保険・年金論(第3回) リスクプーリング

保険論(第3回)
住まいと車の保険
敬愛大学経済学部
2015年4月23日
大塚忠義
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講義資料
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第2回
保険の起源・発展
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Agenda
•保険の起源
•冒険貸借の仕組
•ロイズコーヒー店
•保険の黎明期
•火災保険会社の誕生
•損害保険会社の巨大化と多様化
•生命保険の近代化
•近代生命保険の誕生
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生命保険の近代化(1)
ルネッサンス期以後
‐寡婦と孤児のための友愛組合
17世紀以後
‐ローマ法王、皇帝等の生死に関わる
保険・・・賭博保険
江戸期以降の日本
無尽・頼母子講
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生命保険の近代化(2)
保険料は、年齢に関わらず一律
-損害保険では普通だが、生命保険で
は制度を破綻させる
-ギルドのような閉鎖集団以外では、事
業が継続できない
e.g. 保険料は一律年1万円⇔高齢者の
増加
生命保険の賭博化⇒ヨーロッパ各国は
法により、生命保険を禁止
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生命保険の近代化(3)
-賭博性を持たない生命保険事業は、
設立しても破綻
-損害保険事業から進出した会社は、
加入年齢を制限(e.g.45歳)
1693年 ハレーがブレスラウ市民の死
亡表作成
死亡率は年齢で異なることを実証した
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近代生命保険の誕生
1762年
エクイタブル生命(UK)の設立
‐年齢別死亡率と利率を考慮に入れた
数理的な根拠に基づく保険料の計算
‐終身保険の提供
‐顧客は富裕層が中心
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近代生命保険の誕生
19世紀後半 労働者階層の拡大
1848 プルデンシャル生命(UK)の設立
‐小口週掛け保険(賃金労働者向け)
‐保険募集・集金ネットワークの構築
1860:契約件数3万件
1948:3000万件
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まとめ:近代保険の誕生(1)
•18世紀:海上保険の発達:大英帝国の版
図拡大
•海上保険の発達により、保険は独立した事
業分野として確立
•19世紀:火災保険・生命保険の発達:産業
革命による
-市民階層の拡大
-都市への人口集中
-工場・事務所等企業物件の拡大
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まとめ:近代保険の誕生(2)
•近代化の進展:村落単位・血族集団に
よる相互扶助思想の消滅
•リスクは、「集団の中で共同保有する」
⇒「利害関係のない第三者に移転す
る」
•国際化・自由化の進展:リスクの巨大
化⇒保険会社の巨大化、健全性への
注目
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Agenda
第3回 住まいと車の保険
• 住まいの保険
(1)火災保険
(2)家財保険
(3)地震保険
• 賠償責任保険
• くるまの保険
(1)自動車損害賠償責任保険
(2)任意保険
個人が加入する保険の話で企業の保険は対象外
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住まいとは
•建物・・・壁、柱、屋根など主要構造部
•付属設備・・・畳、建具、電気設備
•付属構造物・・・門、塀、車庫
家財は別:住まいの収容物
•家財・・・家具、電化製品
通貨、有価証券、預金証書、宝石、書籍、
絵画:通常家財に含まれない:契約時に明
確に合意すれば含む(最近の保険は含ん
でいることが多い)
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損害の原因
•火事
•落雷、爆発
•台風、暴風、暴風雨
•盗難
•水漏れ
•自動車の突入、飛行機の墜落。。。。
↔地震
(後ほど)
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損害の種類
•修繕、建替え
•家財についても同様
⇒直接損害
•焼け跡の整理
•ホテルへの宿泊
•近隣への見舞金
⇒間接損害
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火災保険(1)
これらの補償を行うものを火災保険と
称している
保険の目的:保険の対象とする損害が
生じるおそれのある財物
eg. 住宅総合保険
建物、付属設備、付属構造物、これら
に収容されている家財、車庫にいても
車は除く
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火災保険(2)
個人向け(家計分野)の火災保険
•住宅総合保険、住宅火災保険、店舗総
合保険、積立火災保険
•家財保険、団地保険、学生総合保険
借家人を対象に家財のみを補償する
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火災保険(3)
1666年ロンドンの大火災を契機に始まる
損害の原因の拡大:火災以外も対象
保険の目的の拡大:住宅+家財、家財のみ
補償の種類の拡大:賠償責任を追加
名称も・・・ 住宅総合保険
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火災保険(4)
保険価格・・・保険の目的の金銭的な価値、
家、家具の値段
時価:買った時の値段から時間の経過とと
もに下落
再調達価格:同じ価値のものを事故時点で
購入する価格
長らく時価であったが、最近は再調達価格
が多い
