.
460.
500.
540.
580.
620.
660.
700.
長岡市
柏崎市
山古志村
小千谷市
川口町
十日町市
計測震度
4.0
4.5
5.0
5.1
5.2
5.3
5.4
5.5
5.6
5.7
5.8
5.9
6.0
6.1
6.2
6.3
6.4
6.5
図 2 新潟県中越地方 250m メッシュでの AVS30 分布 図 3 観測値の補間推定による広域震度分布
○はボーリング地点での値
(2004 年新潟県中越地震) ○は観測値
JMA 輪島
KNET 輪島
柏崎刈羽発電所
西山 IC
KNET 穴水
KNET 柏崎
柏崎 IC
図 4 能登半島地震における推定震度分布
刈羽村
山古志支所
図 5 新潟県中越沖地震における推定震度分布
12
2
最大加速度応答 (cm/s )
(2)地震応答解析による地震動分布推定
5000
小千谷市では、AVS30 分布でも関越自動車道の東
EW
西 2km 辺りで地盤が軟らかく、東の K-NET や小千
谷総合病院など地震観測点は比較的地盤が硬い。山
1000
中ら 12)の余震観測、関口ら 13)の微動観測結果などか
ら、AVS30 分布と同様に西側で卓越周期が長くなり
揺れ易い傾向が伺える。そこで、小千谷市の東西断
JR小千谷駅前
面での変化を見るため、○点で地震応答解析(等価
水仙の家
KNET小千谷
線形解析)を行う。入力地震動は、小千谷総合病院
JMA小千谷
小千谷IC
水仙の家での観測波を 3m ほどはぎ取ったものを共
100
時水
吉谷
通地震動とした。実際は、後述するように、深層基
50
盤構造等の影響で異なると思われるが、ここでは表
5
0.1
1
層地盤の影響のみを扱う。
周 期 (秒)
小千谷市の東西断面の変化を見るため7地点につ 図 6 小千谷市内の推定応答スペクトル比較
いて、水仙の家での工学的基盤波を
入力地震動として地震応答解析を
JMA 小千谷
行った結果を図 6 に示す。モデル化
に際しては、先名ら 14)、藤川ら 15)、
小千谷駅
小千谷 IC
による調査結果や解析を参考にし
水仙の家
時水
た。西側の時水・吉谷で周期 0.7~
KNET 小千谷
1.0 秒が卓越するのに対し、他の東
側の地点では周期 0.2~0.4 秒の短周
期成分が卓越しており、明らかに特
性が異なっている。小千谷 IC より
西側の地域で木造住宅の被害が多
吉谷
く見られたということであり、周期
1秒付近の成分の大きさが被害に
図 7 小千谷市内の推定最大速度分布
大きく影響するという既往の知見
○は地震応答解析結果(EW 成分)
との整合は良いと考えられる。
計算による最大速度の分布を図 7
に○で示す。合わせて図 3 で示した観測値の補間推定による最大速度(水平 2 成分の合成値・250m メ
ッシュ)も合わせて示す。
4.微動アレーを用いた新潟県柏崎地域のS波速度構造調査
微動アレー観測は 2007 年8月 12 日、13 日の2日間、柏崎地域で実施された。観測地点は、柏崎市
役所を中心とする地点(KCH)、刈羽村役場を中心とする観測点(KVH)、KCH と KVH の間に位置す
る柏崎市栄田(KST)の3地点とした。KCH、KVH では本震時の地震動が観測されていること、KST
では資源探査を目的として実施された深層ボーリングによる地質断面図が得られていることから選定
した。各観測地点において、半径 200m の S アレーと半径 800m の L アレーの2つの異なる大きさのア
レー観測を実施し、各アレーは正三角形を成す3点とその重心点、および各辺の中点の計7点の微動
観測点で構成した(図 8)
。
各観測では、7秒の固有周期を有する3成分の速度型地震計を用いて、それぞれ独立して 60 分間の
連続微動時刻歴データを取得した。観測波形は 16bit のデジタル収録装置で収集し、各点は GPS によ
る時刻補正を利用して時刻の同期を行った。
13
3観測地点毎に観測した微動
データから、SPAC 法を用いて
Rayleigh 波の位相速度を推定し、
推定された位相速度と整合する
ように1次元の速度モデルを構
築する。本観測では、Rayleigh 波
の位相速度はSアレーに対して
0.7-1.7Hz 、 L ア レ ー に 対 し て
0.3-0.8Hz を対象とする。各層の厚
さとS波速度をパラメータとし
て遺伝的アルゴリズム(GA)を用
いた逆解析により推定し、P波速
度と密度は Ludwig et al (1970)の
関係を利用してS波速度から算
出する。
図 9 に各観測地点で推定された
Rayleigh 波の位相速度と、構築し
た1次元モデル(下表)から計算
図 8 微動アレー観測地点と各観測地点におけるアレー配置
された分散曲線との比較を示す。
位相速度は 0.3-1.7Hz に 0.4-1.8km/s の範囲に分布し、
KVH と KST で同様な傾向を示している。一方で、
KCH の位相速度は KVH、KST よりも速い速度と推定されている。この特徴は、KCH モデルのS波速
