2015年 税制改正法案 特集号 - 税理士法人 東京Goodアカウンティング

事業経営のパートナーニュース
−Total Management News−
平成27年3月号 −第155号− 平成27年3月20日発行
「平成27年度 税制改正法案」特集号
代表
社員
尾田行雄
平成27年2月17日に政府は「平成27年度税制改正法案」を国会に提出いたしました。
与党が過半数を得ているため政府案どおりに可決成立する見込みです。
国 の 予 算 の 現 状
1.国の予算の現状
プライマリーバランスが昨年より4.5兆円減少しました!!
歳
税収
入
国債発行
歳
その他
計
出
一般歳出
国債費
地方交付税
その他
プライマリー
バランス
計
平成20年度
53.6兆円
25.3兆円
4.2兆円
83.1兆円
47.3兆円
20.2兆円
15.6兆円
83.1兆円
▲ 5.1兆円
平成21年度
46.1兆円
33.3兆円
9.1兆円
88.5兆円
51.7兆円
20.2兆円
16.6兆円
88.5兆円
▲13.1兆円
平成22年度
37.3兆円
44.3兆円
10.6兆円
92.2兆円
53.4兆円
20.6兆円
17.4兆円
92.2兆円
▲22.9兆円
平成23年度
40.9兆円
44.2兆円
7.1兆円
92.4兆円
54.0兆円
21.5兆円
16.7兆円
92.4兆円
▲22.7兆円
平成24年度
42.3兆円
44.2兆円
3.7兆円
90.3兆円
51.7兆円
21.9兆円
16.5兆円
90.3兆円
▲22.2兆円
平成25年度
43.0兆円
42.8兆円
6.6兆円
92.6兆円
53.9兆円
22.2兆円
16.3兆円
92.6兆円
▲20.6兆円
平成26年度
50.0兆円
41.2兆円
4.6兆円
95.8兆円
56.4兆円
23.3兆円
16.1兆円
95.8兆円
▲17.9兆円
平成27年度
54.5兆円
36.8兆円
4.9兆円
96.3兆円
57.3兆円
23.4兆円
15.5兆円
96.3兆円
▲13.4兆円
2.債務残高の現状
0.7兆円
国及び地方の債務残高が平成26年度より1,000兆円を超えました!!
国
地方
国及び
地方合計
対GDP比
国及び
地方合計
対GDP比
平成20年度末
573兆円
197兆円
770兆円
156%
平成24年度末 731兆円 201兆円
932兆円
197%
平成21年度末
627兆円
198兆円
825兆円
174%
平成25年度末 770兆円 201兆円
972兆円
201%
平成22年度末
662兆円 200兆円 862兆円
180%
平成26年度末 809兆円 201兆円 1,009兆円
205%
実績見込
平成23年度末
694兆円
189%
平成27年度末 837兆円 198兆円 1,035兆円
205%
政府案
200兆円
895兆円
国
地方
3.平成27年度の税制改正の増減税の内容
減
税
増
税
法人課税
個人所得課税
消費課税
法人課税
消費課税
▲
▲
▲
7,430億円
220億円
190億円
▲ 7,840億円
6,680億円
80億円
6,760億円
税理士法人東京Goodアカウンティング
発行責任者 尾田 行雄
編集者 片山 真由美
〒144-0052 東京都大田区蒲田3−23−7 松本ビル4階
TEL 03-3730-7401
FAX 03-3730-7451
メール [email protected]
HP゙アドレス http://oda-kaikei.tkcnf.com
法人課税の増減税
がメインです
▲ 1,080億円
(減 税)
(国税平年度ベース)