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火災保険(5)
保険金額:保険の加入の際、契約者が設
定する金額:支払われる保険金の上限
通常:全部保険:保険金額 =保険価格
損害額と同額の保険金が支払われる
一部保険:保険金額<保険価格
損害額に保険金額と保険価格の割合を乗
じた金額(比例填補)を保険金として支払う
超過保険:保険金額>保険価格
実際の損害額以上の支払はない。
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比例填補(例)
住宅の保険価格:2000万円
保険金額:1000万円
損害額(例えば半焼):1000万円
保険金額:1000万円
損害額:1000万円×
保険価格:2000万円
=保険金:500万円
実際にはこれを援用して
保険金額:1000万円
損害額:1000万円×
保険価格の80%:2000万円
=保険金:625万円
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地震保険(1)
日本独特の保険
政府が保険者となっている。(再保険と
して引き受けている。)
火災保険の加入者のみが加入できる。
保険金額に上限
•火災保険の保険金の50%以下、か
つ
•建物5千万、家財1千万以下
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地震保険(2)
補償の対象
•地震、噴火およびこれによっておきる
津波
•上記を原因とする火災、損壊、埋没、
流出
•逆に言うとこの災害は火災保険ではカ
バーされていない。
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損害賠償を負うリスク
・他人に傷害を負わせる、死に至らしめる
・他人の所有物を損壊する
・他人に損失を与える
・法律上の賠償責任を負う
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賠償責任保険
保険の原因:個人の日常生活、企業の業
務遂行、または所有・管理している施設
損害の原因:偶然の事故により、
損害の種類:第三者に損害を与え、賠償責
任を負うことにより、被る損失
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施設賠償責任保険
住宅総合保険、家財保険、学生総合
保険等に付帯
・×火事により隣家を類焼
・○水漏れにより階下の部屋が水浸し
自家の火災保険金額より多額
水漏れは学生総合保険で最大の支払
事項
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くるまの保険(1)
強制保険
自動車損害賠償責任保険
自賠責保険
↔
任意保険
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くるまの保険(2)
・1960年代以降一般的になった新し
い保険:自動車という新しい保険の
対象物
・現在ではもっとも一般的な保険
・損害保険会社にとって最大の収入
・賠償責任が中心の補償
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自動車を取り巻くリスク(1)
•自動車の保有台数 9056万台
•自動車事故発生件数
年66万件
•自動車事故による負傷者
年82万人
•自動車事故による死亡者
年4411人
平成24年、財団法人 交通事故総合分析センター
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自動車を取り巻くリスク(2)
•けがのリスク
自分や同乗者のけが、障害、死亡
•車両損害のリスク
運転中の事故以外にも、火災・台風・
洪水、または盗難
•損害賠償のリスク
事故により相手側(被害者)に支払う
損害賠償金
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損害賠償を負うリスク
•他人に傷害を負わせた場合
医療費、休業補償
•相手側が死に至った場合
逸失利益(生きていたら生涯で得られ
るはずの利益)および慰謝料
•物損事故の場合
他人の自動車や家の塀の破壊
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自動車損害賠償責任保険(1)
•自賠責保険といわれる。
•目的は、自動車事故の被害者救済
•加入が法律により義務付けられてい
る保険;強制保険
•人身損害のみが対象
•支払限度、一人死亡につき、3000万
円
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自動車損害賠償責任保険(2)
•自賠責保険証明書は車検通過の要件
•ステッカーをつけていない車は走って
はいけない。(中途解約を認めない)
•保険料率は、どの会社でも同一
•保険会社も引受けを拒否してはいけな
い。
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自賠責の料率
•基準料率制度;損害保険料率算定機構
が保険会社に代わり保険料率を算出
•独占禁止法の例外処置(カルテルを認
めている。)
•No loss no profit rule:営利の介在を許さ
ない。
自賠責と地震保険のみが持つ制度
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任意保険(1)
強制保険に対し、加入が義務付けられ
ていない自動車保険
•対人賠償保険
•対物賠償保険
•自損事故保険
•搭乗者傷害保険
•無保険者傷害保険
•車両保険
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任意保険(2)
•通常、すべてまたは数種類をセットし
たものをいろいろな名称で販売している。
•賠償責任は自賠責の責任を超過した
場合にのみ発動する。つまり、支払額
が3000万円を超えた場合の超えた部
分。
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Question?
お疲れ様でした。
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