度 1400m/s 層上面に対応する境界面深さが KVH モデルよりも浅く設定されていること、S波速度
1000m/s 層上面に対応する境界面深さが KVH と KST でほぼ等しいことと対応している。
図 9 3観測地点における微動アレー観測の結果
(上)観測データから推定された位相速度と構築した1次元モデルにより計算される分散曲線との比較
(下)構築された1次元モデル.Vs はS波速度,Vp はP波速度,ρは密度を表す
14
5.深部基盤構造の推定
本章では、Chandler et al.16)が提案した Moving-window Poisson Analysis 法を用いて、地盤の密度境界
を検出することを考えた。Moving-window Poisson Analysis 法(以下,MWP 法) とは重力異常と磁気異
常の関係式であるポアソンの式 17)を用いることで水平方向の地盤構造の変化を抽出する手法であり、
Chandler et al.16)や梶原・他 18)が単純な二層構造モデルにおいて理論計算を行っており、手法の妥当性が
確認されている。しかし、MWP 法は現実の地盤への適用においては必ずしも十分ではない場合があ
るため、これを改良して新たに地盤の密度境界を高精度に検出する手法を開発した。また、得られた
密度境界を用いた地盤構造を推定する手法を確立した。
(1) Moving-window Poisson Analysis とその改良法
Chandler et al.16)は重力ポテンシャルと磁気ポテンシャルの関係式であるポアソンの式 17)を鉛直下方
に 2 階微分し、以下のような式を導出した。
Tz =
ΔM dg
GΔρ dz
(6)
ここで、△M は磁化の強さ、G は万有引力定数、△ρ は密度差、Tz は極磁力異常、dg/dz は重力異
常の鉛直一次微分である。さらに解析範囲において長波長の地域的な異常が分布していると仮定し、
その値を A とすると、この式は以下のように書き改めることができる。
Tz = A +
ΔJ dg
GΔρ dz
(7)
式(7) を一定の空間 window 内に限定して適用し、その範囲内にある重力異常と磁気異常の観測記録を
用いて dg=dz と Tz を求め、これらの値を式(7) で直線回帰し、△M /△ρ、A、および相関係数を算
出する。次に、この window を解析領域内でずらし、それぞれの window の位置ごとにパラメータの
値を求め、window の中心座標におけるパラメータの値とする。
もし仮に Window 内に不均質性があれば直線性が乱れることとなり、密度境界を検出することがで
きる。MWP 法とはこのようにして△M/△ρ、A、および相関係数の空間分布を求め、その分布形状か
ら密度境界等を抽出しようとする手法である。ところが、MWP 法による場合、構造の変化に対する
感度が高いために、表層等にある微少な不均質をも抽出してしまい、大局的な構造変化との区別がつ
かなくなることがある。そのため、式(7) を用いた手法のみでは大局的な密度境界の検出は非常に困難
である。これはポアソンの方程式を鉛直下方に 2 階微分しているため、地盤の構造の変化に対する感
度が非常に高くなっており、微少な構造の変化も等しく反映することが原因として考えられる。
これを解決するため、式(6) の両辺を鉛直下方に 1 階積分して得られる重力と擬重力に対して MWP
法を適用することを考えた。この手法では、上の場合とは逆に、構造変化に対する感度が低く、微少
な不均質によって乱されることはないものの、大局的な密度境界の位置も不明瞭となることが分かっ
た。
そこでこれら 2 つの計算法の長所を活かし、2 種類の MWP 法から得られた相関係数がいずれも±
0.5 のレンジの中に入っている部分だけを抽出する方法を提案する。これにより表層の微少な不均質構
造も多少、反映されるものの、基盤の密度境界を明瞭に抽出し得ることが分かった。以下の解析では
この提案手法を採用する。
(2)境界を用いた地盤構造の推定
地盤構造の推定にあたり、対象とする媒質の領域外で地盤の深さが 0 になるようにモデルの深さを
調整するためのコントロールポイントを設定した。以下の解析では密度境界から領域外におけるコン
トロールポイントを設定するまでの距離は 3 [km] とした。
15
さらに、対象とする媒質の領域内においても地盤の深さを調節するようなコントロールポイントを
設定した。これらコントロールポイントを用いて地下構造の初期モデル Hm,1 を算出し、その構造がも
つと考えられる重力値 gm,n を算出した。さらにその結果を用いて地下構造モデル Hm,n を以下の式に基
づいて修正する。
(8)
Dm ,n = H m −1, n − H m ,n
∑ D
=
∑ D
M
ρ adv
2
m ,n
M
ρm
(9)
2
m ,n
(
H m,n +1 = H m ,n + g
)× ρ ∑ D D
∑
m
res
− ∑ g m ,n
M
2
m,n
M
adv
(10)
2
m ,n