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今月号の目次
●国の予算の現状 …
●法人税関係 ………
●消費税関係 ………
●所得税関係 ………
●資産税関係 ………
●その他 ……………
P1
P2∼4
P5
P6∼7
P8∼10
P11
1 Tax Accountant Office 2005-2015 All Rights Reserved.
(C) Copyright Certified Public Tokyo Good
法人税関係
1.法人税率の引き下げ(平成27年4月1日以後開始事業年度から)
(1)趣旨
課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げることにより、法人課税を成長志向型の構造に変え、
経済の好循環の実現を力強く後押しするため。
(2)改正の内容
法人税の税率を23.9%(現行25.5%)に引き下げる。
法人税率改正
所得金額
平成27年3月31日まで
開始事業年度
平成27年4月1日∼
平成29年3月31日
開始事業年度
中小企業
(資本金1億円以下)
年800万円以下部分
15%
15%
年800万円超部分
25.5%
23.9%
大企業
(資本金1億円超)
所得金額に対して
25.5%
23.9%
(参考)法人実行税率の推移
現 行
平成27年度
平成28年度
国の法人税率
25.5%
23.9%
23.9%
(参考)大企業向け法人事業税所得割
地方法人特別税を含む
年800万円超所得の標準税率
7.2%
6.0%
4.8%
(参考)標準税率ベース
国・地方の法人実行税率
34.62%
32.11%
31.33%
(▲2.51%) (▲3.29%)
(参考)東京都の場合の実行税率
35.64%
33.10%
32.34%
(▲2.54%) (▲3.30%)
2.欠損金の繰越控除制度の縮減(平成27年4月1日以後開始事業年度から)
(1)趣旨
課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げることにより、大企業の一部の黒字企業に税負担が
偏っている状況を是正にして、大企業に広く負担を分かち合う構造へと改革するため。
(2)改正の内容
①大企業の欠損金の繰越控除制度の控除限度額を次のとおり、段階的に引き下げる。
(イ)平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始事業年度 65%(現行80%)
(ロ)平成29年4月1日以後に開始事業年度 50%
現
大企業
中小企業
行
平成27年度
平成28年度
平成29年度
控除限度額
80%
65%
65%
50%
繰越期間
9年
9年
9年
10年
控除限度額
100%
100%
100%
100%
繰越期間
9年
9年
9年
10年
②全額控除が可能な法人
(イ)中小企業
(ロ)法人の設立の日から7年後まで(上場した場合は、以後の事業年度は対象外)
③平成29年4月1日以後に開始事業年度において生じた欠損金額について、以下の期間を
10年(現行9年)に延長
(a)欠損金の繰越期間 (b)帳簿書類の保存期間 (c)更正の期間制限 (d)更正の請求期間
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3.受取配当金等の益金不算入制度の縮減(平成27年4月1日以降)
(1)趣旨
支配目的以外の保有株式への優遇措置を抑えることで、課税ベースの拡大を図るため。
(2)改正の内容
現
区
行
分
完全子法人株式
(株式保有割合100%)
関係法人株式
(株式保有割合25%以上)
上記以外の株式
(株式保有割合25%未満)
改正案
不算入割合
100%
50%
区
分
不算入割合
完全子法人株式
(株式保有割合100%)
関連法人株式
(株式保有割合1/3超)
100%
その他の株式
(5%超 1/3以下)
〈負債利子控除の廃止〉
50%
非支配目的株式(注)
(株式保有割合5%以下)
〈負債利子控除の廃止〉
20%
①公社債投資信託以外の証券投資信託の収益分配額全額を益金算入
(現行:収益分配額の1/2(1/4)の金額の50%相当額を益金不算入)
(注)特定株式投資信託の収益分配額は20%相当額を益金不算入。
4.雇用者給与支給額が増加した場合の税額控除制度の拡充
(平成27年4月1日以後に開始適用年度)
(1)趣旨
平成29年4月の消費税率の再引上げに向けて、経済の好循環を定着させていくため、平成25年度
改正で創設された「所得拡大促進税制」の給与総額増加要件を緩和し、継続して着実に賃上げ
