「固定残業代の問題点」 Q: 当社では、基本給とは別に、毎月一定額の残業代を固定残業代として 12人の従業員に支払っています。残業時間は毎月変わりますが、一定 額の給料の保障と手間のかかる残業代の計算を避けるため、固定残業代 を採用しています。この運用に何か問題がありますか。 A: 固定残業代として、毎月定額の残業代を支払う方法を採用している場 合は、労使トラブルや労働基準法に違反するケースが少なくありません。 特に、以下の点に注意が必要です。 (1)固定定残業代とそれ以外の給与の区分が明確であること。 (2)固定残業代に含まれている時間数や金額が明確であること。 (3)固定残業代が法律に基づいて計算された金額を下回っていないこ と。 固定残業代制度を採用するに当たっては、労働基準法により就業規則 で何時間分(標準残業時間)の残業代を含んでいるのか、その計算方 法・締め切り及び支払時期等について明確に定めておくことが義務付 けられています。 また、従業員の採用時には、労働基準法により始業・就業時刻、賃 金の決定、計算・支払い方法、賃金の締切り・支払時期等に関する事 項について書面で明示することが義務付けられています。 実際の残業時間数が会社で設定した標準残業時間数に満たない場合 であっても、就業規則で固定残業代を支払うことになっていれば、労 働基準法によりその額を支払うことが義務付けられています。 実際の残業時間数が、標準残業時間数を超えた場合には、労働基準 法によりその超えた部分の割増賃金を支払うことが義務付けられてい ます。 これらの義務が履行されていないと、労働基準法違反により違法・ 無効の扱いとなり、法定の基準が直接適用されることになります。 したがって、固定残業代制度を運用する場合であっても、タイムカ ードやICカード等の客観的な記録を基礎として、労働時間を適正に 把握し、残業代の不足がないかを確認する必要があります。 ご質問のようなケースは、残業代の不足の有無について確認するこ となく、定額の残業代しか支払われていないので、適法な運用とは言 えません。 また、現在運用されている固定残業代制度が、残業時間の固定化や 長時間労働を促進させる要因となっているのであれば、見直すことが 求められます。 お問い合わせは、大分労働局監督課(☎097‐536‐3212)へ。
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