ここで、Dm,n は m 層における層厚、ρm は m 層における密度差、gres は以下の解析の場合、50 [m] か
ら 6 [km] のバンドパスフィルターをかけた観測重力値である。修正を行った地盤構造モデルに対し、
さらにコントロールポイントを用いて深さの調整を行い、得られた構造を用いて重力値 gm,n を算出す
る。深さを修正する際は必ず、密度の低い層が密度の高い層よりも上にくるようにした。このような
計算を 5 回繰り返すことにより地盤構造モデルを推定する。
(3)新潟県中越地方における実データへの適用
a)密度境界の推定
MWP 法および提案された手法を実データに適用する。対象地域としては詳細な重力データおよび
磁気データが得られている地域として新潟県中越地方を選択した。解析範囲としては長岡市北部から
柏崎市および小千谷市(北緯 37°11′~北緯 37°34′および東経 138°27′~東経 139°01′、東西×
南北:52×45 km)を設定した。対象地域における磁気データについては日本空中磁気データベース 19)
の記録を用いた。対象地域における重力データについては高橋・他 20)によって解析されたデータを用
いた。これらのデータに MWP 法を適用した。そのとき得られた相関係数を図 10(a) に示す。
これより相関係数が非常に複雑な変化をしており、どの位置に境界があるのかを判別することは非
常に困難であることが分かる。これはモデルスタディのケース 2 と同様に地表面上にある異常源の影
響も抽出してしまっていることが原因として考えられる。
重力異常、擬重力異常に対して MWP 法を適用し、その結果得られた相関係数と図 10 (a) の相関係
数が±0.5 のレンジに入っている部分だけを抽出した。この結果を図 10(b) に示す。これより、対象地
域の山間部が主に抽出されていることが分かる。特に中央部および東側の山間部において抽出された
領域はある程度、連続しているということが分かる。対象地域の南西部の山間部においては堆積岩や
火山岩による磁気の複雑な変化の影響を受け、山間部全体が抽出されている。また、北東部の平野が
抽出されており、これは重力の旧見附市周辺における変化を反映しているものと考えられる。ここで、
対象地域における表層地質図 21,22)との比較を行う。この結果、以下のことがわかる。
・図 10(b) における 1 のエリアは表層地質図から磁化力の強い火山岩が存在するエリアであり、この
ことは全磁力異常図からも伺える。よって、このエリアにおける数値の乱れはこの火山岩の影響を
うけているものと考えられる。
・図 10(b) における 2 、3 のラインの間には表層地質図から後期鮮新世代の層(主に魚沼層) があるこ
とがわかっており、この 2 つのラインはこれらの層と前期鮮新世代の層の境目のあたりを通ってい
るようにみえる。古村・他 23)によると魚沼層の密度は 1.8 [t/m] であり、比較的密度の小さい層であ
る。さらに、古村・他 23)がおこなった反射法探査によると魚沼層の層厚は厚く、1km に達する箇所
もある。よって、地盤を堆積層と基盤の 2 層であるとした場合、魚沼層が存在するエリアと存在し
16
ないエリアとでは堆積層の平均密度が大きく異なることとなり、このことは本研究で抽出されたエ
リアの妥当性を示唆するものであるといえる。
・図 10(b) における 4 のエリアは小出地域に存在するジュラ紀の岩帯を抽出しているようにみえる。
(a)相関係数(式(1)を適用したもの)
(b)密度境界
図 10 新潟県中越地域における推定結果
b)地盤構造の推定
(2)で述べた手順に基づいて地盤構造の
推定を行った。推定のために設定した密
度境界、堆積層の密度およびコントロー
ルポイントは図 11 に示す通りである。
また、
基盤岩における密度は 2.4 [t/m3] と
した。対象とする構造の対象とする構造
の領域内における深さを調整するための
コントロールポイントは図 11 に◯で示
した。推定された地盤モデルを図 12 に
示す。
これらの結果と対象地域におけるボー
リングデータ 24-28)および微動アレイ探査
結果との比較を行う。
図 11 コントロールポイントの設定
ここで、古村・他 23)により推定された
物性値よりボーリングデータについては寺泊層の上面を、微動アレイ探査結果については Vs が 2200
[km/s] の層との比較を行う。サイトにおけるそれらの層の上面との深さと高橋・他 20)によって推定さ
れた地盤構造、本研究で得られた地盤構造とを比較したものを表 1、2 に示す。
これより、大門においては高橋・他 20)によって推定された深さよりも本研究で得られた地盤構造モ
デルの方がボーリングによって求められている深さに近い値が推定された。また、出雲崎沖において
は高橋・他 20)とほぼ同じ深さが推定された。微動アレイの結果から推定された深さについては本研究
で得られた値は KCH、KST は高橋・他 20)とほぼ同じ深さであるが、KVH において 200m 程度深くな
っているということが分かる。