に取り組む企業をサポートする。
(2)税額控除限度額(平成25年4月1日以後開始事業年度より導入)
①雇用者給与支給増加額 × 10%
②法人税額 × 10%(中小企業は20%)
③①と②の小さい方
(3)改正の内容
大企業
H24年度(基準年度)と比較して
H27年度
H28年度
H29年度
H27年度
H28年度
H29年度
中小企業
H24年度
H25年度
H26年度 H27年度 H28年度
H29年度
今月号の「平成27年度税制改正法案特集号」は「2015年税制改正のポイントと影響と対応策 (公認会計士
天野隆先生作成)」「平成27年度税制改正研修会レジュメ (TKC全国会中央研修所)」「平成27年度税制改正
について(経済産業省)」を参考に編集しております。
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5.地方拠点強化税制の創設及び拡充(地域再生法の改正法施行日から)
(1)趣旨
人口の東京への過度な集中を是正するには、地方の企業において雇用の場を確保し、
人材を定着させることが必要であるため。拡充型と移転型がある。
拡 充 型
①地方にある企業の本社機能(※)の強化を支援
※本社機能とは、経営意思決定、経営資源管理 (総務、経理、人事)、各種業務統括 (研究開
発、国際事業)などの事業所をいう。工場及びその地域を管轄する営業所は含まない。
②以下の要件を満たす計画を自治体が策定し国が認定
(イ) 地域要件:東京圏、中部圏中心部、近畿圏中心部を除く地域であって、単独自治体、又は
地域連携により概ね人口10万人以上の経済圏を構成し、一定の事業集積が認められる地域
(ロ)本社機能の受入促進策を講じていること
③企業の地方拠点強化実施計画(知事承認)
・地域再生法の改正法施行日から平成30年3月31日までに計画承認を受けた者が、その承認日
から2年以内に取得した建物及び附属設備並びに構築物に対して減税を行う。
(イ)オフィス減税
オフィスの建物等の取得価額に対し、特別償却15%、又は
税額控除4%(計画承認が平成29年度の場合は2%)
(注)対象設備は2,000万円以上(中小企業は1,000万円以上)
(ロ)雇用促進税制
(a)増加雇用者1人当たり50万円を税額控除。
(従来の40万円に、地方拠点分10万円上乗せ)
(b)法人全体の雇用増加率10%未満の場合でも、
1人当たり20万円を税額控除《新設》
移
転
型
①東京23区からの移転の場合、拡充型よりも支援措置を
深掘りする。
②以下の要件を満たす計画を自治体が策定し国が認定
(イ)地域要件:東京圏、中部圏中心部、近畿圏中心部
を除く全地域
(ロ)本社機能の受入促進策を講じていること
③企業の地方拠点強化実施計画(知事承認)
・地域再生法の改正法施行日から平成30年3月31日までに
計画承認を受けたものが、その承認から2年以内に取得した
建物及び附属設備並びに構築物に対して減税を行う
(イ)オフィス減税
オフィスの建物等の取得価額に対し、特別償却25%、又は
税額控除7%(計画承認が平成29年度の場合は4%)《新設》
(注)対象設備は2,000万円以上(中小企業は1,000万円以上)
(ロ)雇用促進税制
(a)増加雇用者1人当たり最大80万円を税額控除
《拡充型50万円に、地方拠点分は更に30万円上乗せ》
(b)(a)のうち、30万円分は、雇用を維持していれば最大3年間継続《新設》
(c)(b)は法人全体の雇用増がなくても、東京から地方への移転者にも適用《新設》
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消費税関係
1.国境を越えた役務の提供に対する消費税の見直し
(平成27年10月1日以後の国内事業者が行う資産の譲渡及び課税仕入れ)
(1)趣旨
国内事業者が国内消費者に電子書籍・音楽・広告の配信等の電子商取引を行うと、消費税が課
税される。しかし、国外事業者が国内消費者に電子商取引を行っても消費税が課税されない。
したがって、国内外の事業者間で競争条件を揃える観点から、国外事業者が国境を越えて行う
電子書籍・音楽・広告の配信等の電子商取引にも消費税を課すこととする。
(2)改正の内容
①内外判定基準の見直し
現行の消費税法は、役務の提供が行われた場所が明らかでない場合、役務の提供を行う者の
事務所等の所在地に基づき内外判定が行われる。国外事業者から役務の提供を受ける場合に
は、消費税法上不課税とされている。
【現 行】サービス提供者の所在地が国外であると消費税が課税されない。
↓
【改正案】サービスの提供を受ける者の所在地が国内であれば消費税を課税するようにする。
