第2部 第 10 章 低ノイズな高品質 FM ラジオを目指すヒント LPC4370 マイコン内蔵高速 A-D コンバータの実力評価 林 輝彦 表 1 LPC4370 に内 蔵された高 速 A-D コンバー タ(ADCHS)の 仕様 データシートなどの抜粋.12 ビット分解能を有し,最高 A-D 変換速度 80MSps(クロック周波数 80MHz)のパイプライン方式 A-D コンバータ 項 目 仕 様 入力コモン・モード電圧 0.5V(0.1V 〜 0.9V) 入力電圧レンジ 0.8V(0.72V 〜 0.88V) 最大 A-D 変換速度 80MSps 動作速度 非直線性 60MSps 10MSps 積分(INL ) ± 1.2 LSB ± 1.1 LSB 微分(DNL ) ± 0.7 LSB ± 0.7 LSB 有効ビット数ENoB SNR(Signal to Noise Ratio) 10.1 10.4 63.0 dB 64.0 dB LPC4370 マイコン(NXP セミコンダクターズ)に内 蔵された高速 A-D コンバータ(以下,ADCHS)の仕様 の要点を表 1 に抜粋します. この A-D コンバータは,12 ビットの分解能で,最 高 80MSps のサンプリング(エンコード)速度をもちま す.ソフトウェア無線 SDR(Software Defined Radio) や高速センサからのアナログ信号取り込みにも使用で きる高性能な A-D コンバータですが,入力信号やク ロックの供給の方法など,性能を十分に発揮させるに は使い方に注意が必要です. 高速 A-D コンバータの簡易評価方法 ● 高速 A-D 変換器のディジタル出力をスペクトル 解析する 一般に A-D コンバータの誤差は,積分非直線性誤 差 INL(Integral Non-Linearity)や微分非直線性誤差 DNL(Differential Non-Linearity)などで表されます. 今回のような高速 A-D コンバータの場合,INL や DNL といった直線性(リニアリティ)で評価するより は,入力として単一の正弦波からなる交流信号を与 え,A-D 変換結果をスペクトル解析することで,信号 成分,雑音成分を分離して信号の「品質」を調べるこ とが有用です.A-D コンバータからの信号を使用する 上で,データの素性を知ることは非常に重要です. スペクトル解析は,ある程度の数(4096 〜 16384 個) の 連 続 し た A-D 変 換 デ ー タ を FFT(Fast Fourier Transform)することで行います. (ADCHSの特性を直接 測定する場合) ADC0 FMレシーバ 基板 LPC-Link2#1 ADC2 J2 ターゲット用 10ピンJTAGケーブル アンテナ 入力 J7 RF信号発生器 LPC-Link2#2 LPC4370 (この中の高速A-D コンバータADCHS を測定する) USB接続 PC 統合開発環境 エクス ポート FFT 解析 ソフト ウェア LPCXpresso 高速A-Dコン バータのサン プリング・デ ータをダンプ 4096 ポイント分 テキスト・ファイル デバッグ用 VP-8122A (パナソニック) 図 1 LPC4370 内蔵高速 A-D コンバータの性能評価実験の構成 AC 特性を評価する.特集で紹介したソフトウェア FM ラジオのプログラムを動作させた状態で DMA によってキャプチャ・バッファに取り込まれたサンプ ル・データ列(8192 バイト)を開発環境 LPCXpresso の機能でエクスポートして FFT 解析した 92 2015 年 7 月号
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