17
(b) ρ= 2.4[t/m3] の上面の標高
(a) ρ= 2.15[t/m3] の上面の標高
図 12 推定された地盤構造モデル(コンター間隔:200m)
サイト
坑口緯度
出雲崎沖 37°33′08″
大門
37°31′50″
サイト
KCH
KST
KVH
緯度
37°22′
37°23′
37°25′
表 1 ボーリングデータとの比較
坑口経度
ボーリングによる深さ 深さ: 図 12
138°40′50″
-51.8m
-238.354 m
138°42′40″
-2000m 以下
-1682.387m
経度
138°34′
138°35′
138°37′
表 2 微動探査データとの比較
微動データによる深さ
深さ: 図 12
-1685m
-0.871m
-1575m
-781.776m
-1945m
-1236.118m
高橋・他 20)による地盤構造
-204.942m
-1292.121m
高橋・他 20)による地盤構造
-83.444m
-753.710m
-996.300m
6.おわりに
本研究では、新潟県中越地方における浅層地盤特性と深層地盤構造に関して、以下の知見が得られた。
1) 新潟県中越地方における地盤のボーリングデータを収集・デジタル化を行い、約 3,500 本のデータベースを
構築した。
2) 地形分類とボーリングデータを距離の重みで統合することにより作成した深さ 30m までの平均 S 波速度の
分布を用いて、2004 年新潟県中越地震における最大速度及び計測震度分布を、多くの地震動観測情報
の補間により推定した。加えて、2007 年能登半島地震、2007 年新潟県中越沖地震についても同様に推定
した。
3) 長周期微動アレー探査を行い、柏崎平野の3点での地盤構造を推定した。Vs=2400m/s 程度の層の深さの
差異はあまりないが、Vs=1400m/s 程度の層の深さが場所により異なっていることを把握した。
4) 重力と磁気を併合処理し、またMWP法を改良して、現実の地盤へ適用可能な密度境界検出法を開
発した。そして、新潟県中越地方における深層地盤構造モデルの精度を重力のみのモデルより向
上させ、また対象範囲も柏崎地域を含むように拡張した。
本研究によるボーリングデータベース、推定震度分布、深層地盤構造、常時微動観測、の成果は、課題1で
のデータアーカイブスに収録しており、今後さらに広く活用され、活褶曲地帯での地震防災に寄与するものと
考えられる。
18
謝辞
本研究では、ボーリングデータの収集においては、課題1の土木学会事務局、課題6の長岡科学技術大学
大塚研究室の協力のもとに、国土交通省北陸地方整備局、新潟県、長岡市(旧三島町、旧越路町、旧小国町、
旧山古志村を含む)、小千谷市、見附市、防災科学技術研究所、等から多くのデータを提供頂きました。地震
観測記録については、土木学会調査団や各機関のホームページ等から、2004年新潟県中越地震及び2007
年新潟県中越沖地震におけるにおける気象庁、新潟県、防災科研、国土交通省、NEXCO東日本、東日本旅
客鉄道株式会社、東京電力株式会社、柏崎市ガス水道局、小千谷総合病院、2007年能登半島地震における
気象庁、防災科研、による観測記録または最大値指標、を利用させて頂きました。記して関係の皆様に感謝の
意を表します。
参考文献
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の課題・対策への提言」講演概要集、土木学会、pp.15-28、2007 年
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14)先名重樹、森川信之、大井昌弘、安達繁樹、藤原広行:小千谷・川口地区における微動探査結果と
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15)藤川智、先名重樹、藤原広行、大井昌弘:2004 年新潟県中越地震の強震観測点における表層地盤の
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16) Chandler, V.W., Koski, J.S., Hinze W.J., and Braile, L.W.: Analysis of multisource gravity and magnetic
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17) Garland, G. D. : Conbined analysis of gravity and magnetic anomalies, Geophysics, 16, pp51-62,1951
18)梶原崇憲、茂木透、山本明彦、大熊茂雄、中塚正: 北海道北部地域の重力・地磁気異常に関する
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19) 産業技術総合研究所地質調査総合センター:日本空中磁気データベース, 2005.