②課税の方式
(イ) 広告やソフトウェアなど事業者向け取引については、「リバースチャージ方式」を導入
し、サービスを受ける国内企業が代わりに消費税を納める。国内事業者はこれまで役務
提供者が国外であれば不課税処理を行ってきたが、改正後は消費税の課税対象となり、
申告納税義務を負うことになる。
(ロ) 消費者向け取引については、国外事業者が日本の国税当局に登録をし、消費税を申告納
税する。
リバースチャージ方式……
通常サービスの提供者が納税義務者になるところ、
サービスの受け手に納税義務を課す方法。
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所得税関係
1.ふるさと納税の拡充(平成28年分以後の個人住民税)
(1)現行制度
ふるさと納税は都道府県・市区町村に対する寄附金のうち2,000円を超える部分について、一定
限度額まで、原則として所得税・個人住民税から全額が控除される。平成20年に創設された。
(2)改正の内容
控除される一定の限度額とは以下の①から③の合計額をいう。
①所得税……(寄附金−2千円)を所得控除
②個人住民税(基本分)……(寄附金−2千円)×10%を税額控除
③個人住民税(特例分)……(寄附金−2千円)×(100%−10%(基本分)−所得税率)
→ ①、②により控除できなかった寄付金額を③により全額控除
ただし、所得割額の2割(改正前1割)を限度
(3)「ふるさと納税ワンストップ特例制度」創設
(平成27年4月1日以後に行われる寄付について適用する)
①確定申告を行わない給与所得者は、寄付を行う際、個人住民税課税市区町村に対する寄付の
控除申請を、寄付先の都道府県又は市区町村が寄付者に代わって行うことを要請できる。
②①の要請を受けた寄付先の都道府県又は市区町村は、控除に必要な事項を寄付者の個人住民
税課税市区町村に通知する。
③この特例が適用される場合は、現行制度の都道府県又は市区町村への寄付金の所得税及び個人住
民税の寄付金控除額の合計額の2/5を道府県民税から、3/5を市町村民税からそれぞれ控除する。
2.ジュニアNISAの創設
(平成28年1月1日以後口座開設及同年4月1日からNISA口座へ受け入れる上場株式に適用)
●NISA(少額投資非課税制度)の現行制度の内容
NISAは非課税口座内の少額上場株式の譲渡所得の非課税措置
のことをいい、平成26年1月1日から適用が開始されている。
●ジュニアNISA(未成年者口座)の創設
(1)趣旨
(イ)若年層への投資の裾野を拡大する
(ロ)高齢者に偏在する膨大な金融資産を若年層に移転して、成長資金へと動かす契機にする
(ハ)未成年者の独り立ちまでの長期にわる投資を促進する
(ニ)世帯単位でみた非課税投資可能額を引き上げる
(2)制度案
ジュニアNISAを創設し、0歳から19歳の未成年者の口座開設を可能とする。
両親や祖父母が、子や孫の為に専用口座を開いて、その未成年者口座において支払を受ける
上場株式の配当及びその期間内に譲渡した上場株式の譲渡所得について所得税を課さない。
(参考)ジュニアNISAとNISA(現行)の比較
項目
ジュニアNISA(創設)
NISA(現行)
制度を利用可能な者
0歳∼19歳
20歳∼
年間投資上限額
80万円
(5年間最大400万円まで)
100万円→120万円(改正)
(5年間で最大600万円まで)
非課税対象
上場株式、公募株式投信
投資可能期間
平成35年まで
非課税期間
投資した年から最長5年間
運用口座の管理
親権者が代理して運用を行う
(18歳まで払出し制限)
自身で管理
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3.国外転出をする場合の譲渡所得の特例の創設(平成27年7月1日以後に国外転出する場合)
(1)趣旨
クロスボーダーでの課税のがれを防止する観点から、巨額の含む益 (未実現のキャピタルゲイン) を有
する株式を保有して出国する者に対する譲渡所得課税の特例を創設する。
(2)概要
適用時期
平成27年7月1日以後に国外転出する場合に適用
次のいずれの要件も充たす者
・国外転出時に対象資産の合計が1億円以上であること
・出国直近10年以内において5年を超えて居住者であること
対象者
対象資産の範囲
納税義務の成立時期
・所得税法上の有価証券や匿名組合契約の出資持分
・未決済のデリバティブ取引・信用取引・発行日取引
国外転出時
所得金額の計算
対象資産の含み損益を実現したものとみなして事業所得、譲渡所得、雑所得を
計算 → (出国時の時価−取得費)×15% (※)