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造の推定、日本地震学会講演予稿集、2007 年度秋季大会、2007 年、P1-101
21) 竹内圭史、小松原琢、村上浩康、駒澤正夫:20 万分の 1 地質図幅「長岡」(第 2 版)、独立行政法
人産業技術総合研究所地質調査総合センター、2007 年.
22) 竹内圭史、加藤碩一、柳沢幸夫、広島俊男:20 万分の 1 地質図幅「高田」,独立行政法人産業技
術総合研究所地質調査総合センター、1993 年.
23) 古村孝志、三浦弘恵、纐纈一起、須田茂幸、川崎慎治:小千谷市街地付近の P 波・S 波反射法探
査と地下構造モデル構築、日本地震学会 2005 年秋季大会、セッション番号:P177、2005 年.
24) 柳沢幸夫、小林巖雄、竹内圭史、立石雅昭、茅原一也、加藤碩一:5 万分の 1 地質図幅小千谷地
域の地質、地質調査所、1986 年.
25) 小林巌雄、立石雅昭、吉岡敏和、島津光夫:5 万分の 1 地質図幅長岡地域の地質、地質調査所,
1991 年.
26) 小林巌雄、立石雅昭、吉村尚久、上田哲郎、加藤碩一:5 万分の 1 地質図幅柏崎地域の地質,地
質調査所、1995 年.
27) 小林巌雄、立石雅昭、上村武:5 万分の 1 地質図幅出雲崎地域の地質、地質調査所、1993 年.
28) 小林巌雄、立石雅昭、黒川勝己、吉村尚久、加藤碩一:5 万分の 1 地質図幅岡野町地域の地質,
地質調査所、1989 年.
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Earthquake Ground Motions around Area with Active Fold
SAWADA Sumio1), MORIKAWA Hitoshi2), GOTO Hiroyui1),
TAKAHASHI Chika2), SUETOMI Iwao3), FUKUSHIMA Yasuhiro3)
1) Professor, Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University
2)Interdisciplinary Graduate School of Science and Engineering, Tokyo Institute of Technology
3) Japan Engineering Consultants Co., Ltd.
Key Words : ground structure, gravity survey, magnetism, microtremor array observation,
distribution of JMA intensity scale, average shear wave velocity depth to 30m
Many strong ground motions were recorded during
the Niigata Chuetsu earthquake on October 23, 2004
(Mj=6.8). It was the first observation that JMA
instrumental seismic intensity was 7. The Niigata
Chuetsu-oki earthquake occurred again on July 17,
2007(Mj=6.8). A detailed distribution of earthquake
ground motion is necessary for earthquake
engineering practice. Amplification characteristics of
the shallow soil deposits are very important to
evaluate ground motion distribution. We collect and
digitize about 3,500 borehole data and estimate the
distribution of average S-wave velocity to 30m deep
by combining borehole data and engineering
Microtremor array observation
geomorphologic classification. Secondary, we calculated
a detailed distribution of peak ground
motion by interpolation method using the
observed records.
Microtremor array observations are
carried out in order to estimate S-wave
velocity structure in Kashiwazaki plain.
We have developed a new technique to
estimate a vertical boundary of density of
ground using gravty and magnetism
simultaneously. Furthermore, a method,
which estimates a 3-dimensional density
structure by means of an inversion
technique, is extended to multi-layered
media. These methods are applied to data
observed in Niigata-ken Chuetsu
region,Japan. The estimated structure
satisfies existent information obtained
Depth of top of basement (the density is 2.4t/m3) by
from boreholes and microtremor array
the proposed joint analysis of gravity and magnetism data
observations.
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