※譲渡の場合の所得税率であり、平成27年度から平成50年度については、
この他に復興特別所得税を加算した率とする(住民税はかからない)
所得の金額
①納税管理人の届出がある場合→国外転出時における含み損益
②納税管理人の届出がない場合→国外転出予定日の3月前の日における含み損益
(3)課税の取消し
特例対象者が国外転出の日から5年以内に帰国した場合、国外転出の時以後引き続き有していた
対象資産については、更正の請求により課税を取り消すことができる。
(4)納税猶予
一時的な出国であり、資産売却を行うことなく帰国を予定している者や納税資産が不十分である
者への配慮として出国時特例の納税猶予を創設する。
①納税猶予の要件
(イ)確定申告書に納税猶予を受けようとする旨の記載をすること。
(ロ)確定申告書に提出期限までに担保を提供すること。
(ハ)確定申告書に提出期限までに納税管理人の届出すること。
②納税猶予期間
原則5年(申請により最長10年)
③届出書の提出
納税猶予期限までの各年12月31日の「対象資産の所有に関する届出書」を翌年3月15日までに
税務署長に提出しなければならない。
④納税猶予期限までに対象資産を譲渡した場合
納税猶予税額のうち譲渡があった対象資産の部分については、その譲渡又は決済があった日か
ら4月を経過する日が納税猶予期限となり、所得税を納付する場合には納税猶予期間に利子税
を納付しなければならない。
⑤出国から譲渡までの間に対象資産の価額が下落した場合
納税猶予を選択した者が、対象資産を国外転出時の時価を下回る価額で
譲渡した場合には、価格下落分については、更正の請求により、所得税の
減額をすることができる。(納税猶予期間満了時も同様)
(5)二重課税の調整
外国で出国による税を課された日本への入国者については二重課税の調整を行う。但し納税猶予
を選択した上で日本から二重課税調整をしない国に出国した者については、日本において二重税
の調整を可能とする。
(6)贈与、相続又は遺贈により非居住者に対象資産が移転する場合
対象資産が贈与、相続又は遺贈により非居住者に移転した場合には、その贈与、相続又は遺贈の
時に、対象資産の含み損益が実現したものとみなして事業所得、譲渡所得又は雑所得の金額を計
算する。
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資産税関係
1.結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税措置の創設
(平成27年4月1日より平成31年3月31日までの間の拠出)
(1)趣旨
祖父母や両親の資産を早期に移転することを通じて、子や孫の結婚・出産・育児を後押しする。
(2)概要
(贈与者)父母・父母(直系尊属)
(受贈者)
子・孫(20歳以上50歳未満)
適用時期
平成27年4月1日から平成31年3月31日まで(4年間)
贈与手段
金融機関に子・孫名義の口座を開設し、資金を一括拠出
非課税限度額
1,000万円(結婚に際して支出する費用については300万円を限度)
結婚に際して支出する婚礼費用、住居に要する費用及び引越に要する費用
結婚・子育て資金の範囲 妊娠・出産に要する費用及び子の医療費、保育料など。
税務署への申告
金融機関経由で非課税申告書を提出
払
出
結婚・子育て資金に充てたことを確認できる書類を金融機関に提出
使
途
金融機関が領収書等をチェックし書類を保管
贈与税
子・孫が50歳に達する日に口座は終了し、使い残しがあれば贈与税を課税
(3)結婚・子育て資金管理契約の終了事由
①受贈者が50歳に達した場合
②受贈者が死亡した場合
③信託財産等の価額が零となった場合に終了の合意があったとき
(4)結婚・子育て資金管理契約の終了時における残額の取扱い
①受贈者が50歳に達した場合又は信託財産等の価額が零となった場合に終了の合意があったとき
非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額があるときは、これらの事由に該当
した日に残額の贈与があったものとして受贈者に贈与税を課税する。
②受贈者が死亡した場合
非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額については、贈与税を課さない。
(5)期間中に贈与者が死亡した場合の取扱い
信託があった日から結婚・子育て資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合に
は、死亡日における非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額については、受
贈者が贈与者から相続又は遺贈による取得したものとみなして、贈与者の死亡による相続税の
課税価格に加算する。
(6)結婚・子育て資金の範囲に入るものと入らないものの事例
事
○結婚・子育て資金の範囲に入るもの
(贈与非課税の対象となるもの)
例
・結婚式の費用、新居の家賃(結婚関係300万円まで)
・出産費用、不妊治療にかかる費用
・子供の治療費、ベビシッター代
・保育費用
・新居の家具や家電
・ベビー用品(おむつ、ベビーベッド、ベビーカー)
×結婚・子育て資金の範囲に入らないもの
・結婚相談所に支払う費用
(贈与非課税の対象外となるもの)
・お見合いの際の食事代
・街コン(大型の合コン)への参加費用
(7)留意点
①現行制度上も、結婚・子育てに充てるための費用は必要な都度、贈与した場合には非課税とな
るため、一括贈与による非課税制度との併用が可能となる。
②一括贈与の残額については相続税又は贈与税の課税対象となるため、従来からあるその都度贈
与と比較してどちらのリスクが少ないかを検討する。
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(参考)教育資金贈与、結婚・子育て資金贈与、ジュニアNISAの制度比較
項
目
教育資金贈与
贈与者
結婚・子育て資金贈与
ジュニアNISA
祖父母・父母(直系尊属)
誰でも可
受贈者
0歳以上30歳未満
20歳以上50歳未満
0歳以上20歳未満
適用時期
H25年4月1日∼H31年3月31日
H27年4月1日∼H31年3月31日
H28年1月1日∼H35年12月31日
入 口
(講座開設時)
1,500万円まで非課税
1,000万円まで非課税
(但し結婚資金は300万円まで)
年80万円
(但し贈与税の基礎控除を
上回る場合は贈与税課税)
相続税課税
(但し孫の場合2割加算対象外)
相続税の課税なし
(但し相続人に対する
3年以内のものは
相続財産に加算)
途 中
(贈与者死亡時)
出 口
(終了事由の発生)
終了事由
相続税の課税なし
・終了事由の時点で残高 ・終了事由の時点で残高が
がある場合は贈与税課
ある場合は贈与税課税
税(死亡を除く)
(死亡を除く)
・贈与税課税なし
成人NISAへ自動引継
・受贈者が30歳に達した
・受贈者が死亡した
・残高が零となった
・受贈者が20歳に達した
・受贈者が死亡した
・受贈者が50歳に達した
・受贈者が死亡した
・残高が零となった
2.住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の延長・拡充
(平成31年6月30日まで延長)
(1)改正案
直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、下記のとおり
とする。その適用期限平成31年6月30日まで延長する。
①非課税限度額
消費税率10%が適用される者
耐震・エコ
バリアフリー住宅
一般住宅
【現行】
平成26年 1月∼平成26年12月
1,000万円
500万円
平成27年 1月∼平成27年12月
1,500万円
1,000万円
平成28年 1月∼平成28年 9月
1,200万円
700万円
対象期間
耐震・エコ
バリアフリー住宅
左記以外の者
一般住宅
平成28年10月∼平成29年 9月
3,000万円
2,500万円
1,200万円
700万円
平成29年10月∼平成30年 9月
1,500万円
1,000万円
1,000万円
500万円
平成30年10月∼平成31年 6月
1,200万円
700万円
800万円
300万円
②「質の高い住宅」の範囲を拡充
(イ)省エネルギー性の高い住宅(断熱等性能等級4又は一次エネルギー消費量等級4)
(ロ)耐震性の高い住宅(耐震等級2以上又は免震建築物)
(ハ)バリアフリー性の高い住宅(高齢者等配慮対策等級3以上)
のいずれかの性能を充たす住宅
③適用対象となるリフォーム工事の範囲を拡充
大規模増改築、耐震リフォーム工事に加え、省エネ、バリアフリー、
給配水管等のリフォームを追加
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3.特定空家等の土地について固定資産税の住宅用地特例から除外
(1)趣旨
空家の除去・適用管理を促進し、市町村による空家対策を支援する。
(2)現行の住宅用地特例(固定資産税の減額)
小規模住宅用地
(200㎡以下の部分)
一般住宅用地
(200㎡を超える部分)
1/6に減額
1/3に減額
固定資産税の課税標準
(3)改正案(固定資産税の減額をなくす)
「空家等対策の促進に関する特別措置法」による必要な措置の勧告の対象となった特定空家等
の土地を現行の住宅用地特例措置の対象から除外する
(4)特定空家等
①そのまま放置すれば倒壊等が著しく保安上危険となるおそれのある状態
②著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である
状態にある空家等をいう。
(5)影響度
(事例)土地は200㎡以内で評価額1,000万円、建物200万円。更地は評価額の70%に課税
土地・固定資産税
建物・固定資産税 固定資産税合計
空家(従前)
1,000万円×1/6×1.4%
=23,333円
200万円×1.4%
=28,000円
更地にした場合
1,000万円×70%×1.4%
=98,000円
−
98,000円
空家(改正後)
1,000万円×70%×1.4%
=98,000円
200万円×1.4%
=28,000円
126,000円
51,000円
更地にしない場合
(負担増)
取り壊す場合
(負担減)
4.保険契約の異動の調書の作成等(平成30年1月1日以後の契約者変更について適用)
(1)趣旨
税務当局が保険契約の契約者変更の際の必要情報を把握し、課税もれを防ぐため。
(2)問題点
保険契約者と被保険者が異なる場合、保険契約者が死亡しても
保険会社から法定調書が提出されることはなく、保険契約の
契約者変更の際に税務当局に必要な情報が提供されないため、
本来相続税が課税されるにもかかわらず申告を怠っている
ことや、所得税の所得金額の計算上控除できない旧契約者の
払込保険料を控除していることを税務当局が把握できない
場合がある。
(3)改正案
①保険会社は生命保険契約について死亡による契約者変更が
あった場合には、契約者変更情報及び解約返戻金相当額を
記載した調書を税務署長に提出しなければならないことと
する。
②保険金支払い調書について、保険契約の契約者変更があった
場合には、保険金の支払時の契約者の払込保険料を記載する
こととする。
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その他
1.マイナンバーが付された預貯金情報の効率的な利用措置
(1)銀行等に対するマイナンバー検索管理義務
マイナンバー法の改正にあわせて国税通則法を改正し
銀行等に対し「マイナンバー」によって検索できる
状態で預貯金情報を管理する義務を課する。
(2)当面の預金者は銀行等からマイナンバーの告知を
求められるが、法律上告知義務は課されない。
(3)施行時期
①マイナンバー制度スタートから2年経過後の
平成30年から実施できるよう関係者間で調整。
②納税者に告知義務を課すのはその3年後の
平成33年を目途に検討を始める。
平成27年10月よりマイナンバー通知開始予定
・個人マイナンバーは各市町村より通知開始予定です。
・法人マイナンバーは国税庁より通知開始予定です。
(平成27年3月11日
日経新聞朝刊より抜粋)
2.財産債務明細書の見直し(平成28年1月1日以後に提出すべき財産債務調書)
(1)趣旨
所得税・相続税の申告の適正性を確保する
(2)改正の内容及び国外財産調書との比較
財産債務調書
改正項目
名
称
現行法令
国外財産調書
改正案
・財産債務明細書
・財産債務調書
提出基準
・所得2千万円超
・所得2千万円超かつ
・国財財産5千万円超
・その年の12月31日時点での
財産の価額の合計額が3億円
以上又は、同日時点での国外
転出をする場合の譲渡所得の
特例の対象資産の価額の合計
額が1億円以上
記載項目
・財産の種類
数量及び価額
・財産の種類、数量及び価額
・国外財産の種類、用途(一般用
・財産の所在、有価証券の銘柄
及 び 事 業 用 の 別)、所 在、数
等、国外財産調書制度の記載
量、価額
事項と同様の事項の記載
過少申告加算税等
の
・なし
特例措置
質問検査権
罰
則
・所得税調査の
際の質問検査権
で確認
・国外財産調書
・国外財産調書制度と同様、財 ・調書に記載がある部分につい
産債務調書の提出の有無等に
ては、所得税・相続税の過少
より、所得税又は相続税の過
(無)申告加算税を5%減算
少申告加算税等を加減算する ・調書の不提出・記載不備にか
特例措置を創設
かる部分については、所得税
の過少(無)申告加算税5%加算
・財産債務調書の提出に関する ・国外財産調書の質問検査権
調査の質問検査権の規定を整
で確認
備する
な
し
・不提出・虚偽記載の場合、
1年以下の懲役又は
50万円以下の罰金
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